ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第三話 東堂先生によるパーフェクト呪力講座実践編

「そも呪いとはなんだ、超親友(シスター)よ」

 

「また関係性が進んでる気がする……。それはともかくとしてあれでしょ、あれ。人間の負の感情が指向性をもって形になったもの」

 

「指向性とはまた面白い考え方をする。その心は?」

 

「見てきたのだと、例えばクマが怖い、クマに殺されたなんて怨念が集まったらクマの形の呪霊ができるわけでしょ?ライオンの呪霊にはならない。私たち人間の恐怖の形が呪霊を形作る。呪霊だけの話じゃないよね」

 

 これは、呪いという事象そのものにも当てはまるだろう。例えば肩が重いとか、見られている気がするとか、なんか運が悪くなったとかそういう事象も呪力が人間の意思によって指向性をもって発揮された結果。術式ってやつもそういうもんなんだろう。

 

 ここは体育館、五条先生との邂逅から二日くらいたった感じだ。オリエンテーションだの、初めての授業だのはそこら辺の学校とそんな変わんないんだなっていうのが私の感想かなあ。授業の内容が一般的な数学とかそういうのとは違うんだけどさ。

 

 それでなんだけど、東堂君とみんなというか加茂君と西宮さんとの相性が悪すぎる。まず性癖聞くのをやめましょうってマジで。んで気に入らなかったら半殺しってどういう思考回路しているのよ東堂君や。まじで何度止めたかわかんないんだけどさ。

 

 多分なんだけど、つまらないやつって認定した人に対して東堂君は傍若無人になる。ただ、傍若無人で暴力も振るうけどお勉強はできるし身体能力もスゴイ。昨日の夜ご飯の時に言ってたんだけど師匠が特級呪術師の九十九さんっていう方なんだって。道理でみんなの中で唯一二級呪術師なわけだよ。

 

「俺たち呪術師は呪いを生み出さない、それはなぜか。汐見、今お前が言った通り指向性の話になる。俺たちは自らが生み出す呪力をコントロールしているのだ、指向性をもってな」

 

「で、私はいまその指向性が術式ばっかにいっちゃって体に回ってないから満足に呪力の強化もできないわけだね?あと名前呼んでくれたよね今。ずっとそれでいいよ?」

 

「その通りだ超親友(シスター)!やはり阿吽の呼吸だな!故に今からお前に呪力の操作を教えよう!」

 

「なんで戻したのねえ?いい加減にしないと燃やすか凍らすか感電させるよ?」

 

 流石は入学3日目にしてみんなから露骨に嫌われている東堂君だ、私の抗議なんてどこ吹く風らしい。でも、困ったのは東堂君が休み時間のたびに私の席にきてあーだこーだ話してくるから私他のクラスメイトとまともに話せてないんだよね。むしろ気の毒そうな目で見られているまである。

 

 ただ、話して気が楽というのはある。呼吸が合う、あるいは居心地がいいというのはそういうものだから。性格が合わなくてもね。あーでも西宮さんとは連絡先交換したし、加茂くんともよろしくねー程度は話せたよ。近々任務という奴もあるみたいだから、頑張らなきゃ。

 

「呪力を流す、んだよね?こう、お腹から……?」

 

「『腹が立つ』『腸が煮えくり返る』という言葉があるだろう。呪力は腹で練られる。だが、その呪力の行き先を決めるのは腹ではなく頭だ」

 

「つまり、お腹の中にある呪力の塊を頭で引っ張るって感じ?こう……?」

 

 いわゆる一般的なというか非術師で言うところの『気』の概念が近いのだろうか?とじゃあ、と丹田、へその下あたりから力の塊を持っていくイメージで……?なーんか、やりにくい。移動しているのはわかるんだけど、遅い。あ、そうだ。お手本いるじゃん。

 

「ねえブラザー?わかりやすいお手本一回見せてよ。多分見ないと理解できないかも」

 

「良いだろうシスターよ。見てるがいい!むんっ!!!」

 

「はやいよ!でもわかったこうだ!」

 

「そうだ!だがまだ初歩の初歩だな!」

 

 私のリクエストを受けて東堂君が放ったのは正拳突き、だけど呪力の流れみたいなものはなかった。というかスムーズすぎてわかりにくすぎたんだけど正解を知るのと知らないのじゃかなり道筋が違う。現に今、私の拳は呪力を纏って空を叩いた。東堂君に比べたら稚拙も稚拙だけど、というかこれ……?

