ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
どうも、東京の方の高専からおはようございます!いつもあなたをマルカジリ、汐見琴音です。京都校と東京校の交流戦は京都校の勝利に終わり、私は今頃学長先生のワンマンライブをかぶりつきで見ているはずだったのですが……なぜかまだ東京にいます。なんで?
ふぃいいん、さみしいよぅ。ここ私にとっては圧倒的アウェイ、秤君と綺羅羅ちゃんは任務いっちゃってるし、私は何も言わずに残らされたし。偉い人にはお前俺たちの言うこと聞かないと死刑にしてやるからな(意訳)って言われるし、五条先生が割とマジでキレてくれたので助かったけど。こわかったぁ。
京都校の皆は先に帰っちゃったし、高田ちゃんの握手会は最高だったけどそれ以外は暇という言葉しか出てこない。もう3日も放置プレイだよ哀しい。そんなわけで私は今、そのまま泊まっている宿泊施設の調理場を借りて、お菓子作りに精を出しています。
バスクチーズケーキに、イチゴのババロア、イタリアンプリン、シュークリーム!まあ全部五条先生への贈り物なんだけどね!生菓子で申し訳ないけどデコレーションケーキなんかよりは日持ちするでしょ多分!うぇへへ、桃ちゃんはじめ同級生どころか先輩までも虜にした私特性お菓子の威力を思い知るがいいわ!無限を突破する美味しさです。東堂君のお墨付き。
「おや、何かいい匂いがすると思っていたら……あなたでしたか。なぜこちらに?そして何ですかこのお菓子の山は」
「あれ?七海さんだ!お久しぶりです!お電話だとおかわりなかったみたいですけどお元気そうでよかった!これはですね、五条先生にあげるお菓子です!日頃のお礼に!」
「五条さんに……!?しかも日頃のお礼……!?」
「待ってください私の感覚と違いすぎます。五条先生は七海さんに何したんですか」
宿泊施設は共有なので七海さんみたいに高専所属の術師の人が泊まっていることは間々あること。だけどこうやって偶然出会えるのはとても嬉しいことだ。七海さんとはお電話する仲にはなってたんだけど七海さんいろんな任務に引っ張りだこだからなかなか会えないんだよね、悲しい。また一緒に任務に出て成長した私を見てほしいなあ。
にしても五条先生にお礼の品を用意したと言ったとたんの七海さんの顔が信じられないものを見るような目で私を見ている。どうして?お世話になったらありがとう、悪いことしたらごめんなさい。これ人生の基本。何というか、東堂君とは違うベクトルの嫌われ方をしてるんだね五条先生は。私からしたら愉快な先生なのになー。でもセクハラは許してない。
「七海さん甘いもの平気ですか?良ければ味見していってください。この後任務だったりします?」
「ええ、実はここに来たのは冷蔵庫から何かしら拝借しようと思っていたところでして。では、プリンをいただいても?」
「どうぞどうぞ~~!生クリームはいかがです?」
では、多めにとリクエストを受けたのでマスカルポーネをたっぷり入れたプリンを切り分けてお皿に盛り、カラメルを掬って回しかけてガトーショコラに添えるような感じで泡立てた生クリームをもったりと盛りつけてスプーンと一緒に提供。エスプレッソを添えることを忘れずに。ふっふー、ドルチェはちゃんとお店で修行したんだから自信ありなんですよ!いかが?
「……!美味しい、ですね。貴方は料理も達者なんですか」
「凝り性なんですよ、やるならとことん完璧に。そうじゃないとみんなに自信をもって接することができませんから。あ、そうだ!七海さん失礼!」
そう言って椅子に座った七海さんの隣に立ってスマホのインカメラで写真を撮ろうとするものの七海さんが大きい上に私の手が短いせいで画角が上手く作れない。背伸びをしながら頑張っていると察してくれたらしいデキる男の七海さんが私のスマホを持って写真を撮ってくれた。すっご!ちゃんとお菓子と私たち二人が全部入ってる!さっすがー!
