俺は初音と一緒に家を出て登校中にかなでに会って三人で学校まで来るという幸せを味わってきた。
そして現在は俺が今日から通うことになるクラスの前にいる。ああ、緊張する。かなでと同じクラスになれたらいいな。
「じゃあ、入ってくれる?」
俺は担任の先生に呼ばれて教室に入る。
担任の先生は若くてスタイルも良い女性だ。こんな先生と放課後の個人授業とかやってみたい。
「……」
寒気がしたと思ったら、かなでが無言で俺を睨んでいた。俺の考えが読まれたのだろうか?
というよりも、かなでと無事に同じクラスになれて嬉しいぜ。
「俺の名前は音無結弦です。これから宜しくお願いします」
俺は無難な転校の挨拶をして教室を見渡す。
「……」
知っている奴等ばかりだった。
HR中だというのに机に突っ伏して寝ているのは岩沢か?気持ち良さそうに寝ているな。その後ろの席にいるのはひさ子だな。俺の顔を見て驚いているけど覚えているのか?
無愛想な顔をしているのは遊佐だな。
堂々とパソコンをしているのは誰だっけ……?確かクラ……何だっけ?そうだ、クラウスだ。何か違う気もするけど多分間違いない。
ガラの悪そうな奴が二人いるけど、どっちが野田でどっちが藤巻だっけ?武器を持っていないから見分けがつかない。
何か全く思い出せないけど見覚えのある奴もいるな。
TKと松下五段もいるな。
日向がこっちに手を振っている。何か気持ち悪いから後で殴ろう。
ゆりは不愉快そうな顔で俺を睨んでいる。
直井はいないようだな。助かった。
「じゃあ、音無くんはあそこの空いている席に座ってくれる?」
「分かりました」
俺の席はかなでと岩沢の間の席だな。ラッキーだ。
「これからよろしくな、かなで」
席に座ると俺は、かなでに挨拶した
「よろしく、結弦」
「よぉ、音無。久し振りだな。日向から簡単に話は聞いているが私のこと覚えているか?」
ひさ子が後ろから俺に言ってきた。
「ああ、覚えているぜ、ひさ子。にしても、ひさ子は記憶があるんだな?」
「後、岩沢や他のガルデモメンバーも覚えているぞ」
「関根と入江もこの学校にいるのか?」
「ああ、後輩だがな」
本当に戦線のメンバーが全員揃っているんだな。。このメンバーで直井だけいないのは気になるが、何故か聞かない方がいい気がする。
「ゆりは覚えてないみたいだったが、他にも覚えている奴はいるのか?」
「いない。覚えているのはガルデモメンバーに日向、それとお前達だけだ。椎名とTKはまともにコミュニケーションが取れないからよく分からないが」
椎名もいるのか。さっきは見かけなかったが別のクラスなのか?
「あさはかなり……」
「ウワッ!」
後ろにいたのか。全く気付かなかった。
もしかして、こいつ。覚えているじゃないか?
「どうしたんだ?うるさいぞ」
今の俺の叫びで岩沢が起きたみたいだ。
「ひさ子か?また胸が大きくなったのか?」
「いきなり何をいってるんだ、お前は!」
「痛いっ!いきなり何をするんだ、ひさ子」
ひさ子が岩沢に思いっきり拳骨をくらわした。
「って、あれ?お前、記憶無し男か?何でここにいるんだ!」
岩沢が俺に気付いて驚いた声を上げた。日向の話は聞いてなかったみたいだ。
「その前に俺には音無結弦っていう名前があるんだ。その記憶無し男というのは止めてくれ」
「分かった、結弦。で、何でお前がここにいるんだ?」
まさか、いきなり名前で呼ばれるとは思ってなかったから不覚にも驚いてしまった。
俺だから良いけど他の奴に、そんなに馴れ馴れしくしたら勘違いされるぞ。
「転校生、いきなり女子を口説くのは勝手だが、今は先生の授業を聞いてくれると助かる」
「口説いてません!」
いきなり何てことを言うのだろうか、この教師は。
それでも一応、先生の言うことが正しいので授業にも集中することにする。
にしても何で覚えている奴と覚えていない奴がいるんだ?いや、それ以前に皆が同じ学校に集まっている時点でおかしい。
『それはこの私が答えてやろう』
いきなり頭の中に変な声が聞こえてきた。幻聴か?
何か気持ち悪いな。病気にでもなったか、俺。
『幻聴ではない。私は神だ』
「はぁああ!?」
俺は驚いて、つい立ち上がってしまった。
「今度はどうした?疲れているようなら保健室に行くか?」
「いえ、大丈夫です」
先生に注意されて俺は席に座る。恥ずかしい。かなでも隣でクスクス笑ってるし。
『言葉に出さなくていい。念ずるだけで会話出来る』
『本当に神なのか?』
『ああ、そうだ』
本当にいたのか。
『で、その神とやらが俺に何の用だ?』
『面白い現象が起きてるから観察しに来た』
『面白い現象?』
『キミが以前に死語の世界で共に戦った仲間が集まっていることだ。これは私がしたことではない。キミ達の強い意思による結果だ。こんなことは今までなかった』
俺がかなでに会えたのも偶然じゃなくて自分で望んだ結果だということか。
『ところで何で覚えている奴と覚えていない奴がいるんだ?』
『死語の世界のことを思い出すにはきっかけがいるみたいようだ。キミが愛した女性と出会ったみたいに』
なるほど。かなでも俺と出会って思い出したのか。
『ちなみに彼女が思い出したきっかけは駅前の店の激辛麻婆豆腐だ』
知りたくなかったよ、そんな残酷な世界の真実。かなでにとって、俺よりも麻婆豆腐の方が印象的だってことか!
『キミには期待している。では私はこれで』
そして神の声は聞こえなくなった。
期待って何だ?それに何で俺に話かけてきたんだ?
そんな疑問を抱えたまま転校初日は終わり放課後になった。
「音無くん、ちょっといいかしら?」
ゆりが話かけてきた。何かめんどくさく予感しかしない。
感想待ってます。