ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
「おやおやおや、ずいぶんとしんみりしてるんだね後輩君たちや」
「……汐見、先輩。すいません、ちょっと寂しくって」
「聞いたよ、里香ちゃん成仏したんだって?よく頑張ったじゃん、夏油さんにも勝ったし、誰も死んでない。ハッピーとはいかなくてもベターなエンドでしょ」
「いや、そうじゃねえよ琴音。お前が京都帰るってんで寂しいなっつー話してんだよ憂太は」
「あ、私の方?大袈裟だな~」
……夕焼けの教室の中で一年生に最後の挨拶をしに来た私を見た乙骨君がいきなりはらはらと涙を流し出したのでリカちゃんのことがフラッシュバックでもしたのかと思いきや私の方?パンダ君が言うところによると乙骨君は今までまともに人間関係を築けたことはなかったらしいので初めての先輩っぽい先輩だった私を慕ってはくれていたとのこと。
「大袈裟じゃねーよ。あんた普通に半年はここにいるんだからな?しかもがっつり私たちに絡んでくるしお節介焼くしバカ目隠しより教師っぽいことするし……これで情がわかないわけねーだろ」
「しゃけ、いくら、すじこ」
「それに、金次も綺羅羅も停学になっちまったし……連絡しても繋がんねー。頼りになるヤツ一人消えるんだから憂太が泣くのもしょうがないだろ」
そうなんだよねえ。秤君と綺羅羅ちゃん停学になっちゃったんだよねえ。原因は京都の任務に参加した時に名家のどっかの誰かさんに術式をあーだこーだ言われてボコボコにした結果らしい。くっだらないね名家の人たちの矜持だのプライドだの。それで負けてちゃ世話ないよ。まあ電話もメールも繋がるからそんな心配はしてないけどさ。
「まあまあ、頑張ってよ。別に会えなくなるわけじゃ……ワンチャンもう会えないかもしれないのかな?」
「不吉なこと言うんじゃねーよ!どっちだ!?どっちの意味だ!?」
「あ、いやそうじゃなくて。私も生涯通して忙しくなりそうだし責任を負ったから五条先生に任せてのほほんとはしてられないなってこと。だから、頼りにしてるんだよ後輩ちゃん?私に届かないところを任せられるって私に思わせて?」
総括と行きましょうか。まず第一、百鬼夜行計画は失敗、夏油さんの目的が乙骨君の拉致であると予想していた私と五条先生の考えは外れで乙骨君を殺害して里香ちゃんの主導権を奪うことが目的だったらしい。五条先生曰く過去に主がいる呪霊は奪えなかったし夏油さんの目的からして術師を殺すのは基本ないと考えてたそうな。
残してきていた一年生たちが夏油さん相手に奮闘するものの特級術師相手にかなうわけもなく乙骨君を残して全滅。夏油さんは里香ちゃんを出されてもいいように乙骨君を残して対処してしまったので同級生をやられた乙骨君は憤怒しリカちゃんと一緒に夏油さんを撃退したんだって。一応一年生たちは軒並み重症で済んだし乙骨君が頑張ったので何とかなったけど夏油さんが術師に情を持ってなかったら普通に全滅してたよね……ごめんねぇ。
「はい、僕頑張りますから……!4級に落ちちゃいましたけどすぐに特級までいきます!」
「たのもしい。乙骨君の呪力量は自前だったみたいだね、それだったら術式さえ使いこなせばすぐに私のところまで戻ってこれるよ」
「……偶にでいいからこっち来た時顔だせよ。あと……その、真依のこと頼んだ」
「お任せください!さてさて、出発前に私がここに寄った理由なんだけどねぇ……唐突に聞こえるかもだけど結城湊っていう呪具師を知ってるかな?」
「あ、それ正道が言ってた。結構前に死んだけど呪具師としては異次元だっていう呪具職人の名前だろ?それがどうしたんだ?」
「それ、私のおじいちゃん。この召喚器のガワを作ったのもそうなんだけど……まあここ一年でその仕事場を見つけたので漁ってたんだよ」
私の両親はもういないけど一般人だったしおじいちゃんもアンティークの小物を作る職人だって聞いてた。だから私も突発的に術式を持った一般出身術師として自分を見ていたけど母方の祖父である湊おじいちゃんはなんとびっくり裏の仕事で呪具師をやっていたのだ!おじいちゃんと一緒に住んでた家を掃除しに行ったときに五条先生が六眼で呪術的に隠された地下の入り口を見つけてくれてわかったんだ。
「そんなわけでー、おじいちゃんが生前残してた作品から皆に合うものをピックアップしたので餞別として渡そうと思います!喜んでどうぞ!」
「……しゃけ?」
「そう!みんな!乙骨君も真希ちゃんも狗巻君もパンダ君にも全員分あるよ!京都の皆の分もあるよ!依怙贔屓はしないのでうけとること!よろしい!?」
「呪具かぁ……ありがたいな。私はそれ無いと呪い祓えねえし。あればあるだけ得だし重かったらパンダに運ばせればいいし」
「呪骸虐待反対!俺にもあるってマジ?」
俺にも?と自分を指さす狗巻くんに君にもあると返してがっさごっそと荷物の中を漁りだす私。これこれ、と出てきたのは白鞘の刀、15センチくらいの紅い棒、白に緑色のラインの入ったスカーフ、そして赤と金で彩られた戦帯だった。ではまず刀からどうぞ!
