ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第十八話 乙骨憂太大改造計画!

「いくぜ、センパイ!ちゃんと合わせろよ憂太!」

 

「は、はい!いきます!」

 

「おいでおいで~~。乙骨君はちゃんと竹刀に呪力を通すんだよ?」

 

 夏真っ盛り、どうも最近みんなのご飯が美味しくてうれしい汐見琴音です。乙骨君の入学からはや4か月、真希ちゃんはどうやら最初の小学校の一件で乙骨君に対しては学友として認めたらしくて態度は軟化し、なんだったら下の名前で呼ぶくらい仲良くなってます。まあ真希ちゃん自身名字呼びされるのが嫌いだから下の名前で呼んでるのかもしれないけどこれは大きな一歩だ!

 

 振り下ろされる大刀を模した棒を左一歩踏み込んで躱して踏みつける。そこで私の後隙を狙ってきた乙骨君の横薙ぎ払いをその場でバックフリップをして刀で言う側面を蹴り上げて対処、着地で棒を横に払おうとした真希ちゃんに対してもう一度棒の上に着地することでそれを封じ飛び膝蹴りを胸に入れる。

 

「ごへっ!?」

 

「真希さん!?」

 

「はい注意散漫」

 

「ぶへっ!?」

 

 乙骨君の注意が真希ちゃんにそれたのを利用して踏み込んで竹刀の振れない懐に潜り込んだ私の肘撃ちが乙骨君の鳩尾に突き刺さる。思わずお腹を押さえて崩れ落ちた乙骨君だけど、真希ちゃんがあの程度で倒れるわけもないので当然後ろから狙ってくる。そうそう、弱いところはついていかないと、当然私もね。

 

「こんの……当てづれえ!」

 

「でっしょー、的を絞るって難しいんだよ。私は素で絞られてるけど!」

 

「やっかましいな!」

 

「はい大振り、だめ~」

 

「どわぁっ!?」

 

 私は殴り合いじゃどうしても不利だ。だけどこのリーチの短い体が逆に有利に働く場合もある。武器持ちだろうが無手だろうが相手の間合いの超々内側に潜り込めるのだ。つまり相手が近すぎて攻撃し辛いしできても威力が乗らない間合いが、私の間合いになる。あとは相手が焦って大振りになった瞬間にカウンターを入れる、真希ちゃんの焦った大刀を離しての片手突きを取って背負い投げ、打ち付ける瞬間引いて大ダメージは回避。

 

「私に挑みかかってくるのはいいんだけど、私を参考にしちゃだめだよ?私みたいなサイズの術師も呪いも少ないんだから。五条先生の方が経験になるんじゃない?」

 

「……センパイから一本とれねーのにあのバカ目隠し殴れるわけねーだろ。それにあいつ欠点しかいわねーからどうしたらいいか分かんなくなるんだよ」

 

「あー、五条先生って雑!って指摘してくれるけど、こうすると雑じゃなくなるよとは言わないもんね」

 

「僕も、呪力雑としかいわれてないな……あはは」

 

「うん!乙骨君実際ものすごく雑だから!入学した時の私よりひどい!術式がどうしてそれで動くのか不思議なレベル!多分出力が大きいから無理やり動かせるんだろね!」

 

 乙骨君の呪力操作、確かにものすごく雑。というかひどい。私の入学当初よりひどいって即答できるくらい。私は術式を使うために必要な分の呪力を必要な分だけ使う程度のことはできてたんだけど乙骨君は必要量の20倍くらいをぶち込んでしまう。で、効率もひどいからそれでようやく術式が動くくらいなのだ。でもそれで使い続けても全くもって呪力が減らないのだから恐ろしい。頼もしい後輩だぁ、頑張らないと。

 

「実際のところなんだけど、乙骨君の呪力が乙骨君由来のものなのか、リカちゃん由来のものなのかわからない今、呪力操作と呪力効率の向上は急務だと思う。もしリカちゃん由来だった場合解呪できたとしたときに乙骨君自体の呪力が少なかったら今までの感覚で術式使ったら枯渇するどころか動かないと思う。リカちゃんの呪い解くんでしょ?」

 

「はい。でも感覚よく掴めなくて……五条先生は抽象的だし、真希さんは聞くなっていうし、パンダ君は生まれた時からできたからわからないそうだし」

 

「乙骨君はまず呪力の絞り方を覚えるべきだね。五条先生からもらった刀にリカちゃんの呪いを少しずつ移していくなら少量ずつ込めるやり方を覚えないといくら刀が呪物でもそのうちぱっきーんって壊れるよ」

 

「……そこらへん私にはわかんねーんだけど実際どんなものなんだ?呪力を纏うって感覚は」

 

