ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
「頭がぐわんぐわんする~~。目がちっかちか~」
「そうか、琴音はパチンコに慣れてないのだな」
「東堂君はよくあんなうるさいところにいれたよね?ゲームセンターなんて目じゃないくらいやかましかったのに。私は見た目誤魔化せないから打てなかったけどさ」
どうも、パチンコ店の音と光にやられて1日経ってもダメージが抜けない汐見琴音です。綺羅羅ちゃんとお互いコーデしあって親睦を深めている間になんと東堂君と秤君はパチンコで親睦を深めていたらしい。東堂君がパチンコを打つ姿は割と想像ついてしまう。高田ちゃんのテレビ番組を見る東堂君を想像すればドンピシャだろうきっと。
綺羅羅ちゃんはセンスあるよね~。かわいいだけじゃなくて私でも大人っぽく見える服を探し当ててくるんだから。私、顔だけならきれい系だもの、背伸びしている風には見えなくてほんとに一緒に行ってよかった!楽しかったんだよルンルンルン、ってね。
「さて!よく寝たかい若人たちよ!それでは今から、姉妹校交流戦、ドキドキワクワク呪術スタンプラリーを開催しちゃうぞ!」
「いえーい!」
「おっとノリがいいね特級術師!それに比べてレスポンス悪いぞ上級生!どっちが負けても恨んで良し!存分に呪い合いたまえ!それじゃ学長あとよろしく~」
試合前の整列、という感じで集まった私たちを前にした五条さんの音頭にレスポンスを返してみるものの反応したのは私だけ。えー、みんなノリわるーい。お互いにらみ合ってないでもっと楽しもうよ~。あと五条先生、私たちは呪術師だから呪い合えっていうのは間違ってないんだろうけど外聞が悪すぎるよもう。
「まったく……開始は15分後所定の位置にお互いがついてから始める。それまではいかなる術式の使用も禁止だ。私たち教師は別の部屋からお前らを見ている」
「あのカラスで?」
「……そういうことだ。では、解散だ」
見られている、黒閃をキメて拡張術式を身に着ける前だったら気づけなかったと思う。私のペルソナは心の内海に宿る別人格を現実に引きずりだすもの。私という主人格がある以上私を乗っ取ることはない……だけど、術式の解釈を広げることでそうじゃなくなった。私という主人格に内包されている側面、そう考えることで私の中にペルソナを宿し続ける。そういう術式だ。
心の無意識の部分に沈んでいるペルソナを選んで自分の意識の中に宿し続ける。現実世界に呼び出さない術式。我は汝、汝は我……ペルソナが私自身で私自身もペルソナ。ならばペルソナが持つスキルは私にも宿る……といってもアギみたいな直接攻撃系は難しくてペルソナが持つ常時発動するようなスキルが私に共有される感じだ。
しかもこれ、死ななくてもいい。自己補完の範疇で意識しなくても勝手に発動し続ける。仕組みは簡単、私の中に宿るもう一人の私が発動する術式だからだ。呪力は私から持っていかれるが発動を意識し続けなくてもいいのは楽だ。呪力自体も省エネ、実に素晴らしい。カラスに気づけたのも今私の中にいるペルソナが格段に目がいいから。
実際のところ術式を使う時に一番呪力を使用するのは召喚するときだ。疑似的とはいえ死で発生した膨大な呪力のほとんどすべてがペルソナ召喚に費やされてしまう。だから、現実に呼び出さなくていいのならその分の呪力は浮く、浮いた結果自然回復する呪力と大体トントンだったってわけ。アギなんかの術を使用するときはペルソナが持っている呪力を使っている。当然それで使い切ればペルソナは消えるけど、再召喚すれば問題ない。
「先輩方、お願いしますよ?なるはやで私と東堂君でスタンプラリーを終わらせますので。粘って粘って粘りまくってください!」
「ああ、一年生ばかりに活躍されちゃ俺たちも立つ瀬がない。邪魔を入れる気は最初からないさ」
「東堂君、お願い聞いてくれる?」
「何でも言うがいい。お前の知っている通り俺は共に戦う術師の願いを無碍にする男ではない」
「おっけー、それじゃ……」
『はじめ!』
「私を背負って全力で走って!」
「任せろ!」
スタートの合図が鳴るや否や私は東堂君の肩にまたがって肩車の態勢に入る。東堂君は見た目通り体力お化けなので私が乗った程度でスピードは落ちないっていうか速くなってない?まあいいや。私はいつも通り召喚器をこめかみに当てて引き金を引く。
