ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第二十九話 特級呪物が受肉したらしい……え?

「琴音~~~」

 

「お帰りはあちらですが」

 

「いやだな~~そんなすげないこと言うなんて。決闘した仲じゃない」

 

「悟、君がそんな風にここに来るってことは面倒ごとだって彼女も理解しているんだよ」

 

「Mr.五条か。また琴音(マイシスター)を東京へ引っ張っていく気なのか?できれば遠慮してほしいところなのだが……」

 

「そーだそーだ!私にも1年くらいはまともに高専で青春させろー!シュプレヒコール!」

 

 夏油さんと葵君と一緒に組手をしていたところに表れたのは毎度おなじみ五条先生。夏油さんの個人的な趣味は格闘技らしくて三節棍のような変わった武器すら使えるのだとか。片腕になってもそれは健在でむしろ片腕になったせいで足技なんかに幅が出てきてるような気すらする。

 

 で、何か胡散臭い笑みを浮かべて五条先生が私の前に表れるということは大体がめんどくさい案件超えて私の自由を束縛するものなのが常なのでヤダーーー!と葵君の背中にセミのように引っ付き拒否を示してみる。葵君も私のことは分かってくれてるので五条先生が背中に回り込もうとするたびに反対を向いてとられないようにしてくれてる。以心伝心。

 

「せっかく3年生に上がったんですよ!半年以上東京にいてこれ以上何の理由で私を東京に束縛しようとするんですか!後輩を愛し足りないので帰ってください!メカ丸君の本体に会うまでは私は京都校を離れませんからね!」

 

「うーん、ぶっちゃけ僕としても憂太の件で頑張ってもらったから頼みづらいんだよ……でもさぁ……能動的に人の魂を観測できるの僕君しか知らないんだよね。僕じゃあ在ることは分かっても詳細がわかんないんだよ」

 

「まったまった悟。話が見えない、私は牢に戻るから機密に差し障る話なら彼女にきちんと話すべきだよ。判断はまずそこでするべきだ」

 

「いや、都合がいいから聞いておいてくれ。葵、君もだ。特級案件だが京都校には今のところ秘匿する方面で東京は進んでいるけど、そんな馬鹿らしい上の考えには付き合ってられないからね……特級呪物『両面宿儺の指』を取り込んで受肉した器が現れた」

 

 いやにシリアスだった五条先生にしょうがなく真面目に聞くことにした私は口に含んだスポドリをブーーーッと地面にぶちまけるハメになった。毒霧を放って咳き込む私の背中をさする葵君と柔和な笑みを浮かべていたはずの夏油さんですら冷や汗を隠していない。なに、1年に一回のビッグイベントですか?やめてほしいんですけど。

 

「悟、冗談だろ?東京は壊滅したのかい?」

 

「だったら僕が直接ここにいるわけないじゃん。本題はその器なんだよ、宿儺の指を二本取り込んでも自我を保っていられるし、宿儺に交代させても制御を奪い返せる。1000年生まれなかった器だ」

 

「史上最強の術師にして呪詛師にして呪物、でしたよね。縛りを結んでいないのに破壊不可能で封印してなお呪霊を引き寄せるっていう」

 

「そう、それ。僕が琴音にお願いしたいのはその器の魂の観測だ。二本の指に耐えた、だがこの先すべての指を取り込めるのか、可能なのか不可能なのか確証が欲しい」

 

「あの~~~、なんで指を取り込む前提なんですか……?」

 

「ああ、秘匿死刑になったから。だけど僕の方で指を全部取り込ませてから宿儺ごと殺すっていう方面に執行猶予を付けた。だから、実質的な無期限延期だね」

 

 そりゃそうか。という納得が先に来てしまった。乙骨君の時とはわけが違う、その器になった人のことはわからないけど両面宿儺は人間だったくせに鬼神として扱われているように呪術としてのスケールが違う。受肉したヤツごと殺せはわりかし上のおじいちゃんたちにしては正しい判断だ。だけど、五条先生がいう『器』の可能性が真実ならばお話はちょっと違うかも。

 

 出現すれば日本が終わる。いわば制御されてない特級術師みたいなもんである両面宿儺の復活の可能性を現時点でゼロにできる。両面宿儺の指は全部で20本あるんだけど耐性がある人間が受肉したのならそのまま放っておけば適当な人間で受肉して宿儺が二人みたいなことにはならないからね。どこまで耐えられるかがわかればそれだけ取り込ませてあとは放置でその人が生きている間は両面宿儺は復活しないわけだし。

 

「面白そうだな……会いに行くのも悪くない」

 