えーと、これを五条先生に……『お菓子たくさん作ったんですけど早くしないとなくなっちゃいますよー』と。送信。ふっふっふー、セクハラのお返しだ~。そういえば今日人に会いに行くって言ってたっけ五条先生。誰かっていうのは教えてもらえなかったけど好きなものはお酒って聞いたからお酒に合うのも作ってたんだよね~。ガーリックチーズラスク!ビールに合うこと間違いなしだよ~。
「ご馳走様でした。そろそろ新幹線の時間になるので私はここで失礼します。会えてよかったです、それでは」
「あっ!ちょっと待っててください七海さん!3分でいいので!」
そう言って私は転がるように調理場に入って業務用の冷蔵庫を開けて朝焼いてそれっきりだったパンを引っ張り出す。お昼ご飯にでもしようかと思ったけど七海さんに食べてもらった方が私としても嬉しいので紙袋の中に詰め込んで渡した。
「中身、バゲットサンドと卵サンド、照り焼きサンドです!お昼にどうぞ!また任務一緒になったらお願いしますね!」
「これは、何から何まで申し訳ないですね。今度関西近辺に出張ったときにまた顔を出すことにしましょう。今回のお礼はそこで」
「お気になさらず!ご無事の遂行を祈ってますよ!」
紙袋を受け取った七海さんは私の頭をぽんぽんと撫でると手短にお礼を言って出て行った。むっふー、褒められちゃった。七海さんは私がされると嬉しいことをよくわかってらっしゃる。きっと彼女さんができたら文句のつけようのないスパダリになることだろう。七海さんを見送って暫く、玄関ドアがとっても大きい音をたてて開かれた音がしたと思ったらすぐに私がいる調理室のドアが外れんばかりに勢い良く開いた。
「七海!?琴音!?僕の分のケーキとプリンとババロアとシュークリームは残ってるよね!?」
「あ、やっと来た五条先生。もー、全部七海さんが食べちゃいましたよ、なんつって」
「なんだって……!?おのれ七海、僕に内緒で生徒特製のお菓子を独り占めするなんて許されないぞ!?」
「いや冗談ですって冗談。元は五条先生のために作ったんですから食べてってくださいな。遅刻されても困るので釣ったのは事実ですけど」
まあまあとテーブルについてもらって冷蔵庫の中に突っ込んでいたもろもろを取り出して大きく切って五条先生の前に並べる。おお~~と歓声を上げる五条先生、東京校の学生たちは五条先生に何かお礼とかしないのかな?明らかに感動がマジすぎてちょっと怖い……。
しかし、こうも上手くいくなんて。お礼をしたいのは事実なんだけど五条先生の困ったところの一つに遅刻癖があるんだ。しかも大遅刻とかじゃなくて一番腹が立つ遅刻の仕方をしてくる。じゃあどうすればいいんですか夜蛾がくちょーと聞いてみたところ物で釣ったら釣れるんじゃないかとぬいぐるみを繕いながら言われたので試してみたらマジで釣れてしまった、おもしろ。
「いっただっきまーす!うーん、このババロア甘酸っぱくて美味しいね!このシュークリームのカスタードの卵感最高!チーズケーキは香ばしくてたまらないし……プリンは……えっ……!?」
「あれ?お口に合いませんでした?」
「……これがプリン……!?何かもっと高尚なものを口に含んだんじゃないのか僕は……!?」
「あ、美味しかったってことですねよかった」
カッ!となぜか目隠しをとって目を見開いた五条先生の前にあるのは何の変哲もないイタリアンプリンである。サイゼリヤで食べることができる身近な品だ。甘い物ばっかり食べてくどくならないのかなと減ってないエスプレッソを見ながら先生が満足ならいっかと何か新しい扉を開きそうな五条先生を見守る。開いたら困る扉かもしれないので大いなる封印(笑)でもしといてほしいけど。
「……琴音、これを作ってくれるとしたら次はいつ?」
「別に、時間があって材料があってお願いされたならいつでも?」
「週一で作ってくれるのなら僕が君相手に模擬戦をすると言ったら?」
「マジですか?」
「大マジ。これ、マジでうまい。いや、甘いものはたくさん食べてきたし家でもいいものは山ほど食べ飽きたけど、好みのドンピシャど真ん中は初体験だ。定期的に食べれるなら時間を割くくらいはなんてことないよ」
お菓子一つでなんだこの人……?と思わなくもないけど五条先生と模擬戦できるってことは東堂君相手でも召喚できない致死性の高いペルソナを試せるということでは……!?呪術的に格がやばすぎて召喚できないペルソナが何体かいるのでそれを召喚したら何が起こるかとかは把握したいし。あと、領域展開の練習に付き合ってもらったりとか。
「とりあえずその話は置いておいてあまり待たせてもなんですし五条さんが会わせたいっておっしゃった方に会いに行きませんか?ちょうどいい時間でしょうし」
「あ、もうそんな時間なの?しょうがないなー、その話は絶対に後で話すとして先にそっちを処理しちゃおうか。ついといで」
おかしいな、容器一杯に焼いたはずのプリンが跡形もなくなっている。どれだけ気に入ったんだろうか。まあ嬉しいからいいとするんだけど。片付けなんて後にしなさいという五条先生に引っ張られて廊下を空輸される。お土産は何とか確保できたけど最近猫掴みされて空輸される絵面が多くないですか?
