SF世界にTS転生した俺は治安維持部隊を全力で社畜する!   作:宇宙のモナカ

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息抜き回再び


第53話 サッカーボールと初恋の放物線(前編)

「今日はいい天気だ」

 

ポツリとこぼれた俺の声は、静かな詰所に吸い込まれていった。

俺は窓から差し込む陽光に目を細め、小さく伸びをする。

 

無機質なコンクリートと冷たい鉄骨で囲まれた第3詰所。

普段なら底冷えするような寒々しい空間も、今日ばかりは柔らかな光に満たされていて、ひどく居心地がいい。

空気中を舞う細かな埃すら、光を反射してキラキラと輝いて見えた。

 

真っ白な天井と消毒液の匂いしかしない病院のベッドから解放されたばかりの身としては、こうして不自由なく体を動かして、日の光を楽しめるだけで自然とウキウキとした気分になってくる。

 

(やっぱり、健康って素晴らしいな……)

 

五体満足で生きていられる喜び。

大きく息を吸い込むと、肺の奥まで澄んだ空気が満ちていく感覚があった。

 

「私はちょっと、パトロールでも行ってこようかな」

 

立ち上がり、軽く肩を回した俺の声に反応して、デスクに突っ伏していたネオンがガタッと立ち上がった。

 

「私も行くわ。こんな息が詰まる所にいたら――」

「あ、ネオンちゃんストーップ」

 

意気揚々と歩き出そうとしたネオンの背中を、ルミナの無慈悲な声が引き留める。

 

「今月末締めの月次報告書、まだ終わってないでしょ? 今月はネオンちゃんの担当なんだから、ちゃんと終わらせてからね」

「うっ……」

 

図星を突かれたネオンは、親の仇でも見るような恨めしそうな顔でルミナを睨みつけた。

 

「……私も手伝おうか?」

 

見かねて声をかける俺に、ネオンはぷいっとそっぽを向く。

 

「いいわよ。自分の仕事くらい、自分で終わらせるわ」

 

なけなしのプライドでそう言い放ち、ドカッと椅子に座り直したネオンだったが、数秒後にはモニターに向かってギリギリと歯ぎしりを始めた。

 

「あーもうっ! なんなのよこれ、めんどくさい……っ!」

「どうしたの?」

「この電子押印よ! どうしてわざわざ、ハンコの角度を『サクラデバイスコーポレーション』の社名の方向に向けて、少し傾けて押さなきゃいけないのよ! 何回やってもエラー弾き出されるじゃない!」

 

バンバンとデスクを叩くネオンに、ルミナが肩をすくめながら解説を入れる。

 

「あー、それね。なんでも、親会社である企業への忠誠を示すために、押印の角度を傾けて『お辞儀』させてるんだってさ。昔からの風習らしいよ」

「誰が考えたのよこんなふざけた風習! これを考えた昔の人間、タイムマシンに乗って殴りに行きたいわ!」

 

親会社の理不尽なルールにブチギレるネオン。

それを聞きながら、俺はそっと目を逸らした。

 

(……ワンチャン、俺のいた時代なら止められたかもしれないな。悪しき風習をちゃんと撲滅できなくて、マジで申し訳ない……)

 

前世でさんざんネタにされてきた「ハンコのお辞儀」という謎マナーが、まさかこんな未来のディストピア世界にまで電子化されて受け継がれているとは。

なんとも言えない罪悪感といたたまれなさを抱えつつ、俺はそそくさとパトロールへ出かけるのだった。

 

 

詰所を出ると、空を遮るようにそびえ立つ摩天楼の隙間から、人工的ではない本物の陽光が降り注いでいた。

 

頭上を飛び交うエアカーの低い駆動音と、ビルの壁面で明滅する極彩色のホログラム広告。ディストピア特有の、どこか薄ら寒いほどに整備された無機質な街並みだが、今日みたいに天気がいいと、ただ歩いているだけでも随分と気分が晴れる。