「いや、葵はこのまま京都にいてほしい。東京高専にも来ないでくれ。おそらくおじいちゃんは悠仁を殺す側に動くだろうからね。君たちセットで動いたら100%疑われる。琴音なら僕が引っ張っていけばいつものことってなるからさ」

 

「ちなみに今回も1年いろとはなりませんよね?」

 

「あー、ないね。2日か3日くらいかな。里香ちゃんみたいに無制御になることはないだろうからね」

 

 あー、つまり五条先生はその悠仁君っていう器になった人を延命させる材料を補強するために私に協力しろって言ってるわけね。いいでしょう。どんな人かもわかんないけど五条先生がここまで身を張るってことは彼自身が気に入ったってことでもあるだろうから、そういう意味でもちょっと楽しみだなぁ。

 

「久しぶりに伏黒君に会いに行くとしますかぁ」

 

「ちなみに悠仁は恵と同い年だし女の子の同級生もいるよ」

 

「行く理由補完しなくてもちゃんと行きますよ。伏黒君におじいちゃんの呪具見繕っておきましたしちょうどいいです」

 

「ほんと、そういうところが君が好かれてる理由なんだろね。僕には無理だな」

 

 はいはい言いながら五条先生に手を差し出す。どうせ緊急案件だか何だかで新幹線なんか使えないんだろうから着の身着のままでいいや。東京校で使ってた部屋は好意で残してもらってるからそこで寝泊まりは何とかなるや。五条先生の無限瞬間移動によりその場から消える私であったとさ。

 

 

 

 

「ごめーん、待った?☆」

 

「いきなりどこ行ってたんすか五条先生……って汐見先輩!?なんでここに!?」

 

「ん?なんか手伝ってっていうから連れてこられてきたの。虎杖悠仁く~~ん、お返事どうぞ?」

 

「ウッス、俺……だけど……先輩?」

 

「どーみても小学生よ伏黒。アンタ変な趣味でもあんの?」

 

「ねーーよ!つーかあんま失礼なことしないでくれ。この人は京都高専3年生の汐見琴音先輩だ。五条先生と同じ特級術師だし実際やり合って引き分けてる。かなりマトモで尊敬できるこの業界じゃ数少ない手放しで慕える人だしなんだったら俺の師匠みたいな人でもあるんだよ」

 

 いやっほー、と五条先生の後ろから伏黒君に挨拶する。お?ちょっと背が伸びたな男の子。羨ましい~~。入学までちょっとばかし扱いてあげた上で二級術師に推薦してあげて以来だから……もろもろ2カ月ぶりくらい?時間あったら模擬戦付き合ってあげようかなあ。私にペルソナを召喚させたら次のステップに行けるぜ~~。

 

 それで、ピンクかかった茶髪という結構ファンキーな髪色をした男の子が宿儺の器かね?ふんふんふん、おーしっかりいるね中に。詳しく見ようかしら。そんで明るめ茶髪のスタイルがはっきりしている気が強そうな子が五条先生曰く紅一点の釘崎野薔薇ちゃんか。自信ありありって顔が頼もしいねえ引っ張ってくれるタイプだ。仲間に恵まれたんじゃない伏黒君?

 

「それで、その特級術師サマがなんで京都からここにご出張なされてんのよ。暇なの?」

 

「野薔薇、割とマジであんま失礼なことしないでね。結構無理言ってきてもらってるから」

 

「ケヒヒ、随分と面白い小娘がいるじゃないか。貴様どこに繋がっている?俺ですら見たことないぞ。小僧に囚われていなければすぐさま遊んでやるというのに」

 

「繋がった先が見たいなら案内してあげようか両面宿儺さん?しかしすごいね、本当に抑え込めてるんだ。ちょいと失礼」

 

 虎杖君の頬が裂けるように口に変わって言葉を発する。尊大な声、これが両面宿儺か。釘崎ちゃんの警戒マックスの質問に関してはチラチラ虎杖君を見てることからして私が虎杖君に何かするんじゃないかと警戒しているからでしょう。会って間もないだろうに優しい後輩だなあ、琴音ちゃんポイント高いよ!

