ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第二十一話 京都百鬼夜行、総力戦

「確認しました。特級レベルの呪力が比叡山、石清水八幡宮に一体ずつ。そして中心である伏見稲荷に三体ですね。つまりこれは……」

 

「京都の大結界の基礎を破壊するつもりじゃ。鬼門である比叡山、裏鬼門である石清水八幡宮。そしてそこをつながる龍脈の集積場である伏見稲荷……3つも落とせば京都に敷かれた結界は崩壊し……」

 

「術師たちがいいように使っていた呪力の流れは崩壊、その呪力はやがて呪いへと変わり東京をしのぐ呪いの坩堝になるだろう」

 

 金閣寺に敷かれた前線基地の中でヒミコという女性とアンテナを組み合わせたような探査型ペルソナの手にあるゴーグルを目にかけた私が情報を拾って報告する。本日はクリスマスイブ当日。それはつまり、夏油傑が言う百鬼夜行当日だからだ。本気だとは思ってたけどほんとにやるとは思わなかった、そんな感じかな。学長先生と私の隣に当たり前のように立つ東堂君の解説を聞く。

 

 日本各地には結界が存在する。東京にもあるし、京都にも、大阪にも、とにかくいろんなところにある。効果は大小さまざまだけどここ京都の結界は呪力の流れを御三家に向けて呪霊の発生を防ぐと同時に御三家や名家に呪力を流すことでより強い術師が生まれやすくしているのだとか。実際呪術の聖地と言われるだけあって事実かどうかは知らないけど強い術師は多いからね、京都。

 

『琴音?そっちの首尾はどう?もう僕もそっちに連絡できなくなると思うからさ。まあ死なない程度に時間稼いでくれたら東京終わらしてすぐそっち行くよ』

 

「こっちに七海さん他強い術師を送ってくださってますけど大丈夫ですか?向こうの狙いは十中八九乙骨君だって確認しあったのに」

 

『ああ、狙いが憂太なのはまちがいない。だけど、呪霊操術は主がいる呪霊を取り込めない。それは過去実証済みだ。だから傑の狙いは憂太の拉致の可能性が高い。なら、逆に開けておいて憂太を囮に使う。僕なら東京を更地にした後すぐに高専まで戻れる。逆に琴音だったらどんな相手だろうと有利に立ち回れる。だから京都だ』

 

「せめて1年生だけじゃなくて秤君たちも残したらよかったのに……」

 

『悪いんだけど、憂太一人のために数万人を犠牲にすることはできない。最悪憂太や残してきた生徒たちが死ぬことも視野に入ってる。命を数で測るのはクソかもしれないけど、僕たちはもうそう言う生き物にならなければいけないんだよ、琴音』

 

 五条先生からの電話での話に舌を噛む。確かに、そうだ。乙骨君は一人しかいないし大切な後輩だ。だけど私たち術師は顔も知らない呪いも見えない誰かのために呪いを祓い続けている。それを曲げてしまったらもはや術師ではなく呪詛師だ。乙骨君が狙いだとしても被害を受ける数万人を優先しなきゃいけない、当たり前だけど納得のいかない話。

 

「琴音よ。この戦の鍵、最大戦力はお前じゃ。だからこそ問う、お前はこの戦局をどう対応するつもりか?」

 

「……効率だけ考えるなら、まず鬼門の比叡山を落とします。伏見稲荷は結界の要である以上耐久力ならかなり期待できる。逆に一番壊されたら不味い鬼門の比叡山を一番に落として、そのあとに伏見稲荷。逆に安全性が高い裏鬼門の石清水八幡宮には秤君と綺羅羅さん、そして七海さんに行ってもらいます。彼らなら耐えられる」

 

「だが、伏見の特級は3体だろう?」

 

「はい、ですから……開幕で全域に一撃をかまします。一級以下の呪霊はそれでおそらくすべて刈り取れる。精鋭が残る形にはなりますが、数で押せるはずです」

 

「……もはやできるかどうかは聞くまい。しくじるな、それだけだ。聞いておったな皆の衆!呪術の総本山は容易く落ちぬ!だが、それまでの犠牲は貴様らが如何に奮起するからにかかっておる!学生風情に負けたくなければ気張れい!」

 

 私の肩に、作戦のすべてがかかっている。数万の命が私の背中の上にある。正直、いつものちゃらけた強がり調子が出ない。やれる自信はある、できる確信もある。でも万が一しくじれば?一体どれだけの人が犠牲になる?それだけじゃない、後輩と仲間が死ぬかもしれない。その事実だけで耐えられなくなりそうだ。

 

琴音(マイシスター)、俺たちはお前に詫びねばならない。その双肩にすべてを背負わねばならぬと思い込ませたことを、頼りにならないと感じさせたことを、守る対象になり下がったことを。だが!あえて言う!俺たちは全員で呪術師だ!頼れ!それがお前のやるべきことだ!」