 

「呪力って、流すんじゃなくて纏うものだったりする?」

 

「ほう!なぜそう思った!?」

 

「殴ろうっていう意識に対して呪力が遅れるから、部位じゃなくて全身に呪力を回す。そして必要な部位に分厚く呪力を流せば東堂君みたいな……呪力の移動がわからない呪力操作の完成かなって」

 

「発想は合っているが過程が間違っているな。呪力は流すものという認識は絶対だ。纏えば停滞する。どこに流してどこに送る、これが呪力の遅れの正体だ。わかるか?」

 

「なるほど、纏うんじゃなくて流し続けるわけね?おへそを起点にして全身に呪力を回し続けて必要な時に蛇口を大きく開ける、と」

 

「エクセレント!だが、お前が目指すのは俺じゃない。正確には、お前に膂力は必要ないだろう」

 

 あ、そうなの?と私はずっこけかける。確かに私が殴り合いをするには不利が過ぎる。背の伸び何てとっくのとうに止まったのでこれ以上のリーチの確保は無理だ。格闘戦での絶対的な不利、リーチに筋力、そして技術。今の私には全てがない。武器だって私サイズにしたら玩具もいいところ。

 

「お前には、Mr.五条が認めた強力な術式がある。つまり!お前が目指すべきなのはいかに術式による攻撃を当てるかだ!お前自身が攻撃する必要はどこにもない!」

 

「あー、つまりはこういうことでしょ―――オルフェウス」

 

 銃をこめかみに当てて引き金を引き、オルフェウスを召喚する。東堂君が言いたいのは、私がやるべきことはペルソナを召喚しつつ本体である私は攻撃を避けて相手にオルフェウスの攻撃を当てることだ。

 

 楽巌寺学長先生曰く、私の術式の厄介なところはペルソナを私自身が動かしてやる必要があることだ。正確にはこうしたいなと思えば大雑把に動いてくれる。追従しろとかあっちに突撃しろとかの簡単な動きなら半自動だ。だけど細かな攻防は私が考えなければならない。それはそうだ。だって彼らは私自身なのだから。我は汝、汝は我。私を動かすのは私、何もおかしいことはない。

 

 私の背後に現れたオルフェウスを見て東堂君は笑う、獰猛に、凄絶に。退屈という枷をすべて吹き飛ばさんとする猛獣の笑顔。きっと私も同じ顔をしている。東堂君とは違い私は今までの日常を退屈だとは思ってこなかった。中学の友達も授業もなにもかもが私に生を実感させてくれた。

 

「汐見、今お前は呪力を加工するための台にたった。そこからどうするかはお前次第、その背後の呪霊を強化するもよし、お前自身を強化して突っ込んできてもよし。自由だ!だが!俺は親友相手に手加減をする野暮な漢ではないとお前ならわかるだろう!」

 

「ペルソナだってば。それで結局、殴りたいんでしょ?叶えてあげる、オルフェウス!」

 

「ぬぅんっ!」

 

 私のペルソナ……仮想仮面想術は私の生活における経験を基にする。私の生活が、生き様そのものが様々な人格へと派生し呪力を巻き込んでペルソナを形作る。それを知ったときから私は全身全霊で生きてきた。天才と呼ばれても勉強に手を抜かなかった。こんな見た目でも悪魔じみた美しさと言われるまで磨き上げた。たとえ怖くても前に出る勇気を身に着けた。

 

 そのすべてをぶつける先を今見つけた。東堂君はきっと、私とオルフェウス二人がかりでも大丈夫だとそう確信させる何かがある。オルフェウスがハート形の竪琴をかき鳴らした。すると音は呪力の波動を燃え上がらせて、火球となって東堂君に襲い掛かる。

 

「『アギ』!」

 

「そうか、イザナギが近接なら必然オルフェウスはそうなるか!術師タイプだな!?」

 

「さっすが!もうちょい強めに!『突撃』!」

 

 東堂君の鉄拳一閃、アギと名付けた火炎攻撃を殴って消し飛ばした、なら物理攻撃とオルフェウスを動かす。呪力の移動、つまりこう。オルフェウスの全身を巡っていた呪力を竪琴に籠めて思いっきり振り下ろす。

 

 メガキャァ!と音が鳴って竪琴を受け止めた東堂君の足が体育館の地面を割ってめり込む。すごい、オルフェウスの膂力って人間の比じゃないのに!それを呪力で強化してるんだよ!?拮抗してるどころか押し返されちゃってる!一撃がオルフェウスの胸に入って吹き飛ばされる、東堂君はそれを見逃さずに私に特攻をかけた。

 

「さあ、どうする汐見(シスター)!どんな敵だろうとお前が立ち入ろうとする領域のモノは待ってはくれんぞ!」

 

「しょっぱなからスパルタだねブラザー!?それはもちろん、こう!」

 

 逃げるのが定石、だがそれをしても意味がない。何でもしていいんだ、なんでも!今ここで、私は自由だ!頑張ろう!やってみよう!吹き飛ばされたけど体勢を立て直したオルフェウスが竪琴をかき鳴らす。私とオルフェウスに赤い光が纏わりついて力がみなぎるのを感じる。マハタルカジャ、攻撃の力を高める術をかけて東堂君に向かって踏み込む!