「わかりやすく説明すると、お腹の中から意識して血管を巡って冷たいものが体をはい回っていくような感覚かな。呪力って決していい物じゃないからね、わかりやすく言うならこう」

 

 呪力って決していいものではない、というのはわかり切った話だ。だって負の感情だよ?怖い、苦しい、嫌い、死ね……そんな感情でできたものが体を巡っているんだ。実際感覚としてよろしいかよろしくないかで言えばよろしくない。かといって慣れ切ってるのでだから何だという話でもある。感覚として説明するなら大体こんな感じだ。

 

「呪力を纏う、あるいは流す……説明は簡単だが感覚を掴むのは実際には難しい。ならば!見せるのが一番早い……そうだろう、琴音(マイシスター)よ」

 

「東堂君!?わー!久しぶり!どうしたの今日は!?こんな僻地まで来て!?」

 

「東京を僻地って……つーかなんだあのゴリラ……」

 

「む、紹介が遅れたな。俺は東堂葵!京都校の2年にして琴音の超親友(ソウルブラザー)だ!だがしかし琴音よ、予定を忘れるとはお前らしくないな」

 

「……あ!そうじゃん!明後日高田ちゃんのサマーライブなんだった!ってことは前乗り!?」

 

 ぬっ、と私の背後にさす影とものすごく聞き馴染んだ声に振り返る。そこにいたのは懐かしいちょんまげドレッドへアの性格は合わないけど息は合う、見た目ドストライクの東堂君だった。どうしたのどうしたのと彼の周りをちょこまか動き回って本人確認が済んだ私は思いっきり正面からハグをかました。うん、この腹筋は東堂君だ!

 

「ちょうどいいところに来たねー東堂君。折角だし教えてあげてよ~。呪力の回し方」

 

「そんなもの琴音が言葉にすればすぐだろう。視えもしないならば教える以前の問題だ。見せるだけならまぁ、構わんが……だが!聞くことは聞いておこう。おい、そこのお前」

 

「え、僕!?」

 

「そうだ。噂に聞く特級被呪者だな?俺の質問に答えろ、好きな女のタイプは?男でもいいぞ」

 

「え、ええええ!?」

 

「あー、東堂君は好みの異性のタイプでその人の人間性を測ろうとする悪癖があるの。ただ……乙骨君が強くなりたいっていうなら素直に答えといたほうがいいと思う」

 

 この好きな女のタイプを聞くのも懐かしい。普段だったらやめなさいと止めるところではあるけど乙骨君が強くなるというなら東堂君が自分から協力してくれる程度の関係を築いてもらった方がいい。私のお願いで仕方なくやってくれるよりは明らかにモチベがかわるしねえ。

 

「どうした?即答もできんつまらんやつなのか?ならば俺は去るぞ、琴音がお前に時間を割いている意味をよく考えろ」

 

「……!僕には、心に決めている人がいます。その人はもう呪われてしまって人ではなくなってしまったけど……ずっと一緒にいると約束をした人です。好きな女のタイプじゃない、僕はその人が好きなんだ!」

 

「あれ……憂太これガチ告白じゃない?」

「しゃけ」

「いや、やめてやれよ本人覚悟決めてるんだからよ」

 

 1年生3人が隅で集まってなんかごちゃごちゃ言うてるけど乙骨君の今の精神を言葉にしたら多分こんな感じなんだろうね。うーん、リカちゃん……いいや里香ちゃんが聞いたらとても喜びそう。乙骨君が害されたらという条件を満たさない限りリカちゃんは出てこない、いや……半分縛りみたいなものだから出てこれないが正しいか。だから聞けてはいないのだろうけども。もったいなー。

 

 にぃ……と東堂君の口の端が吊り上がる。思わぬ掘り出し物を見つけた感じか、それとも大きなダイヤの原石を見つけた気分なのか。私の時ほど感極まってはないみたいだけど興味を引くことには大成功だ。よかったね乙骨君、東堂君は頭がいいし頼りになるよ~見た目からも頼り甲斐があるよね!

 

「最初はどーもナヨナヨしていて生きていけるのかすらわからんかったが……なかなかどうして芯が通ってるじゃないか。その言葉、飲み込むなよ。今何に悩んでいる?言ってみろ」

 

「え!?え、っと……呪力を回して刀に籠めるのが上手くいかないんです。普通に籠めようとすると刀が耐えられないし、かといって絞ると籠めるのが遅すぎて隙だらけに……」

 

「なるほどな。その場合解決法は二つある。まず一つはお前が言う『普通』量の呪力を込めて振るっても耐える業物を見つけることだ。だがこれは対症療法であって根本解決にはならん。琴音やMr.五条がお前に身につけさせたいのは呪力量をコントロールすることだろう。よってこの手段は却下だ」

 

