ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
そろそろ外に出てこいこの不発弾が。とのお言葉を学長先生からもらった私の姿は今現在大阪にあります。不発弾とはあまりにもひどくありませんかと思わなくもないけど着火済み火薬庫こと東堂君の近くにいていつ爆発するかわからないなんて言われたら納得できるような、できないような。いやできませんが!?
さて、私は術師の等級としては四級術師……身も蓋もない言い方をすれば素人に毛が生えたみたいな扱いというかクソ雑魚ナメクジ扱いである。仕方ないんだけどね、実際素人みたいなものだったし。なんだよシャドウって、勝手に呼んでおいて正式名称を知ると恥ずかしくなっちゃった。
話を戻すと四級である私は単独行動が許されていません。なので二級以上の術師の引率が必要になるんです。そんなわけでここで活躍するのが我がクラスメイトにしてブラザー(半分諦めた)である東堂君、だったらよかったのになあ。正直楽だし、強いし。
「こんにちはー、あなたが私の引率さんですか?」
「ああいや、私は今回の補助監督になります。術師の方はもう少しでいらっしゃるので待っててくださいね?」
「そうなんですね!よろしくお願いします!」
お前と東堂を一緒に送り出したら何が起こるかわからんわ、とのことです。ひどいな、東堂君ならともかく素直でカワイイ常識人として通っている私が街中でそんなヤバイこと起こすわけないじゃないですか。ちゃんと毎日挨拶して元気元気してるのにもう、失礼しちゃう。
集合場所にあった黒塗りの車の運転席のドアにもたれかかってた呪力があるスーツの人がそうかなって思ったらどうやら違ったみたい。とりあえず握手握手と手を差し出してみると結構驚いた様子で握手してくれた。もしかして術師ってイカれてるのが多いって言うから私もイカれてると思ったのかしら、失礼ですね!
「すみません、少々遅れました。そちらが今回の?」
「ああ、七海さん。お疲れ様です。ええ、京都校より派遣された子になります」
「京都校1年生、汐見琴音15歳!最近の悩みはクラスメイトが存在しない記憶でシスターと呼んでくることです!よろしくお願いします!」
「要らない情報まで自己紹介どうも。私は七海建人、一級術師です。今回あなたの引率として任務を共に行います……が」
「が?」
「四級術師と聞いているので少々不安を覚えております。貴方がどれほど戦えるのか、あるいは戦えないのか。率直に自己評価をお願いします」
確かにそれはそう、見た目の分も多分にあるだろうけど外部の情報だけ聞いていたら私は一般の出のしかも一番下の等級の術師。一級とかいう実質最高位の七海さんからしたらとんでもない足手纏いだ。だから、最低限自衛できますかを結構厳しめの言葉で伝えてるのかな?
「えーと、中距離から式神みたいなものを操って戦います。一応同じクラスの二級術師の人がテンション上がって本気になるくらいには強い、はず?」
「最後の疑問形にはそこはかとない不安を覚えますがまあいいでしょう。呪力操作の雑さには目をつぶることにします。では、行きましょう」
はぁい、と返事をして車に乗り込む。うーん、呪力操作の雑さって言われてもなあ。まあ東堂君との実質殴り合いみたいな模擬戦は結局戦闘訓練にしかならないわけで。だから私は平時から呪力を全身に回してるんだがこれが結構難しい。息をするようにやってる東堂君とか加茂君はすごいんだなあって。西宮さんは私よりみたいだけど私よりはさすがに上手。
「任務内容を説明します。郊外の元総合病院、現廃病院にて肝試しを行った非術師3名が行方不明になりました。警察の捜査中ではありますが現場にて不審な呪いが目撃されております」
「現場への警察による立ち入り検証は?」
「上の権限にて現場待機、私たちの現場検証が済み次第再開すると」
「病院とは、いかにも出そうですね。うーん、生きているといいんですけどその人たち」
呪いとは、いかにもな場所に集まる。これは人間の恐怖とかそういう思考がコントロールされずに非術師から漏れ出て指向性を持った結果だ。だから、いわゆる心霊スポットとか言われる場所には実際出る。今回もそれに面白半分の人たちが巻き込まれちゃったのか。