 

(平和なもんだな……)

 

俺はA.R.E.S.の索敵モードをオフ気味にして、のんびりとパトロールの歩みを進めていた。

 

時折、インカムに軽微な諍いやトラブルの通信が入るが、今の俺にとっては造作もない業務だ。

路地裏で胸倉を掴み合っているガラの悪い男たちを発見し、俺はあえて足音を立てて近づいた。

 

「何か困りごと?」

 

治安維持部隊の制服に身を包んだ俺が声をかけると、男たちは一瞬だけ面倒くさそうにこちらを振り向いた。

配属された当初なら、間違いなく「あぁ? ヒューマロットの子供はすっこんでろ」と鼻で笑われ、胸倉を掴みかかられていた場面だ。

実際、この華奢な少女のガワのせいで、舐められることは数え切れないほどあった。

 

だが、今は違う。

男たちは俺の銀色の髪と、治安維持部隊の制服を一瞥するなり、顔面を蒼白に引きつらせた。

 

「ひぃっ……し、白い死神……!」

「す、すんません! 何でもねえです!」

 

蜘蛛の子を散らすように、大男たちが一目散に逃げていく。

俺は小さくため息をつきながら、見えなくなる背中を見送った。

 

(白い死神、ねえ……)

 

なんとも中二病心をくすぐる……いや、前世のおっさん的感性からすると少し気恥ずかしい二つ名だが、おかげで無駄な労力を使わずに済む。

有名人になったというのも悪い気はしない。

 

だが、良いことばかりではない。

 

『――こちら本部。第3詰所管轄、B-4ブロックにて騒ぎ。SFTS1005、至急現場に向かってくれ』

「……了解しました」

 

インカムからの通信に答え、現場へ向かう足取りは、先ほどまでの軽快さが嘘のように重かった。

最近、こういう「俺を名指しした通報」がちょくちょく入るのだ。

 

原因はわかっている。少し前、アイリスが偽ノアとしてステージに立ち、俺も巻き込まれる形でライブをやったあの一件だ。

あの騒動以降、一部の狂信的な層から、俺は変なベクトルで注目を集めるようになってしまった。

 

指定された現場の路地に足を踏み入れると、案の定、そこには事件も事故も起きていなかった。

代わりに待ち構えていたのは、白く発光する特注の法被(はっぴ)を着込み、俺の名前がデカデカと点滅するホログラム団扇を両手で激しく振るう、数人の男たちだった。

 

「キタキタキタァ!! ビャッコちゃーん! 今日もパトロールお疲れ様でーす!!」

「こっち向いて! 威嚇するような冷たい目線くださぁい!!」

 

パシャパシャと無遠慮に焚かれる撮影用のフラッシュ。

俺は眉間を揉みほぐしながら、Uターンして帰りたくなる衝動を必死に抑え込んだ。

 

(……厄介すぎる)

 

最初の頃は、さすがに公務の邪魔だと思って実力行使に出たこともある。

あまりにも顔の近くでカメラを回してくる男を、公務執行妨害で地面に押さえつけ、その腕を背中に回して締め上げたのだ。

 

だが、それが最悪の悪手だった。

組み伏せられた男は、痛がるどころか恍惚とした表情を浮かべ、荒い鼻息と共に叫んだのだ。

 

『こ、これが裏掲示板で話題の、制圧してほしい女子ランキング1位の技……! あぁっ、ビャッコちゃんのちっちゃいお手々が、拙者の腕にくいこむぅ……っ!! ご褒美たすかるぅぅ!!』

 

(…………ッ!!)

