ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第二十八話 呪術界に入って2年ってマ?

「はい夏油さんあーん」

 

「いや、そんなことしなくても縛りで取り込むよ。何されても味は変わんないからさ」

 

「そーだぞー、その辺は学生時代に腐るほど試したからな。一番ひどかったのアレだろ?デコレーションケーキ。見た目がよかった分余計にきたヤツ」

 

「思い出させないでくれるかな……」

 

 私が出る任務には必ず夏油さんがセットになってついてくる。夏油さんは百鬼夜行で乙骨君を相手に呪霊を使いきってしまったのでその補充が急務なので私の任務のついでに呪霊を取り込んでもらっているわけさ。4級以下の呪霊は毎日100単位で取り込まされてるみたいだけど強い呪霊は現地に行かないと取れないからね、産地直葬ってやつだ。

 

 で、なんでかいる五条先生。外聞がよくないっていう割には私に会いに来るっていう理由をつけてよく夏油さんに会いに来てるみたいだ。結局のところ五条先生も五条先生で親友の道を正す、もしくは何が嚙み合わなかったのかを確認したいんだろう。同じことが起こらないようにね。

 

 で、五条先生との決闘を終えた私だけど明確に変わった部分が一つある、上層部からの上から目線がなくなったことだ。形だけとはいえ本気の五条先生との決闘に引き分けたのがものすごく効いたらしい。ちなみに決闘はサタナエルが出現したあたりで烏が耐えられなくなって観測不可能、領域が展開されたことだけは分かってあとはまあ私たちの口からの報告って感じかな。

 

 ただ上層部は五条先生自らの口から本気でやって引き分けたという報告に忖度を感じてつついてみたら逆に逆鱗に触れちゃってワンチャン死んでたんだけど?という主張をしたらしく実質五条悟が二つに増えたという結果に終わって慄いたとかなんとか。いい気味―。

 

「んじゃ、傑は俺が責任もって牢屋にぶち込んどくから若人は青春するんだぜ。最近そういうのなかっただろ」

 

「そりゃもう。忙しかったですから?学業にかまけたいですね。それでは」

 

 夏油さんはいまだに考えを改めてはいない。そもそもが彼は守るべき対象を大衆から一部に絞っただけであるので良いこと悪いこと自体は理解している。ただ、彼が今の病んだ精神状態を脱した時に何が起こるかはわからない。正しかったんだと胸を張るのか、なんてことをしたんだと後悔するのか。それは彼次第だから。

 

 さて、もうすぐ進級する季節だねえ。進級と言えば後輩が増えるということである。うーん、楽しみな話だ。あ、そうそう後輩と言えば伏黒君だよ。本来だったら限られた人間、上層部に学長先生たちと一級以上の術師しか入れないはずの観戦場所に五条先生がねじ込んだ彼の話をしないとね。

 

 葵君は百鬼夜行で私の後詰めで一級呪霊複数準特級相当を単独で祓ったとのことで一級に推薦されたらしい。で、結果普通に一級になってしまった。あとは特級になるだけではないのかな。まあ何を言いたいかというと彼はかぶりつきで私と五条先生の戦いを見ていたらしい。外からだと結界が空に溶けるように消えたとのことなので無意識に行ったのは外から見たらそう見えるのかと思ったよ。外部観測なんてしてないし。

 

 話を戻すと伊地知さん運転ボートで救助された私と五条先生がタンカー船内でシャワーを済ませて着替えて戻ったらなんか頭下げられた。生意気なことを言いましたって。おおー、呪術師には珍しく普通に謝れるのか、どっか皆捻くれてるから謝罪なんてなかなかないのに。

 

 で、そこから意見交換。式神とペルソナは使い方が違うのでどんぶり勘定にはなってしまうけど一番式神使い的に相手がやられたら困ることは教えられたと思う。それは「全く同時に術者と式神が別の個所を狙って動いて攻められること」身も蓋もない言い方をすれば多対一。でも、これは私の戦法の中でも頗る有効だったので間違いじゃない。

 

 例えば、頭と胸、そして背中を同時に狙われてどう防御するかの択を一回どころか数十回繰り返されたらやられる方はたまったもんじゃない。普通の術師でも一回二回程度なら狙ってやれるかもしれないけど私たちならそれを意図的かつ無限に繰り返せるんだからね。

 

 でも、五条先生曰く私とペルソナみたいな完璧な同時はまだまだ難しいだろうということらしい。伏黒君の術式は十種影法術、影を媒介にした十種の式神を召喚する呪術でなんと禪院家の相伝術式の一つらしい。つまり禪院家?と聞いたら俺は関係ありませんとのことなのでどうやら複雑な関係をお持ちらしい。真依ちゃんといい真希ちゃんといい実に複雑だね禪院家は。

 

 今はまだ3種類しか使えないけど将来的には10種類の式神を使いこなすのが目的だそう。ほうほう、頑張る子にはお姉さん応援しちゃうぞ。だってもう入学前で3級術師なんでしょ?才能あるよー、なんちゃって式神使いだけど保証しちゃうから!

