ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
「君、交流会出れないからそのつもりでね」
「なんでですかーーーっ!!!」
「僕はだせって言ったんだけど、君の術式ってやれること多すぎるじゃん?どんな競技にしても君が全部ひっくり返して場を支配するのが目に見えてるよね」
「それはまあ、そうですが」
「んで君は僕と同じ特級術師、本来交流会は他校の生徒を見て上のランクにあげるかどうかを判断するために行われてる。一番上にいるのに参加する意味イズ何ってことらしいよ、クソつまらないけど」
なるほど、納得はできないけどわかったような感じはする。要は私がいるせいで他の人の活躍の場が奪われてしまって階級の査定として成り立たなくなってしまうと。えー、私の学生時代の青春が~~~なんで~~~~。
「それはまあ建前なんだけど実際のところ君をどっちで出すかで学長同士がレスバ繰り広げたんだよね。君多分京都側で出たいでしょ?」
「それはもう、私は京都校が心のふるさとですから?」
「だけど夜蛾学長と僕は東京側で出したかった。夜蛾学長の理由は知らないけど僕の理由は単純明快、君と葵が本気でぶつかり合うのが見たかったから。場合によってはそれで葵を一級に推薦するつもりでもあったんだけどまあ、ダメだったよ」
あ、そうなんだ。人気者は辛いねー、なんて。肩をすくめて見せるんだけどまあ、納得できなくもない。五条先生が横紙破りをして私も無理やり出そうとせず直接だめですって伝えに来てる時点でダメなものはダメなんだろうね。出させるんなら何も言わず東京側で出てね~で終わりだし。
「ただ、それじゃあまりにも君にとっていいことがない。君が強くなろうと貪欲にいろんな人に教えを受けようと走ってることは知ってるからね。だから今回僕が!君に!ご褒美を用意しました~~!!!」
「……なんでしょう!?回らないお寿司とかですか!?」
「残念!もっといい物さ!憂太の件が決着着いたらなんだけど、僕と本気で戦う機会を設けるよ。もちろん僕もなんでも使って君を潰す。手や足ぐらいなら吹き飛ばすだろうし領域もその気で使う。君に必要なのはそういう機会だ」
「え、ほんとにいいんですか……?ほんとにほんとに?」
「ああもちろん!多分だけど君……僕相手でも出してない手札あるでしょ。意図的に隠したジョーカーのような鬼札、領域でも使わなかったそれも使えるよ?やるときは無人島を借り切って行う。邪魔が入らないようにね」
すごい、なんて素敵な提案なんだろう。先輩風を吹かして見せてるけど私は結局呪術界に入ってまだ一年と半年のぺーぺーだ。でも、黒閃を経て自分の呪力を理解したことでレベルアップし、それからもこうしようああしようと努力を重ねてきた。まだ荷が重いななんて考えてる特級という枕詞に納得したい、自分が特級なんだと胸を張りたい。そんな気持ちがないわけじゃない。
五条先生に隠し事はできない、確かに私は誰にも見せてはいない隠し札がある。東堂君にも教えていない領域以上の奥の手。私の呪力の本質、疑似的な死によってもたらされる大量の呪力が一体どこから来ているのか、その答えを。私にこの力をもたらしているのがなんなのか。
多分今は使えない、だけどもう一度黒閃を撃てればおそらく届く。今はそんな感じだ。黒閃また撃ちたいなあ。夏油さん以来撃てたの一回だけだもん。黒死天覧宮くんの時に偶然だから、だけどやっぱり黒閃を撃てると理解が進む。もう一度で蛹が羽化する、蝶になれる。
「しょーがないですねー、わかりましたわかりました。五条先生がそこまで言うんだったら我慢してあげますよーだ。その代わり忘れないでくださいね」
「忘れるわけないじゃん。なんだかんだ言って僕に周りを気にせずに本気で戦るって決めさせるのはすごいことなんだぜ?僕だって楽しみなんだからさ、すっげえ顔で笑ってるの自覚してる?」
「ええそりゃもう。東堂君のオリジナル笑顔そっくりでしょう?まぁそんなことはいいとして。結局私がいないんじゃ京都の勝ちで終わりますよ?秤君と綺羅羅ちゃんがやる気出したら別ですけど」
「あ、そこらへんは平気。憂太だすから」
「………………はぁ?」
思わず固まってしまった。憂太を、出す……乙骨君を交流会に出すってことぉ!?いやそれはその、よろしくないというかなんというか……まず間違いなく喜んだ東堂君に奇襲されて術式なしでボコボコにされた挙句にリカちゃんがこんにちはする未来しか見えないんですがそれは?
