ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第十七話 グルメブームが到来したらしい

「いやー、あの焼き加減に味付けのバランスの良さ。それに香ばしいパリパリの食感。ほんとにもう、たまんなかったよね。伊地知、また食べたいからそこで出張組んどいて」

 

「勘弁してください、五条さん。そんな理由で出張が組めるなら五条さんはもっと自由なはずです」

 

「あ、やっぱり?そういえば憂太はどんな感じ?琴音に扱かれて泣いてんじゃなーい?琴音、優しいけど心を鬼にすることは普通にできるからさ」

 

「ええ、今日も皆さんと一緒にスープの研究をしてらっしゃいましたよ」

 

「え、スープ?」

 

 五条悟は自らの右腕のように自由気ままに振り回している男、伊地知からの報告に首を傾げた。スープとは?スープである。つまり食材で出汁をとって味を調えた汁物のことである。開幕から飯の話をしていたからそんな風に返してきたのかと思えば伊地知の顔は真面目そのものなのでマジな話なのだろう。

 

 特級被呪者、乙骨憂太の世話を便利で頼りになる後輩に丸投げしてはや一か月ほど五条は呪術高専を離れていたので皆目見当がつかなかった。一体どういうことなのか、と研究は大事だけどそこは呪術であるべきではなかろうかと真面目な考えが思い浮かんでしまうほどである。

 

 だがそこは面白いこと大好きおふざけイケメン最強教師五条悟、面白そうな話を逃すわけがない。一大事であると喜色の笑みを浮かべてがやがややかましい調理室の前にたつと既に中ではチャーハンのパラパラ加減が違うだの燻製器を買っただのしゃけおかかいくらなどと聞こえてくる。

 

「お、五条サン。今帰りか?」

 

「あれ?金次、綺羅羅も?珍しいね1年生のとこにいるなんて」

 

「あー、五条サンが長期出張に行っちまってから1年坊主どもがなんか凝り始めてよ。試食係やらされてるんだわ」

 

「んで、これが結構おいしいのが問題なんだよねー。太っちゃう、でもやめらんない」

 

 中に入った五条に目を向けたのは博打大好き呪術師秤金次と彼女か彼かでいまだに1年生が揺れている星綺羅羅であった。呪術高専は縦横のつながりが強いので上下関係を気にする気風ではないものの特段仲が良くない普通な関係であった二人がここにいるのは理由が思い浮かばなくもないけど不思議ではあった。

 

「あ、五条先生!帰ったんですね、おかえりなさい。今ラーメン作ったんですけど良かったらどうですか?鶏ガラの醬油ラーメンなんですけど」

 

「セットでチャーハンもつけてやろうじゃねえか。くってけよバカ目隠し」

 

「カルパスもあるぞ~」

 

「え?マジ!?食べる食べる!今日はいい日だなあ!」

 

 自らの所業を一応は客観視できる人間である五条にとって生徒たちから何の見返りを期待されることなく贈り物をもらえるとは青天の霹靂、ありえない扱いなのだ。そんなことをしてくれる人間は五条にとって数えるほどしか、マジで片手の指で収まるほどしかいない。飛びつくのも無理はない話である。

 

 ラーメンを箸でリフトし、口に入れて啜る。口の中に広がるのは醤油と鳥のうまみ、香味油の香りだ。続けてチャーハンを頬張れば角切りのチャーシューの肉感とパラパラになった米にまとわりつく焼かれた卵の食感。絶妙な味加減の美味であった。

 

「うまい!うまいよこれ!?すごいな!まるでお店の味だ!」

 

「これが馬鹿にできねえんだ五条サン、食ったらわかるだろ?パチ行って外で食うよりウメエんだよ。おかげで朝からパチ屋に並ぶこともできねえ」

 

「まあ、最近の朝の予定は私たち二人とも埋まってるんだけどさー。ま、ただでご飯食べれるし美味しいんだからカロリー以外言うことないよね」

 

 隣でチャーハンを頬張る秤とラーメンを啜る星が言う通りであった。美味しい、美味しいのだ。五条が知る彼女らはそれっぽい料理が作れてもここまでおいしくはなかった。というか大体寮母の料理を食べていたので自炊する姿なんて2回も見たかどうかだ。隠された特技かと疑うほどの成長ぶりである。

 

「憂太も明らかに肉付きが変わってきたし血色もよくなったね。自分で作って自分で食べる、これのおかげかな」

 

「ンまあ、体づくりにはメシが重要だしな。結局呪力があっても強化する大本がしょぼいんじゃあ通常演出でスカっておわりだ。いい傾向だと思うぜ」

 

「そういえばなんですが……この中で一番料理が上手なのは誰なんでしょうね?」

 

「伊地知、それ多分言っちゃダメなやつだぞ」

 

「……私も今失言だったと理解したところです」

 

