ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第二話 仮想仮面想術、ペルソナとは

 トリガーを指にかけて引き金を引く。どうせ弾は出ないんだから死にはしない。そうは思っても怖くないわけはないけど、それを言ったら何も始まらない。じゃあ笑顔で引き金を引いてやろう。我は汝、汝は我……心の海より死を契機においでませ。きっと驚いてもらえるよ

 

「―――オルフェウス」

 

 セミロングの髪、紅いスカーフ、機械のような体。半透明だけど呪術的には明らかに実態を持っている……らしい。そこら辺に関してはわかんないや、ごめんなさいね。ハート形の竪琴を爪弾き出したオルフェウスを見て五条悟と名乗った東堂君より上背がある人が白い布の目隠しを外して蒼い瞳を露出しオルフェウスを下から上まで見ていた。

 

「躊躇なく一度死んだな、汐見(ベストフレンド)。お前の術式がそれか。死を契機に内に眠るモノを現世へ引きずりだす……式神とは違うアプローチだ」

 

「お、さすがは九十九さんの推薦。見ただけで凡その術式を言い当てるとは。さて新一年生。僕は東京校の教師だけどだからって君たちに何かを教えちゃいけない理由にはならないよね。ということでここで質問。呪力を練るのに最も効率のいい手段は?」

 

「負の感情を爆発させること。恐怖、憎悪、怒りに悲しみ、種類は問いません」

 

「ああそうだその通り。さすがは加茂家の嫡男だ。それが定説だった……今までは。だけどこの見た目幼女のせいで今全部ひっくり返ったよ」

 

 見た目幼女、事実だが他人に言われると腹が立つ。抗議のためにオルフェウスが持ってる竪琴を振り上げて威嚇してみるものの自称最強さんはやってみれば?とのこと。それだけ言うのであれば当たらない理由があるのだろうということで素直に降ろす。

 

「ほんっとに頭ぶっ飛んでんじゃないの君?疑似的とはいえ一度死んだんだぜ?眉の一つも動かして見せろよ。特級相当の仮想呪霊を生み出しておいてさ」

 

「と、特級!?」

 

「非術師も死に際に呪いを見ることがあるように『死』という概念は呪術的に最強のワイルドカードの一つだ。実際僕も死に際でつかんだものあるし。じゃあ、術式を使うたびに仮に死んでいたら?答えがこの仮想呪霊、死に際に発せられた呪力をすべて込められて召喚されたんだ、最低でも1級はあるだろね」

 

「しかも、それだけではない。オルフェウス……ギリシア神話における詩人の名前だ。そして姿、持ち物、呪力からしてその死で生じた呪力を概念で誘導し形を持たせた……つまりオルフェウスという概念そのものを受肉させたに等しい」

 

 はぇー、そうなんだ。私にとってオルフェウスは私自身だから他人から見るとそうなるんだね。失礼な話だけどさっきまでものすごい勢いで暴れそうになっていた東堂君からインテリジェンスあふれる言葉が飛び出してきてとてもいま混乱してる。

 

「もう消していいです?」

 

「ああ~いいよお疲れ様~。いや~君すごいね。楽巌寺のオジイちゃんが自慢したくなるわけだ。呪術師向きだよ。等級は?」

 

「……これには四級って書いてありますね?東堂君は?」

 

「俺か?俺は二級だ」

 

「おおー2階級特進、すごーい」

 

 青い光に分解されて消えていくオルフェウスを横目に学生証を取り出してみてみるとそこには四級術師との文字が。まあそういうものなんでしょうと一人納得する。で、五条さんに向き直ってみると彼は天を仰ぐようにして大きなため息をついていた。

 

「西宮桃さん、今のを見て彼女何級だと思った?」

 

「……低く見積もって準一級、です」

 

「今のだけを見ればそのくらいかもね。楽巌寺のオジイちゃんもたまにはまともなことするじゃん。秘匿死刑をさせたいのかと思ったら防ぐために低く申請してら」

 

「なら五条さん、あなたから見る彼女はどうなんですか」

 

「特級に届く、それも1年以内に。現時点で見て術式だけなら使いこなしてるんだよこの子。ただ、呪力の操作がものすごく雑だ。どうしたらこんな歪になるんだか」

 

「暇があったら引き金は引いてたので~」

 

 おじいちゃんからの遺品に月から落ちてきた黄昏色をした蝶のような羽根を仕舞ったら分離できなくなったうえに変な感じになったこの拳銃を手にして10年は経っている。私の術式?とやらは私の経験をもとに心の中の海に潜む人格に姿と形を与えて現世に引きずりだすもの。私の人格の上を鎧うもう一つの私、だからペルソナという。ナイスネーミング中学2年生の私。

 