 

思い出すだけで、全身の鳥肌が総毛立つ。

おっさんの魂が入った俺のちっちゃい手で喜ぶな。

壮絶に気持ち悪くて、あの時は思わず拘束を解いて本気でドン引きしてしまった。

 

それ以来、俺はこいつらに対して「完全なる無視(スルー)」を決め込んでいる。

フラッシュを浴びながらも、俺は一切の表情を崩さず、クレーム対応中のコールセンター職員のような虚無の心境でその場を通り過ぎた。

 

「こちら、SFTS1005。現場に急行するも、なにも事件無し。いたずらみたいです」

『――こちら本部、了解した』

 

本当はわかっているだろうと本部にクレームをつけたくもなるが、呼ばれれば行かなくてはいかないのが宮仕えの悲しいところ。

 

(これも仕事だ……。給料のため、給料のため……)

 

心の中で念仏のように唱えながら、俺は足早にその場を後にするのだった。

 

 

 

厄介な連中をやり過ごし、しばらく歩いていると、ぽかぽかとした陽気のせいで急激に眠気が襲ってきた。

 

(……いかん、気が緩んでるな)

 

俺は眠気覚ましに、路地裏のディスペンサーで温かい合成カフェオレを買うと、近くの公園で少し休憩することにした。

手の中でじんわりと温かい紙コップの感触が心地いい。

 

(外回りの途中で、こうやって公園のベンチで一息つくの……好きだったなあ)

 

前世の記憶――次のアポイントまでのわずかな時間に缶コーヒーを飲みながら空を眺めていた、あのささやかなサボり時間を思い出し、俺は一人で懐かしさに目を細めた。

 

公園の風景は、未来といえども根本的な役割はそう変わっていない。

違うところといえば、中央にはジャングルジムの成れの果てのような、用途が全くわからない銀色の金属棒が幾何学的に立っているくらいか。

あと、その周囲では、作業着を着たヒューマロットの労働者たちが、無言で落ち葉を集め、寸分の狂いもなくきれいに芝を刈り込んでいる姿も見える。

お陰で、なんてことのない公園もとてもきれいに保たれているようだった。

 

そんな中、公園の広場の方から子供たちのキャアキャアと甲高い声が聞こえてきた。

見やれば、十人ほどの子供たちが集まって遊んでいる。だが、その遊び方はひどく奇妙だった。

 

ボールなどの遊具を持っているわけではない。

ただ何もない空間に向かってアクロバティックな蹴りを放ったり、見えない何かを避けるように大袈裟に飛び退いたり、あるいは数人で変なポーズを決めて歓声を上げているのだ。

よく見ると、半数の子供は目元にゴーグルのような眼鏡型デバイスを装着している。

 

「なにしてるんだろう? ヒーローごっこ?」

 

思わず呟いた俺の疑問に、アレスが即座に答えた。

 

【あれは電脳に接続して、仮想空間のゲームをしているようです。生体デバイスを持たない、つまり電脳化していない子は、あのように眼鏡型デバイスを通して視覚情報を共有し、一緒に遊んでいますね】

「へえ、なるほどな」

 

俺が子供だった頃は、家でテレビゲームばかりしていると、親から「ゲームばっかりしてないで外に出て遊びなさい!」と怒られたものだ。

それが今や、外で走り回りながら、体全体を使ってゲームの世界に入れるのだ。技術の進歩というのはすさまじい。素直に楽しそうだと感心してしまう。

 

ちょっと気になった俺は、A.R.E.S.を介して彼らが共有しているローカルの電脳空間に、視覚情報だけをこっそり繋いでみた。

 

途端に、何もない広場の風景が極彩色のエフェクトで彩られた。

ある男の子は忍者のアバターを纏い、巨大な光る手裏剣を投げて遊んでいる。

ある子は軍服姿でゴツい銃の撃ち合いをし、また別の子たちはフリフリのアイドルの衣装を着て、空中に浮かぶ音符のエフェクトを割りながら踊っていた。

 

(ははっ、本当にヒーローごっこみたいなもんだな。ん……?)

