SF世界にTS転生した俺は治安維持部隊を全力で社畜する! 作:宇宙のモナカ
ネオンの目の前、ちょうど頭一つ分低い位置で、白銀の髪が歩調に合わせて左右に軽やかに揺れている。
よく晴れた日の光を浴びたその髪は、頭頂部に天使の輪のような艶やかな光のリングをきらめかせており、見ていると思わず手を伸ばして撫で繰り回したくなるような欲求に駆られる。
しかし、ネオンはグッとその手を制服のズボンの脇で握り込み、衝動を抑え込んだ。
目の前を歩いているのは、自分よりずっと小さな少女の姿をしてはいるものの、今日この第3詰所に着任したばかりの、一応は自分たちの上司にあたる最新型ヒューマロットなのだ。
髪と言えば、とネオンは歩きながら前の少女の後頭部をじっと観察した。
目の前で揺れる白銀の頭髪は、左右に垂らした三つ編みの中間地点のパーツを程よく膨らませた、いわゆる「玉ねぎヘアー」と呼ばれる愛らしい髪型に結われていた。
先日、銭湯で初めて顔を合わせた際は、帰り道にうなじを見せるようなお団子ヘアーにしていたことを思い出す。
戦闘用モデルとして配備されている身でありながら、彼女は割とオシャレや身だしなみへの関心が高いのかもしれない。
少なくとも、ここ一年近く髪型がショートカット一択でまったく変化のない彼女の姉――ビャッコに比べると、美意識の面では雲泥の差があった。
ちなみに、遺伝子改造されたクローン人間だからといって、人間のようには髪が伸びないといった仕様があるわけではない。
ビャッコの場合は、一ヶ月ほどのスパンでサクラデバイスのヒューマロット寮の内部に併設されている美容院に律儀に通っているらしく、少し伸びてきたかなと思うと、いつの間にか初期設定のようなショートカットにリセットして帰ってくるのだ。
以前、ネオンが『せっかくだから少し伸ばしてみたら?』と尋ねたところ、『戦闘の邪魔になるし、めんどくさい』と身も蓋もない返事をされた記憶がある。
折角あんなに綺麗な髪なのだから、目の前の妹のようにこれくらい伸ばしてくれたら、色々と触りがいやアレンジのしがいもあるのに。
そんな益体もないネオンの思考を遮るように、前を歩いていた少女が不意に足を止めた。
「ネオンさん、ルミナさん」
きゅっとコンバットブーツを鳴らし、ニコがくるりと振り返りながら声をかけてくる。
変なことを考えていたことを見透かされたかと身構えるネオン。
表情の読めないガラス玉のような瞳が、ネオンと、その隣を歩くルミナを真っ直ぐに見据えていた。
「私は元の部隊で、どうやら業務上の失敗をしたようで、左遷されてこの詰所へ来ました」
唐突なカミングアウトだった。
さらにニコは、完璧な姿勢で直立したまま、無表情に淀みない口調でこう続けた。
「お二人とも、過去に問題を起こして左遷されてここに来て、なんだかんだで上手くやっていると聞きました。ですので、どうか左遷の先輩として、ご指導ご鞭撻をお願いします、です」
「……一言多いわね」
ネオンは思わず半目で突っ込みを入れた。
隣では、ルミナが苦笑いを浮かべながら「まあ、がんばろうね」と適当に手をヒラヒラと振っている。
ニコが前の第5詰所で何らかの「問題」を起こしてこちらへ異動になったらしい、という噂はネオンの耳にも入っていた。
ネオンの得意とするハッキングや諜報網を駆使すれば、本部のデータベースに侵入して、その問題の具体的な中身や被害状況まで詳細に分析することもできただろう。
だが、そこまでのリスクと積極性を見せてまで調べる気にはならなかった。
ネオンは腕を組みながら、今後の自分たちの方向性について内心で思考を巡らせる。
ルミナにはああ言ったが、実際のところ目の前の少女を、あえて部下として邪魔してやろうという悪意まではない。