「んー、たぶん琴音が思ってる通りの展開にはなると思う。だけど今の憂太は経験が足りない。格上が本気で狩りにくる恐怖を知らないし、抗う気力を生み出す方法も、それを引き出すことも知らない。実戦じゃないけどそれができるなら出さない理由がない」
「まぁ、東堂君なら間違いなくリカちゃん相手でも五体満足で生き残れると思いますし加茂くんと桃ちゃんメカ丸君も大丈夫でしょう。ただ霞ちゃんと真依ちゃんは……」
「あー、それはおじいちゃんと協議済みだから安心して。思いっきり顔しかめてたけど仕方あるまいって。だいぶ変わったねあの人」
「それなら安心です。乙骨君は術式を使えるようにはなりましたけどまだまだなところがありますからね。リカちゃんを使いこなしたらだいぶ化けるとは思いますけど単体なら東堂君には勝てませんし」
結構ひどい評価をしてしまうと思うんだけど今の乙骨君は索敵サポートタイプの桃ちゃんと戦ってギリ勝てるかどうかって感じだ。いくら呪力量と出力が大きかろうと経験と自分の術式に向き合ってきた人には及ばないのが現実。それ全部ひっくり返すのがリカちゃんなんだけどなあ……あれずるいって。
とりあえず納得しました、と私は冷蔵庫からプリンを取り出して砂糖を塗してバーナーでキャラメリゼした後に五条先生に作った容器のまま差し出した。一人で全部食べるのはわかってるし残さないので切るのはやめましたですはい。
「やっほー、お久のお久!みんな元気だった~?うむぎゅっ……真依ちゃんどうしたの?」
「……は~~~~~……これよこれ、琴音先輩がいないとストレスしかないんだから……疲れが抜けてくのを感じるわ……」
「まア……東堂が嫌われている理由を理解した半年だっタ」
「琴音、君がいなくなってからというもの東堂も荒れてな……この前東京から帰って来た時からはなんだか機嫌がいいんだが」
「あ、それは多分乙骨君が東堂君のアレを潜り抜けたからと高田ちゃんのライブの相乗効果だね。皆も別に性癖開示して仲良くやればいいのに」
乙骨君が京都に交流会行くのなら、私も行かなければなりません。忘れかけてるけど一応任務なので。そんなわけで交流会に合わせて帰省した私がなぜか校門前で待ってた皆に合流すると真依ちゃんが私に抱き着いて頬擦りし始めた。皆久しぶりだねえ、なんだかんだ帰ろう帰ろうって思ったけど帰る余裕なかったから直接顔見せに来れて嬉しいよぉ。
「ジジイから琴音が交流会に参加しないと聞かされた時はどうしてやろうかと思ったがまあ、乙骨が出るならば我慢できよう。それに、琴音にもいいことがあったのだろう?顔に出ているぞ」
「えっへへー、わかるぅ?なんとですね!五条先生と本気で死ぬ寸前まで戦うことになったの!お先に最強に挑んでくるね……?あれ?」
みんなして何その……『それのどこがいいことなんだ?』という顔は。東堂君くらいだよ嬉しそうなの。もっと盛り上がってハンズアップ!ワンチャン京都校から最強二人目が出るかもしれないのに!それはまあ言いすぎか、チャレンジャーなのは事実だし。
「もういいや、東堂君……すごく期待してる」
「任せておけ、よりやる気が漲ってきた」
「琴音……焚きつけるのはやめてくれないか……?」
先生の集合の合図を前に東堂君に発破をかけておく。乙骨君が出ると聞いてやる気だった彼はさらにやる気をみなぎらせていた。リカちゃんが出てこなければなあ、東堂君の勝ちは揺るがないんだけどそううまくいかないのが世の常なわけで。
「どうした乙骨ぅ!!避けるばかりでは俺も棒も倒せんぞ!?」
「そんなこと言ったって……!」
今回の競技は棒倒し。どうせ東堂君が攻めると知っている京都校の皆は東堂君一人に攻勢を任せて自分達の棒を倒させないように守ることにしたようだ。で、乙骨君は先輩たちにリカちゃんパワーを出されたら不味いから下がってろとのこと。このままだと乙骨君は何とかできても秤君と綺羅羅ちゃんが到達した瞬間負けるなあ。
術式を使わず基本的な呪力操作と拳で乙骨君に殴りかかる東堂君とその拳を何とか受ける乙骨君、呪力操作はおぼつかないけど込められた呪力量が膨大なので差し引きだとプラスだ。クリーンヒットじゃないと通らないねこれ。やるぅ~。
「ぐあっ!?ま、まだ……!」
「技術は追いついていないがいい眼をする。そうだ、その眼だ!激情を力に変えろ!怒りを胎の中で燃やせ!できたもの片っ端から全身に流せ!それが呪力を扱うということだ!」
「『ドラミングビート』っ!!」
「これは……!ふく、ふはははは!それは
乙骨君の正拳が東堂君のガードの上から突き刺さり、響く衝撃が東堂君を襲う。防御不能攻撃であるパンダ君の術式を乙骨君が使う。他人の術式をコピーしてストックするのが乙骨君の術式。名称は鋭意募集中!だけどパンダ君ほどの膂力がない乙骨君じゃ威力もさほど出ないことに東堂君なら気づいてるよね。
「他者の術式を模倣できるなら使えるのだろう?
