ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
『お嬢ちゃんどうしたんだいこんなところで?この先はサバンナだぞ?』
『知ってる知ってる~~でもこの先の村に用があって。先に行ってる人がいるらしいから合流しないといけないの』
『ふぅん、子供の一人旅でしかもこんな小さいのを一人にするとはどんな旅仲間なんだか。まぁ構わんけどな』
どうも、のっけから熱い日差しに日本との違いを如実に感じております汐見琴音17歳です。私は今、日本を飛び出してケニアの首都ナイロビを後にしようとしているところになります。いや、実は色々あって日本を一回離れなきゃならないことになってね。これも任務ですよ任務。
両面宿儺の復活に際して虎杖君にこんにちはしに行った私ではあるんだけど両面宿儺は思想行動その他もろもろがイカれてはいるけども、意思疎通ができる。それも結構頭がいいことが分かった。これ割と大収穫、理性ゼロで本能でボンバイエするのが呪霊なんだけどそれに対して人間としての行動指針が明確であるっていうのはコミュニケーションを重視したい私にとっては利点でしかない。
約束通り3日で京都に帰れた私ではあるんだけど帰る前に五条先生が言うんだ、憂太に会いに行きたくないかい?と。その言葉に私は即答したわけですよ、会えるなら会いに行きたいなあって。じゃあ会っておいで!と飛行機のチケットを渡されました、ケニア行きナイロビ便です。
乙骨君は現在、海外にて何かの呪具を探すという任務を受けている。同行者がいるみたいだけどそれはだれか知らない。乙骨君は百鬼夜行を経てリカちゃんが成仏したことにより4級術師まで等級が落ちた。だけど彼は進級までの3か月で特級まで舞い戻って見せた自慢の後輩だ。
それで、五条先生が探しているらしい呪具が外国にあるということで乙骨君をなぜか五条先生は海外に飛ばしてしまったのだ。クラスメイトが大好きな彼にとってはたいそう悪いことをしている気がするのだけどまあそういうことで乙骨君は今ケニアにいるらしいのです。
私も私で進捗確認の任務になったのでちょうどいいんだけどせっかくだからサプライズ登場したくない?した~~~い!!ということで現在地だけ五条先生に尋ねてもらってあとは足で探すことにしました。英語は話せるしスワヒリ語はミゲルさんに教わったし何も問題ないもんね。
『そのミサンガ、こっちのもんだな。どこで手に入れたんだ?』
『プレゼントだよプレゼント。いいでしょ~~お気に入りなんだ』
『ああ、マサイの工芸品だ。見る目がある。悪いがここまでなんだが……本当に歩いていく気か?ライオンもハイエナも出るぞ』
『うん、こんな僻地に呼ばれるとは思ってなかったけどお仕事だからね。いくら?』
『こんなもんだ』
ナイロビは結構都会だったけどそこから離れて僻地に行くならもうすっかり景色は田舎だ。これ以上はいけないというタクシーの運転手さんにお金を払って手を振って大きなリュックサックを背負い外に出る。うーん、あっつい。足元見てくるかと思ったけど予想よりも安いね、見る感じ騙す気はなさそうだ。
土煙をあげて去っていくタクシー、周りには点々とした木、岩なんかが点在しているまさしくサバンナ!とりあえず物資はナイロビで買い込んだので村を離れる前に情報収集をしよう。って聞こえる言語全部スワヒリ語じゃん、習っといてよかった~~。
頭で水がめを運んでいたおばちゃんを捕まえてこの先にどんな動物が出るのか、人食いの動物はいるかを尋ねてみる。なんでも最近は自然保護が盛んだからか人と動物が分断され始めているのでここらのような比較的文明が近い場所だと動物の被害はないらしい。僻地に友達がいるから行くといえばめちゃくちゃ心配されてしまった、まあこんなナリじゃしょうがないか。
村の名前を伝えるとちょっと待ちなさいよと手を引かれて土でできた住居に突っ込まれた。なんか生き字引っぽいおじいさんがいるんですけど。私じゃまだ聞き取れない高速スワヒリ語でやり取りをしたおばちゃんはおじいちゃんに紙と先のとがった木炭を渡す。おじいちゃんは私を見て目を綻ばせるとがりがりと紙に何かを書いて私に手渡してくれた。
あ、これ古びてるけど地図だ。しかも、村の場所と道順、危険な場所が書いてある!文字じゃなくて絵で!わかりやすい、崖、ジャングル、動物!おじいちゃんありがとう!と私はバッグを漁って日本のビーフジャーキーとちょっとのお金を返礼として返した。日が暮れるから泊まっていきなさいと言われたのでお言葉に甘えて。ミゲルさんに仕込まれたマサイダンスの出番か!?