 

「死地に飛び込む勇気!だがそれは無謀と紙一重だぞ!」

 

「それはそう!でも、忘れてない東堂君!?私は私だけじゃない!オルフェウス!『突撃』!」

 

 近接戦において唯一、唯一私のアドバンテージと言えるものが一つある。的の小ささだ。東堂君は今、脚を踏ん張って拳を握った状態で私を懐に招き入れた。十中八九来るのは拳、そしてその拳はどうしたって打ち下ろしになる。アッパーも、ボディブロウも、東堂君からしたら私には当てづらいので必然、上から下への打ち下ろしになってしまうのだ。

 

 だから、それを捕まえる。マハタルカジャと呪力で強化した身体能力と東堂君の力の勢いをそのままにぶん投げる。その先には竪琴を振り上げたオルフェウスの姿。東堂君の背中に驚愕の気配を感じてにや、と私の悪い笑みがさらに悪くなった。

 

 振り下ろした竪琴が東堂君を直撃する瞬間、パン!と音が鳴ってオルフェウスと東堂君の位置が入れ替わった。しまった!東堂君にはこれがあったんだ!と竪琴を空ぶってから慌ててオルフェウスを振り向かせようとするもののそれより早くに東堂君の前蹴りを背中に受けたオルフェウスが吹き飛んで私の隣を通過し壁にめり込む。

 

「……驚いた。どこか侮っていたわけじゃないが、術式を使わされるとは思わなかった。お前に普通の術主体の術師としての戦闘を伝えたからな」

 

「よく言うよ本気ださせろって目で言ってたくせに。それに、私と位置を入れ替えて同士討ちさせることだってできたでしょ。続き、イケる?」

 

「無論!」

 

 すっ、と私の背後に現れたオルフェウス。蹴り飛ばされて壁にめり込んでもまだまだ動ける。一撃で殺されたらまあ、私にもダメージが入るしワンチャンオルフェウスそのものがいなくなってしまうかもしれない。ただ、回復手段がないわけじゃない。

 

「そこまでだ。馬鹿者どもが」

 

 ギュィィィィンという音が鳴って私と東堂君の間に深い線が奔る。その方向を見ると体育館の入り口には和服の上をもろ肌脱いでその下のバンドTシャツをさらけ出してエレキギターを構えた楽巌寺学長先生の姿が。あれ?入学の時より随分とファンキーというかロックというか印象が違うような。

 

「……クソジジイが……!」

 

「東堂君?ストップ入ったんだからこれでっておーい!?もうっっ!ほら止まる!とーまーるーのーーー!!!!」

 

「汐見、それを言えるのなら最初からやるでないわ。体育館をこれ以上壊すな。明日の授業をどうするというのか」

 

 いいところを邪魔されて、という気持ちはわからなくもないがやりすぎていたのだって私にでもわかってる。だけど東堂君にとっては退屈が裏返った至福の時間だったのだろう。それを邪魔された怒りは大きい。

 

 でもそれで学長先生に歯向かわせて呪力のレクチャーをしてくれていた東堂君が何らかの処罰を受けたら私の良心が痛む。痛むので私は全力で東堂君の足に縋りつき、オルフェウスが竪琴を投げ捨てて彼を羽交い絞めにする。ため息をついた学長先生がギターのピックを手放して手招きをする。

 

 暴れる東堂君をオルフェウスで拘束し続けて私だけ学長先生の前に移動すると一撃で目から星が飛び散る拳骨をいただいた。くらくらしているとさっさと解散しろとのことなので時間を確認するためにスマホを取り出して開く。……あ!

 

「東堂君、見たいって言ってたテレビもうすぐやるみたいだよ?」

 

「なぁにぃ!?高田ちゃんゲスト出演の旅番組か!こうしてはいられん!行くぞ汐見(シスター)!!!」

 

「え、私も!?」

 

 こうしてはいられん、と東堂君はオルフェウスの羽交い絞めを破り、私を担ぎ上げて学長先生の横を通り抜ける。オルフェウスを消しながら学長先生を見ると、ものすごく深いため息をついていた。なんか、ごめんなさい。




 東堂って多分教えるのっていうか肉体言語レクチャーがめちゃくちゃ上手いんでしょうね。虎杖タイプな内の汐見ちゃんとの相性は抜群です。

 ペルソナに関してですが、使用スキルは原作と同じ8つまでで召喚しなければ自由に付け替えて召喚可能です。召喚中はスキルの変更は不可能となります。ちなみにですがオルフェウスとイザナギは共に事故フェウスと事故ナギになっております。そうじゃないと無下限と拮抗するなんて無理や。
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