ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン   作:カフェイン中毒

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第六話 特級呪詛師と特級呪術師(予定)

「お話って言ってもねえ、私の任務知ってます?呪詛師の捕縛ですよほ~ば~く~。見敵必殺、問答無用。貴方のことは知らないですけど邪魔しないでいただけます?」

 

「つれないことを言わないでくれよ。折角見つけたお仲間なんだ。見る限り君も特級なんだろう?」

 

「お生憎様、この間二級になったばっかりでーす。お仲間っていうけど、どこら辺が?」

 

 この人、強い。おそらく東堂君よりも、戦う気をなくしてはいるみたいだけどその状態で東堂君よりも圧がある。特級術師って確か日本に3人しかいなくて一人は五条先生、もう一人は東堂君の師匠でもある九十九さん、そして信じられるだけの圧を備えてるこの人が、3人目。

 

「呪霊操術、私の術式だ。効果は文字通り、呪霊を取り込み操ること。禪院家の式神に近いね。呪霊を調伏する必要があるし、取り込むときなんか特にひどい。まるで吐瀉物に浸した雑巾を呑んでいるかのようなんだ」

 

「……想像したくないですね。私の術式は仮想仮面想術、自らの内側に生じた人格を起点として呪力で形を与えて呪霊として成立させます。ゲロ雑巾の味はわからないですけど難点は召喚するたび死ななきゃいけないことかな?」

 

「死ななきゃって……君は生きてるだろ?」

 

「死んでますよ、疑似的にですけど。三途の川が見たいならお貸ししましょうか~?」

 

「あー、私の術式もひどいもんだとは思ってたけど上には上がいるんだね。いや勉強になったよ」

 

 ぷらぷらと召喚器をぶら下げて見せると五条先生のようにこれがやばいっていうのがわかったらしく遠慮しておくよと返されてしまった。実際、見えるわけじゃないんだけどね三途の川。疑似的に死んでいるとはいえ実際に死んだことがあるわけじゃないし。

 

 しかし、術式の開示をされてしまった。私も一応開示をしてみたがいくつか罠を張るために重要な部分は開示していないので縛りによる術式のブーストはあまり期待できないかな。こつこつと音をたてて地下室の中に入ってくる夏油さん、やりにくいなあ。もう吹っ飛ばしていい?

 

「……私は力を持つものは理想に殉じるべきだと思っているんだ。君にそういった理想はあるかな?」

 

「例えば世界平和とか、人類みな平等とかですか?ないですね。これは持論なんですけど、他人を変えることはできないんですよ。いつだって変わるのは自分です。世界が気に食わないなら自分が適応するか、自分で変わってくれた人を集めるんです」

 

「耳に痛い言葉だ。君ほんとに子供かい?確かに、他人は変わらないだろう。私だって自分以外変えられなかった。当たり前に抗いたければそれに気づいた人間を集めるしかない。ああ、全部私がやってきたことだ」

 

 信者が座っていた無事なパイプ椅子に腰かけて私にも座るように促す夏油さん、嫌なので私はアバドンの上に座って彼の話を一応聞いておく。カルトっぽい話をしてくるなぁこの人は。実際誰かが変わるきっかけは作れるかもしれないけど結局変わるのはその誰かだ。脳みそいじくって洗脳するわけじゃないんだから。

 

「君は、非術師をどう思う?自ら呪いを生み出し、処理もできないくせに僕ら呪術師にその処理をやらせ自らはのうのうとのさばっているあの猿どもを」

 

「夏油さんが一般の人が嫌いなのはわかりましたけど、私はどうとも思いません。まず個人を見るときに術師かどうかを見るのがナンセンスです。非術師にも素晴らしい人はいますし術師の中にもヤバイ人はいます。ちなみに実体験です」

 

「表面的な答えだ、本質を突いていない。適者生存という言葉があるだろう?呪いが跋扈するこの時代の適者は呪術師だ。非術師などいるだけ無駄だ」

 

「……つまり、あなたは何がしたいと」

 

「簡単さ、猿どもを皆殺しにして術師だけの楽園を作り上げる。それが私のなすべき大義だ」

 

 話すだけ無駄だったかなあ……という感想が第一に出てきてしまった。術師が存在する大義名分は力のない一般人のため。それが勿論おべんちゃらだっていうのはわかってるけど現行法がそうなら法に従う私たちはそれに従わなければならない。というかなんだけど、それ結構無理がないか?