「ペルソナ―――――ルキア」
ペルソナにはいろんなタイプがいる。というか、いろんな私がいる。大小さまざま、力もそれぞれ。大体は皆戦闘向けみたいな感じだ。だけど、ごくたまに知りたがりの私が生まれることがある。
五条先生のように顔の上半分を包帯で覆ったドームのようなスカートのドレスを身にまとった貴婦人のペルソナ……ルキアがそうだ。戦闘能力は一切ない代わりに索敵能力とサポート性能に優れている。そしてそれは、ある一定の条件下で共有される。
私に触れていること、私が動いていないこと、ルキアのスカートドームの中に入っていること、そして……私たち全員が心から信頼していること。以上4つを縛りとして私と東堂君は情報の共有を可能としている。
東堂君に肩車をしてもらい移動することで私に触れることと動かない制約、そしてルキアのスカート内にいるという制約をすべて満たす。まあ?東堂君を信頼しているのは事実ですし?息が合うのも事実ですし?非常に、遺憾ながら?私の信頼を勝ち取っていると判断してもいいでしょう東堂君は。うん、事実だから何も言えなーい。
千里眼のように感覚が広がり、広大な呪術高専の土地を思うがままに把握している。先輩たちが接敵したのもそうだし秤君と星ちゃんが向こうの先輩たちと喧嘩して単独行動をとってるのも見える。そして……隠されている微弱な呪力をも……ルキアは捉えた。
「東堂君、見えてるよね!?」
「応!ここまでわかれば後は単純だ。最短ルートで取りに行く!そして呪力がわかれば……!」
「東堂君の不義遊戯が対象になる!」
呪力を込めた石ころを持った私、東堂君が柏手を叩くとそれはハンコに変わる。隠されているというけど、物が呪力を持っているのが私たちに有利すぎる。隠されていても私には見える。見えさえすればどんな隠し方をしていても東堂君が不義遊戯で手元に出してしまう。裏技みたいだけど呪術師は嘘ついてなんぼなんだから許してほしいな。
ポイ、とハンコをもと有った場所に隠すんじゃなくて東堂君の豪肩で投げてしまう。別に元あった場所に戻せなんて言われてないもんね。と五条先生特製らしいスタンプシートに押された五条先生の顔のハンコを見ながら次のルートへ私を背負って向かう東堂君。
夜蛾学長、楽巌寺学長、歌姫先生、ワンコ、パンダ?なんでここで?……とにかくあっさりと6つのスタンプを確保した私と東堂君はラストのスタンプめがけて爆走する。既に先輩たちのうち2人がリタイアした。東京校の生徒は誰もリタイアしていない。
「最後はちょっと遠いかなあ?」
「ああ、だが問題あるまい……あの二人を乗り越えたならな」
「や~~~っと見つけたぜ東堂に汐見……!さぁ、アゲていこうぜ?」
「スタンプ集めを二人にやらせる……最大戦力を後ろで遊ばせるなんて京都校って陰湿だね」
「あっはっは~違うよ綺羅羅ちゃん。単純に私と東堂君が一番適してるからだよ」
ルキアの召喚を解除した私が召喚器片手に東堂君の肩から降りる。指を一本立てて二人の注目を集める。そして私に二人の視線が集まった瞬間に東堂君が唐突に手を叩く。不義遊戯が発動して東堂君と綺羅羅ちゃんの位置が入れ替わり、私はそのまま召喚器を綺羅羅ちゃんのお腹に当て、自分に使うようにためらいなく引き金を引いた。
「こんな感じにね?」
「……っっ!?……は、く……!?」
「綺羅羅!?どうした!?」
「ごめーん、死んではないからそれだけはきちんと意識してね。東堂君カモン!――――コウリュウ!」
綺羅羅ちゃんと入れ替わった瞬間に容赦なく秤君の顔面を殴り飛ばして岩に叩きつけた東堂君が私が綺羅羅ちゃんを行動不能にして自らの頭に召喚器を突きつけたのを確認して不義遊戯でまた綺羅羅ちゃんと位置を入れ替え戻ってくる。
そして私は威嚇の意味を込めて自らの中で最上位クラスの力を持つ一体であるペルソナを召喚する。コウリュウ、黄金の体を持つ巨大な東洋龍のペルソナを召喚する。うっひゃー、初めて外に出したけどヤバいねこれ。普通の術師相手じゃ使えないや。東堂君とコウリュウにまたがり一気に空を飛んで離脱しつつスタンプの隠し場所へ急ぐ。
ごめんね綺羅羅ちゃん、と奇襲であんなことをしたことを心の中で謝る。私の召喚器はペルソナ召喚に必須のものではない。この特級呪物の術式効果はただ一つ『使用した相手に対して疑似的な死の体験を与える』だけのものだ。だからいま、綺羅羅ちゃんはこれの効果で疑似的に一度死んだ。死んだけど生きている、そのパラドックスに混乱しているのだ。まあ、あればだけどハリセンで殴れば戻るでしょ。