「『千両役者・真打』って言うんだって。術式効果はね、乙骨君にぴったり。呪力を籠めれば籠めるほど強度が上がるんだ。千両……つまりお金だね。呪術にとっての通貨は呪力、集めれば集めるほど輝く刀。拵と鞘は自分で準備すること。まずはそこからだね」
「……すごい、普通に呪力を込めても何にもおこらない……いいんですか?本当に。おじいさんの形見なんじゃ」
「私が持ってても腐らせるだけだよ。かといってばらまくつもりもないから、じゃあ君たちに使ってもらった方がお得でしょ。ハイ次真希ちゃん!『如意棒・破天』っていうんだ。本物じゃないから安心、術式効果も任意の長さに伸びるだけだから持ち運びやすいね!伸びる限界は10mで最少はこの長さ。大刀の柄としていかが?」
「……ほんっとーに私たちのこと考えて選んだんだな。大事に使う。パンダに運ばせんのも最後だな」
なにさ真希ちゃんったら私が適当考えてるって言ってる?実際真希ちゃんの前じゃあんまり考えてはなかったかも。真希ちゃんは理屈より体で覚えるタイプだからとりあえず言葉より実践でひたすらボコしてたもんね。でもね、私だって真希ちゃんが頑張ってるのわかってるからちゃんと用意してたんだよ?
「次狗巻君、『慈悲のスカーフ』だよ。どこかの国の聖骸布が素材らしいんだけど体の治癒力を高めてくれるらしいの。喉に負担がかかったときとかのフェイルセーフになると思ったからもってきたんだ。武器は別に要らないでしょ?」
「しゃけ……!」
「どういたしまして!次はパンダ君だね。『羅刹の帯』だよ。巻き付けたら膂力を高めてくれる呪具だね。パワーファイターなパンダ君にぴったりじゃない?メリケンサックも考えたんだけど自前のがあるし、腕に巻いて……ほら、良く似合う!」
「ありがとう、琴音。結構長くパンダやってるけど先輩からこんなプレゼントもらうのは初めてだ。人間っていいモンだな」
一応これ全部一級呪具相当らしいんだけどおじいちゃん呪具師としては作品をあまり表に出さずに作るだけ作って保管してるからなんかまだいろいろあるんだよねえ。成功作しか出さないから腕のいい呪具師としては見られてるけど現時点で流通してる呪具は意外と少ないのだとか。ちなみに召喚器は羽を入れる前からおそらく特級相当なんだとか。なにでできてるんだろこれ。
「琴音ちゃ~~ん、もう行く言うとるで~。お、真希ちゃん久しぶり」
「テメェ……センパイに何しやがったァ!?」
「お~怖。まあ言われてもしゃーないか。なんもしてへんよ。あーでも琴音ちゃんに鍛えてな~ってお願いはしたわ。なんもせーへんて、信用ないけど」
「それは直哉さんの行いですからね。真希ちゃん大丈夫、心配してくれてありがとう。私はもう京都に戻るけど、何かあってもなくても遠慮なく連絡してくるんだよ?きっと皆いい術師になれるからね」
私を呼びに来るなんて今までの直哉さんからしたら絶対にありえない行為に何か良くない想像でもしたのか鳥肌を立てた真希ちゃんが直哉さんに食って掛かる。それを直哉さんは柳に風とばかりに受け流す。というか半分煽ってない?と私が睨むと堪忍なと片目を閉じた。うーんこの。
はいお別れのハグ!と一人一人にハグをかまして背中を叩いて教室を後にする。真希ちゃんはいまだに不満そうな顔をしていたんだけどまあ仕方ないよねえ。さてさてと直哉さんと車に乗り込む。どうやら同乗してついてくるつもりらしい。運転するのは伊地知さんだ~~!珍しい~~。直哉さんととりあえず会話しながら私は京都に帰るのだった。
「はっやいですねもう!」
「目で追っといて何言うとんねん!こっちは必死やぞ!」
「性癖はつまらんが実力だけはあるな」
「あの、真依ちゃんいなくなっちゃったんですけど……」
「放っておいてやれ。禪院での扱いを見る限り当然の反応だ」