「硝子~?いる~~?会いたいって言ってた生徒連れてきたけど~~」
「五条、あんたノックくらいし……遅刻じゃない……!?」
「あの、五条さんって皆さんからどんなふうに見られてるかとか省みたことあります……?」
「ん?グッドルッキングガイパーフェクトティーチャー五条でしょ」
「……」
それはこう、だめじゃないの?五条先生が理不尽で自分勝手で我が儘で相手のことを素で見下してて尚且つナチュラルにクズっぽいことをするのは知ってるし私は別に気にしないから受け入れてるけどそうじゃない人もいるんだよ五条先生?
何とも言えない顔で五条先生から顔を外して相手様をちゃんと見る。うわぁ、私にはない大人の色気と魅力がたっぷり乗っかった美人さんだぁ。ただ、ものすごく疲れた顔をしていて目の下の濃いクマがあって血色がとても悪いので正直見てられない。体勢のせいで召喚器が取れないのでタロットカードを砕く、アルカナは『信念』
「―――マリア『エナジーシャワー』」
「……これ……?」
「わぁぉ、最初っからぶちかますねえ」
私の背後に黄金で装飾された聖母像のようなペルソナが出現し部屋中に神聖な光を満たした。反転術式、もどきである。反転術式は大体回復に用いられるんだけど私はそれに効果を絞る縛りを結ぶことで多種多様な効力を使い分けることに成功した。今回は枯渇した体力の回復を主に据えたものだ。余波で五条先生の体力も回復してしまうがそれはいいでしょ。無下限で弾いてるかもしれないけど。
「はい、紹介するよ~。この人は家入硝子、僕の同期で呪術高専の屋台骨のひとつ。んで硝子、こっちは汐見琴音。僕の大事な特級呪術師の後輩さ。見ての通り反転術式のアウトプットができる」
「こんにちは!汐見琴音15歳、京都校の皆においてかれて寂しいガール、絶賛首が苦しくて参っております!あとこれお近づきの印にどうぞ!」
「おや、これはご丁寧にどうもありがとね?…………」
「………………???」
五条先生に首根っこつかまれたまま突き出された私は一応助けてアピールと一緒にお土産を渡してみる。家入さんは私のお土産を受け取ってデスクに置いた後にじーっと私を見つめてくる。何かしたのかな?と思いつつ私は首をかしげながら彼女を見返してみる。
すっ、と小脇に手を突っ込まれて家入さんに捕まった私はあれよあれよという間にソファに座った彼女の膝に乗っけられていた。理解できずに頭上に???と浮かべているであろう私を抱きすくめる家入さんとそれを爆笑してみている五条先生、なにごと?
「あの~~……?」
「あっはっは!やると思ったけどマジでやるとは思わなかった!ごめん!硝子って小さくてかわいいもの大好きなんだよ、表にはだしてねーけど」
「まあ悪い気はしませんけど。お疲れなんだから眠ればいいのでは」
「それができたら苦労しないのよ……あ~~、疲れは取れたけど精神が回復していくのを感じるわ。どこのコロン?」
「これですか?この前知り合ったミゲルさんって方に頂いた地元の香水だそうです。さわやかでお気に入りなんですよ」
お腹を抱えて爆笑する五条先生を丸無視して私と会話する家入さんに、苦労してるんだなあ優しくしないとと思いながら私は彼女と交流を深めるのだった。
この作品の硝子さんは小さくて可愛らしいものが好きという乙女な一面を持っています。というかあのクールダウナー系お姉さんがそんな一面を持っていてほしいという私の願望です。なおこの作品におけるハム子さんはペルソナ女子特有のムド料理を生成することはありません。人間ステカンストなので料理も天才です。あとミゲルさんとはコミュ7くらいまで進んでます。