 伊地知がその言葉を発した途端、1年生4人だけではなく秤と星までもが顔に影が差す。対抗心を燃やして言い争いでも始まるのかと期待した五条ではあったが予想外というか予想通りの反応に喉奥で笑いが漏れる。全員が調理と食事の手を止めて扉を開けて出ていき、すぐに出戻ってきた。

 

「「「「「「これが優勝」」」」」」

 

「だよねー。琴音、何してたの?」

 

「最近ご飯作らなくてよくなったから余暇を満喫してパンチェッタとグアンチャーレを仕込んでたところですよ?硝子さんにおつまみとしてあげるんです。それにしても皆ご飯作るの上手になってよかったね~」

 

「作り始めたからわかる、逆立ちしても勝てる気がしねえ。何作らせても美味いんだ琴音センパイは」

 

 パンダに両脇に手を入れられて空輸されてきたのはこの場にいない身長132㎝のミニマム女子高生にして五条に次いで現れた現代の特異点、特級呪術師汐見琴音であった。本日も呪力が蒸発しそうな陽の笑顔を浮かべる彼女の手には、肉塊がいくつかぶら下がってた。

 

 五条も自分を万能系の天才であると自負してはいるが、彼女も同じく天才の部類である。ただ、あらゆる方面に才能のとっかかりがある五条とは違い彼女は努力型で凝り性というだけで興味がある方面を極めようとしている職人気質のおかげもあるのかもしれない。それでも、彼女の料理が美味いというのは骨身に染みてこの場の全員が理解していた。既に頂点は不動になっていたのだ、これでは2位争いにしかならない。

 

「ここで優勝者の味も味わっておきたいな!というわけで琴音、なんか作って」

 

「え~~~、理不尽だなあ五条先生は」

 

 そういって冷蔵庫に肉を放り込んだ琴音は台を引っ張ってきてまぁこれでいっかといくつか食材を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 なんか知らないけど五条先生が戻ってきて突然みんなのご飯を食べたのにもかかわらず何かを食わせろと仰ってきたので本日の私のお夜食予定から拝借することにしましょう。皆の料理美味しいから別によくない?まぁいいや。

 

 はい、用意するものはこちら!ぬめりをとったお冷のご飯、蒸し鶏を手で割いたものに保存容器で保存していた鶏出汁、氷の型に流し込んで凍らせていた鯛のお出汁である。小ねぎを小口切りにして、梅干を叩く。ハイこれで準備終わり!ご飯をお茶碗に入れて蒸し鶏を乗せて凍らせた鯛出汁を3欠片ほど、そして鶏出汁を注いでネギを散りばめて叩いた梅干をチョコンと盛れば完成!

 

「締めの冷やし茶漬けでーす。最近冷たいものが美味しいよね~」

 

「……ゴクリっ……ずぞぞぞ、もぐっ!?う、うまいっ!?」

 

「ねー、お出汁だけとっとけば手軽に作れるよぉ」

 

「ご、ごめんなさい琴音先輩、その……僕も……」

 

「いいよ~。他の皆は~?」

 

 乙骨君が言いづらそうにお願いしてくるけど食べてもらうのが好きだから作ってるので大歓迎です。皆にも聞いてみるけど全員無言で手を挙げたので全員分用意することにした。しばらくみんな無言でお茶漬けを啜っていた。これほんとに簡単なんだよ~。難しい部分は鶏出汁を綺麗な清湯にすることくらいかな?

 

「琴音センパイ、チャーハン食べてくれよ。意見くれ」

 

「ぼ、僕のラーメンも!」

 

「俺のカルパスもあるぞ」

 

「すじこ」

 

「全部食べてあげたいんだけど私そんなにたくさんご飯入らないよ~。小皿にちょっとずつ頂戴?」

 

 私のお腹の容量は見た目通りの量しかはいらない。高専に来てからはたくさん食べる東堂君とか痩せの大食いの加茂君とかがいたから量を作るようにしてたけど私自身の容量はお子様ランチでちょうどいいくらいだ。好きなものはそれなりに入るつもりではあるけどね。

 

「ん~、みんな美味しいよ~。私だって趣味なんだから他人様に口出しできるものじゃないし~。勝ち負けより美味しいかどうかでいいんじゃないの?」

 

「それじゃつまんないじゃん!?ということで明日!料理大会をやろう!でも普通にやるのもつまんないから、山の中で現地調達でどう?」

 

「あ、いいですね面白そう!私も参加していいですか!?」

 

「いや琴音は審査員、たぶん君ならその条件でもぶっちぎりで勝つ。審査員は僕、伊地知、琴音、来るなら金次と綺羅羅、どう?」

 

 唐突な五条先生の提案だけどスゴイおもしろそう!でも参加しちゃダメなんて殺生な。後輩ちゃんたちもやる気にはなってるみたいだし楽しみだなあ。山の中かあ、キノコに山菜、ジビエ……猪鍋とか食べたいなあ。こってりとしたみそ味の……。うーん、おいしそう。明日が楽しみ。ハイ解散、といった五条先生の音頭で私たちは準備を開始するのだった。

 

