ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第一話 ある日、教室の中で理想の人と出会った(性格以外)

「どんな女が好みだ?」

 

「そもそも私は女なんですけど」

 

「なに、品定めだ。性癖にはそいつのすべてが出るからな」

 

「なるほど、なるほど?」

 

 学校の教室でクラスメイトになるはずの男の子から唐突にそんな質問をされた私は彼を見上げながら質問の答えを探す。御年15歳にしてそんなことを考えるハメになるとは思わなかったけど、これでも私は中学において、学力の天才、美しき悪魔、漢の勇気を持つと噂されていた女。この程度答えることなんてわけない!

 

 だけど、それはそれとして恥ずかしい。乙女心なんて笑ってしまえるけどどうやらタイプだけでは終わらないように思えてならない。だがここで漢の勇気を見せなければ何になろうか、舐めないでよクラスメイトくん!?オレサマオマエマルカジリ、渾身のコンゴトモヨロシクだっ!

 

「容姿的には、キミかな」

 

「ほう、俺だと?具体的にどうなんだ」

 

「ほら、私こんなんじゃない?体格差っていうかなんていうか、とにかく大きい人に包み込まれるのが好きなの。つまり、身長(タッパ)があってデカイキミみたいなのはストライクってわけ。というかキミ、デカすぎ分厚すぎ。身長いくつあるの?」

 

 こんなん、で全身を見られるのはしょうがない。身長132㎝、ふわ、すとん、すとんが特徴の子供ボディ。それが私である。唯一の武器である銃型の呪具をガンベルトで腰に装着して髪を短いポニーテールにした女、というか見た目幼女。それが汐見琴音である。

 

 そういえば自己紹介すらまだだった。見た目だけで言うならかなり好みの彼の名前すら知らないんだよ私。自己紹介前に性癖開示させておいて自分のは開示してないし。おらー!私が言ったんだからキミも言えー!と見上げてみるもののなぜか彼は天を仰いで動かない、あれー?

 

「おーい、聞こえてる~?私汐見琴音っていうんだけどキミは~?」

 

「……どうやら俺たちは、幼馴染(ファミリア)、だったようだな」

 

「……んん?」

 

 つぅ……と目の端からなぜか感動の涙らしい涙を垂らしながら変なことを言う彼。だから名前は?と聞きたくなったがファミリアってなに?慣用句的な意味で言うとオールドファミリア、つまりは昔馴染みっていう意味だと思うんだけど変なルビついてる気がするっていうかついてた、主に気持ち悪い感じで。

 

「久しぶりだな幼馴染(ファミリア)よ。東堂葵、揺るがぬマイブームは(ケツ)身長(タッパ)がデカい女だ」

 

「初対面では???」

 

「何を言う、10年来の付き合いだろう。性別を超越した仲だったはずだ」

 

「おっと?私史上類を見ない扱いをしなきゃいけない人間か?あとその性癖は私に喧嘩売ってんのかコラ~」

 

 東堂葵、彼の名前がそうか。ケツとタッパがでかい女が好みだと!?正反対だぞ私と!おのれ!私が逆さに振っても手に入れられないものをゴールに据えるな!わかったよ、キミはあれだね!?私と呼吸は合うかもしれないけど人間的には苦手なタイプだ!少なくとも会話しただけでああ、合うっていうのは感じ取れるよ!

 

 明らかに性癖を開示した瞬間に東堂君の中で私に関する存在しない記憶が作り出されている。私をこの学校にスカウトした人曰く「呪術師はどっか狂ってるかイカれている」とのことだったんだけどマジだこれ!泣きたくなるなぁ、まともな人はいないのか。

 

 兎にも角にもこれが、4年間付き合うことになるドルオタゴリラ呪術師と私ことリアルロシアンルーレットチンチクリンの出会いである。あとこの後まともな人も二人来てくれたんだけどまともすぎて東堂君があらぶってしまったのでガンベルトの中身を解き放つ寸前までになってしまった。とほほ。これ逆説的に私がイカれてるって証明されたのでは?

 

 

 

 

 

「仮想仮面想術ぅ?聞いたことない術式だね、それ」

 

「奴はペルソナ、などというておったがな」

 

「なにそれハイカラじゃん。それで、どっち?このゴリラ君かな?そもそも僕に術式を見るように言うなんてどんな風の吹き回しかな?楽巌寺のオジイちゃん?」

 

「気安く呼ぶな馴れ馴れしい。優秀な呪術師の卵を指導するにあたって前例のない術式を把握したいと考えることの何がおかしいというのだ」

 

 ここは呪術高専京都校、呪いを祓うために呪いを学ぶ学校である。人の負の感情から湧くエネルギー「呪力」とその負の感情がある限り湧いてくるよくないもの、「呪霊」あるいは「呪い」……人が人であるがために切り離せないそれを日々祓うマイノリティのあつまりだ。

