ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
「えー、禪院真希ちゃんに、狗巻棘君、そんでパンダ君ね。いやー京都にも負けず劣らず個性的だなあ。そうそう、パンダ君呪骸だよね?自律してるってことは突然変異かな?京都にも遠隔操作の傀儡で学校来てる後輩がいるんだよ~」
「へぇ、そうなのか。琴音は順応力高いな。悟から頼りになる後輩ができたなんて聞かされた時は悟の正気を疑ったけど」
「しゃけしゃけ」
「へー、狗巻君にも入学当初話したの?五条先生ったら面倒ごと押し付けられる後輩ができたからって私此処に引っ張ってきてさー。ひどくなーい?」
「あいつが傍若無人なのは入学してからのアレソレでよーっくわかってるよ。センパイも大変なんだな」
とぼとぼと後ろをついてくる乙骨君を確認しながら私は東京にできた後輩たちとお話をしていく。禪院真希ちゃん、真依ちゃんからかなりボロクソ言われてるのは覚えてるんだけど見る限りまあ、3級上位くらいは実力ありそう。だけど真依ちゃんが煽りと毒舌の中に繊細な心を隠しているのとは違って、素でオラオラ系なのかな?ただ乙骨君に対してあたりが強いので要注意、万が一祈本里香を出しかねないのは彼女だ。
次、狗巻棘君。なんでも呪言師の末裔なのだとか。呪言という術式はあまり知識がないんだけど呪力で言ったことを相手に強制させるっていう感じかな?まあ要は死ねと言ったら相手が死ぬ、みたいな。だけど呪術において効果と反動はトレードされるものなので強い言葉を使えば何かしら反動がでそうだね。おにぎりの具で会話をしてくれるみたい、今のところしゃけがポジティブ、おかかがネガティブの意味だ。ボディランゲージが上手なので意思疎通では困らなそう。あと思いやりがある様子なので乙骨君との相性は悪くないと思う。
最後、パンダ君。呪骸、つまり呪力を持った等身大のぬいぐるみが意思をもって自律し自分で呪力を生み出すようになった突然変異らしい。ちらっと見た感じなんだけど体の中に魂が3つあるのがわかった。一つはパンダ君のなんだろうけどもう二つはなんだろな?人外の存在だからか考え方が独特だけど、たぶん一番冷静で頭が回るタイプ。乙骨君のことはさっきからあからさまに気にかけているので恐らく考えてくれているのだろう。うん、いい子。
「……なあ、お前虐められてたろ。そのオドオドした態度のせいか?それとも『僕は人畜無害です』アピールのせいか?知らねえけどそれ腹立つからやめろ。受け身でいるとほんとに死ぬぞ。いつまでも被害者気分でいられるほど呪術高専は甘くはねえ」
「っ……!」
「真希!そこまでにしておけ!好き好んで呪われる奴なんかいないことはわかってるだろ」
「おかか」
「そもそも問題、乙骨君は被害者だよ。ここにいるのだって五条先生の我が儘なんだからね?君は自分の意思でここに来たかもしれないけど乙骨君は檻としてぶち込まれた側なんだから、覚悟もなにもかもついてなくて当たり前なの。なんもかんも見つける前に潰してどうするわけさ」
「……よかったな乙骨、やさしくて強いセンパイに守ってもらえてよ」
こりゃ仲良くするのはだいぶ先になりそうだなあ……。なんで真希ちゃんはこんなに乙骨君に当たりが強いんだか。ナヨナヨしてて弱っちく見えちゃうからかなあ?多分なんだけど、真希ちゃんは乙骨君に何かを重ねてるね。禪院家がクソ環境なのは真依ちゃんから耳タコで聞かされてるので推察すると……。
多分だけど呪力量に恵まれた上に特級過呪怨霊という超豪華オプションがついた乙骨君が彼女にとっては恵まれたように映っている、のかな。私にもそこはかとなく同じ感情を抱いてるのかも。真依ちゃん自身が言っていたことによると真希ちゃんは呪力も一般人以下レベルで呪いも見えない、そして術式もない。あるのはそれなりに高い身体能力。禪院家でも人間扱いはされてなかったみたいだ。しょーがない、おねーさんがひと肌脱いでしんぜよう。
「おいさー、真希ちゃんや。差し入れだよ~~」
「………………私、結構クソな態度とってたと思うんだけど、なんで?」
「ぷっ、あんなんでクソなんて言ってたら上層部のおじいちゃんたちなんてキングオブクソ大魔王だよ。なーんか気を張り過ぎで切れちゃいそうだからおせっかい焼きに来たのさ」
「余計なお世話だ。別に乙骨に対しては思うことねーよ。虐めたりもしねー、それでいーだろ」