「あけびに、タラの芽、独活の新芽、鬼胡桃!いろいろあるなあ、え?あっちにも何かあるの!?」

 

「ぐぉぉぉ……」

 

「ごーごークマさん!美味しいものにれっつらごー!」

 

「グォォ!」

 

 翌日のこと、五条先生のお家が持っているお山にお邪魔した私たち。既に散らばった皆だけど私はじっとしてるのも詰まんないので持ち帰って料理に使う食材を集めることにして大きなかごを背負って山に繰り出していた。で、途中で出会ったヒグマさんに乗せてもらって移動速度大幅アップのバフをかけてもらったところだ。私を食べようとしたんだけど3回ビンタしたら懐いてくれた。獣臭いや。

 

 すでに山の幸でいっぱいのかごに新たにクマさんハントで手に入れた鮎をひもで縛って入れてこんなもんでいいかしら。秤君と綺羅羅ちゃんはテントの中でいちゃこらしてた。今日も仲が良くて素晴らしいなあ。クマさんあけび食べる?熟してておいしーよね~。意外と動物って話が通じるんだなってこの年齢になって初めて知りました。人間的ステータスに新たな項目が追加された音がした気がする。伝達力みたいな。

 

「あれ?みんなもうご飯作ってるの?食材は確保できた~?」

 

「く、クマァ!?」

 

「そうだよ、クマさん。仲良くなったから一緒に来たよ。あ、帰る?ばいばーい」

 

「琴音ってよぉ、なにしたらあんな根明に育つんだ?呪術やってたらどうしたってマイナスな面があんだろ」

 

「そもそもビジュがもう陽だよね。金ちゃんが言うこともわかるけど」

 

「琴音!?浮気か!?浮気なのか!?パンダというものがありながら!?」

 

「パンダ君の方が好きだよ?おひさまの匂いするもんね~?」

 

「琴音……!俺は信じていたぞ……!」

 

「うわ、人たらしならぬパンダたらしだ。他意が一切ないのがまたえぐいな」

 

 最後のお礼に一番大きな鮎をクマにあげてから去っていく彼を見送る。なんかパンダ君が浮気だ何だって言ってるけど今そこで仲良くなったクマと後輩のパンダ君で比べあったらパンダ君の方が大事に決まってるじゃーん。もふもふで柔らかいね。

 

「それはそうと食材は確保できた~?」

 

「あ、うん。でもお肉はさすがに、ちょっと……」

 

「さっき帰ってったクマ追ってシメるか?琴音か俺なら余裕だろ」

 

「やったら一週間運がマイナスになる呪いかけるからね」

 

「寧ろやってくれ、ヒリつきそうだ。マイナスからひっくり返すから面白いんじゃねーか」

 

 あ、そうくるんだと秤君の返しに思わずずっこける。それはそうと後輩君たちの料理は~?えーとパンダ君が魚の串焼きで、狗巻君が松茸!?……の網焼き、真希ちゃんが山菜の天ぷら、乙骨君が山菜のお味噌汁かな?ジビエはないけどどれも美味しそうだ。だから五条先生、そうやって不満げな顔するのはやめてください。

 

「じゃあまずパンダくんのから……はむっ。ん~~、皮のパリパリ感がいいね!内臓も抜いてあるから基本はばっちり。狗巻君のは素材の味って感じかなあ、かぼすか何かあればもっといいと思うけど……、代わりに持ってきた調味料で邪魔しない程度に風味を引き立ててるのは上手だね」

 

「真希のは悪くねぇが……ちょっと衣がベタついてんな。乙骨のは出汁が引けてねえのが痛手か。だが工夫を凝らして食いやすいようにしてんのは好印象だ」

 

「けど、この環境だったらかなり美味しく作れたとおもうよ~、というよりも自分で採って自分で料理するってなかなかない経験だもんね。琴音ちゃんが美味しいっていうことは私たちにとっても美味しいってことだよ、自信もって」

 

「ん~~~確かに美味しいんだけど、やっぱり高専で食べたラーメンの方が美味しいかなあ」

 

「おいセンパイたちがさんっざんっぱらいいこと言ってフォローした矢先に提案者がぶっ壊してんじゃねえよバカ目隠しィ!」

 

「おかか!こんぶ!すじこ!」

 

 五条先生はいろいろぶち壊すねぇ……と頑張った後輩たちの料理を完食したけど台無しにした包帯目隠し先輩に向かって私は無言で笑顔を整えて、秤君が掌印を組み、私は顎下に召喚器を突きつけた。




 ファンパレにあったグルメブームがちゃんと行われた場合の話が書きたかった。ちなみに最後のゴジョセンの真意は「甲乙つけがたいから流れぶち壊してうやむやにしちゃえ」です。普通に美味しかったので決めかねた結果のクズ行動です。なお琴音も秤も綺羅羅も勝敗についてはうやむやにしてフォロー入れてるので実力自体は拮抗してます。

 次回でちゃんと原作の流れに戻りまーす。秤と綺羅羅書きたかっただけ!
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