 平たく言うと楽巌寺校長先生がつけた仮想仮面想術という術式を毎日のように使い始めて10年経っているんだから、そりゃ慣れてはいるんじゃないかな。知らないときはシャドウなんて勝手に名付けた呪霊とも戦ってはいたし。

 

「じゃあなに?暇があったら自殺シミュレーションしてたの?それで私イカれてないは通らないでしょ。そうだなあ、一回全力を見せてほしいし校庭でようか。興味ある子はついておいで」

 

「あえ?」

 

 五条さん?先生?は私の首根っこを掴む。ぷらーんと片腕で持ち上げられた私の眼前の世界がブレる。教室の中から砂ぼこりが立ちそうな伽藍洞の校庭に。まだ私上履き……なんてことを言う暇もなく無言で降ろされた。むすぅ、としてみるものの傍若無人らしい彼は知らない顔だ。

 

 ひゅ、と音がして私の近くに何かが落ちる。消しゴム?私たちの教室のほうを見ると東堂君が何かを投げた体勢からそのまま両手をパン、と音を鳴らして柏手を打った。すると東堂君の姿が掻き消えて私に影が差す。東堂君が眼前に現れていたのだ、消しゴムは見当たらない?位置を入れ替えたのかな?でも……。

 

「呪術師って瞬間移動がデフォなんですか?私もできるのかな……」

 

「いや、違うぞ汐見(ベストフレンド)。Mr.五条と俺は術式を使用して今ここに立っている。少なくともそういう術式でないと今の芸当は不可能だ」

 

「さて、興味がある子も来たことだしルールを説明しよう。君が僕に一発本気で攻撃すること。僕は攻撃を避けないし受け止める。僕は君に攻撃をしない。以上」

 

「そんなこと言うからにはなんかからくりがあるんですね。絶対に当たらないとか、絶対に届かないとか、絶対に守るとか」

 

 なんか、振り回されてばっかりだな今日の私。なんだか怒りがわいてきたぞ。私の返した言葉がお気に召したらしい五条さんはにやぁ~といやらしい猫のような腹が立つ笑顔を浮かべて大きく拍手をした。あまりにも腹立ったので手を挙げてぺちんとお腹を叩いてやろうと思ったら……手が進まない。いや、進んでるけど届いてない?進む感覚はあるのに彼我の距離がかわらない。

 

「正っ解!ご褒美に僕の術式を先に開示してあげよう。僕の術式は無下限呪術、無限を現実に持ってくる呪術だ。君の手が僕に届かないのは僕と君の間に無限が挟まっているから。さて、これを聞いて君はどうする?」

 

「一つ聞いていいですか?」

 

「お、これ聞いてもやる気?いいよ、出血サービスで答えてあげる」

 

「やりすぎて死刑なんて言わないですよね?スカウトの時そういうのもあるって担当の人が……」

 

「はっはー!そんなの僕が殺されたりでもしなきゃないよ!んで僕は名実ともに呪術界最強さ。雛鳥ちゃんは安心してかかってきなさい」

 

 そうなんだ。これくらい豪語するってことは最強っていうのはきっと事実なんだね。私よりも呪術の世界に詳しい東堂くんが否定しないってことがその証拠。それなら、ただの火力が高いだけの攻撃じゃダメだ。無限を突破する方法を考えなければいけない……私が持ち得る手段は、なさそうだけど。どうせダメでもともとだからやってみるだけやってみよう。こめかみに銃を突きつけ、引き金を引く。

 

「ペルソナ―――イザナギ!」

 

「そう来たか汐見(マイベストフレンド)!」

 

「イザナギ、『十文字斬り』」

 

「やるねぇ……!」

 

 現れたのは長ラン、白い長ハチマキ、鉾と刀を合体させたような武器を携えたペルソナ、イザナギ。また関係を勝手に進めた東堂君は察しているんだろう。どうしてこのイザナギを今回選出したのか。私の術式は呪力で以て人格を起点に概念を巻き込んでペルソナを作る。概念、概念だ。たとえそれが呪力で劣化して本物とは比べ物にならないとしても。

 

「何が起こっているんだ……!?無下限呪術が斬撃と拮抗している!?」

 

「わからんのか加茂よ!汐見(マイベストフレンド)が形作ったのはイザナギ……伊弉諾尊だ!呪術に明るければその伝説は知っていよう!」

 

「そうか、その鉾は海をかき混ぜ大地を創成した!伝説の中の国作りは世界作りに等しい!世界に耐えうる鉾を無下限に叩きつけている!?」

 

「そういうことさ。いやすごいねしかし。世界があるから無限があるのか、無限があるから世界ができたのか。パラドックスだよ、概念としてはドッコイドッコイだけど……!劣化しすぎだね!」

 

 遅れて昇降口から走ってきた加茂が言った通り無限というとてつもない大きさの概念と匹敵するくらいの大きさの概念をぶつけるのが私の作戦。つまりはスケール勝負に持ち込んだんだけど……ダメだ。私の概念はあくまでも副次的な効果に過ぎないんだから、概念そのものを操ってるのに比べたらお粗末そのもの、勝てるわけない。