 

「というわけだから葵君?つまらないからって襲い掛からないって何回言ったらわかるのかなぁ???」

 

「マ、琴音(マイシスター)……?」

 

「うわ、初めて見た琴音ちゃんが東堂君相手に笑顔でキレてるの」

 

「おそらくだが庇護する対象である後輩に何度も性癖を訊ねては襲い掛かるという流れを繰り返しすぎたんじゃないだろうか。すまないな、伏黒君」

 

「い、いえ……先輩たちが止めてくれましたし……」

 

「葵君の性格はとってもよく知ってるから何も言わないけど、私は後輩が一方的にタコ殴りにされるのを見るのはものすご~~~く嫌なの。もしかして知らなかったかな?」

 

 すっ、と葵君は静かに私の目の前で正座をする。自主的に反省のポーズに入れてえらい。基本的に私は葵君のやることなすことは関知しないようにしてるし口を出すことじゃないんだけど私たち先の年代が守り導く下の子たちに手を出すことだけは口を酸っぱくして注意してはいるんだ。なんで頼りにするべき先輩にボコボコにされなきゃならないの?それも性癖が合わないってだけで。

 

「いい、東堂君?あなたがいざとなれば気に入らない人間だろうが何だろうが助けてくれるのは知ってるよ。それは素晴らしいことだし呪術師として私も見習ってる部分。でも、二つも年下の中学生相手に変なこと尋ねて答えが気に入らなかったら拳振りかぶるのは間違ってると思う」

 

「ぐはぁっ!?」

 

「あ、呼び方が名字に戻ってダメージ受けてる」

 

「いいぞー、もっとやって琴音先輩~~~」

 

「メカ丸くんから聞いたんだけどこの前ボディを再起不能になるまでめちゃくちゃにしたんだって?これもまた性癖を答えられなかったのが理由で。東堂さん?」

 

「ごばぁっ!?」

 

「距離が遠のいテダメージが入っタ。もっとやってクレ琴音センパイ」

 

 葵君へつらつらとお説教を始める私とそれをはやし立てる京都校の皆に驚いた顔をしている伏黒君。禪院家の出身だったらわかるだろうけど普通だったらこんな一般の学校生活みたいな光景高専ではないみたいだからね。学年同士の垣根は元からないみたいなもんだけど積極的に遊びに行ったりとかはないらしい。私たちはよく全員で出かけるけど。

 

「あんまりにも繰り返すようなら高田ちゃんに言いつけるからね」

 

「ま、待て!?なぜ琴音(マイシスター)が高田ちゃんの連絡先を知っている!?」

 

「え?この前一緒に行った握手会で意気投合して連絡先交換したんだけど」

 

「でたわね最強コミュ力」

 

「どんな人脈を持っテいても驚かン」

 

 これが私の対葵君用の最終兵器、推しである高田ちゃんに自分がやったことを告げ口される、である。ものすごく卑怯だという誹りは受け入れるけどいい加減止めるのもめんどくさいので自制を覚えてほしいものだ。とりあえず反省しなさいということで正座を解くことを禁止して葵君を放置することに決めた私は五条先生に連れてこられた哀れな伏黒君に向き直る。

 

「お待たせ伏黒後輩君や。このドレッドチョンマゲ先輩は術師としてならとてもいい腕をしているけど強い術師の例にもれず色々尖ってるだけだから気にしないでね」

 

「東堂から心が折れる音が聞こえるぞ……哀れになってきたな」

 

「皆さん、仲がよろしいんですね……正直俺術師ってもっとこう、こんな中学の教室でありそうなやり取りする感じだとは思ってなくて」

 

「ああ、それは間違ってないぞ伏黒君。私たちは術師同士にしては珍しく仲がいいだけだ。術師は大体根暗なのはわかっているんだろう?そうじゃない存在がここにいるだけだよ」

 

 実際、京都校の皆は学年を超えて仲がいいのは間違いない。東京校だと秤君と綺羅羅ちゃんが下の子たちとそれなりに絡んではいたけど京都校だと私が後輩たちをかわいがりたいがために同級生を引き連れてご飯作ったり遊んだりとか企画しているもの。葵君も律儀に参加してくれるからお互いを知る機会が多い分仲がいいって感じかな?