乙骨君を連れて五条先生がどっか行ってしまった放課後、一人で黙々トレーニングに励んでいる真希ちゃんを確認した私はささっとお手製お握りを握って彼女のトレーニングにお邪魔することにした。私を見た彼女は結構バツが悪い顔をして練習の手を止めたので頭が冷えた結果自分の態度を振り返ることができたのだろう。いい子じゃーん。
ぽむぽむ、と私が座ったベンチの横を叩くと真希ちゃんは多少躊躇いながらも隣に腰を下ろしてくれる。ふぅむ、しおらしくなると素直になるのは姉妹共通なのか。はいどうぞ、とラップに包んだお握りを渡して先に齧る。朝使った幽庵焼きの残りで申し訳ないね。
「真衣ちゃんから二人が禪院家でどんな扱いを受けてたかは聞いてるよ。だからって分かったつもりになる気もない。乙骨君が呪術的に恵まれてるからといって彼自身の人生が恵まれたものだったかどうかは別、というのもきっとわかってるよね」
「最初っからわかってんだよそんなもん。あんただってそうだろ、一般の出の癖して入学して半年で特級に昇進、どうなってんだか」
「そうだね、呪術的には私も恵まれてる側。だから言い方悪いけど持ってないあなたの気持ちを慮ることはできてもわかってはあげられないと思う。でも一つだけ言い切れることは確かにあるよ」
「………………んだよ、しみったれた同情なんかいらねえぞ」
「真希ちゃんが頑張ってるってこと。それだけは一目見た時からすぐに伝わった。手の豆が潰れた跡、大刀の柄の傷、臨戦態勢に入るまでの短さ。努力しないとたどり着けない物ばっかりだ」
努力、こればっかりは才能じゃたどり着けない領域だ。私が入学当初呪力のコントロールがクソだったように才能だけあってもそれを活かす方法を知らなければ宝の持ち腐れどころか余計な荷物にしかならない。足りないならかき集めてでも貪欲に上を目指す、真希ちゃんの乙骨君に対する言葉から考えるに明確な目標があるから死に物狂いで頑張ってるんだろう。
「当たり前って思うかもしれないけど自分の弱いところを真正面から受け止めた上で足りないところを考えられるってすごいことだよ。人間、弱い自分には向き合いたくないものだからね。特級呪術師が言うんだから間違いない!真希ちゃんは強い!スゴイ!えらい!」
「……そんな小学生みてーな誉め方されても嬉しくねーよ。バカ目隠しでもそんな誉め方……いや誉められたことなんてねーか」
「五条先生は適当だからねえ。なんだったら教え方ものすごく下手だからね。一回やればできちゃうからわからないってことがないせいで教え方を知らないんだよ。というわけで真希ちゃんや、おねーさんが教えてしんぜよう。真希ちゃんに必要な体術をウルトラスペシャルコースで仕込んであげる」
真希ちゃんは実際強いかもしれない。呪術が使えないっていうハンデはあるけど身体能力は高いし武術的な素養もある。あるんだけど明らかに師匠というか教えてもらったってことがないんだと思う。ほとんど我流の動きだ。なんでちゃんと教えないんですか五条先生は。しょうがないので無駄に近接戦ができる遠距離術師である私が真希ちゃんの余計な癖の矯正をしようじゃないか。東堂君ありがとう、いろんなこと教えてくれて。殴り合いは性に合うね。
「おねーさん、ねえ。どう見てもそんな見た目じゃねーしマジで無駄な世話だぜ。乙骨についていてやれよ」
「おやまあ、さっき私にねじ伏せられた後輩ちゃんが囀るじゃーん。乙骨君はまだ私が教える段階にいないからね。呪力を認識できるようになったらスタートラインの30歩前くらいかな?」
「私だって
「ん?それは私の依怙贔屓だよ。私はね、流されるままの人よりも自分で流れに逆らえる人が大好きなんだ」
「……アンタだって私のこと言えねーじゃねーか」
別に乙骨君が悪いわけじゃないけど、流れに身を任せる彼より自分で流れを作って逆らおうとしている真希ちゃんの方が人間的には今の時点だと好みだ。この先乙骨君が現実を認識して自分でどう変わるか、それ次第で私だっていろいろ考えなきゃならないけど……まあこっちに来た以上可愛い後輩が増えたんだから世話焼いたっていいじゃない。顔真っ赤にしちゃってかわいー。
まあ彼女としても階級実力ともに自分より上の私と模擬戦みたいなことができるのは嬉しいことらしく齧りかけだったおにぎりを勢いよく口に含んで噛むのもそこそこに飲み込んだ。大刀を持って私の先を歩いていく彼女はとても機嫌がよくなっているように見える。うーん、青春だね素晴らしいね。私も頑張っちゃうぞー。
この後呪力なしで真希ちゃんをやり込めたら拗ねちゃった。ごめんて。でも流石に踏んできた場数が違うしそれで負けたら特級の名を返上しなきゃいけないし先輩としてもカッコ悪いので大人げない私を許してほしい。とりあえず真希ちゃんの態度は柔らかくできたと思うから次は乙骨君かなあ。先輩って大変だぁ。
