ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
「はぇー、東京ってこんな感じなんだね。初めて来たよ」
「む、そうか。俺は高田ちゃんのライブや握手会で何度か来ているぞ。任務ではないがな、東京校がある以上東京の呪霊は奴らが祓うだろう」
「そりゃそうだ!でもでも、折角来たんだから交流戦終わったら観光してもいいんですよね!?」
「構わないわ。私だって折角来たんだから行きたいところの一つや二つあるもの。でも問題は起こさないでよ」
がっつり先輩たちと距離が空いたバスの中、具体的には一番後ろに私と東堂君で前列全て固まって先輩方と学長先生と歌姫先生。偶に先輩たちに絡みに行ってお金持ちの先輩たちからお高いお菓子をもらってもぐもぐやってたりはしたんだけど、結束とかこう……ないんですか?寂しいよ?せっかく一緒に行くのに。
「東堂君ももう少し柔らかくなれない?つまらないのは合わないってだけで襲い掛かる意味はないでしょ?ナメた真似されたわけでもないのに」
「む、それは違うぞ。確かに性癖の合わん奴はつまらんし嫌いだが、先に火をつけたのはあちらだ」
「そうなの?」
あれ?と東堂君にノされた先輩を介抱した記憶がある私としてはなんか聞いてた状況が違うような。あ~?見栄を張ったな先輩~?も~、男の子はこれだから。挑発してボコされたのなら私から見てもカッコ悪いですよ?口には出しませんけど。
バツの悪い顔になった先輩方にえ~と思いつつも敷地内についたらしい先輩たちに続いて私たちもバスを降りると京都校にそっくりな正門の前に知らない生徒の人たちと知らない先生方と見知った包帯目隠し先生がいた。出迎えてくれるんだー、五条先生らしくなーい。花火を地上で爆発させるくらいはやりそうなのにこんな静かなことできたんだ。
「ようこそ、京都校の諸君。2年生と1年生は初めてのものもいるだろうから自己紹介をさせてもらうが私は夜蛾正道。東京校の学長をしている」
「どもども~。お、いるじゃ~ん同僚ちゃ~ん。僕五条悟、シクヨロで~」
「……同僚って私のことだったりします?」
「他に誰がいるってんのよ特級呪術師後輩?いや~話聞いたときは爆笑したね!傑相手に生き残ったって!?期待以上だよ最高!」
「私は納得してませんけどね。見逃されたんで」
「ガッデム!機密事項をペラペラ喋るなバカ者が!汐見琴音の特級呪術師就任は京都校の中と一部しか知らんのだぞ!漏れたらどうする!」
「あっはっは!問題ないよ学長!もうすでに琴音に真正面から勝てる術師は一握りだ。本当に成長が早い」
京都校の中では私が特級になったっていうのは周知の事実だから気にしたことはなかったけど東京校どころか外の世界じゃ機密扱いだったのか。歌姫先生?と見てみるとあんたが何で知らないのよの顔をしているのでどっかで私に注意が行きそびれたかそれが当たり前だから忘れてたのかのどっちかだね。言われたら絶対覚えてる自信あるから。
「まあそんなことはどうでもいいだろ。自己紹介は勝手にやってもらうとして今回の交流戦のルールを説明しまぁす!簡単!呪術スタンプラリーだ!」
「スタンプラリー?」
「そう!こんなだだっ広いところにある呪術高専の土地を使わないで放置するなんてもったいない!ということでこの敷地に7つランダムでスタンプを配置しました!」
「ルールは簡単だ。7つのスタンプをすべて集めて先に戻って来たチームの勝利。もちろん妨害在りだが障害を残すような怪我や殺害は禁止だ」
「んで、重要なのがスタンプはいろんな方法で隠されてます!透明だったり、土の中に埋まっていたり、木の中に潜り込んでいたり!君たちの術式や呪力でそれを見つけて!絆を深めるんだぞ!」
「五条先生最後は絶対思ってないでしょ」