 

 ばしん、ぐりぐりと勢いよく頭に手を乗っけられて乱暴に撫でられる。喝破してくれたのは東堂君、頼もしいな相変わらず。向こうで後輩の面倒ばっかり見てきたから私がやらなきゃやらなきゃって気持ちにいつの間にかなってたのかな。よし、いい感じに肩の力抜けた!東堂君の背中によじ登って、と。

 

「葵君、一緒に来てくれない?」

 

「っ!ああ!任せておけ琴音(マイシスター)

 

「学長先生、始めます。どうか、死なないで」

 

「ふん、貴様が巣立つまでは危なっかしくておちおち死んでおれんわ。行ってこい」

 

 葵君は散々今まで勝手に関係性を進めてくれたので今度は私から関係を進めてやろう。男の子を名前で呼ぶなんて初めての経験だぁ。ぶっとばしてゴーゴー!と前方を指させば弾かれたように葵君は比叡山までの道のりを走り出す。私はここでヘリで移動するから別れるみんなに大きく手を振って、召喚器を頭に突き付けて引き金を引く。即身仏になった高僧のペルソナが私の背後に表れ、鈴を鳴らした。

 

「だいそうじょう!―――――回転説法!さらにマハスクカジャからのヒートライザ!」

 

 京都全域に光でできた護符が回転するように散らばって呪霊がいる位置に光の柱が次々立ち、呪霊が昇天していく。反転呪力を用いた即死呪文、雑魚散らしにしか使えないけど900体前後は今ので祓えたはず。そして私たち二人を緑の光、葵君に緑赤青の三色の光が包み込む。強化呪文を受けた葵君は笑みを深めてよりスピードを上げて比叡山に突っ込んでいった。

 

 呪力の強化、そして強化呪文を二重にかけた体力自慢の葵君なら比叡山までいけるだろう、けどそれじゃ体力不足になってもおかしくない。役目を終えただいそうじょうから巨大な鳥のペルソナ、ガルーダにチェンジして葵君と相乗りで比叡山まで飛んだ。

 

「金剛力士像……って感じ?」

 

「正確には阿形だな。俺の予想が正しければだが……」

 

「吽形は別の場所にいる……?」

 

「十中八九鬼門の対となる裏鬼門、つまりMr.七海が担当している場所にぬぐっ!?」

 

 爛れた呪力めがけて飛び降りた私たち二人を出迎えたのは血まみれの金剛力士像であった。おびただしい矢にハリネズミにされたその呪霊は顔だけは厳めしくも凛々しさを保っているように見える。突然、風切り音がしたのでそろって防御をすると何か金棒のような感触と共に攻撃が入って吹っ飛ばされた。どんな術式だろう……?

 

「葵君、30秒耐えて――――ルキア!」

 

「承った!」

 

 十文字槍を手に出現させた呪霊は手慣れた様子でそれを振り回して突進してくる。葵君が前に出てくれてそれを殴って逸らす、と同時に全く関係のない場所を不可視の力が抉っていった。と思えば呪霊は葵君とは関係のない場所に槍を叩きつけたりしている。なんだ、何をしているんだこれ……?

 

 明後日の場所を殴ったと思えば別の場所を殴る呪霊、不可視の力も同じ。ルキアがもたらす情報を時間を稼いでくれる葵君が限界を迎える前に解析しなきゃ。どういう、どういう……?ちがう、これか?まさかとは思うけど……!縋るようにスマートフォンから電話をかけた。石清水八幡宮にいる補助監督さんに向けて!

 

『汐見特級術師!?どうされましたか!?』

 

「そっち!そこにいる特級呪霊の見た目を教えて!」

 

『は!?金剛力士像、が金棒をふりまわしていますが……!』

 

「やっぱり……!葵君わかった!あっちにいる呪霊が術式を通してこっちにも出現してる!実質2体なんだ!向こうとこっち同士の呪霊の動きはシンクロしてる!呪霊同士の視覚は共有されてるから変な動きだけど2か所で同時に戦ってるんだよ!」

 

「なるほど!つまり、どっちかがコイツを仕留めない限りお互い不利ということか!」

 

「そう!一撃で決める!合わせて!」

 

 空間を越えて自らの影法師をお互いのもとに出現させる術式、そんなところだろう。元は低級呪霊だったかもしれないけど二対一体になったことで数多の人と呪霊を食らい力をつけて特級になった。畏怖の対象として見られる金剛力士像というイメージもあるかもしれない、厄介だ。

 

 でも!なんもかんも消し飛ばしちゃえば関係ないんだよ!と葵君の背中にダイブしてとりつきルキアの視覚を共有。不可視だろうがこれで東堂君にも見えるはず!周りの物体に私が呪力をばらまいて無理やり込める。これで葵君の独擅場だ!不義遊戯で目まぐるしく変わる視界、だけど必殺の一撃のタイミングを葵君は知っている……今!