「あ、そうだそうだ。七海さんでよろしいですか?一つお願いというか、聞きたいことというか、あるんですけども」
「どうぞ。任務内容としてはよくあるものですからこれと言って伝えることもありません」
「呪力のコントロールについてなんですけど、七海さんのコツみたいなものってあったりするんですか?一般的なことは同級生のブラザーに聞いてるんですけどせっかくスゴい人に会えたんでどうかアドバイスを!」
「……ふー、その同級生にはなんと?」
「えーっと『もはや繰り返すほかはあるまい!黒閃を決めれば話は変わるが……』と」
「私としても同じ感想になります。初歩はできているようですので、あとは繰り返すしかないかと」
そりゃそうだよねえ、としか言えない。私が聞いてるのは基本の基本の部分でだからこそ近道がない。初歩を身に着けたと言えど道は遠いものだ。七海さんはあんまりペラペラ雑談してくれるタイプじゃなさそうだし私から話題提供し続けないと。
「えーと、それじゃ黒閃ってなんでしょう?聞いても教えてくれないもんですから」
「黒閃とは、打撃の際に発生したインパクトと呪力の遅れが0.000001秒以内に衝突した時に起きる現象です」
「現象?東堂君の話だと技みたいな扱いされてましたけど」
「ええ、現象です。術師においてこれを狙って出せる人間は存在しません。たとえそれが五条悟であったとしてもです」
え、すごい!それってつまり会心の一撃?あるいはスマッシュヒット?とにかくすごいってことしかわからないけど。誰にでも撃てるかもしれないけど、そう簡単には撃てない、そんな語り口だ。七海さんは私が前のめりで聞く姿勢になったのを見て背もたれに預けていた体を起こしてしっかり教えてくれる態勢に入った。
「君の同級生が黒閃を決めろ、とアドバイスしたのは最大級に難しくもあり最適解でもあります。術師が黒閃を決めると一時的にアスリートのゾーンのような状態に入ります」
「ゾーン?怒りとか憎しみとかで呪力が迸ってる状態みたいな?」
「全くもって違います。そんなもの比にならない、潜在能力の完全開放、何もしなくても無意識で呪力が体を巡り120%のポテンシャルを発揮できます」
「つまり、呪力がキマっちゃうんですね」
「言い方を考えてほしいですがその通りです。そしてもう一つ、黒閃を経験したかどうかで呪力への理解が天と地ほどに変わります。自らの呪力の核心、個人差はありますが今まで素手で加工してきた木材に対して必要な道具が用意されるくらいには進むでしょう」
「うわー、それは是が非でもキメたいですね」
「失礼、到着いたしました。任務の開始をお願いします」
東堂君が教えなかったのは多分今の私じゃ何をどうあがいても黒閃を決められないからだろうねえ。だけどちょっと楽しみになってきちゃった。サンドバッグ殴って練習しよーっと。補助監督さんから言われて車を降りるとあれ?警察の人いる。呪術って一般的ではないんだよね?あれー?
「では、帳を下ろします。ご武運を『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」
「……見られてよかったんですかね?」
「場合によります。警察の中には呪術のことを知らなくても『そういうものがある』という認識自体はあるので。機密をペラペラしゃべらなければ問題ありません」
「なるほど」
背の高い七海さんとチビチビの私コンビはものすごく警察から奇異の視線で見られていたが何度かそう言うのがあるらしい七海さんは気にせず病院内に入ってしまう。私も入ると補助監督さんによる帳という結界が病院を覆ってしまった。
「残穢は見えますか?」
「見えます見えます。あっちですね」
「よろしい、それではいきましょう。式神が術式なら先に召喚しといてください」
「わかりました。ペルソナ――――ジャックランタン」
その言葉と共に布で覆ったナタをスーツの中から引き抜いた七海さんに合わせて私も隠すために腰の後ろに移設したホルスターから銃を抜いて流れるようにこめかみに突き付けて撃ちぬく。七海さんは一瞬驚いたようだけど術式だと理解したらしく、現れたペルソナを見て一つ頷いた。
『ヒーホー!よろしくだホー!』
「喋るんですか……」
「あ、喋らせただけなので黙らせることもできますよ」
