ホラーゲーム開発部に取材しに行ったら本物だったんですけど   作:ガクランクン

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学校で寝落ちすると誰も起こしてくれない

脈を打ち耳をつんざくようなうるさい心臓を手で押さえながら考える。今の光景はなんなんだ?と

 

放課後の空き教室で男子と女子が言い争う。これがラブコメとかだったら「まだあの2人付き合ってねーの?!」とかそういうガヤが飛んでいた頃だろう。

 

だがそんなんじゃない、特にガチ感がすごかった。殺意や敵意の方向性に振り切れていた。

 

(修羅場?・・・あれ、でも場所ここ・・・・・・だよね?)

 

何回も手帳と教室の外にあるプレートを交互に見る。少し酔った代償としてここがホラーゲーム開発部の部室で合ってると分かった。

 

じゃああの2人は・・・誰なのかよく見えなかったがただの部外者・・・とは考えられない。

 

つまりあの2人はホラーゲーム開発部の部員と考えるのが妥当だろう。よく考えてみたらホラーゲーム開発部にはちょうど男女の部員がいたし

 

(・・・・・・あれ?ってことは僕結構、失礼な事しちゃったんじゃ?)

 

向こうからしたら入ろうとしたところ、いきなり扉を閉めた無礼者にしか見えないだろう。

 

じゃあそんな奴はこの先どうなる?ここからなんやかんやで噂が広がり──

 

(・・・終わった。僕の学園生活)

 

おそらくもうまともにこの学校の床を踏むことはないだろう・・・嗚呼さらば愛しの母校よ。

 

妙な方向で妄想を膨らませていると、先ほど閉めた扉が勢いよく開き

 

「うわぁ!?」

 

彼はその拍子に尻餅をつく

 

「む・・・あぁすまない驚かせてしまったね」

 

扉からは凛とした声…上を見上げるとそこには部長の如月玲司が立っていた。

 

「君、立てるかい?」

 

如月が転んだ山田に手を差し伸べた。山田はそのことに驚きつつも、おずおずと手を掴んだ。

 

これが山田とホラーゲーム開発部の初めての出会いだった。

 

 

立ち上がった山田は部室に入り、先程の出来事をソファに対面に座った如月に話した。如月は山田の話を聞くと少し眉間に皺を寄せてふぅと息を吐いた後に、山田に対して申し訳なさそうな顔をした。

 

「・・・成程、つまりは2人の言い争いを見て驚いて反射的に閉めてしまった、と?」

 

「いや、えっと・・・まぁそうなります・・・・・・かね?」

 

最初、山田は2人のことをフォローしようとしたが、やめた。なぜならこの話を聞いている如月の目を見ると嘘をついてもバレる気がしたからだ。

 

「・・・本当に重ね重ね申し訳ない。後で言い聞かせておく」

 

「い、いえいえ!別に大丈夫ですよ!」

 

「そーだ!そーだ!彼の顔に免じて許せー!」

 

そんな風に山田が言っていると如月の後ろで、自分を擁護しようと先程言い争いをしていた少女の方が大声をあげるが如月にキッと睨まれた事により一瞬で沈静化して縮こまってソファの隅に座った。

 

「ええっと・・・じゃあ自己紹介します。ぼ、私は2年C組の山田タケシ、です。新聞部をやっています。ほ、本日は取材よろしくお願いします!」

 

少し吃りながらもかなり前から考えていた自己紹介を決めた。心の中でガッツポーズをした。正直1番嬉しい

 

「山田くんか、私は3年D組如月玲司。シナリオライターをやっている本日はお互い有意義な時間にしよう」

 

スッと手を出し握手を求める。笑顔を浮かべたがどこか違和感がある気がした。

 

「は、はい!」

 

しかし緊張した山田にはその違いはよく見えておらず、その握手を掴み交わした。

 

ソファの真ん中に座る彼の名前は如月玲司、この学園・・・いやこの町、八田町(やたちょう)に住む人間なら知らない人間は居ない。高校生ながら如月グループのCEOを務める人物、男子から女子まで教師からも人気が高いほどだ。

 

「おぉー!礼儀正しいっすねー!じゃあアタシも自己紹介しますねー!アタシは1年B組の超絶天才美少女!イラストレーターの安倍セイカっす!・・・ひな祭りの別名聞く人間は全員軽蔑するッス

 

手をブンブンと上げ小さい体を精一杯アピールをする。後半の文字は聞かなかった事にしよう。声のトーンが数段下がっており、ジョークやギャグの類には聞こえなかったからだ。(あと目も怖い)

 

山田から見て左に座るは安倍セイカ、その人懐っこさと懐の入り込む旨さで、大型犬女子と言われている。

雪のようにきめ細かい肌。クリンとした目、よく笑うために見える八重歯…奥ゆかしさとかそう言った意味で女性らしくはないが

 

時たま見せるギャップのおかげで(コイツのこと本気に思ってる奴なんて俺しかいねーよな)的なファンを無意識に生産している。

 