「うわっちゃっちゃー。くすぐったいよ~~」
大きなものにのしかかられて楽しくなってる私です。外国旅って危険と隣り合わせっていうけど現地の人は意外なほど暖かいことがあるのだと知りました。無知を恥じるばかりだよ。ながーいお鼻が私の頭をまさぐっている。そう!野生のゾウさんと出くわしたのだ!野生ってちょっと違うか、たぶん昔保護されて野生に返されたであろう人を知っているゾウさんとその家族だと思う。
村の人にマサイダンスを披露したら大ウケして宴会に発展した翌日朝から私は村を出発した。一応車が運転できるようになのか凸凹ではあるけど道があるのでおじいちゃんの地図とGPSの地図を照らし合わせて歩き出しました。ごめんなさい嘘つきました、途中からペルソナで楽してました。で、このゾウさんファミリー、大体10頭くらいなんだけど私を見た瞬間近づいてきたから呪力強化で逃げるかと思ったら中身が友好的な感情を見せていたので触れあってみることにしたの。
私にのしかかっているのは子ゾウ、私の頭をまさぐってるのが多分お母さんでリーダーかな。人間に慣れにくいと聞くけどそんなことはないのだろうか。まあいいか、お鼻が私をぐるりとつまんで牙の上に乗っけられた。おやまあ、もしかしたら昔にサーカスにでもいたのかな?
「あっち、つれてってくれない?」
動物との意思疎通は術式の応用でできないことはない。クマさんと仲良くなったのもそれだからね。ゾウさんの頭に乗っているペルソナ、トートのおかげだ。知恵の神の概念が形になったペルソナで、ゾウさんの知恵を一時的に高めて私と意思疎通ができるようにしてくれてるってわけさ。
ゾウさんの牙に腰掛けて揺れる景色を楽しみながらケニアのど真ん中を行く私。警備隊に見つかろうものなら間違いなく逮捕されるだろうけど呪術が使えるので何ら問題ありません!なんか久しぶりにゆっくりできている気がする~~。
ゾウさんと旅をし、途中でキャンプをして翌日。ゾウさんと別れた私はまたもペルソナでズルをして旅程を短縮して目的地の村にたどり着いた。文明を排された伝統的な住居に民族衣装を着た人たちが何だ何だと私を見て何か言っている。一応あれこれこうで、ここに人いない?私と同じ日本人を尋ねるといるらしいので案内してもらう。
一番大きくて立派な住居の入り口であるカーテンをめくると、見覚えのある白い制服と黒髪がみえた。それととっても見覚えのある白ベレー帽のグラサンナイスガイの姿も。なるほどなるほど~~それで五条先生は私をケニアに行かせようとしたわけなのね。
「お~~~っこっつくん!お久しぶり~~元気してた?ケニアってあっついよね~~任務は順調かな?」
「琴……音……先輩?」
「そうとも!あなたの小さくて頼りになる先輩だよ!髪と背が伸びたね男の子!元気そうで何より!ミゲルさん!お久しぶり!」
「アア……久しぶりダ、琴音」
乙骨君に両手を広げて見せると彼は嬉しそうに立ち上がってこっちに来たあとわざわざ膝を折って私に抱き着いた。修行は欠かしてないみたいでなにより、呪力の操作も改善されたね。私も抱きしめ返しつつ気まずそうにしているミゲルさんに挨拶をすれば彼もまた挨拶をしてくれた。ちょっと距離が離れた気がするなあ。
「ミゲルさん、気にしてないといえばウソにはなるんだけど夏油さんからどういう感じだったかは聞いてるよ。また仲良くしてくれる?」
「キミが……それでイイならバ。俺は夏油を王ニしたかった。ケド、キミとは敵にはなりたくなかっタンダ。それだけは、嘘ジャナイ」
「うん、非術師と術師の問題については根深いからどうこうは言えないけど、私ミゲルさんと遊ぶの大好きなの。いろいろあったけど問題は棚上げして仲直り、して?」
私に会えたのがよっぽど嬉しかったらしい乙骨君は私を抱きしめたまま泣いてらっしゃるので片手だけミゲルさんに差し出す。もらったミサンガを手首にしているのがわかったミゲルさんは薄く微笑んで私の手を握り返してくれる。うーん、心のしこりが取れた気分!ほらほら乙骨君、あんまり私に甘えてると里香ちゃんにお尻蹴っ飛ばされちゃうよ!