ペルソナの中にある私の人格のいくつかはおしゃべり好きな私だったりもするので喋るペルソナもいる。魔法使いのようなローブを羽織ってかぼちゃ頭にウィッチハットをかぶったペルソナ、ジャックランタンは青い灯の灯ったランプを掲げて挨拶をする。
ジャックランタンを選んだのは、対外的には力を隠す方がいいと思ったからだ。オルフェウスもイザナギも私のペルソナの中じゃ強い方、ジャックランタンも弱くはないが規格外かと言われたらそうでもなく常識的な範囲なのでこうなった。
呪力の残した残滓を追って病院の中を進む。途中でよわっちそうな呪霊が出てきたけど私が何かをする前に七海さんがナタで真っ二つにしちゃった。だけど、本命はそっちじゃない。おまけ程度のやつだろう。本命は、たぶんもっと酷い。気持ち悪い残り香してるもん。
「……いました、ね。要救助者も」
「……はい」
【まま……まんまぁ……】
ここは総合病院だけど特に力が入ってたのは産婦人科だった、らしい。だからなんだろうか、オペ室の半分を埋めるくらい大きな赤ん坊の呪霊がいるのが。その赤ん坊が舐っている真っ赤なものの正体を察してすっぱいものがこみ上げる。
「自衛に専念してください。場合によってはすぐに逃げるように」
「……はい!ジャックランタン!『アギ』!」
吸っていたモノを投げ捨て四つん這いでこちらに迫る呪霊に対して私は火炎を放って攻撃する。顔面が炎上してただれた赤ん坊は大きく怯んで顔を振る。大きいせいでその一挙手一投足は人間相手にしたら致命的だ。近接タイプらしい七海さんはひるまず近づき、ナタで腕を切り飛ばした。
「ジャックランタン『ラクンダ』」
「これは……!とにかく、終わりです』
防御という概念を減算するラクンダという術をかけると七海さんは少し驚いた様子だったが危なげもなく赤ん坊の胴体を真っ二つして祓ってしまう。終了だ、と七海さんの知覚によると彼はゴーグルのような眼鏡とネクタイを直して私に問いかけた。
「最後、何をしたのですか?私の術式で作り出した弱点が急に大きくなりました。今までなかったことです」
「ゲーム的に言うなら防御力を下げました。なので七海さんの術式に対する防御力が下がってそうなった、んじゃないですかね?」
「……なるほど。しかし術式の威力、戦闘時の判断力共に四級では収まりませんね。何か訳ありでしょうから聞かないでおきますが」
「それは、どうも?」
七海さんの視線の先にあるのは被害者の亡骸。食べられてしまったのだろう、いろんなところが欠損して混ざって見る影もない。正直、このままじゃ救われない。せめて、とジャックランタンを動かして遺体の前に。彼のランタンが輝くと、遺体から青い焔が上がってすぐに鎮火した。何も変わらない遺体ではあったけど、七海さんはわかってくれた。
「ジャックオーランタンは、迷える旅人を導くことがあるそうですね」
「はい。彼らが行くべきところへ行けるように願いを込めました。間に合わなかったけどせめてこれくらいは」
「……君は、他人を悼むことができるのですね。術師を続ける中で擦り切れて無くなってしまう感情の一つです。大事にしてください」
「わかってる、つもりです。でもきっと、忘れはしない」
「違います、それは忘れていいのです。いいですか汐見さん、その感情は呪いになり得ます。死者を悼んでもそれを引きずってはなりません。貴方が持ち帰るべきものは任務が成功したという結果と、死者を悼めたという事実です。後悔は置いていきなさい」
ぽん、と彼の大きな手が私の頭を一度叩く。彼の言う通りかもしれない、もう少し早ければ、強ければ……この後悔は置いていくべきなのだろう。だけど、私は置いていかない。この後悔が私の心の海の中でいずれ堆積し新たな力を生むと知っているから。
食事ができそうならしていきましょう、私が奢ります……そう言って病院の外に歩いていく七海さんを追いかける。折角だから粉ものがいいとリクエストしてみると七海さんはいい店を知っていますと鷹揚にうなずいてくれるのであった。
ナナミン参上、最後のセリフに関してはいろいろ考えましたが彼の最後から察するにこういう考えじゃないかなあとは思います。ちなみに主人公と東堂は一緒にすると任務成功率100%になりますが周辺被害とかノリ過ぎて酷いことになるので分断されています。