 

「いくつか質問しても?その非術師の皆殺しって日本だけ?世界も?」

 

「構わないさ。君は猿ではないからね。その質問だが答えは後者だ。一匹も残すつもりはない」

 

「まあ皆殺しの是非は置いておくとして仮に成功した場合なんですけどその先術師も全滅するんじゃないんですかね?」

 

「んん?なぜそう思ったんだい?」

 

「非術師を皆殺し、つまり人類約74億人のほとんどの命の終わりから発生した呪力による超特級の呪いを誰が祓えるんです?」

 

 ぽかん、という感じでキョトンとした顔をしている夏油さん。五条先生が言っていた話、『死』は呪術的に最も力が引き出せる瞬間であると。だから非術師にも呪いが見えることがあるのだと。じゃあ仮に一発で逝くにしても何回かに分けるにしても不可避に発生する死、それも総数70億越えの死から発生する呪力が集まってできる呪いは一体いかほどのものなのか。

 

「まさか考えたことないなんて言いませんよね?生きてるだけで特級なんて呪いが発生するのに死がいくつも重なったら何が起こるかなんてわかりませんよ?地球ごとボンかもしれません。まあ回避手段がなくもないんですけど」

 

「……仮に聞くけど、その回避手段とは?」

 

「なんで敵側に聞いてるんですかね。簡単ですよ?全人類を、全く同時に、死んだことを悟らせずに、術師だけより分けて殺すんです。コンマ一秒でもずれれば無理でしょうけどね、気づいた瞬間恐怖は伝染するので」

 

「ずいぶんと詳しいね?」

 

「夏油さんはしなかったんですか?教室の中に突然テロリストが入ってきて自分が鎮圧する、みたいな妄想」

 

「あ、わかる。女の子もやるんだね」

 

 ぽん、とわかりやすく手を叩いてみせる夏油さん。あー、わかった。この人呪詛師だけど呪術の知識が若干中途半端なんじゃないかな?まるで勉強の途中でやめちゃったみたいな。知っておかないといけないところを教えてもらえなかったみたいな、そんな感じがする。私はなぜか月一ペースで来る五条先生に呪術師の内情とか名家のどろどろ具合とか愚痴で聞かされてるから詳しくなったけど。

 

「他にもいろいろ聞きたいんですけどライフラインをどうするのかとか、原子力発電所とか軍の核爆弾みたいな兵器の管理とかそういう、誰かがやらないと自分たちが死ぬかもしれないところの管理どうするつもりだったんです?理想の世界できた!終わり!じゃないんですから、生きていくなら先を考えるのが指導者の役割という奴ですよ」

 

「あー……ぶっちゃけ猿ども皆殺しにしたその後どうにかするつもりだったんだ。というわけでそこまで考えられる君、一緒に来ない?」

 

「気づきません?何でこんなに否定的なのかとか。私は誰かを勝手な都合で呪って殺したくはないんですよ。極端に走ると極端なことしか起こりませんよ?アバドン『ウイルスブレス』」

 

 アバドンの口から明らかに毒々しい色の吐息が周囲を抉る勢いで発射される。毒の濁流に飲み込まれたと思った夏油さんは、それより早く飛び出してきて思いっきり拳を振りかぶって私を殴りつけた。東堂君より早くて重い、一瞬の交錯で3発も殴られた。

 

 壁にめり込む私と術式が切れて消えるアバドン。呪力の防御がかろうじて間に合った、テトラカーンを出す間もない3撃はさすがは特級呪詛師……全くもって理不尽な強さをしているんだね。あーあ、ほっぺがパンパンだぁ。

 

「女の子の顔を殴るなんて色男失格ですよ?」

 

「安心しなさい、君は名誉男子さ。しかし丈夫だね、気絶させて持って帰ろうとしたのに」

 

「誰が豆粒チンチクリンだこらぁ!男子か女子もわからない体型なんて初めて言われたよ!これでもちゃんとおっぱいあるんだからね!?」

 

「こら!仮にも女性っていうんだったら男の前でそんなはしたないこと言うんじゃあない!あとそこまで酷いこと言ってないだろう!?」

 

 許さないんだから!と今一度ペルソナを召喚するためにガンベルトに手を伸ばすと、そこにあったはずの召喚器がない。まさか、と夏油さんの方を見ると彼は持ちたくなさそうにしながらも私の召喚器を持っていて、それを芋虫みたいな呪霊に呑ませてしまった。すぐ吐き出したけど。呑ませて、吐き出す。繰り返すこと3度。涙目になってる呪霊がかわいそうなので……

 

「……あの、やめてあげません?取りかえすまで持ってていいので」

 

「……君の術式の要は僕の手にある。返してほしければ僕と縛りを……」

 

「っしゃ!オラァ!」

 

「普通に突っ込んでくるのかい!?」

 

 ()()()()()()()()()()で引いてしまったら女が廃る。そして夏油さんにかけた術式開示の時のブラフが今生きた!確かに召喚器は必要だ、でもなくたって術式を使うことはできる。右手を引いて手を開く、手の中にあるのは群青のタロットカード、アルカナは『愚者』。それをパンチと同時に夏油さんに叩きつける!