 

「加茂君の言うとおりね。私だって琴音ちゃんがいなかったら多分真依ちゃんと三輪ちゃんだけに絡んで終わりだったもの」

 

「実際仲がよくても困ることはないですもんね。琴音先輩から楽巌寺学長のワンマンライブに誘われたこともありましたっけ」

 

「ジジイも変わったものだ。最初からあれならば万倍マシだっただろうに」

 

「歌姫先生の野球観戦に付き合うっていうのも琴音先輩発だったっけ」

 

「他にも全学年巻き込ンデ立食パーティーとかもやってタな」

 

「……なんだか、台風の目みたいな人なんですね。汐見先輩って」

 

 一応修行という体裁なので私たちのトレーニングについてきている伏黒君であるが実際は召喚した玉犬というワンコ二匹を東堂君と私がお尻の下に敷きながらこんな会話をしているのである。ちなみにワンコはご主人様相手に助けてときゅんきゅん鳴いている、かわいい。ペルソナにはない可愛さだ、ちょっとうらやましい。いいもん私にはジャックランタンもジャアクフロストもいるから。ケルベロスならお友達になれるのかな?

 

「台風の目、結構。折角接点を持ったんだから仲良くならなくてなんとする!伏黒君も入学してからでいいからそうやって斜に構えるのをやめて絡みに行くといいさ」

 

「……やるだけ、やってみます。それはそれとして聞きたいんですけど汐見先輩。自分が動きながら式神を動かすコツ、みたいなものってありますか?」

 

「うん、感覚の話になるから言語化に難があるんだけどないことはないよ。まず、伏黒君の術式の場合大雑把な指示を出して式神の判断能力に任す形になるよね?私みたいに術者がマニュアルで動きを決めない感じ」

 

「そう、なりますね。でも呪力のつながりを通じてリアルタイムでやってほしいことのやり取りはできます」

 

 ほほう、それなら私のペルソナにかなり近しいこともやれる可能性があるってこと?これはつまり私がペルソナでやってることをそのまま伏黒君に叩きこめることができるって理解でよろしい?うんうん、実に楽しみになってきた。

 

「じゃあまず伏黒君は同時に動くときに式神に合わせてもらおうとするのやめよっか」

 

「……は?いやだって動かす側をあわさないと」

 

「いやいや、逆なんだよ。今私が組み敷いてるから説得力ないかもしれないんだけど式神の攻撃の方が術者本人の攻撃よりも強いじゃん?じゃあ、思いっきり攻撃してもらって術者本体の攻撃で逃げ場を潰すんだよ。フィニッシャーが式神なの、わかる?」

 

「……たしかに。つまり、玉犬なら攻撃をするタイミングで俺が合わせて逃げ場に攻撃を入れる方が……」

 

「そういうこと。伏黒君、別に私たち術者がとどめを刺す必要はないんだよ。呪霊相手も呪詛師相手も最後に立っていた人の勝ち。ならさ、思いっきり騙すの。卑怯だって最後に言われても生き残るほうがよっぽど大事だよ」

 

 おっけー、と指を丸めてみせれば伏黒君も納得した顔をしてくれた。ぶっちゃけ言うと合わせてもらうよりも自分が合わせたほうが難易度が低いって言うのもある。私の戦法ってちょっとでもずれるとそこが逃げ場になるからやる意味がなくなっちゃうんだよね。だから、そういう意味でも伏黒君自身が式神とどう意思を合わせるかはとても重要だと思う。

 

「そういえば、東京校の先輩の中に元特級術師がいるって話を聞いたんですけど」

 

「ああ、乙骨君のこと?多分すぐまた特級になると思うよ。ただ、伏黒君は乙骨君を参考にするのは難しいかな~。乙骨君は呪力量が恵まれすぎているからどこか力押しになっちゃうんだよね。私たち技巧派とは違うんだよ~」

 

 そんなことを言えばその場にいるみんなが私のことを『技巧派……?』という顔をして見つめていた。まって!私呪力多いけどそんなごり押しした覚えない!ちゃんと術式のルールやらなんやらこねくり回してできることしただけ!結果島消し飛んだけどそれは別にパワーでボーン!したわけじゃないから!信じて!




 次回から原作はいります。でも京都高専の人間なのであんまり序盤は関われないかも。すっくんとは絶対どこかで絡ませますけども。
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