かくいう山田もその1人だ。

 

『ま、この馬鹿はほっといて俺は鮫島・・・プログラマーっぽいのをやってる、よろしくな』

 

少し見る人によっては好戦的な笑みを浮かべながら手を振った

 

「は、はいよろしくお願いします」

 

何をぉ!?とキレている安倍に反応すればどうか悩みながらも深々と頭を下げながらも山田はある事に疑問を持っていた。

 

山田から見て右に座っている少年の名は鮫島凌牙、少々恰幅の良い見た目、ホラーゲーム開発部3人目の部員ということしか分からない、具体的にどういう性格趣味嗜好をしているのかが不明、まぁ目立つのが嫌いな性格なのだろう。

 

そこに関しては特に疑問に思っていない、問題は

 

(どこから声が出ているんだろうか?)

 

声の出どころ…もっと具体的に言えばどこから声が聞こえているのか分からない。彼の口は一切動いていないのに、声だけが聞こえる・・・まるで腹話術のようだ。

 

そうやって山田がキョロキョロと辺りを見渡していると

 

『ん?あぁワリ、わかんねぇよな』

 

ズボンのポケットからスマホを取り出して、何かを操作すると、天井から何かが降りてきた

 

「これは・・・ドローン、ですか?」

 

それは4つのプロペラ100人中80人くらいの人間がドローンのイメージとして答えそうな形状のドローンだった。

 

『さっきから聞こえた声はここから聞こえてたんだ。先に説明しときゃ良かったな』

 

「い、いえいえそんな!わざわざありがとうございます」

 

とお辞儀をしながら頭の中に新しい疑問が浮かんでくる。

 

わざわざドローン越しで会話するのは何故だろうと、当然本人に直接聞ける訳がない、何か事情があるのだろうと考え心の中にしまおうとした

 

「はっ!ただのキャラ付けの癖に思ったよりも大事になってビビってんじゃねぇっすよ!」

 

「えっ!」

 

『テメェこそなんだその取ってつけたようなッス口調は?』

 

売り言葉に買い言葉、先ほど如月が止めてくれたのにまた言い争いになってしまった。というか2人のドローンによる会話と〜ッス口調はただのキャラ付けだったんだ。今日イチのびっくりだ。

 

それを見た如月は肩をすくめて言う

 

「すまない、あの2人はいつもこうでな…まぁ仲が悪いって訳じゃない」

 

「いつも言い争いを?」

 

「そう・・・さっきの口論も山田くんが取材しにくるからってお茶請けに和菓子か洋菓子かってね」

 

「な、なるほど・・・」

 

先ほどの口喧嘩はある意味で自分のことがトリガーだったみたいで、なんとなくいたたまれない気分になってしまった。そのことを察したのか直後に如月から

 

「あの2人はいつも口論の火種を探しているようなものだ。君が悪いわけじゃないよ」

 

と付け加えてくれた。

 

そのフォローで山田は嬉しくて胸が熱くなった。しかし今回は取材をしに来て、かつ時間は有限、自己紹介も済んだことだし向こうのためにも早めに終わらせなければならない。

 

その意思を察知したのか如月も2人の喧嘩を止めて山田を部室の真ん中にあるソファに座らせた。

 

「さて、では改めてよろしくお願いします」

 

と言いつつあたりの状況を観察する。別の部室に行くこと自体そうない…それもホラーゲーム開発部…以下ホラゲー開発部と略そう。

 

そんな部活日本全国探しても似たような語感のものが何件か出る程度のものだ。

 

まぁつまるところ大変山田の知的好奇心が刺激されているのだ。

 

山田は彼らに気取られないように目線を泳がせて部室を見渡す。

 

一部の壁は丸ごと本棚になっており、図書館で見かけたような小難しい化学系の本や、民謡学、経済系の本…何故か低学年用の少女漫画も置かれていた。

 

奥には、デスクと机が置かれており恐らくは部長の定席だと思われる。

 

(・・・あれ?ゲーム開発はここじゃないのかな?)

 

辺りを見渡してもゲームを作るための機材はあまり置かれていなかった。

 

強いていうならデスクに一般的なイメージのパソコンが置かれているぐらいだ。

山田はここはあくまで仮で別のところでゲームを作ってると思った。よく考えれば学校なんていう、どこから情報が漏れるか分からない公共の場でそんな重要なものを置かないか、と自身で納得した。

 

「嗚呼、よろしく頼む」

 

そして山田の観察は如月の快く応じたことにより一旦終わり、取材が始まった。

 

とはいうものの最初から踏み込みはしなかった。最低限学校新聞に載せられるような、好きな四字熟語や食べ物

 

部長から「これ言ったら絶対ウケる!」と、前もって言われていた『夜中にあったらビビるゲームのキャラは?』という質問には割とウケていた。

 

アイスブレイクも済ませて、本題に入る。それを察知したのか如月たちの顔に少し緊張感が走る。

 

