オリ主なんて酷い目に遭ってナンボですからね
最近フリーレンが近くにいるからか、よく悪夢を見る。
圧倒的な力によって蹂躙され、死にゆく夢。
黄金と見紛う髪と瞳。私の決死の抵抗を嘲りながら無下にし、嗤いながら捻り潰す。この身が人のそれであったならHxHのノヴの様になってるに違いない。そう思う程、尋常ではないストレス。
悪夢は決まって、こう締め括られる。
──────所詮は、使える魔法が多いだけの魔族か。千年待った甲斐はなかったな。
そう言って、黄金の少女は私を塵へ変えるのだ。
「……PTSDだコレ」
千年越しの精神ダメージで、もう限界です。
「目が死んでいる……」
「心もな」
太陽が真上に来た頃、ようやく起きてきたフリーレンが私の顔を見てドン引きするのも、もはや様式美。
今日も今日とて『
外で日光を浴びながらする繊細作業は最高に気分が悪いですなぁ!
「ふへへ……」
「キモ……もっと魔力を鎮めなよ、消えかけの蝋燭の火みたいになってるじゃん」
魔導書を読みながらこちらを見ているフリーレン。巨大な仮設住宅のバルコニーで優雅に紅茶を飲みながら、魔導書を読み漁っている。私の作ったおやつまで食べている。
とりあえず書き換えが完了するまでは行動を共にする事になったが、基本的にお互いあんまり関わらない。元々人類と魔族は殺し殺され合う関係である事を考えると、これでもかなり融和的である。一日目こそフランメ繋がりの話等で少し距離が縮まった様な気がしないでもないぐらいだったが、結局は私が行方不明者を殺したのかどうかという話になった。
そうやって何やら殺伐とし始めた雰囲気に冷や汗が流れる。滝のように。契約のお陰で殺される事はないにせよ、彼女が敵対的なのはかなり困る。長い年月をかけて契約を解除し、そのうち殺しに来かねない。
一か八か、『
分の悪い賭けだった。心臓に悪い。私は競馬で上位人気馬でしか馬券が買えない人間だったので、本当に勘弁して欲しい。
追加で「人を殺さない」契約を結ばれそうになったが、それだけはと土下座で懇願した。この後に控えているであろう戦いを考慮すると、人を殺してはならないという制限は隙に繋がり、死に直結する。間違いなく。
その後でなら幾らでも契約して貰って構わないが……。
『
今回の場合、今の私に「その戦いが終わってから人を殺してはならない」という契約を適用させる事は不可能。彼女と戦ってなんとか生き残った後の私と契約しなければならない。
……その後っておれになさそう。
「ふぅー」
ここ集中。間違えると術式全体が瓦解しておじゃんになる。高難易度のジェンガをやってる気分。整備性最悪とかエース機か何か? 我ながら変なものを作ったものだ。前世からの悪癖なんだ、妙に凝り性なところ。
「……」
身の回りの世話を任せているゴーレムに飯を食わせて貰いながら、術式を書き換え続ける。……くたびれてきたな、気分転換に魔法でも開発するか。確か作りかけの『3分でなんでも料理を作る魔法』があったはず。
「おいフリーレン、今から気分転換に『3分でなんでも料理を作る魔法』を作るんだが、加わらないか」
「見るだけにする」
「ものぐさエルフめ。実験には付き合ってくれよ」
ゴーレムに足揉みをして貰いながら、だらけエルフは目を閉じる。見てすらいないじゃないか、いい加減にしろ。
ちなみに、ゴーレムは外見美少女仕様。ツラの良い女性にお世話されて嫌な気分になる奴なんていないんだよ。『
「魔族の3分クッキング! まずは鶏肉を用意しましょう、胸肉、もも肉、部位なんてなんでもいいです。美味けりゃいいので。