「チキチキ!ポンコツ五条先生の代わりに頼りになるセンパイが呪術について乙骨君にレクチャーしちゃうぞ!のコーナー!ハイ拍手!」
「いえーーい!」
「い、いえーい?」
「それにしても乙骨君はともかくとして五条先生が教わる側についてるのは納得できません」
「実際僕はわからないってことがわからないからね、呪術に関しては特に。その点琴音は一回色々通過してる経験があるからその言語化を聞いておきたいのさ」
翌日、みんなが体を動かしている時間を使って私はダテメガネをかけて教壇に立っていた。乙骨君に何も説明せず教えようとしない五条先生と振り回される乙骨君がかわいそうなので私が教えることにしました。ほぼ東堂君の受け売りだけど大丈夫でしょ。
「呪いが実在するっていうのは昨日でわかったと思うんだけどじゃあどうやって呪いを呪いで祓うかっていう具体的な話をします。呪いのエネルギーを私たちは呪力と呼んでるんだ。見える?」
「え、っと……蒼いもやもやが汐見先輩の手に渦巻いてる……?」
「そう、これが呪力!ちなみに乙骨君の呪力は私の何倍もあるんだゾ!半分くらい分けてよ」
「何言ってんのさ術式使ったらすぐマックスまで回復する癖に。実質無限呪力でしょそれは」
「ええいシャラップ!術式使ったらじゃなくて死んだら回復するんだから違うでしょ!くらえポンコツ教師~~!!!」
「………空中で、とまった!?」
余計な茶番を挟んでいくスタイルなのが私と五条先生なので術式について説明をしたかったからちょうどいいとチョークを五条先生に投げる。当然常時無下限呪術を張っている五条先生の眉間手前でチョークは空中で止まった。運動エネルギーは働いてるが距離が無限になったので進んでいるけど進んでいない状態になったチョークを見て乙骨君が驚いている。
「呪力を持つ人間の中には体の中に呪力を使って事象を起こす生得術式と呼ばれるものを持ってる人がいるんだ。例えば五条先生のそれは呪力で無限の概念を現実に持ってくるもの。私だったら」
「あっ!?何して!?」
「へーきだよ憂太。それよりよく見ておくといい。彼女と君はとても良く似ている」
「ペルソナ――――ジャアクフロスト」
『ヒーホー!呼ばれて飛び出て参上だホー!』
「これ、里香ちゃんと一緒……?」
黒い雪だるまのようなペルソナを召喚した私がジャアクフロストを抱っこして乙骨君に見せる。あー、本来の使い方で呼べばよかったかなあ。でも死んだ方が呪力消費なくて楽なんだよねえ。乙骨君の机の上にジャアクフロストを座らせた私はこほん、と咳ばらいを一つ。
「まあ、呪われてる乙骨君と呪っている私を比べるのは違うかもだけど戦い方としては一緒になるかもね。どう?カワイイでしょ?」
「え、まあ……はい」
「騙されちゃだめだよ憂太~。こう見えて彼女本気になったらえげつないから。僕と同じでその気でやればこの国一人で消せるって評価の人間なんだぜ?ほら、こんなことされても動じてない」
【かわいい……里香、かわいいの好き……】
「里香ちゃん!?どうして!?」
「ん?コントロールされてない呪いが勝手に出てくるのがそんな驚くこと?あ、そうだ里香ちゃん。はじめましてだね、私汐見琴音。ヨロシクね?」
【……里香、琴音……嫌いじゃない。憂太にやさしくしてくれる人だから、近づいても許す】
乙骨君の後ろの空間から出てきた禍々しい手がジャアクフロストを撫でる。乱暴だけど傷つける意図はなさそうだ。子供がワンコと遊ぶような感覚なのだろう、彼女にとっては。ふぅむ、乙骨君以外との意思疎通はできるんだね。出てきてくれたからわかったけど、本当に人間の魂が核になっている呪霊だ。
だけど、それが功を奏して暴れまわらない程度の知能と理性を保てている。刺激しないようにしつつ好みのものを出せばまあまあ大丈夫じゃないかな。今暴れるようなら消し飛ばして戻せばいいし。乙骨君と強固に結びついてるから乙骨君を殺さない限り里香ちゃんも死なないだろうしね。
こいつ嫌い、とジャアクフロストと握手をしつつ五条先生を指さした里香ちゃんはまた乙骨君の背後の空間に溶けるように消えていった。そういえば顕現したらまずいって聞いてるけどこれどうなんざんしょ?と五条先生を見てみるけど爆笑してるので大丈夫か、ヨシ!(指さし確認)
爆速コミュ人間汐見さん。ちなみにゼロの主軸は乙骨君と真希ちゃんのお二人さんです。頼りになる琴音先輩を目指してコミュを進めていきましょう。ちなみにコミュにすると乙骨君は刑死者、真希ちゃんと真依ちゃんが二人で塔です。