「何故、そんなに沢山のストーリーを生み出せるんですか?」

 

これは取材するにあたって彼らの出したゲームをプレイしての感想だった。

 

陳腐な表現になってしまうが、どんでん返しにどんでん返しを積み重ね、ホラゲーでちゃんとホラー要素もあるのに、プレイを終えたら小説の様な清々しい読後感を味わえた。まるで映画を丸々一本見たかのような清々しい気持ちになったのだ。

 

複数作プレイしたのだが、その都度別の題材のゲーム・・・勿論内容は素晴らしいのだが、一体どこにそんな引き出しがあるのか不明に思っていたのだ。

 

その質問を聞いた如月は、額に組んだ両手を合わせ一瞬沈黙した後、重い口を開いた

 

「・・・まず、一つ謝らせて欲しい・・・いや謝罪とは違うか・・・」

 

そして一呼吸置いたのちに語る。

 

「シナリオライター・・・と周りは言ってはいるが半分は嘘だ。現実にある物をモチーフにしてゲームのストーリーに落とし込む…完全に私のアイデアでは無いのだ」

 

そう告白めいた言葉でいや実際罪人が神に告白するような口調で喋った。それを聞いて山田はほんの一瞬だけパクリの3文字が頭をよぎった。

 

「・・・如月先輩ぃ、その言い方じゃあパクってるって勘違いされるっすよ?」

 

安倍が如月の方を見ながらコイツマジか?って顔をしている。

 

「・・・しかしだ。私は」

 

話そうとしたところに鮫島が口を挟む

 

『ちょい言葉考えろ・・・ま、簡単に言えば普段、取材・・・みたいなものをしてそれをゲームのシナリオに組み込んでいる。当然名前とか名称は変えてるし許可も取ってる・・・それに、物語を組み立てる力はコイツ自身の力だ。もっと自信持てや』

 

「・・・なるほど、そうだったんですか。勘違いをしてしまいすみませんでした」

 

「分かってくれたんならいいっすよー!変なこと記事に書いたら承知しないっすからねー」

 

存在しない耳と尻尾をブンブンと振り回すかのような調子で安倍は言った。

 

「勿論ですよ」

 

お二人がなんやかんや仲がいいこともね、と心の中で付け加えた。

 

仲が悪そうに見えてなんだかんだ部長のフォローをする時には行きピッタリな2人だ。

 

「じゃあ最後にそこの本棚を背景に写真撮影をしましょう・・・・・・はい、ありがとうございます。じゃあここはベタに1+1は?」

 

「2」「田んぼの田!」『定義による』

 

三者三様の答えを出しつつも手のひらはすっかりピースになっている。それをカメラのレンズに収めてカシャリと写真を撮る。確認するといい構図になっていた。

 

「・・・・・・はい、本日はどうもありがとうございました!」

 

「こちらこそ!楽しかったっすよ!」

 

「少し気が早いと思うが、何時ごろに完成するんだい?」

 

「今日中に形だけでもって思っています」

 

『へぇ、そいつは楽しみだ。頑張れよ』

 

「はい!」

 

そう言い何回も何回もお辞儀をして去って行った

 

(いい人達だったなぁ・・・よし!僕にできることを最大限やるぞ!)

 

自分にできること・・・それは彼らの人柄の良さを新聞という形に落とし込み大衆に発表するということ。

 

学校のホームページに載せるネット記事と廊下に貼る現実の新聞二つ作る必要があるが、まずは現実の方から

 

手帳には「みんなの魅力を伝えるの優先!!」と書き足して

 

(今日のところはプロットを考えて──甘っ!?)

 

新聞部の部室に入ると、まず最初に鼻腔を刺激したのは甘ったるい匂いだ

 

(犯人は・・・部長か。困るなぁ部室に匂いが移っちゃうじゃないか…)

 

新聞部部長はいつも簡単に何かにハマって特に下調べせずに手を出して痛い目を見るタイプの人間だ。

 

確か最近はリラックスアロマに凝っていると言っていたな。だとしても置きっぱなし付けっ放しはダメだろう。

 

「・・・お、あったあった───さてと、見出しのタイトルは」

 

アロマキャンドルを見つけて消して、換気のために窓を開けて、さぁいざ考えるぞと頭を稼働させようとした時

 

「あ、れ?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。山田はその眠気に抗う間もなく降伏した瞼はゆっくりと閉まった。

 

 

 

 

「・・・ここは」

 

次に目が覚めたら、目の前に映るは真っ暗な教室、チラリと外を見る。完全に暗闇に閉ざされている。時計をチラリと見る。もう真夜中の時刻だ

 

なるほど、なるほど、つまるところ自分は眠ってとっくのとうに下校時間を過ぎていて誰にも気づかれずに起こされずに眠っていたと、彼は冷静に物事を分析しカタリとイスから立ち上がった。

 

「そんなことある!?」

 

そう叫ばざるおえなかった。

 

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