「当たり前でしょ、あの五条なんだよ琴音」
夜蛾学長と五条先生のルール説明によると今回の姉妹校交流戦のルールは妨害有りのスタンプラリー。7つのスタンプを集めて先にゴールしたほうが勝ちという単純明快なルールだけど、スタンプをそれぞれの方法で隠すことで各々の術式、あるいは特性による協力や一時的な違う校同士での協力すらあり得る。面白いルールだと思う。
「五条先生、質問いいですか?そのスタンプって、呪具だったり?」
「そだよ。というか4級の呪具を加工した奴だね。じゃないと呪術を使って隠すときに壊れることがあるからさ」
五条先生のその言葉を聞いた瞬間に、私はにこやかな顔を崩さないように努めた。今考えていることが実現できるならば私と東堂君でスタンプラリーを完封できる。そしてそれを東堂君も気づいたのだろう。顔にも体にも出していないがその程度はわかる。
それじゃ、明日の交流戦まで解散!と五条先生が言うので私たちは東京校に用意された宿泊施設へ転がり込む。荷物を置いて早速広間に集まった私たち。楽巌寺学長先生と歌姫先生も入ってきてこれで準備完了かな。
「此度の交流戦は、東堂と汐見を主軸にする。異論はあるまいな?」
「学長!それではあまりにも……!私たちにもできることがあるはずです!」
「そういう意味ではないわたわけ。そんなもの明後日の個人戦にとっておけ。3年、呪術の総本家たる京都は東京に負けておるのだ。勝たねば誇りもないわ」
「何もするなとは言ってないわ。東堂と汐見にはスタンプの回収に行ってもらうの。二人だけよ。そして、残りの4人は全力で東京校を足止めするの。そうすれば勝てる、勝ち筋をもう見出してるみたいだしね?」
えー、歌姫先生にバレてたってことは東京の方にも筒抜けだこりゃ。あーでも夜蛾学長先生はともかく五条先生なら面白がって伝えないことはありうるかなあ?でも、勝ち筋は確かに見いだせた。スタンプが呪具であること、そして隠し方が呪術的であること。これならば私と東堂君がいれば何とかなる。
まず東堂君の術式、不義遊戯。一定の呪力を持つモノ同士を入れ替える術式。単純なのに超強力、それが東堂君が使うことでさらに強力になる。そして黒閃を経て身につけた私の拡張術式。この二つを使えばスタンプラリーのスタンプを見つけようが奪われようが取り戻すことができる。
「大体貴様ら、東堂と団体行動ができると思ってるのか。東堂だけではなく貴様らもだぞ」
「呪術師が我が強いとかイカレているとかいう話は今更では?」
「話の腰を折るな。貴様と東堂がおらなんだら多少はマシだったわい……学長として学生たる貴様らに言うことは一つ、勝て。あとは好きにせい」
「ふん、ジジイにしてはまともなことを言う。琴音、つまらん話は終わった。出かけるぞ」
「あいさー!んじゃ行ってきまーす!」
歌姫先生お土産は~?要らないから楽しんできなさいという言葉を受けて私と東堂君は宿泊施設を辞して東京観光に向かうことにした。まず今日はショッピングするの!私は背が小さいから子供服みたいな私服になっちゃうんだけど東京にはおしゃれな服がたくさんあるって聞いてる!背は小さくても自分磨きを怠ったことはないもんね!
「でも東堂君いいの?荷物持ちやってくれるなんて」
「構わんさ。今日は高田ちゃんのラジオも配信もない。なら
「じゃあお言葉甘えちゃおうかな!東堂君ご飯何食べたいとかある!?お礼に奢るからね!」
「待った!ちょうどいいところにいるじゃねえか、なあええ?」
ヨシ出発、とタクシーでも拾おうかとしていると声をかけられた。黒髪をあげて、眉毛を3つに分割してる男の子となんか都会っぽい女の……男の娘だ!すごい初めて見た!そんじょそこらの女の子より綺麗じゃん!良いもの見た~~!