「……無理でした。僕がそれを使っても出てきたのは……里香ちゃんだった」
「そうか、お前の魂とその過呪怨霊はつながっている、ならば魂を具現化するに等しい琴音の術式で出るのは当然その過呪怨霊……ならば!」
「入れ、かわった……!?」
「俺の術式ならば使えるのだろう?見れば一度で理解できる簡単な術式だ。名を不義遊戯という」
乙骨君と東堂君の位置が入れ替わる。乙骨君の術式コピーの制限はかなり緩くて、見る、知るの二つだけでいい。だけど、乙骨君は気付いてないかもしれないけどたった今東堂君の術中にハマった。使わせてやろうという余裕に見せて自分が一番よく知る武器を相手に渡すという弱点の強制露出だ。
そこからは乙骨君と東堂君が目まぐるしく入れ替わる。乙骨君が手を叩けば東堂君が手を叩いて不義遊戯を発動し続ける。位置をずらしたい乙骨君に対し東堂君はあくまで元の位置に戻すという使い方。普段の東堂君を見ればありえない戦い方だけど、普段を知らない乙骨君はそれに気づけない。殴り合いの音と拍手の音が重なり続ける。
何十回目かの位置入れ替え、乙骨君の頭の中には東堂君はあくまで自分と真正面から殴り合うことが目的だと刷り込まれ続けた。そういう風に東堂君が動いているからだ。だから乙骨君は裏をかきに行った。拍手をして位置入れ替え、からの連続拍手を6回、入れ替え続ける中で東堂君が手を叩き……その姿が乙骨君が手に握っていた刀と入れ替わった。
「ウソだ……っ!?がはぁっ!?」
「俺が一番得意とする術式だ、コピーされたところで振り回すだけなら宝の持ち腐れ。故にこういうことが起こる」
超々至近距離からの呪力がたっぷり籠ったラリアット。決まり手はそれだった。地面を割る一撃に乙骨君は意識をかろうじて保っているものの背中から叩きつけられたせいで呼吸すらままならない。ここまでは予想通りだ、ちょっとだけ長く持ったかもしれないけどまぁこんなものでしょう。あとはここから。
【ゆ゛ゆ゛憂太を゛ぉぉぉ!虐めるなあああああああっっ!!!】
「あっちゃー、やっぱでちゃったか~~。琴音、立たなくていい。僕が行く」
「はーい。でもさー、トリガーよくわかんないですよね。なんで乙骨君がやられてから出てきたんでしょう?殴られてるときに出てきてもいいのに」
乙骨君の影が広がり、圧倒的な呪力が質量を伴って現れる。半顕現って感じだけど祈本里香の参上だ。私がいったら外聞上よくはないという五条先生に止められて立ち上がりかけた腰を下ろす。暴れ狂うリカちゃんに臆せず立ち向かう東堂君だけど攻撃の規模が違う。ビームのような呪力が飛び散り、高専全体が揺れているようだ。両者の棒が余波で倒れこむ、あーどうなるんだこれ?
「なんで彼女が出てこないかなんて理由は簡単だよ。大好きな男の子が頑張ってるのを邪魔できない。愛という呪いが本能を凌駕しているのさ」
「健気ですねぇ。これで、生きてたらよかったのに」
「ほんとにね」
そういって五条先生は姿を消す。ほどなくして紅い閃光がリカちゃんを消し飛ばした。だけど、もう再開できる感じではないよね。
原作だと多分ボコされてすぐリカちゃん顕現で東京の勝ちだったんでしょうけどこっちはちゃんと頑張った乙骨君と理性で本能を抑えてたリカちゃんの流れでした。結果はまあ変わりませんが。東堂が勝ってもうーんだしかといって乙骨が圧倒してもおかしいし、難しいものです。ではまた次回に。