だが、ビャッコが不在の中で、積極的に彼女を盛り上げて新体制を構築してやろうという気にもなれなかった。
あくまでフラットに、波風を立てず適当にやり過ごしたいというのが本音だ。
ちなみに隣のルミナにしても、できる限り助けてあげたいという人の良さは持ち合わせているものの、自分にできることは一隊員としての現場の頑張りと、せいぜい装備面での補助くらいだと割り切っている。
「それで、これからどう頑張るか考えているの?」
ネオンはため息まじりに問いかけた。
「一応あなたが小隊長なんだから、指示には従うし、助言を求められればするわ。でも、全体の方向性を考えて決めるのはあなたよ」
「大丈夫です。私の中のPDCAサイクルはすでに完璧にイメージできています」
そう言って、ニコは無表情ながらもどこか自信ありげに、あまり起伏の無い薄い胸を張ってみせた。
「私の敗因。それは治安維持における効率を極限まで追い求めすぎた結果、少々派手にしてしまったことでしょう」
「少々……ねえ」
ネオンとルミナは顔を見合わせ、「ふーん?」という風に胡乱げに首を捻った。
もしこの場に、前任の第5詰所で彼女が残した凄惨な爪痕を嫌というほど知らされているビャッコがいれば、すかさず「少々どころの騒ぎじゃないでしょ」とツッコミを入れているところだろう。
だが、幸か不幸かそのことを語る人間はこの場にはいない。
「なので、今日は方針はお姉さまの過去の勤務記録を辿りながら、周辺住民に配慮した穏健なパトロールを実施します、です」
ニコはそう言いながら、何もない空中にホログラムのディスプレイを展開させた。
空中に浮かび上がったいくつかのフォルダを細い指で滑らかにスワイプし、一枚のパトロール報告書のデータを引き抜いてみせる。
「この日のルートにしましょうか」
「どれどれ……」
ネオンが横からそのホログラム画面を覗き込む。
「ああ、この日はビャッコとルミナ、それにアイリスの3人が勤務の日ね」
「うん。私が詰所で装備のメンテ待機をしてて、ビャッコちゃんとアイリスちゃんは別々にパトロールに出てた日だっけ」
ルミナがポンと手を打って思い出す。
本来、治安維持部隊のパトロールは、隊員の安全確保のために最低でも二人一組のツーマンセルで行うことが規定で推奨されている。
だが、ご存じのとおりこの第3詰所は、戦力バランスで言うとビャッコとアイリスの二人が突出している。
そのため、ビャッコとアイリスの組み合わせで出動することになると、結果的に二人は別々のルートで単独パトロールに出ることが多くなっていた。
着任当初こそ、アイリスが鼻息を荒くして、ビャッコを
その光景は、治安を守るはずの人間が守られながら歩いているという、さぞ奇妙な光景だっただろう。
しかし、いざ現場でトラブルが起きると、大抵の場合はアイリスが搭乗するアイアン・メイデンが圧倒的な火力と質量で犯罪者を文字通り蹂躙し、ビャッコはその後ろで瓦礫の山が築かれるのをただ遠い目で眺めるだけ、というパターンに陥りがちだったのだ。
結果として、見かねたビャッコが「これじゃ私の出番がないから」とアイリスを優しく説得し、今の単独行動スタイルに落ち着いたのである。
なお、単独行動でのサボりを防止するため、ビャッコは自身のライフログから抽出した行動ログを、アイリスはアイアン・メイデンの操縦ログを、それぞれパトロールを完遂した証拠として治安維持部隊の評定用AIに提出している。
しかし、ニコが呼び出したのは提出用の簡略化された行動ログではなく、以前の事件の際に自身の電脳にコピーされた、ビャッコの生のライフログだった。
「圧縮データを解凍後、私のA.R.E.S.にインストールします、です」
そう言って淀みなく作業を進めるニコ。