 

微笑ましく眺めていた俺の視線が、ふと、踊っている女の子二人の姿でピタリと止まった。

 

一人は、真っ白なフリルのドレス。もう一人は、黒を基調としたシックなドレス。

……見覚えがありすぎる。というか、少し前にあの熱狂のドームで、俺とアイリス(偽ノア)が着ていた衣装そのものじゃないか。

 

『いっくよー! ノアちゃんみたいに、きゅるるんっ、て!』

『うん! ビャッコお姉さまも、もっと笑って!』

 

無邪気に自分たちの真似をして踊る幼女たちを直視させられ、俺の顔からサァッと血の気が引き、直後にカァァッと猛烈な熱が集まってきた。

 

(う、うわぁぁぁぁ……っ!!)

 

俺はたまらず電脳の接続を叩き切った。

耳の裏まで真っ赤になっているのを感じながら、誤魔化すようにポリポリと頬を掻く。

 

(……子供の遊びにまで浸透してるとか、どうなってんだあのライブの影響力……。恥死するかと思った……)

 

前世の黒歴史ノートを朗読されたようなダメージを負いつつ、俺はぬるくなったカフェオレを一気に飲み干した。

しばらくベンチに座って平和な(そして少し気まずい)光景を眺めていたが、やがて空になったコップをゴミ箱に放り投げた。

 

「さて、行くか」

 

ベンチから立ち上がり、公園を後にしようとしたその時だった。

広場から少し離れた木陰の隅で、規則的な『ダム、ダム』という鈍い音が響いているのに気がついた。

 

視線を向けると、そこにいたのは一人の男の子だった。

肌がよく日に焼けた、小学生くらいのやんちゃそうな見た目。だが、着ている服はどこか古風で、一人で壁に向かって使い古されたサッカーボールを蹴るその表情は、ひどく寂しそうだった。

 

(……なんだろう)

 

気になった俺は、パトロールの歩みを止めて彼のもとへ歩み寄った。

 

「ねえ、君」

 

声をかけると、ビクッと肩を揺らした少年がこちらを振り返った。

その少年は俺の銀髪とヒューマロット特有のエルフ耳を見るなり、訝しげに眉をひそめる。

 

「……子供のヒューマロット? なんだよ」

「一人でなにしてるの?」

「っ、一人で悪いかよ!」

 

警戒心を露わにして牙を剥く少年に、俺は少し驚いて目をパチクリとさせた。

 

「別に、悪いなんて言ってないよ。あっちで他の子たちが楽しそうに遊んでるのに、君だけぽつんと一人だったから気になっただけ」

「うっ……」

 

痛いところを突かれたのか、少年はバツが悪そうに視線を逸らす。

 

「私は治安維持部隊の小隊長をしているんだ。もし何か困ったことがあったら、相談に乗るよ?」

 

努めて優しく声をかけると、少年は治安維持部隊という肩書きに少し驚いたようだった。

そして、持っていたボールをギュッと抱え込み、渋々といった様子で口を開いた。

 

「……遊べないんだよ。俺、電脳に繋ぐやつ、持ってないから」

 

話を聞いてみると、どうやら彼の家庭環境に原因があるらしかった。

 

「電脳化してなくても、あの子たちが着けてるような眼鏡型のデバイスがあれば一緒に遊べるんじゃないの?」

「うちの親は『純生主義(ピュアリスト)』なんだよ。体に機械を入れるのはもちろん、電脳デバイスを使うのも反対してて、子供は自然の中で泥んこになって遊ぶべきって言うんだ。……でも、今時そんなことして遊んでる子なんて、誰もいないし」

 

ボールを見つめる少年の横顔に、俺は思わず前世の記憶を重ねてしまった。

 

(ああ……昔で言うところの、親の教育方針のせいで『ゲーム機を買ってもらえなくて、放課後の話題に入れない子』か……)

 

いつの時代も、大人の理想のせいで割を食うのは子供だ。

一人だけアナログなボールを持て余している彼の姿が、どうにも不憫に思えて仕方なかった。

 

「……じゃあ、私と少し遊んでくれない?」

「は? 同情なんかいらねーよ」

 

ツンとそっぽを向く少年の顔を覗き込むように、俺は少しだけ身を屈めた。

 