醤油、刻みにんにく、おろし生姜を混ぜた特製ソースに漬け込んで半日ぐらい冷蔵庫で寝かせましょう。寝かせたものがコチラになります。あとは衣をつけて揚げていきましょうね〜、はい。揚げたものがコチラになります。これで魔族特製唐揚げの完成〜、是非試してみてくださいね〜」
「3分どころか30秒かかってないけど?」
「どんな料理も3分以内に作れるって方向になったみたいだ。とりあえず食べよう」
まさか、「〜〜したものがコチラになります」を忠実に再現したら過程をスッ飛ばして結果を得るタイプの魔法になるとは。料理限定とはいえ、とんでもない。ほぼキング・クリムゾン。
……よし、この魔法の名前は『
…………何やってんだおれは。流石にふざけすぎだ。
「大味だけど結構イケる……」
「男の作る飯ってのはだいたいそんなもんです。目分量でどうにかなる。……メイドゴーレムに『
「エール欲しいんだけど」
「少し待て、『
次は最もエロい料理と名高い
本日の進捗
進捗ダメです。勇者一行のお話が面白過ぎて酒が超進んだ。楽しかった。
『
随分昔に作った、夢の中を自在に動き回れる魔法。寝る前に悪夢対策として発動。
悪夢は決まって、とある平原で私が嬲られる内容だ。そこから『
『……』
立っている。目の前に立っている。金色の暴力、恐怖の権化。
その目は鋭く、冷たくおれを見つめている。
自然と背筋が伸びる。冷や汗が止まらない。
大丈夫だ、大丈夫。夢だと分かっている。なら動ける。逃げられる。
『本当に?』
話しかけられた。
…………まさか、そんな。そんな事が……
『ッ、『
『させるとでも?』
魔法陣が砕かれる。発動失敗、魔法は効果を発揮する前に潰された。……そもそも、『
『
『何も変わらないな』
顔を掴まれ、地面へ叩き付けられる。細身の腕から発生しているとは考えられない程の膂力で、私は今捩じ伏せられている。
……確信した。信じたくはなかったし、現実から目を逸らしたい。夢の中だというのに。
『そう、私は本物。夢の登場人物ではなく、お前の夢に介入した現実そのものだ』
……どうやって。いや、聞くまでもないか。
『そうだ。『
なんて性格が悪い。そんな事をされる謂れは……
『お前、大して強くなっていないだろう』
………………。
『魔法、魔導具の研究開発にかまけ、着実に迫る期限から目を背けて、実戦で経験を積まなかったな。そのツケを、お前は今払っている。戦いを避け、争いを避け、流血を避けた結果が今のお前だ。恥を知れ』
ミシリ、と頭蓋が軋む。
……言いたい放題言ってくれる。そこまで殺し合いがしたいなら、今ここで────
『断る。私はお前の尻を蹴飛ばしに来ただけだ。夢の中とはいえ契約に抵触する恐れがある』
『死ぬのが嫌なんだろう? なら死ぬ気で足掻け。期限まで残り数十年、1日足りとも無駄にするな』
『それとも、長生きには飽きたか?』
その言葉を最後に、おれの頭蓋は砕かれた。
目を覚ました。日はまだ昇っていない。
汗で濡れた我が身を抱いて、ベッドの上に蹲る。
「……クソ」
生に飽きるなんてあるかよ、生なんて続けば続くほど良いに決まってる。誰だって生き続けたいハズだ。おれは生き続けたかった。そして、ずっと生きていたい。これからもずっと魔法や魔導具、魔法薬を作って生きていたい。
痛いのは嫌だ。自分が嫌なものは、他人に与えたくない。当然の倫理観だ。
血なんて流さない方が良いに決まってるし、怖い思いだってしない方がいい。
怒ったり泣いたり悲しんだり。負の感情に振り回されるのはもう嫌だ。
おれは何処ぞの殺人鬼が言っていたように、植物のような平穏な生活を送りたいだけだったのに……。
「………………やるしか、ない」
シックザール……夏休みの宿題は30日から大急ぎでやるタイプだった。ケツに火がついてから本領を発揮するタイプ。明日から本気出す。