それは、一挙手一投足が記録された日記以上の極秘の個人情報だったが、それを躊躇いなく覗き見るニコの横顔に、罪悪感の色は微塵もない。
データのインストールが終わったニコは、さっそく『お姉さまの完全トレース』によるパトロールを開始した。
だが、その道程は出発早々からどうにも奇妙なものだった。
「……GPSがずれてたりしてないわよね?」
「別にそんなことはないです。これは記録通りの行動です」
ニコはそう答えながら、道端のフェンスの上に飛び乗って細い金網の上を綱渡りのように歩いたり、ビルの間を渡してある頭上の太い配管に両手でぶら下がりながら猿渡りで移動したりと、およそ治安維持部隊のパトロールらしからぬ奇行を繰り返すのだった。
「なるほど。こうやってお姉さまは、日常のパトロールの中にも無駄なくアクロバティックな実践トレーニングを取り込んでいるのですね。非常にストイックで、学びになります、です」
配管からストンと軽やかに着地したニコが、感心したように頷く。
だが、後ろを歩いていたネオンとルミナの感想は、ニコの分析とは随分と異なっていた。
「トレーニングというか……それ、ただの落ち着きがない男子小学生の動きよね」
「いつもはしっかりして見えるけど、一人の時は意外と子供っぽいところあるんだね」
ネオンが呆れたようにツッコミを入れ、ルミナが目を細めて微笑む。
この世界に転生してからというもの、高性能なサイバネティクスやヒューマロットの肉体を得たことで、かつてのおじさん時代には考えられなかったほど身体が軽く、思い通りに動くようになったビャッコ。
もし彼女本人がこの場にいて二人の会話を聞いていたなら、「違うの。膝も腰も痛くないし、いくら動いても息が切れない喜びを噛み締めてるだけなの」と、赤面しながら必死に弁解していたことだろう。
そんな微笑ましい検証を続けながら進むと、ニコはパトロールのルート上にあるビル群の中でも、ひときわ背の高い雑居ビルを見上げ、その壁面に設置された赤錆だらけの非常用階段をカンカンと登り始めた。
「ちょっと、次はどこ行くのよ?」
下から見上げながらネオンが怪訝そうに声をかけると、ニコは階段の途中で振り返り、真顔で答えた。
「お姉さまのログによると、まず初めにこの屋上で30分ほど待機している記録が残っています。それに
「屋上になんの用かしら?」
そうして屋上へとたどり着いたニコは、フェンスの縁ギリギリの場所に立ち、眼下に広がる街並みを見下ろした。
吹き抜ける生温かい風が、彼女の白銀の髪を揺らす。
そして、ニコはぽつりと、感情の抜け落ちた声で呟いた。
「今日も風が騒がしい、です」
「急にどうしたの?」
突然のポエミーな発言に、後ろから追いついたルミナが目を細める。
「いえ、お姉さまがここで発していた音声ログの台詞をそのまま復唱すれば、治安維持のなんたるか、その神髄が理解できるかと思いまして」
「ビャッコは一人で来たのよね? それって聞いていいやつなの?」
嫌な予感がしてネオンが顔を引きつらせる中、ニコは小さく「ごほん」とわざとらしく咳払いをした。
「――『この街は、どうしようもなく不正とヘドロに塗れている。企業の放つ煌びやかなホログラムの光も、その足元で蠢くドブネズミたちの影までは隠しきれちゃいない』」
「ぶふっ!」
唐突に始まったハードボイルド小説のような独白に、ネオンがたまらず吹き出した。
しかし、ニコの無機質な朗読は止まらない。
「『私の撃った弾丸が、この腐った街の錆を少しでも落とせるなら……フッ、悪くない。だが、今日は少しばかり、血を流しすぎちまったようだな……』」
「あの、ニコちゃん? そろそろやめてあげようか? なんだか聞いてるこっちの精神がゴリゴリ削られていくから……」
両手で顔を覆いながら、ルミナがたまらずストップをかけた。