「うわっ、さっき見てた時も思ったけどちっちゃいのにカワイイじゃなくて綺麗が先に来るってどうなってるの~?あ、ごめん。初めましてが先だったね。私は星綺羅羅、1年生同士よろしくね」
「俺は秤金次だ。別に覚えなくても構わねえけどよ。ちっと話に付き合えや」
「汐見琴音!最近のマイブームはアイドル!身長は止まったけど呪術的には成長中!コンゴトモヨロシク!」
「東堂葵だ。一つ質問をさせてくれ、どんな女がタイプだ?ちなみに俺は尻と身長がでかいタイプが好きだ」
自己紹介したとなれば東堂君のそれが始まってしまうのはわかっていたんだけど止められなかったと内心唇を噛む。んー、折角初めましての別学校の1年生なんだし仲良くなりたいんだけど……特に星さん!どんな化粧品使ってお肌のケアしてるのかとっても気になる。
「女の趣味聞いてくるなんてヘンタイ?んーでも、女じゃなくて悪いけど金ちゃんかな。見るからにカッコイイでしょ?」
「わかる。おっきくて分厚くていいよね」
「わかってくれる!?すごい先輩たちにはウケよくないのに!?」
「初対面で変わったこと聞いてくる奴だなお前……確かに肉体的に好きな女の体型ってのはあるぜ。だけど俺にゃもっと大事な判断要素があんだよ……わかるか?『熱』だ」
「……ほう。続けろ」
あれ?東堂君が性癖を尋ねる時って見た目、つまり尻と身長が高いとか言う私とは真逆の腹が立つ属性みたいな見た目の話であって例えば『心根がまっすぐならだれでも』みたいなふんわりとした答えはつまらんと大っ嫌いだったはず。その東堂君が曖昧な秤君の話を聞いて荒ぶらないなんて。
「『熱』ってのは、人生を変えようっていうエネルギーのことだ。生きたい、幸せになりたい、そのために必死こいて自分の熱を高めていくやつを俺は愛してる。お前もわかんだろ?東堂」
「……素晴らしい答えだ。一瞬でもつまらんと判断しかけた俺を殴りたくなる。その気持ちはよくわかるぞ、秤」
「熱かぁ……確かに持ってるね。東堂君も私も。だって私も東堂君も人生を変えようって思って高専に入ったんだから。それで秤君の熱っていうのは?」
「ああ?決まってんだろ
「真理だな。呪霊を祓う時俺たちは須らく自らの命を天秤に乗せている。何をしている時でさえも天秤の片方に俺たちが差し出すものを、もう片方に勝ち取りたいものを据えてある」
ふぅん、面白い人だね秤君は。勉強になった。正直私は熱っていう奴があるとは思わない。ただ、負けたくない……この気持ちだけはカンカンに熱されて私の中にある。見逃されて特級認定何て言うふざけた昇級をした自分がいまだに許せていないのだから。
東堂君の答えに秤君も星さんも目を見開いていた。まさかわかってくれる奴がいるとは思わなかったみたいな感じだ。あーでもちょっとわかるかも。東堂君も私もそうなんだけど保守的な気風が蔓延している呪術界でちょっと尖ってるとすぐ孤立するんだよね。思想的にも強さ的にも。最近それがちょっとわかりかけてきたんだ。まだうまいことやれてるんだけどさ。
「もしかして意外だった?そうだよねえ、呪術界ってどうも守りに入りすぎててあんまり考えが合わないからさー。東京にも同じ人がいるって嬉しくなっちゃった」
「そりゃこっちのセリフだぜ特級術師。術式が異端だのどーだのつまらん上に腹が立つ話をしてくるクソみてえな先輩とは格が違うじゃねえか。五条サンが言ってたこと信じて正解だったぜ」
「Mr.五条が?
「マイシスター?兄妹、じゃないか。『きっと何よりも馬が合うだろうから話しておいで』ってさ。私は信じてなかったけど、信じればよかった」
「東堂君も私も一般の出だからね!あなた達とは考え方が合う部分も合わない部分もきっとある!でも友達にはなれるよ?はい、握手!」
多分、彼らは京都校における私たちと同じポジションだ。旧態依然の世界に侵入してきた新しい考え方。別に彼らもわかってほしいわけじゃない、だけど『それでもいいんじゃない』と受け入れてくれる人が欲しかった。東堂君に対する私、じゃないけど。東堂君は勝手に過去を捏造するのでちょっと違うか。まあとにかく、お友達がほしかったんだ。
「お前ら、どこ行くつもりだったんだ?娑婆に出るなら付き合わせろ、ここまで熱が上がったんだ。冷ますのは勿体ねえ」
「ん?買い物!私こんなんだから子供服にしか縁がなくて!だから小さい人でも着れるいい服がほしいんだ。東堂君は荷物係!」
「え~~何それ勿体ないじゃん!ね、コーデさせてよ!うわっ肌もちすべ!?すっごなにやってるの!?」
はいっ、と差し出した手を見た秤さんは思いっきり破顔して私の手を力強く握り返してくれた。星さんも。それでお買い物に出るんだぁと話せばついてくるというので渡りに船とばかりに了解を返す。明日は競い合う敵同士でも、今はただの高校生。だから一緒に楽しく青春したっていいじゃない。
呪術廻戦本編で秤と綺羅羅って東堂と絡みがないので関係を完全に捏造していますが多分相性はいいと思います(大本営発表)そして主人公の拡張術式はどうなることでしょう。ご期待ください。それではまた