「ごめんね、東堂君。不完全燃焼でしょ」
「いや、それは明日の楽しみにしておく。秤たちの勝利条件は俺たちを止めることだが俺たちの勝利条件はスタンプをすべてそろえ交流会に勝つことだ。つまらん男どもといえど誇りをかけて足止めを買っているのならば俺たちにはそれに応える義務がある」
「うん、さすがは東堂君。冷静だね。先輩たちが頑張ってるんだから私たちも頑張らないと、ね?」
「その通りだ
パァン!と東堂君が勢い良く叩いた柏手、いつの間にか拾っていたらしい石ころがスタンプに入れ替わる。最後のスタンプ……二つ目の五条先生ダブルピースのスタンプで最後のスタンプがそろった。さぁ、あとは戻るだけだ。いこう!その気持ちが逸り過ぎたのかコウリュウが吠える。高専中を揺らす咆哮を轟かせ、ゴール地点に降り立つ。するとそこにいたのは……五条先生だった。
「いや~お疲れお疲れ。はい、確認するからスタンプカードだして~」
「はい、五条先生。何で目を出してるんですか?」
「なんでって……これ中国の四神の中央にいる最上位の神獣じゃん。こんな力の塊召喚されたら僕以外ピリついちゃうよ。あ、僕?僕の方はアレだよ、きちんと見たかったから」
「なるほど~。それで、結果はどうですか?」
「言う必要ある?文句なしで全部集めた君たちの勝ちだ。今回は京都校の勝ち~~怪我した子は硝子にって……何してんの?」
「明日に支障がでたら嫌なので、全部治しちゃいます。コウリュウ!メディアラハン!」
五条先生によるやる気のない勝利宣言を聞いた私はいまだ私たちの頭上で滞空しているコウリュウに指示をだす。コウリュウが神々しく光り輝き緑の光が降り注いで東京校も京都校も関係なく傷を癒していく。各々のベストコンディションまで。五条先生がいつになくシリアスな顔をして私を睨んだ。こわっ。
「反転術式が使えるなんて聞いてないぞ。しかも広域へのアウトプット」
「え、はい。使えます。といっても今のはコウリュウと私の呪力を衝突させて正の呪力にして魂に刻まれた形に肉体を戻しただけなんですけど」
「はぁ?じゃあなに?君は魂の形がわかってるとでもいうワケ?」
「いやだって、私の中にもう一人私がいるんですよ?魂ふたつどころか無意識の中にいくつも私がいるんですよ?それぞれ分けないと全部混ざって私が崩壊します」
うーん、これを反転術式といえるのかは甚だ疑問だ。普通の反転術式は術者の頭で呪力と呪力を掛け合わせて正の呪力を作るものなんだけど私の場合ペルソナが持つ呪力に対して私との繫がりを介して私の呪力を流し、ペルソナの中で正の呪力を作り出して術として変えるって変則的な方法なんだ。
これが私一人でやれって言われたらできない。私二人がかりでやっていると言っていい。私は自分の中で二つの呪力を衝突させることができないのだ。だからこれを反転術式と言っていいのか私は甚だ疑問なワケ。
魂に関してはほんとそのまま。私の中のもう一人の私。だけどそれぞれ人格が違う。それを認識できないと私の術式に私自身を乗っ取られることになる。だから、無意識のうちに私の中の魂を観測して形を覚えている。そしてそれをルキアのような情報処理系ペルソナの力を借りて他人を観察することでようやく他の人を治せるのだ。つまり、私のやり方はひどく効率が悪い!
「いえーい勝った~~!これで学長先生のワンマンライブ決定だ~~!」
「待って反転術式より気になる。何がどうしてそうなった!?」
「え?えーっと、学長先生に勝ったらギター聴かせてって言ったら快くおっけーしてくれましたよ?」
「あの人そんな愉快な人だったか……?」
五条悟、大混乱。ディア系の扱いは無条件だとあまりにも強い仕様なので使用手順をめんどくさくしてます。ルキア、カンゼオン、ネクロノミコン等の情報処理系のペルソナで相手の魂を観測→ペルソナの呪力と己の呪力を掛け合わせて正の呪力を創出→術として放出の手順です。なので主人公は自分で反転を使えませんし使う場合はペルソナを介す必要があります。魂云々については人格=魂ととらえています。
あ、ちなみに次回は個人戦です。折角秤君と綺羅羅さん出したのにこんな扱いで終わるわけないじゃないですか。ちゃんと強い所見せてもらいますとも。ではまた次回。