もしこの場にビャッコ本人がいれば、その愛らしい顔をトマトのように真っ赤にしてのけ反りながら「独りだとちょっと言ってみたくなる時あるでしょ!?」とか絶叫するか、即座にニコの首を締め上げて物理的にシャットダウンさせるような、黒歴史の公開処刑である。
一通り台詞を言い終わったところで、ニコは不思議そうに小首を傾げた。
「ふむ。この一連の行動の合理的な意味が、今の私にはちょっと分かりませんです。今日は持ってきていませんが、お姉さまの行動ログどおり、棒状のチョコレート菓子を口の端にくわえながら言えば、この意味が理解できたんでしょうか?」
いたたまれない気持ちになり、完全に返事に窮するネオンとルミナ。
ビャッコが、誰も見ていない(と本人は思っている)場所で、タバコ代わりにチョコ菓子をくわえてハードボイルドを気取っていたという、涙ぐましくも痛々しい事実。
「(なんというか……ビャッコちゃんって、お茶目なところあるんだね)」
「(JKの影響でも受けたのかしら……?)」
それぞれ心の中で、ビャッコの知られざる奇行に対する羞恥と愛おしさを噛み締める二人だった。
「あ、大変です」
そんな重苦しい空気を切り裂くように、ニコが平坦な声で声を上げた。
「今度はどうしたのよ」
「お姉さまはこの屋上から、《ラピスⅢ型》、--高性能義眼のズーム機能を使って地上の通りを監視していたようですが、私にはその機能は搭載されていません。ですので、今の私はただの高いところに登って一人で喋っていた人になっていたです」
「ああ、そう……」
ネオンはがっくりと肩を落とし、疲れたように眉間を揉んだ。
「しかも、問題はそれだけではありません」
ニコは眼下の路地裏を指差しながら、さらに淡々と告げた。
「ログによれば、この後お姉さまは地上でカツアゲの現場を発見し、右手でビルの壁面を削りながら直接現場に急行したようです。ですが、私にはお姉さまのような衝撃を吸収してくれる特注のサイバネアームも、強靭なナノスキンアーマーも搭載されていません。現在の私の機体スペックで同じ行動をとった場合、脚部を怪我する可能性が46%もあります」
「どっちみち、生身の私たちにはそんなルート絶対についていけないから、大人しく非常階段から降りましょうか……」
ルミナが苦笑いしながら諭すと、ニコは「了解しました、です」と素直に頷き、カンカンと階段を下り始めた。
再び地上に降り立ち、にぎやかな商店街へと足を踏み入れた3人。
やがてニコはパトロールの歩みを止め、ある古びた個人商店の前で立ち止まった。
「今度はどうしたの? なんか買い物?」
「いえ、そうではありません」
ネオンの問いかけに、ニコは商店のガラス戸の隅を指差した。
そこには、手書きのイラストが添えられた『治安維持部隊第3詰所・特別立ち寄り所』という、お手製のシールがペタッと貼られていたのだ。
「この店にはこのようなステッカーが貼られていますです。ログを見る限り、お姉さまはこのシールを確認するために、意図的にこの店を巡回ルートに組み込んでいると推測されます」
「なにこれ。こんなシール見たことないけど。どう見ても手作りっぽいね?」
ルミナが不思議そうにシールを撫でていると、店の奥からエプロン姿の年配の女性――お店のおばちゃんが顔を出した。
「あらあら、ビャッコちゃんいらっしゃい! 今日はお友達も一緒なのね」
愛想よく笑いかけてくるおばちゃんに対し、ニコは無表情のままきっぱりと訂正した。
「いえ、私は妹のニコです。お姉さまは、こちらのお店によく来られるのですか?」
「あら、妹さんだったのね。双子みたいにそっくりで驚いちゃったわ」
おばちゃんはニコの言葉に目を丸くした後、優しく微笑みながら話し始めた。