 

「ペ・ル・ソ・ナ!イザナギ!」

 

「くっ……黒、閃……っ!?」

 

「……????……いーい気分だ~~」

 

 タロットカードが私の手の中で砕けると同時に、夏油さんが呪霊でガードした私の手の周りの空間が歪んで黒い火花が飛び散る。夏油さんがここで初めて焦った顔を見せた。空間が歪んで黒い火花が飛び散る?そうか、これが黒閃か。すごい、『世界』が!『宇宙』が!私を見ているみたい!

 

 意識しなくていい、呪力なんて考えなくても勝手に回る。イザナギともいつもより深く強く結びついている。あは、アハハハハ!東堂君が決めろっていうわけだよ。呪力で脳みそがキマっちゃう!さて、どうしてやろうかな……!

 

「ククッ、こういう時だけ私は運がないのかな!?さぁ、来なさい!」

 

「イザナギ!『木っ端微塵斬り』!」

 

「……すばらしいっ!」

 

「『十文字斬り』!」

 

 夏油さんから部屋中を埋め尽くすように発生する呪霊の群れ、群れ、群れ。だがイザナギが剣を振るった一瞬ですべて細切れの塵になる。イザナギはがら空きになった夏油さん相手に剣を振るう。その十字の剣閃にまた黒い火花が飛び散った。亀みたいな呪霊でガードされたけど夏油さんは吹っ飛んでドアをぶっ飛ばしていく。間髪入れずに追い込め!

 

「ああっ!もう邪魔!イザナギ!!『マハジオダイン』!」

 

「そうか、君の呪霊は君からしか生まれないからこそ自然発生とは一線を画す呪霊なのか!勉強になったよ!『轟龍』!」

 

 外に出た夏油さん、周りは森とはいえさっき出した非術師たちがいる!帳が下りたままってことは補助監督さんも!夏油さんなら人質くらいにはするだろうし!と邪魔する低級呪霊たちを雷撃で蹴散らす。それを見越してきた夏油さんの放った巨大な岩の龍が屋敷を壊しつつ私に迫る。

 

「『刹那五月雨撃』」

 

「おいおい苦労した一級呪霊が穴だらけじゃないか。でも、これで詰みだ。止まりなさい」

 

「……あー、負けちゃった」

 

「いいや、君の勝ちさ。私が去るまでこの呪霊はこのままで固定する。君が動かなければね。そしてこの気持ち悪い銃も返そう。縛りだ、2日間僕と君はお互い不可侵とする」

 

「……いいですよ」

 

 黒閃でキマりすぎてたんだろう。目の前の夏油さんだけしか見えていなかった。穴だらけになった岩の龍の後ろで……補助監督さんと信者さん方が呪霊に囲まれていた。そうか、私が帰ってこないと任務終わりじゃなかったもんね。投げ渡された召喚器をキャッチしてベルトに仕舞う。

 

 他者間での縛りは難しい、と聞いていたけど夏油さんはあっさりとやってのけた。なんなんだそれは、ちょっと羨ましいよ私呪力でゴリ押してるもん。いいなー。

 

 それにしてもかんっぺきに手加減されていた上に戦術で負けた。言い訳のしようがない。見捨てれば勝てるのになどと宣う夏油さんがペリカンみたいな呪霊に乗り込んで空を飛びかえっていく。その姿が見えなくなると同時に囲んでいた呪霊をイザナギが全て薙ぎ払った。補助監督さんの安否を確かめるため、私は歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

報告書 

 

■月■■日における呪詛師を中心としたカルト教団殲滅任務にて任務についていた汐見琴音二級術師が特級呪詛師夏油傑に遭遇、交戦しこれを退けることに成功する。

当該任務は成功、また本監督と非術師が人質になり汐見琴音二級術師は縛りによるお互いの不可侵を提案した夏油傑の提案を呑み縛りを締結、現在縛りの効力は時限が過ぎて消えたものとみられる。 

詳細事案は汐見琴音二級術師の尋問記録を参照のこと

 

以上報告  ■■■■■補助監督官

 

 

 

夏油傑撃退、および使用術式の未知の可能性、現時点での使用呪霊の危険度を総合的に勘案し

 

汐見琴音二級術師を特級呪術師として認定するものとする 

 

呪術総監部一同




 ちなみに夏油君の本来の目的はリカちゃんを取り込むみたいに主人公を殺してペルソナを奪うことでしたが主人公が変な考え方をして重箱の隅をつつきまくったので興味がわいた結果殺すのが遅れて主人公が脳を呪力でキメた結果こうなりました。うずまきを使えば巻き返せましたが時間をかけすぎたので逃げ優先にしたわけです。
主人公の術式の危険度がばれちゃったぁ!がっつり補助監督さんが報告してるので隠せませんでしたね。だって目の前でイザナギ使ったもの。しかたないね。力を隠すのがへたくそ!
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