「それで、任務の詳細私知らないんですけど呪具ってなんの呪具探してるんですか?」
「アー、ソレだヨ、ソレ。キミがつけてるヤツ」
「えっ!?琴音先輩が持ってたんですか!?じゃあなんで五条先生はそれを言わなかったの!?」
「あ、コレ?私がコレ持ってるのは五条先生知らないと思うよ?」
「正確にはチョット違ウ。君にプレゼントしたのは呪具を編んだ際に出タ端材で俺が編ンダ物ダ。術式を乱ス効果はアルけどちゃんとした物よりもレベルがかなり下ガル。効果だけ見れば気休メダ」
家主さんのご厚意でテーブルを貸してもらった私が何を探してるんですか?と尋ねればミゲルさんが指さしたのは私のミサンガ。乙骨君がそんなぁ!?と声をあげるものの厳密にはちょっと違うらしい。
呪具の名前は『黒縄』と言ってありとあらゆる術式を乱す効果のある特級呪具なのだとか。私のミサンガはミゲルさんの国の術師が黒縄を編み上げた際に出た端材で作ってあるらしくて等級にして3級程度まで落ちてるのだという。五条先生の無下限も乱せるのだというからそれはそれはスゴイ呪具なんだろな。
「なるほどなるほど、それで残りの黒縄ってあるんですか?」
「それが、わかんないんですよ。特級呪具だから作るのに何十年もかかるとかで現物を探してるんだけどあまり芳しくなくて」
「黒縄はこの国の術師が年月を重ねテ作ルモノダ。俺がもらい受けた術師ヲ一人一人タズネテみているガ、今のところ全滅ダナ。ここもソウダ」
「いろんな人が作ることができるんですか?」
「アア。この国の呪術の根幹はシャーマニズムダ。精霊の力をカリ、呪力をコメて編み上げル。外国はタダでさえ術師が少ナイのにその術師が殆ど一生に一本作るくらいの希少品ダ。期待はしないホウガイイ」
なるほど、五条先生は黒縄の危険性を知って残りがあるのかないのか確かめたかったんだ。ないならないでそれはいい。本当の狙いはミゲルさんに乙骨君を鍛えさせることかな?五条先生曰く呪力強化と体術でやり合った場合ミゲルさんは五条先生に並ぶか上回るとか。
外国人、それも身体能力に優れるという黒人のもともとの出力に呪力による強化が乗ればそれはそれは恐ろしい術師ができるだろう。しかもミゲルさんバリバリ前衛タイプらしいし。乙骨君の術式は模倣術式、リカちゃんがいたときは無制限だったけど今は違う。
コピーする術式の持ち主の呪術的な価値があるところを取り込んでリカちゃんが遺した力をより集めた式神を顕現できる5分間のみ使用できるピーキーな術式になってしまったんだ。それを補うには体術を伸ばすしかない。幸い乙骨君には無尽蔵ともいえる呪力の量がある。
だから、ミゲルさんか。なるほどぉ、乙骨君本人のストレスとかは置いておくにしても人選としては悪くないんじゃなかろうか。ミゲルさん教えるの上手だしね、それはスワヒリ語で実証済みだ。
「とりあえず私はあと3日くらいはケニアにいることにするよ。何か私の術式とかでやってほしいことがあったらピックアップしてね」
「助カル。そうだ、君に渡シ忘れテタ物がアッタンダ。遅れてしまったケド」
「わぁ……覚えててくれたんだね、ミゲルさん」
「未練がましく持ちアルイテタ。渡せることがトテモ嬉しいヨ」
ミゲルさんが持ち歩いてた荷物の中から取り出したのは私が気にいってもっと欲しいとお願いしていた香水だった。もう殆どなくなっちゃってたから特別な時にしかつけないようにしてたけどこれでまたずっとつけてられるね。早速手首と首筋につけさせてもらって、と。
「乙骨君」
「なんですか?琴音先輩」
「がんばってるね。花丸100点!」
「……っ!……はいっ!」
笑顔で丸を乙骨君にあげると彼はまた少し涙ぐんで大きく返事をしてくれた。ああ、安心した。私も日本で頑張らなくちゃ。
ミゲルさん回と乙骨君のメンタルリセット回。割と呪術って作中時系列ぽんぽんとぶし事件一つ一つがなっがいのでいろいろ悩みますわ。