「ビャッコちゃんにはね、本当にお世話になってるのよ。少し前に、強盗に入られたことがあってね。その時、パトロール中のビャッコちゃんが助けてくれたの。その後、あの子が『抑止力になれば』って、そのシールを持ってきてくれてね」
おばちゃんは、ガラス戸に貼られた手作り感満載のシールをそっと撫でた。
「それからというもの、定期的に顔を出してくれるようになったの。おかげで強盗や万引きに入られる回数もすっかり減って、本当に助かってるのよ」
「へえ……」
おばちゃんの話を聞き、ネオンは感心したように息を吐いた。
「そんな活動をやってるなら、私たちにも言ってくれればいいのに」
「きっと、勝手にやってることだから言いにくかったんじゃない? あのシール、どう見ても手作りだし」
ルミナがくすくすと笑う。
治安維持部隊の冷酷なイメージとは裏腹に、泥臭く市民と交流し、不器用ながらも街の安全を守ろうとするビャッコの姿が目に浮かぶようだった。
その後、おばちゃんから「ニコちゃんもお仕事がんばってね」と手渡されたドーナツの袋を抱え、3人は商店を後にした。
「……この店のように、お姉さまが個別に巡回ルートに組み込んでいる店がいくつかログに残っていますが、こんな一つ一つに時間をかける必要性が、私にはまったく理解できません、です」
通りを歩きながら、ニコは不満げに呟いた。
彼女の片手には、途中の自販機で買った重油のように苦い安物の合成コーヒー。
それを一口含んで盛大に眉を顰めると、もう片方の手に持っていた、青い生地にピンク色の毒々しいチョコレートがたっぷりとかかったドーナツを無表情で口に放り込んだ。
「まあ、ここら辺の草の根の活動は、私たちも今日初めて知ったんだけどね」
ネオンは、もごもごと口を動かす小さな上司を見下ろしながら肩をすくめる。
「まあ、こうやって市民を安心させることも大事な業務じゃないかしら?」
「私たちの業務は犯罪者の確保です。個別の被害者の補償や心理的負担の軽減は幸福増進局などの専門機関に任せるべきでは?」
曖昧さの一切ない冷徹な意見だった。
それは存在理由が明確なヒューマロットなら当然の意見ではあるが。
「それも一理あるけどさ。でも、ビャッコちゃんは目の前で困っている人は全力で助けようとするし、私たちはそんなビャッコちゃんが大好きなんだよね」
ルミナが、「もう少し自分を大切にしてほしいけどね」と言いながらニコの頭を優しくぽんぽんと撫でた。
ニコは無表情ながらも少し考えるように首を傾げている。
そん様子のニコを見つめながら、ネオンとルミナは「やれやれ」といった温かい視線を交わした。
「……とりあえず、現状では判断を保留とし、引き続きお姉さまの行動トレースを続けてみます、です」
「まあ、それでいいんじゃない? やってみないと分からないこともあるわ」
ネオンが笑って促すと、ニコは頷きながら言った。
「さて。この直後のログですが、お姉さまは『路地裏で見つけた野良猫の後ろを追いかけながら、30分ほど当てもなく徘徊していた』と記録されています。……猫の用意はどうしましょうか? 近くのペットショップから徴用してきますか?」
「……あの子、一人の時ほんとになにやってるのかしら」
そう言ってネオンが苦笑したその時だった。
ピロロロロロッ!!
ネオンの腰に提げた情報端末から、けたたましいサイレン音が鳴り響いた。
本部からの緊急の出動要請である。
表示されたアラートの赤光が、3人の顔を緊迫した色に染め上げた。
「トレースは一時中止です。皆さん、行くです」
ニコの口から振り返りざまに放たれた、短くも絶対的な命令。
ここから先は、奇行のトレースでも、心温まるご近所パトロールでもない。
治安維持部隊の、暴力を以て暴力を制圧する、本物のパトロールの始まりだった。