加速しぶれる拳、それをペルソナと自分の二人がかりで防ぎ適宜カウンターを入れ込む。特級術師五条悟、最強に挑むための特訓を私は京都に帰ったその日から開始した。帰ってきた私をみんなは暖かく受け入れてくれて真衣ちゃんと桃ちゃん三輪ちゃんなんてケーキを焼いて待っていてくれたほどだ。なお直哉さんを見た瞬間皆に緊張が走ったのは言うまでもない。その日は御帰り頂いたけども。事情を説明して暫く直哉さんは京都校に通うことになった。なお真依ちゃんがかわいそうだったのでたまに抱き枕になってる私です。
イザナギを召喚し、ヒートライザを限界までかけてようやく直哉さんの術式にまともに対応できる。やっぱり単純なパワーとかスピードとかは対処しづらいね。葵君の不義遊戯なんかはスピードの極致みたいな瞬間移動だし葵君自身もパワーあるからずるいし。
ちなみに葵君は直哉さんにいつも通りに性癖を訪ねたんだけど直哉さんが「顔の綺麗な女ならなんでも」という答えが詰まらなかったらしく襲い掛からなかったものの興味をなくしている様子だ。
「せいが出るね。君が悟と戦うなんて何かの冗談かと思ってたけど本気だったのかい?」
「そりゃもう。夏油さんも道連れになります?」
「それ遠回しに死ねってことかい?すっからかんの私が悟に勝てるわけないだろう」
「楽しくないです?自分の全力を何も考えず使う機会があるの」
「なんっで外野と話す余裕があんねん!」
「術式を使い続けた時息切れみたいな感じで一拍余裕があるんですよ。術式と術式の繋ぎ目。直哉さん多分今まで持久戦やったことないんじゃないですか?大体速攻で終わるから」
直哉さんの術式は事前に動きを決めてそれを体がトレースするらしい。だけど動きを自分でセルフで決めなきゃいけないしずれでもしたら一秒間フリーズする。1秒あれば10回くらいは殺せるのでカウンター前提で動きを作ってるんだけど私と私のペルソナは同期して動いてくるのでそれに対応できる動きを考えるのが難しい上にアドリブを考えるのだって時間がいる。その刹那に術式が切れるわけだ。
1秒ごとに大体24回の動きかな?数えてる感じだと。それを先読みで考えながら術式を使って1秒を作りそれを延々と続ける。これを1分以上連続で行える直哉さんはスゴイよ。もはやセンスだけじゃなくて努力もしないと無理だもん、これは。ちやほやされるわけだ。
「はいチェックメイト!」
「なんなん自分、手4つ生えた人間相手にしてる気分やわ。正直動きが完璧すぎてキモイで」
「どんなに完璧な連携でも他人同士ならずれが発生するものだけど私二人だからね、前にも言った通りずれが発生しないってわけさ!じゃあそろそろ夏油さんもおうちに戻りましょうか」
「連れ出してくれるのはありがたいけど君自身の醜聞も気にしたほうがいいよ。私を連れまわすことで君の評判が落ちるのはよくない。もともと私を持ち帰ったせいで悪くなっただろうに」
大事な話なんだけど、夏油さんは京都高専で収監生活を送ってもらうことになった。手足に呪具、背中には呪印を刻まれた夏油さんを京都高専に持ち帰ったのにはもちろん理由がある。まず主な責任者が私であること、五条先生と一緒にするのを上が嫌がったこと、そして東京校の一年生の心情の問題。
夏油さんは20以上の縛りを結ばされ任務時と私の許可、および命の危険に陥ったとき以外は呪力を封じられた状態になり、私か学長、あるいは委託された人間が一緒じゃない限り収監された部屋の外にも出れなくなっている。
イザナギの鉾の峰で地面にキスをさせられた直哉さんの抗議を聞き流しつつもこうすればいいと指示をする私に葵君が近づいてくる。葵君は夏油さんに対しては私がフラットだからかフラットに接しようとはしてくれているみたいだ。まぁ、それが夏油さんにとってはキツイみたいだけどね。
すまん、VS五条はいれなかったです。ちなみに呪具プレゼント部分は本来だったらペルソナ処刑のアイテム化みたいな感じで各々にプレゼントする予定でしたけど主人公があまりにもやれることが多すぎる&構築術式の真依ちゃんが死んでまうということで元々呪具師設定は裏で生やしていたおじいちゃんの作品ということにしました。
げとーさんは京都校で軟禁です。仕方ないね、なお五条が合いに来ないとは言ってない。家入さんは合うたびに酒瓶を振り上げるそうな。