 

 そして負の感情を利用して戦う彼らが正義の味方と言えるか、圧倒的にノーである。上層部は腐り果て、保守的な考えが蔓延し、人を人とも思わぬ所業が平然と跋扈する。これが呪術師の世界だ。とりわけこの校長室で相対している二人は呪術界を代表するくらいに、仲が良くない。

 

 まず楽巌寺と呼ばれた白髭を蓄えた老人の名は楽巌寺嘉伸、この京都校の校長である。対する正面。透き通った白の髪に黒い布で目元を隠していても整っていると確信する顔をしているのは五条悟、呪術高専東京校の教師である。それぞれ保守派と革新派の代表みたいなものですこぶる仲が良くない。

 

「そーんな理由で僕を呼びつけるわけないじゃん、特にアンタが。で、理由は?」

 

「……ふん、見ればわかる。異質も異質よ、場合によっては」

 

「秘匿死刑にでもするための確証が欲しいって?そんなのに僕が協力すると思う?ナメてんの?」

 

「さてな、だが断言しよう。貴様は必ず彼奴に興味を持つ。儂が貴様を呼びつける理由は貴様の顔が豆鉄砲を食らった鳩のようになると確信しとるからだ」

 

「……言うね、おじいちゃん。いいよ、興味出てきた」

 

 異常事態である。姉妹校と言えど仲が良くない京都校の校長と東京校の教師がたかが一人の生徒のために雁首をそろえて話し合いを始める。これがどれだけ稀有なことか、普段ならば確実に秘匿しているであろう事項を自分に開示した楽巌寺に五条自身が興味を持ったところもあるだろう。

 

「んじゃあ、情報共有はきちんとしよう。縛りは?」

 

「いらん。仮想仮面想術……我々の尺度でいうなら仮想怨霊をその場で生み出し操る術だ」

 

「は?呪霊操術のパチモン?あいつの娘かなにかか?」

 

「尺度というただろう。実際は心の海に揺蕩う数多の人格を身に宿す、困難に立ち向かうための人格の鎧などと抜かしておったがな」

 

「じゃあなに?多重人格でも……楽しんでるでしょオジイちゃん。情報小出しにして」

 

「ああ、見たいものが見れた。これ以上は貴様と話すとサブイボがでてかなわん、さっさといけ。報告は書面で良い」

 

 しっし、と手をやる楽巌寺にいつもは食って掛かる五条は無言で立ち上がる。五条をうまくやりこんだ楽巌寺は内心ガッツポーズで五条は舌を出しているだろう。だが、気になる。呪霊操術、自らに並んでいた男の術式に酷似した術式ともなれば。

 

 今年の1年生は粒ぞろいだと自慢されていたこともあり内心イラついていた五条であったが実際粒がそろってるのは認めたほうがいいだろうとは思っている。自分には全く及ばないけど、特級呪術師九十九由基の推薦、東堂葵。御三家の一つ加茂家の嫡男、加茂憲紀。珍しい外国の呪術師とのハーフ西宮桃。一般からのスカウトにもかかわらずあの楽巌寺が自分に見せびらかしたくなったらしい汐見琴音。

 

 いい暇つぶしになるだろうと腐りきった上層部の相手をしてきてからここで大して美味くもない茶を啜っていたので気分がノったら軽く指導をしてもいいぐらいの気分ですらあった。若人を導くのは大人の務めなどとすら浮かんでくる始末である。

 

「お疲れサマンサ~って、あ」

 

「ちょっと東堂君!?ストップストップ!?性癖開示しなかったからって襲い掛からないの!加茂君でいい!?退避退避!」

 

「それはいいのですが……全く抑え込めてませんね?」

 

「なんなのアイツ……いきなりヘンタイみたいなこと言って暴れだしたわ……」

 

「ナニコレウケる」

 

 教室の中にあったのは混沌であった。まず加茂家の嫡男に襲い掛かろうとする東堂葵、そしてその背中に飛びついて何とか止めようとするものの悲しいかなサイズと筋力が足りなくてただただおんぶされてる絵面の汐見琴音、おののいてる西宮桃であった。思わず五条も面白、と思ってしまう絵面である。

 

「あー、とりあえず止まってもらっていい?楽巌寺のオジイちゃんに言われて見に来てみたんだけど面白いことになってんね?」

 

「ご、五条悟!?」

 

「何ぃ?」

 

「……どなた様?」

 

「しらないのかい!?」

 

「一般の出なもので?」

 

 五条悟はビッグネームである。現代最強、特級呪術師、六眼、特別な部分をあげれば枚挙に暇がない。だから、教室にいる人間は全員が全員彼のことを知っていた、正確にはさすがに冷静になって止まった東堂葵の背中にぶら下がる汐見琴音だけは知らないようだった。