 

 イザナギと無限の間に散っていた呪力の火花が大きく跳ね、イザナギが吹き飛ばされる。空中で態勢を整えなおしたイザナギと無傷のままの五条先生。だめだぁ、とこっそり凹む。くやしい、と下を向いていた顔をあげると目隠しを完全に降ろした五条先生と目が合う。うわ、こわ。

 

「いいね、僕の無下限と拮抗できた。これだけで呪術界的には快挙だ。そして君の持つ呪霊はひとつだけじゃない、それもわかった」

 

「ペルソナです~!ぺ~る~そ~な~~~!!!」

 

「あーはいはいペルソナね、ペルソナ。君、たぶん本気出すとすぐ特級認定されるね。んで秘匿死刑になる。だから、1年以内に実力を身に付けなよ」

 

「え、なんで?強いとみんな死刑にされるの?」

 

 呪霊じゃなくてペルソナ!と両手をあげて抗議をしてみると適当感丸出しで訂正してくれたものの心底どうでもよさそう。それはそれとして強いと死刑にされるってなにさ、というので首をひねっていると加茂くん、フルネームは確か加茂憲紀くんが説明してくれた。

 

「汐見さん、特級術師というのの査定基準は『単独で国家転覆が可能か否か』なんだ。神ですら呪力で呼び起せるとしたらすぐに認定されると思う。そして、術式だけで本人の実力が乏しければいないほうがありがたい、少なくとも上の考えはこうだよ」

 

「そうだね、クソッタレな考え方だ。幸い楽巌寺の爺さんが君の等級を意図的に落として情報も偽装してくれている。つまりモラトリアムを作ってくれたんだ。君はそのモラトリアムが解けるまでに上層部を跳ねのける力を身につけなければいけない」

 

「誰がCHALLENGEモードで呪術師はじめたいって言ったんですかヤダー!誘われただけなのに!私誘われただけなのに!」

 

「残念だなー、東京校に来てくれてれば僕の力でもっと伸ばせたのに。楽巌寺の爺さんのことだからある程度誤魔化した後は知らんぷりされるね」

 

「まあ、女ってのも考えればむしろしっかり目をかけられてる方なんじゃないかしら?」

 

 いつの間にか来ていた西宮桃さんが言う通り、私をスカウトした窓の人曰く呪術界は男尊女卑で女の子はそれはもう大変なのだとか。スカウトする気ある?と聞き返したんだけど詐欺になるとめんどくさいとのことで。ははぁ、なるほど。

 

「ともかく頑張んなよ。暇つぶし以上に良いもの見れたことだし僕はこれで帰ることにするよ。ま、歌姫あたりに投げとけば雑な呪力操作はどうにかなるさ」

 

「いや、汐見(シスター)のことは俺が見よう」

 

「また関係性進んでない?兄妹扱い?会って2時間くらいだよ今」

 

「君が?……いや、いいかもね。君らどうやら合ってるみたいだし。東堂君はそのまま行けば一級くらいならストレートで行けるだろうし、呪力のコントロールも悪くない。九十九さんの教え方はいいね」

 

 どうやら私はペルソナ使い(勝手な呼称)ではなく呪術師として地に足がついた強さを目指さなければいけないらしい。私、呪術師で言うなら術特化って感じの人間だよ今。格闘戦とかできないよ、サイズも筋力も足りないから。でもそれでもやらなきゃいけないのだろう、生きるために。

 

汐見(シスター)、根源的な話をしよう。お前の術式は強い、Mr.五条がそれを保証した。だが!お前自身は弱い!それでいいのか!?」

 

「全くよくない!」

 

「ならばこの手をとれ!俺を食らって強くなれ!俺にもお前を食らわせてくれ!」

 

「よしわかった!」

 

「多分わかっちゃダメ!?」

 

 東堂君が差し出してきた手を迷わずとる。西宮さんがなんか言ってたけど気にしない。いつの間にか消えた五条さんを置き去りにして話は進んでいった。あっやば東堂君の手おっきい、最高。




主人公
汐見琴音 

 見た目小さいペルソナ3女主人公。東堂の好みの真逆を行く体系をしている。コンプレックスかと言えばそんなことはなく自分からネタにできる程度には諦めている。精神性は東堂と阿吽レベルで息が合う上に躊躇なく疑似的な死を体感して術式を使うくらいにはイカれているものの別に壊れてるわけじゃない。性癖としてデカい人が好き、東堂ほどのゴリラなら一目ぼれしてもおかしくなかったが性癖を聞かれて冷めた。ペルソナが術式として成立しているのでベルベットルームはない。人間ステータスはカンストしているので東堂に合わせられる、余計に仲が深まる。
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