「同情じゃないよ。私が、久しぶりに少しボール遊びしたくなっただけ。……だめ?」

 

小首をかしげ、下から覗き込むような上目遣いで尋ねる。

すると、少年の日に焼けた顔が一瞬で林檎のように真っ赤に染まった。

 

「し、しかたねーな! 付き合ってやるよ!」

「ふふ、ありがとう。私はSFTS1005。だけど、『ビャッコ』って呼んでほしい」

「ビャッコ? 名前があるなんて、変なヒューマロットだな。俺はルイだ。……てかお前、本当に治安維持部隊の小隊長なのかよ。俺と同じくらいの歳に見えるけど、いくつなんだ?」

「君は失礼だね、私はこう見えても年上だよ」

「は? 全然見えねーよ。だから、いくつなんだよ」

「…………5歳。でも、精神年齢はアラサーだと思ってほしい」

「わけわかんねえ」

 

呆れたように笑うルイ。

俺もつられて内心苦笑しながら、ボールを受け取った。

 

【マスター、サッカーに関するアクションデータをインストールしました。A.R.E.S.の演算能力をフル活用し、この子に格の違いを見せつけてやりましょう】

(見せないよ! 子供と遊ぶんだから、大人気ないことしないで。A.R.E.S.は怪我しないようにギリギリまで動作しないで監視だけしておいて)

【…………了解しました】

 

アレスがどこか不服そうに沈黙するのを感じながら、俺はボールを足元に置いた。

まずはリフティングだ。前世でも体育の授業くらいでしかやったことがないが、今の俺の身体能力なら余裕だろう。

 

「ほっ、と!」

 

つま先でボールを跳ね上げる。だが、加減がわからずボールは俺の頭上はるか高くへと飛んでいった。

落ちてくるボールに合わせ、俺は任務で培った超絶的な瞬発力で落下地点へ高速移動し、再びつま先でボールを天高く蹴り上げる。

 

ドンッ! ドンッ! と、天高く舞い上がったボールを的確に捉える力技のリフティング(?)が繰り返される。

 

「くっ……! 15回か……!」

 

息一つ乱さずにボールをキャッチした俺に、ルイは口をぽかんと開けていた。

 

「……ある意味すげーな、それ。でも、サッカーはそうじゃねーよ。こうやるんだ」

 

ルイは呆れながらボールを受け取ると、トン、トン、トン、とリズミカルで柔らかなタッチのリフティングを披露してくれた。

膝や太もも、さらには頭まで使って、ボールがまるで体の一部のように吸い付いている。

 

「おおっ、すごい。 私にもそのコツ、教えてほしい」

「へへっ、しょうがねーな。足首を固定して、ボールの中心を下から叩くんだよ」

 

得意げに笑うルイに、俺は素直に感心しながら教えを乞うた。

完璧な美少女の姿をした治安維持部隊の小隊長が、不器用にボールを追いかけ、自分に教わっている。

その事実が、孤独だったルイの心にどれほどの自尊心と「特別な感情」を植え付けているかなど、俺は知る由もなかった。

 

やがて、ひとしきり汗を流した頃。

 

『――こちら本部。第3詰所管轄内にてトラブル発生。SFTS1005、至急向かってくれ』

 

インカムからの冷たい出動要請が、楽しい時間の終わりを告げた。

 

「……ごめんね、ルイ。仕事の時間みたいだ」

「そっか……。治安維持部隊だもん、な」

 

途端にまた寂しそうな顔に戻ってしまった彼を見て、俺はボールを彼の胸にポンと押し当てた。

 

「また遊ぼう。パトロールの合間に、ここに来るよ」

「……! 本当か!?」

「ああ、約束する。今度は、もうちょっとリフティングできるようになっておくからさ」

 

俺が笑って手を振ると、ルイはボールを抱きしめたまま、顔を真っ赤にして何度も力強く頷いたのだった。

 

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