オノレが最初に取り組んだのは、この生えたウロコ。そして、芽生えた感覚の正体を探ることだった。
僕がこれまでの経緯を話せば、彼は指先で顎をなで何度も頷いた。
「なるほど。魔物の攻撃に対して、予兆を感じとる能力……ね。面白いじゃないか」
見せてみろと言うので、日課である魔物狩りに連れ出し、実戦で披露することにしたのだが――。
「ほら見ろ! 今、攻撃される寸前にウロコが疼いたぞ!」
「……うーん。確かに巧みに
「なんだよ」
「傍から見てる分には、普通に君が運動神経を活かして避けてるだけに見えるんだよね」
僕は、ゴブリンや
「あらよっとっ! 背後からの奇襲だってこの通りだ。これならどうだっ!」
僕はムキになって、襲いかかるゴブリンにわざと隙を見せてやったのだが。
「それだって、君なら元々できたんじゃないか? 王都の剣術演習でも、アスタは逃げ回るのだけは一級品だったし」
などと、オノレは欠伸混じりに言う。
「む、むむっ……! なんてことを言うんだ!」
でも、確かに……これくらいなら、変異の前でも必死になれば出来たかもしれないな。
紙一重でひらり。すかさずゴブリンの首を撥ねれば、「ギヤッ」と醜い断末魔。
いつもより格段に魔物が片付いていくというのに、証明できないもどかしさ。あー、腹が立つっ!
「いいか、これは特別な感覚なんだぞ! 特に、魔物が強力な異能を使おうとすると、こう……ウロコが焼けるように熱くなってだな!」
「そっかー。でも、それも君の主観だよね」
「……確かに。……これも、主観、だな」
ダメだ。客観的に証明する方法がない。
いや、待て。アレがあるじゃないか!
「
「へぇ、すごいすごい。で、今ここで出せる?」
「……出し方が、わからない」
踏ん張っても、転げまわっても、唸っても出ない。ウロコをくすぐってみても、何も起きない。ううっ、なぜだっ!
するとオノレは、哀れみすら含んだ目で「なるほど」と呟いた。
「仮に、君の妄想や幻覚ではないとして」
「妄想なんかではないぞ! 刃を出したのは、領民も見てるんだ!」
「わかった、わかったよ。……現状の仮説としては、『磁気感覚』に近い異能だろうね」
「磁気? 僕が磁石にでもなったっていうのか。一応言うけどな、このウロコは、磁石にくっつかないんだぞ!」
変なことを言うやつだ。人間が磁石になるわけがない。
「そうヘンな話でもないさ。渡り鳥やサケを知ってるだろ」
「ああ、それがどうした」
「彼らは数千キロの旅をする際、地磁気を頼りに方角を知るという説がある。つまり、脳内に微細な磁性体を持っているんだよ」
「……確かに、渡り鳥やサケは磁石にくっつかないな」
相変わらず、変なことを知っている男だ。そんなこと、大学の講義で習った記憶はないぞ。
「魔物の体内を巡る、動的な魔素の反応や流れを読む。そんな磁気感覚に似たものが、ウロコを通じて芽生えたとすれば、一応、説明はつくよ」
「わかりやすく言え」
「そうだな。……魔物が殺意を込め、魔素を元気にすると、ウロコが反応する。みたいな?」
「……ならば、透明な刃は?」
「んー。大気中の魔素を、刃状に収束させたんじゃないかな。見てないから知らんけど」
思い返してみる。
あの時は、ゴブリンの血や、
「おおっ! それなら腑に落ちるぞ!」
「納得した? あ、でも。一つだけ、すごくマズいことに気づいちゃったんだけど」
「なんだよ、不吉な言い方をするな」
「
そうだ。あの怨念に満ちた殺意。今思い出しても背筋が凍る。
思えば、一目見た瞬間から、真っ先に僕を殺しに来ていた気さえするぞ。
「たぶん、それ。君のウロコのせいかも」
「なんでだよ?!」
「魔物からしてみたら、魔素は活動エネルギー源だから。……もう、君って最高級の餌か
――悲報。
便利な回避能力かと思ったら、魔物から優先的に狙われる『超ヘイト集め体質』になった説、浮上。
「僕、これから一生、魔物に命を狙われるのかっ!?」
「さすが、アスタ。モテモテだね?」
魔物にモテモテ男爵。……嬉しくねえよっ!
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