『
周囲の地面や壁を硬いまま液状化させ、泳ぐ事を可能にする。が、魔族が遠い昔に作って試しに使ったっきり、忘れ去られていた魔法だ。
右腕を焦がされたが、辛うじて生存した魔族は襲撃者に『
右腕が今度こそ吹き飛ばされながらも、魔族はなんとかこの魔法を使用し地面の中へ逃れた。魔導具で包んだ数多の魔導書と共に。
「(この魔導書達が、私を救う鍵だな……)」
『
『私は生まれてこの方、人を襲った事も殺したこともない。私はただ長く生きた、魔法の開発と研究が趣味の人外だ』
「信じられない。お前達は息を吐くように嘘をつき、裏切るだろう」
『
何より、彼女は葬送のフリーレン。最も多くの魔族を殺した魔法使いのひとり。彼女に狙われ続けることは、今後無視できないリスクとなりうる。
『流石、魔族の扱いを心得ている。勿論無償でとは言わない。先程も言った通り、魔導書を差し出そう。殺さないと約束してくれるなら、という前提になるが』
「魔族の魔法に興味はないよ」
だろうな、と魔族は思う。魔族の使う魔法は、人智を超えた意味不明なもの。複雑な術式、意味の分からない構築。有り体に言えば人の手に余る。人でも扱える程綺麗でシンプルな構造をしていた『
彼女が興味を示しそうな魔導書を『
『私が今手に持っている魔導書に書かれている魔法は、『
「……なに?」
『私は魔族の中でも変わり者でね。沢山の魔法を作るのが好きなんだ』
困惑の声。やはり彼女はこういった魔法が好みだ。そう確信した魔族は、この期を逃すまいと舌ベラを回す。
『小屋の外に畑があっただろう。あれは『
『私は今、地面の中に潜っている。『
『殺さないと誓ってくれるなら、私は今から魔導書を持って地上へ出るつもりだ。一冊で足りないなら、五冊でも十冊でも差し上げよう。殺さないで欲しい。本当に』
あまりにも必死な命乞い。魔族を殺す際、何度も聞いたもの。が、フリーレンの中で何かが引っかかる。…………話程度なら、聞いてやってもいいか。と、彼女にしては珍しい結論に至る。
もっとも、この条件を呑み込むなら。の話。
「お前は今、魔法を反射か跳ね返すかする魔法を使っているだろう。それを解除するなら、殺さない」
『分かった。今から地上へ上がる』
即答。思わず面食らうフリーレンだが、そうしてる内に、地面が泥のように変質し、それを掻き分けて魔族が姿を現す。
「!」
瞬間、魔族の頬を掠めて一般攻撃魔法が飛来し、後方へ着弾した。血と共に冷や汗を流す魔族に、フリーレンが話しかける。
「驚いた。本当に解いて出てくるなんて」
「私は他の同種とは違う。……が、流石に肝が冷えた。勘弁して欲しい」
「話は聞いてあげるけど、怪しい動きをしたらその時点で殺す」
「それでいい。ではまずこの魔導書を渡そう。中身はさっき言った、『
地面に魔導書を置き、フリーレンへ渡す。
「こっちは『
地面に魔導書を置き、フリーレンへ渡す。
「これは『
地面に魔導書置き、フリーレンへ渡す。
「この魔導書は『
「変なのばっかりだね。本当に自分で作ったの?」
「あぁ、趣味なんだ。とにかく作って作って作りまくった」
最初に渡された『
「その風呂敷も見せて」
「見逃してくれるなら、もちろん」
────やっぱり引っかかる。
殺さないでと言いながら、何故姿を現すのか。命が惜しいなら『
「ついでに私の身の上話も聞いて欲しい」
「好きにすればいい。私にとっては鳥の囀りと特に変わらないからね」
「では勝手に。私は本当に人を襲ったり殺したり、食べたりはしていない。死臭がしない事は分かっていると思う」
────確かに、言われて気付いた。
スンスンと鼻を鳴らしても、取り込んだばかりの洗濯物のような、お日様の匂いがするだけ。魔族が漂わせる香りとしては異常。
身体が魔力で構成されている魔族には、新陳代謝が存在せず、身を清める習慣がない。せいぜいが水浴び程度で、染み付いた死臭を落とすには足りない。故に、ほぼ全ての魔族からは死臭がする。
「私は、自分と同じような姿をした人間を食う事に抵抗があった。というより、知恵と抗う力を持つ生物を標的として固執する意味が、私には分からなかった」
もっとも、同種は本能に従っているだけで、人を襲い、騙し、食らう事の意味も理由も考えてすらいないだろうが。そう魔族は付け加えて、追加の魔導書を『
「合理的に考えるなら、人を狙わない方がいいんだ。人類がそうするように、家畜を飼育して屠殺し食べた方がずっと危険が少ない。が、
「私には理解できなかった。魔族が人の心を理解できないように。
魔族からすれば私は異分子だ。人を食おうとせず、殺しもしない。周囲から迫害される事を危惧し、私は早々に魔族の勢力圏から脱出した。人類と交流を持つことも考えたが……私という存在は、人々が持つ魔族への警戒や恐怖を薄めてしまう。その結果、どれだけの命が奪われるか分からない」
「魔族からも人類からも距離を置いて生活することにした私は、何度か冒険者や名のある魔法使いに命を狙われながらも、ここに流れ着いて定住した」
いつしか、フリーレンの目は魔導書ではなく、目の前の魔族へ向いていた。それに気付いた魔族は、大風呂敷を広げて魔導書を外に出す。一瞬にして築かれた魔導書の小山に、フリーレンはゴクリと喉を鳴らした。
「興味を持って貰えたようでよかった、フリーレン」
「何で私の名前を……」
「知らない方が珍しいと思うぞ。なにしろ、魔王討伐からまだ50年も経っていない」
「それもそうか……」
ごそごそと魔導書を漁りながら、フリーレンは思案する。
────この魔族、本当に魔族なのか?
目の前の魔族から感じる魔力は、依然として穏やかだ。殺気のかけらもない。騙そうとしている様にはどうやっても感じない。作っている魔法も、魔族らしくない。現に、今手に取った魔導書には『
……さりげなく神話の時代の大魔法クラスの代物だったのでこれは貰おう。
「……」
命乞いをする魔族を前にして悩むなんて、初めての経験だ。見逃すという選択肢が頭の中に出てくるなんて。
……そういえば、
その魔族の名前は確か……
「遅くなったが、名乗らせてくれ。私はシックザール。魔法をたくさん作りつつ、平穏に生きたいだけの者だ」
……お前だったのか。
シックザール……フランメと遭遇時、恐怖から反射的に初手土下座を繰り出した。フランメも初手土下座してきてビビった。
フランメ……オリ主と遭遇時、油断させるために初手土下座を実行。クソ魔族も同じことをしてきてびっくりした。その後ちゃんと殺しにかかったが逃げられた。オリ主のトラウマその1。
オリジナル魔法にフリガナを振るべきか?
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フリガナを振れ
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振らなくても良い
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戦闘に使われる魔法だけ振れ