 

 タロットカードを握りつぶしルキアを召喚。いきなり表れた半透明の女性型ペルソナに知らない人はびっくり仰天、両面宿儺はゲラゲラと嗤っていた。それを無視して虎杖君を見てみると、うっわーこれはスゴイ。生物としての強度云々が私どころか五条先生よりも高くない?人間に収まっていい感じじゃないんですけど。

 

 んーーーー、魂の器的な観点から観測するに仮に20本全部取り込んだとしても自我は保っていられるだろうね。でもそれは平時のキャパで見る感じだから一気に10本とか取り込んだりすると一時的に乗っ取られる可能性はありそう。そこだけ注意して3日に一本ペースくらいで取り込むのだとしたらまず間違いなく宿儺に乗っ取られることはなさそうだね。

 

「で、どうなの琴音」

 

「3日に一本ペース、それなら20本全部取り込んでも虎杖君は虎杖君のままでいられるでしょう。た~~~だ!虎杖君その中にいる両面宿儺相手に変な契約とか縛りとか結んだらダメだよ。絶対何言われても断固拒否!おっけー?」

 

「え、わかった、たぶん」

 

「はい、お仕事終わり。時間余ったから伏黒君トレーニングする?今詰まってるところあったら相談乗るよ」

 

「マジですか?それじゃあ次の調伏しようと思ってる式神なんですけど……」

 

「待った待った待った!なに!?なんだったの今の!?俺何見られたの!?」

 

「ケヒヒ、無知とは愚かだな小僧。この小娘は貴様と俺の魂を観測して俺の檻としての貴様の強度を計ったのだ。魂をも観測する術式、その呪力の質……喰らってやりたいわ」

 

 まあ問題なし、が私が見たうえでの判断。お仕事終わったので呪具を渡すついでに伏黒君に動くつもりがあるかと尋ねたらどうやら次に使えるようになりたいらしい式神の相談があるそうなのでその話を聞くことにした。虎杖君自身はまだ私が教える段階にはいないのでとりあえず呪力を認識できるようになりましょうが目標かな?物理で何とかできるのは3級くらいまでだしね。

 

「せっかくだし全員見てあげてよ琴音。僕以外の上を知ってもらうのも大事だしね」

 

「え、私もぉ!?いやでも気にならないって言ったらウソか……よし、やる!」

 

「なんかわかんねえけど俺も!」

 

「二人に一応言っておくけど……見た目で舐めてたらマジで後悔するぞ。この人一級の呪霊でも素手の術式無しで祓えるからな」

 

「3人まとめて術式ありでいいよ~~。はいかもんかもん!」

 

 伏黒君と虎杖君は拳を構えるかんじだったけど釘崎ちゃんは釘と金槌を出して構えた。芻霊呪法!狗巻君の呪言と並んで古い術式だ!呪うという行為の代名詞だから呪術界では認知度が高いし上のおじいちゃんたちのウケもいいらしい術式だ。金槌デコってるのがかわいいなぁ。

 

「それとられたらどうなるかとか考えてたりする?」

 

「え!?はっ!?マジ!?……っ」

 

「ハート形だぁ。終わったら返すけど没収ね。はい虎杖君思い切りはいいけど捻りが欲しい!死角から殴ってみようか!」

 

「うわっ!?」

 

 釘崎ちゃんの手から釘と金槌、ついでに懐の藁人形をすり取って没収。ついでに顎を揺らしてノックダウン。突っ込んできた虎杖君を背負い投げで気絶させた後最後に挑んできた伏黒君と撃ち合う。釘崎ちゃんは明らかに格上との実戦経験が足りないし虎杖君はマジで動きが素人そのもの。私を参考にしろったって無理だよまだ。

 

 さすがに伏黒君は私と何度か組手をしているだけあって撃ち合えるね。術式ありだって言ってんだから召喚したらいいのに、と思ってたら背後から玉犬が二匹同時にかかってきた。そうだよそれそれ!その使い方!やるぅ!

 

 背後の玉犬の白い方にバックステップで近づきアッパーで顎を閉じさせて噛みつきをキャンセル。さらに片手をとって投げることで黒い方にぶつけて対処。さらに伏黒君が召喚した脱兎という無数の白兎たちに囲まれる。うーん、もふもふ天国。

 

「うん。影絵の作り方かなりスムーズになったね。合格!ギア一段上げるよ!」

 

「まだこれでもダメか……!」

 

「基本的な呪力操作って大事なんだよ、こういう風に!」

 

 全身から呪力を爆発させるように噴出させることで脱兎を取り払い吹き飛ばす。意外とこの緊急回避手段バカにならないので習得しとくといいよ、と伏黒君のお腹に肘撃ちを入れて終了。よしよし、とお腹を押さえる伏黒君を撫でる。

 

 そりゃこうなるか、という五条先生の感想にわかってるならやらなくてよくない?と思うけど一応先輩の威厳は保てたかな?と伸びてしまった二人に軽い回復術をかけてあげる。うん、虎杖君気絶させても宿儺には変わらないね。ますます器としての完成度の高さが不気味だなあ。ちょっときな臭い気がするぞ

 

 




 見た目のせいで圧がない、おかげで五条先生と同レベルと言われても信じがたい、見た目は子供!中身は先輩!宿儺だけはこいつマジで面白そう絶対に殺したいと思っています。しかたないね
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