 

「ホワイトライダー!ワンショットキル!」

 

 白馬に乗った骸骨のペルソナが弓矢を引き絞り、放つ。胴体に大穴が開いた呪霊が槍を取り落としたけど、ダメだった!普通なら祓えてるのに!胸に空いた大穴に肉が埋まって再生する。繋いだままのスマートフォンにもう一度連絡!

 

「そっち、致命傷与えられてる!?どう!?」

 

『琴音ちゃん!?ごめん変わった!手短に言うけど見えない何かがいて、七海さんの術式で首を落としても再生した!カラクリがあると思う!』

 

「綺羅羅ちゃん!この呪霊は二体でワンセットだと思う!見えないのは私たちの方の呪霊の動きがそっちで再現されてる!こっちでも致命傷与えたけどダメだった!」

 

『ならば、同時に祓うしかありません。琴音さん、スピーカーのままでいてください。私たちが先にこの呪霊に致命の一撃を入れます。合図の瞬間にあなたがそちらを一撃で消し飛ばしてください。今秤君が大当たりを引き当てたのでチャンスです!』

 

「了解!葵君聞いてた!?行動不能まで持っていくよ!手足全部落として達磨にしてやる!」

 

「応!」

 

 時間稼ぎだこの呪霊!どうしてこんなにぴったりな呪いを引き当てたんだ夏油さんは!?種がわかればなんてことない、だけど……この呪霊は自身の術式を自覚して使っている!ものすごく厄介!ああ、もう!ぶん殴ってやりたい!

 

「イザナギ!切り落としちゃえ!」

 

 召喚したイザナギが鉾を振るって呪霊の手足を切断する。瞬時に盛り上がって再生する手足を切り刻み続ける。いい加減イラついてきた私、そして私と肩を並べる任務ということでテンションが降り切れていた東堂君、お互いの頭をよぎる確信に満ちた予感、東堂君の肩を借りて飛び上がった。

 

「「黒閃っ!!!」」

 

 呪霊の顔面を挟み込むような形で放った蹴りが二人して黒い火花を飛び散らせる。撃てた!撃てた!黒閃を!こんな作戦の序盤で!もういいね、遠慮しなくて!一かけらも残さずに消し飛ばしてあげるから!

 

「ペルソナ!オルフェウス――――タナトス!」

 

 オルフェウスを召喚し、召喚器を彼に突きつけ撃ちぬく。オルフェウスの外郭が崩れて中から引き裂くように棺桶をマントのように広げたペルソナが姿を現した。そのペルソナから放たれる濃密な死の気配に呪霊が釘付けになる。美味しそうに見えてるのかな?

 

『琴音ちゃん!今!急いで!』

 

「タナトス―――――メギドラオン!」

 

 空間が白色に染まる。反転で作られた呪力の大爆発だ。規模を抑えたけど威力はできるだけ据え置きにした。山の一角を削り取った大爆発の跡地には……もう何もなかった。電話口からの綺羅羅ちゃんの報告も祓えたとのこと。石清水八幡宮にいるみんなは道中で残った一級の呪霊を対処しつつ私たちの援護をするために伏見稲荷まで来てくれるとのこと。頼もしい!

 

「速く終わらせないとね、なにせ今夜は」

 

「ああ!高田ちゃんのスペシャル番組だ!リアタイを見逃す手はない!」

 

 黒閃のゾーン状態でひねり出された呪力は、ペルソナにもいい影響を与える。明らかに速度が上がったガルーダに掴まった私たちは、一気に伏見稲荷の上空まで至り、フリーダイブで着地した。そして、着地の瞬間に深淵に落ちた。

 

 目が見えなくなった。音も聞こえなくなった。言葉を発しようにも口も開かないし喉も干上がったように何も発せない。東堂君の背中のぬくもりだけがそこにはあった。予想外の事態に、思考が加速する。どうすればいいの……!?




登録仮想怨霊 『双阿双吽』
 全く関係のない呪霊が縛りと金剛力士像の概念によって結びついた稀有な例。一定以上の距離にお互い近づけない代わりに同時に祓われない限り死なない不死性とお互いの影法師を召喚する術式を手に入れた。呪術的な双子の概念が同一呪霊であるという形になり片方が祓われてももう片方が健在=祓われた方も死んでないという術式になってしまっている。純粋な膂力と呪力量は特級でも下だが普段は片方しか姿を現さないので祓えない扱いとなり特級認定されている。お味は腐ったレバー味

 原作にない話を考えるのは難しいなあ。ちなみに吽形くんの祓われ方はナナミンの黒閃4連撃で4分割された後秤君に頭を潰されて綺羅羅さんに術式で分割された体を四方八方に飛び散らされました。それで阿形をメギドラオンで消し飛ばせたので死にました。万歳。
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