「で、結局二つ目が乙骨君の呪力の感覚を私たちに合わせること、なんでしょ?」

 

「然りだ。だが、正直に言えばここにいるメンツでその参考になるのは俺かそこの銀髪くらいだろう。Mr.五条も琴音もそういう意味では話にならん」

 

「だよねー」

 

 あっははー、といいつつ東堂君と同じ結論に至っていた私はやっぱりあっていたのだとちょっとほっとしつつ頷いた。確かに『普通』の呪力操作を私と五条先生はしてないので。呪力のコントロールの感覚は多分みんなとは違うんだと思う。乙骨君がわかっていないっぽいのでちゃんと言葉にしてみようか。

 

「乙骨君、私が目の前で術式を使ったこと何度かあるよね?その時どうなってた?」

 

「え!?確か、一気に膨らんでなくなって……あれ?」

 

「そうなの。私、術式使うたびに本当なら呪力が底をついてるんだよ。ただ私は呪力の回復がものすごく早いからすぐに元に戻るだけなの。一応少しずつ呪いを物に籠めることは出来はするけど得意じゃないから呪具はこれしか持ってないし基本的に素手なんだ。実際のところ私の実戦での呪力運用は一気に使って一気に減らす、乙骨君と似た感じなの」

 

「対して、Mr.五条の場合だが彼は呪力効率が良すぎるから参考にならん。体質故の呪力効率はどう逆立ちしても真似できんからな。呼吸の仕方を説明しろと言われても困るだろう?そういうことだ。だから、そもそも聞く相手が間違っている。お前が話を聞くべきなのは特級術師ではなく2級から1級の術師。その呪力コントロールを参考にさせてもらうことだ」

 

「という話をしようとはしてたんだけどここにやってきてくれた準一級の東堂君がいるのでご協力をお願いしますというわけなんですよ。あ!ちょっと待っててね!東堂君よろしく!」

 

「任せておけ」

 

 やはり東堂君とは息が異様に合う。こう説明したいという部分をくみ取ってくれるので私が説明できなかったところを補足してくれたりわかりやすい例を出して説明しやすくしてくれたり至れり尽くせりなのだ。京都校の皆にもこれくらい鷹揚ならなあ、と思いつつ私は宿泊施設に突撃してそこにいたスーツの人を引っ張ってくることに成功した。

 

「連れてきた~~~!」

 

「……いや、誰だよその金髪グラサン」

 

「のっけから失礼ですね。私は別に帰ってもいいんですが」

 

「そうだよ真希ちゃん!この人は七海建人さん!一級術師だよ!そういえば見かけたの思い出したから引っ張ってきた!」

 

「なんで一級術師当たり前のように引っ張ってこれんだこのセンパイ……?」

 

「まあ、特級だからな……」

 

 かくかくしかじかと七海さんに引っ張ってきた理由を説明するとそういうことですかと一つ頷いて乙骨君強化計画に乗ってくれることを約束してくれた。東堂君は京都にどうしても帰らなきゃいけないので七海さんの協力は必要不可欠、おねが~いと両手を握ってみれば彼は割と二つ返事で引き受けてくれた。

 

「全く、五条さんと違って汐見さんには人徳がありますね。彼女が教えてくれていて良かったですね乙骨憂太君、五条さんならこうはいきませんよ」

 

「なんか……あれよあれよという間にすごい体制になってる気がする……」

 

「いや、それは違うぞ乙骨よ。今のお前の状態がイレギュラーなのだ。本来ならお前に憑いた呪いを暴れさせないように軟禁し一級術師数名規模で結界を編んで監視するのが呪術総監部のやりかただ。それをMr.五条と琴音(マイシスター)が責任を持つというから自由を確約されている」

 

「そういうことです。歯に衣着せぬ物言いになりますが五条さんは言うに及ばず汐見さんの時間も安くはない。だが、彼女が君を気に入ったからこうしてあなたに時間を使っている。君の人徳というやつです。胸を張りなさい、そしてできうる限り応えてあげなさい。それが今の君のやることですよ」

 

「……はいっ!よろしくお願いします!」

 

「よろしい、では今日はどれくらいできるのか見せてもらいましょう」

 

 乙骨君のレベルは4カ月でかなり進んだ、つまり基礎の基礎ができて教えるラインに立てたということ。これすんごいこと、私はある意味別枠なので比べちゃいけないけど乙骨君があの小学校の件以来毎日頑張ってるのは知っているから、私は君を気に入ったんだよ。




 次回、交流会デス!次が宣戦布告、その次が百鬼夜行で行けたらいいなあ。がんばろ。でもこのくらいのケアを乙骨君は受けてもいいと私は思うの。しかし東堂がいると話が進めやすいのはさすがだぁ……琴音さんはにぎやかしにしか基本ならんので……。
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