魔導書あげるので見逃してください……   作:倭猛らない

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息抜き小説です。


葬送されそうな魔族の命乞い

 

 

 小屋の壁が吹き飛ぶ。近年人類が使い始めた一般攻撃魔法とやらで、数百年住まいとした我が家が崩れていく。……これは、『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』か? いや、かなり似ているが違う。昔『遠くを見通す魔法(ファルアーゲ)』で腐敗の賢老の戦いを見た事があるけど、もっとシンプルな構造の魔法だったはず。

 

 ……となると。

 

 人類の天敵とも言える魔法を、逆に自分達の魔法体系に組み込んで、尚且つ自分達が使い易いように改良したのか。恐ろしいやら凄まじいやら。

 

 やはり、人の進化の本質はトライアンドエラーということだな。PDCAサイクルとも言う。

 

 

魔法を相手に跳ね返す魔法(マホカンタ)

 

 

 魔法戦において最も信頼する魔法を発動し、身を守る。直撃コースで突っ込んできたデカイ白ビームが、そのまま反射されて飛んで行った。

 

 私は人を喰らう忌まわしき魔族。駆除される事に文句はないが、二度とは死にたくないのでね。全力で逃げさせて貰うとしよう。

 

 デコイとして魔法で分身を出しつつ、愛用の魔導具『不思議で便利な大風呂敷(ファンファンクロス)』を取り出して、地下室へ駆け込む。とにかく、今まで書いた魔導書を回収しないとトンズラできない。大半が何に使うんだって感じの魔法だが、中にはヤバいのもある。決して漏出させてはならない。

 特に『核爆発を起こす魔法(ヴァルジオーグ)』。大陸が汚染されかねない。……あった、詰め詰め。

 

 上から耳を劈く程の雷鳴が聞こえた直後、分身の反応が消えた。魔力探知から察するに、単なる「雷を落とす魔法」ではなさそうだが……まさか、『破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)』じゃないだろうな。古代の大魔法を使うとなると、かなりの手練だ。

 

 困った。きっと『高速で移動する魔法(ジルヴェーア)』じゃ逃げきれない。『行ったことのある街へ直行する魔法(ルーラ)』は発動に時間がかかるし、そもそも地下じゃ使えない。頭ぶつける。

 

 

 どうしたものか。そもそも、数百年分の魔法研究、開発の成果である魔導書は軽く千冊はある。『不思議で便利な大風呂敷(ファンファンクロス)』でも包める数じゃない。こうなるんなら、『たくさんの本を持ち運ぶ魔法』か『手軽に引越しできる魔法』を作っておくべきだった。失敗失敗。生き残れたら速攻着手しよう。

 

 包めない分は捨てて行くしかないか。もったいない、本当にもったいない。

 

 ……上からの破壊音が止んだ。そろそろ(こっち)に降りてくる。私の穏やかで平穏な生活の為には、人を殺すなんて事はあっちゃならない。殺さず、『行ったことのある街へ直行する魔法(ルーラ)』発動までの時間を稼いで逃げよう。

 

 

「…………ん?」

 

 

 凄い魔力反応……。

 

 マズイ、地下室ごと私を吹き飛ばすつもりか。なんという脳筋……まぁ魔族の狩り方としては花丸か。素直に死の危機です。うーん、何かこの状況で使える魔法あったか……。ちょっと『不思議で便利な大風呂敷(ファンファンクロス)』の中を探してみよう

 

 ……あ、『魔法を思い出す魔法(メルジナーン)』の魔導書。忘れっぽいから作ったはいいけど、この魔法そのものを忘れるんじゃ本末転倒だな全く。

 

よし、ふむふむ…………あぁこんなのあったな。コレ使お────

 

 

 

 

 

 

 魔王討伐から36年

 

 ツインテールをしたエルフが空中で佇んでいる。魔王を討伐した勇者一行の魔法使い、フリーレンだ。趣味の魔法収集の為、中央諸国を巡っていた彼女は近隣の村でまことしやかに囁かれる噂を聞きつけた。

 

 曰く、「魔物が全くいない山がある」という。

 

 魔物とは大陸全土、普遍的に存在する怪物だ。危険度の差はあれど、基本的に遭遇しない事はない。例外を除いては。

 魔物は、力ある魔族の縄張りから逃げ出す。その事を知っていたフリーレンは、入念な調査と検証を始めた。

 

 フリーレンの調査では、近隣の行方不明者はほとんどなかった。1年に数人程度。近くに魔族が棲みついていれば、この程度では収まらない。

 

 年に数人程度の捕食で抑えているのか、はたまた人を襲っていないのか。

 

 ────ありえない。

 

 人を襲わない魔族など存在しない。人間以外も食べれる癖に、人だけを捕食する獣。獣は本能に勝てず、魔族の本能は人を殺すこと。

 

 師であるフランメからそう教わり、自身も経験としてよくそれを理解しているフリーレンは、年に数人程度の捕食で自らを抑えている小賢しい魔族だと判断し、討伐を決意した。

 

 ────おかしい。

 

 発見した小屋周辺には幾つもの花壇があった。種類、色によって分けられ、管理されたそれは、フリーレンですら感嘆の息を漏らす程だった。その他にも井戸があり、畑があり、まるで人が住んでいるかのような様相だった。

 

 魔族がこんなことをするだろうか? いや、しない。

 さらに、探知した小屋の中の魔力反応はとても穏やかで、フリーレンの知る魔族のそれとはかけ離れていた。

 

 もしや、本当にこの山には珍しく魔物が一匹もいないだけなのか。この小屋には自給自足で生活する人間がひとり住んでいるだけで、魔族など棲んでいないのか。全て、自分の見当違いだったのか。

 

 そう思って、首を傾げるフリーレン。

 

 すると、小屋の扉からガチャリと鍵を開ける音がした。

 フリーレンは思った。人であろうと魔族であろうと、姿を一目見てから判断しても遅くない。状況的には8割人間だけど、一応確認を……。

 

 

「あ、やばっ」

 

 

 扉から半身姿を表したのは、山羊のようにねじ曲がる大きな角を生やした青年。フリーレンに気付いていなかったのか、姿を確認するや否や即座に扉を閉める。

 

 ────……そうか。そうだったね、フランメ。

 

 この綺麗な花壇も、よく手入れされた小屋も、瑞々しい野菜の生る畑も。全ては訪れた人間の警戒心を緩めるため。

 

 それを理解したフリーレンは即座に魔法を放ち、駆除を開始した。

 囮として小屋の残骸から飛び出してきた分身を即座に始末し、恐らく地下室に逃げ込んだ魔族を葬るべく、久しく使っていない大魔法を放った。

 

 

「…………まだ死んでない」

 

 

 探知は未だ、魔族の生存を報せる。瀕死ではあるだろうが、生きている事に違いはない。

 再び大魔法の発動を決めたフリーレンの脳内に、唐突に大声が響く。

 

 

『魔導書差し上げますので見逃してください!!!』

 

 

 フリーレンは構わず魔法をブチ込んだ。

 

 





オリ主……魔力探知ガバ野郎。楽しく魔法作って生きてた。死にそう。

フリーレン……魔族絶対殺すウーマン。

オリジナル魔法にフリガナを振るべきか?

  • フリガナを振れ
  • 振らなくても良い
  • 戦闘に使われる魔法だけ振れ
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