 

 いやちっさ、と思わず言ってしまいそうになるのを笑顔の仮面で押し隠して五条は汐見琴音をチラ見する。不思議そうにこちらを見上げる汐見琴音は本当に自分を知らないようだ。一般スカウトらしいから知らなくてもしょうがないがもう少しそこの加茂家の嫡男くらいに驚いてほしい。たのしいから。

 

「Mr.五条、御噂はかねがね。一つ質問をお許しいただきたい。好きな女のタイプは?ちなみに俺は(ケツ)身長(タッパ)がデカい女です」

 

「おっ、それ九十九さんリスペクト?それじゃあ一つだけ教えてしんぜよう。くびれの綺麗な女」

 

「ほう。さすがは特級呪術師、そこにいる性癖も即答できんつまらん男とは格が違うな。だが、重ねて一つ無礼を許していただけるのなら……東京校の教師であるあなたがなぜここに?」

 

「東堂君さすがに当たり前のように加茂君をディスリすぎじゃないかなあ?」

 

「楽巌寺のオジイちゃんに頼まれてね、君を見に来たんだよ。汐見琴音さん?」

 

「わたしを?」

 

「で、あなたはいつまで彼の背中にいる気なんですか」

 

「乗り心地いいから暫く乗せてもらおうかなって。いいでしょ?東堂君」

 

「構わんさ汐見(ベストフレンド)

 

 なんか関係性進化してない?と唇を尖らせる汐見と東堂に襲われかけて乱れた服を整える加茂がなぜか自分には敵意剥き出しなのにも関わらず同じ初対面であるはずの彼女に対して鷹揚なのか疑問を呈しているようだ。西宮桃はいきなりのビッグネームの登場にまだ脳内の処理が追い付いていない。

 

 少々失礼、なんて言いつつ五条は布の下で目を開いて琴音をみる。呪力量は多量だが規格外でもない。身に宿る術式……よりも五条の目が違和感を発したのは彼女のガンベルトの中にある銃の呪具だった。特別呪力に敏感な目を持つ五条はその銃の異質さを理解して喉を鳴らす。

 

「ククッ……なんだ、一般の出なんていうからふわふわしてるかと思えばちゃんとイカれてんじゃん」

 

「え、割と常識人よりだと自分では思ってたんですよ私。いきなり来てひどくないですかこの人。偉い人なんでしょうけど」

 

「偉いよ~えらいえらい。なにせ僕最強だからね。それはそうと、そんなもん持っておいて常識人はないわ。イカれてるよ、持ちたくないもん僕でもそれ」

 

「暗に持てなくはないって言ってるのが腹立ちますね~」

 

 汐見琴音はガンベルトから入っていたものを抜き出す。儀礼拳銃というべきだろうか、その優美な装飾とは裏腹に纏っているのは濃厚な『死』の気配だった。その気配だけで教室の中に氷点下の気配すら漂い出し、そんなものを背中で取り出された東堂はたまったものではない。冷や汗をかきつつもそっと汐見琴音を地面に降ろした。叩き落とさなかったのは彼の存在しない記憶による最後の抵抗なのだろう。

 

「特級呪具だねー、それどこで手に入れたの?」

 

「祖父の作品の銃に、黄昏色の羽根を組み込んだらこうなっちゃった」

 

「見る限り生命を概念的に司ってるっぽいね。ただ、呪物だからマイナス方面に作用して死の方面に特化してるのか。へー、面白い」

 

「持ってみます?」

 

「いらない」

 

 ケタケタと笑いながら差し出された拳銃を拒否する五条。当たり前だ、誰だって死を意識したくはない。持つだけでおそらく死を生きたまま体験できるであろう儀礼拳銃をあっけらかんとした顔で持っている琴音は五条悟の言う通り、イカれている。

 

「で、それなんに使うの?」

 

「えっと、ですね。私の術式?とやらを安定させるために使うんですよ。なくても使えますけど、こうやって」

 

「え、あんたなにして」

 

 おもむろにガンスピンのようにトリガーガードで拳銃を回した琴音はためらうことなくこめかみに向けて銃口を突きつけた。まさかの自傷行為どころか自殺行為に冷や汗をかいていた西宮が止めに入ろうとするも、少々遅かったようだ。

 

「ペ・ル・ソ・ナ」

 

 その言葉と共に琴音はためらいもなくトリガーを弾いて自らの頭を撃ちぬいた。




 ペルソナ系を書きたかったんだけど突如頭に閃いた存在しない記憶がロリハム子を肩車して突撃する東堂葵という景色を描き出したのでこんな作品ができました。これはひどい。
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