ホラーゲーム開発部に取材しに行ったら本物だったんですけど 作:ガクランクン
「えっと・・・山田先輩っすよね?」
安倍はぽりぽりと横頬を掻きながら、困惑した様子で名前を聞き返してくる。
一瞬出なかったのは名前が思い出せなかったとは思いたく無い。
「は、はい・・・山田です。新聞部の・・・」
礼儀正しき日本人なのでとりあえず名前を聞かれたので肯定してみる。いや、それどころじゃ無い
今の化物は何か?あの光る玉はなんなのか?そもそもここは何処なのか?っていうかそのソシャゲの星4キャラみたいな格好はなんなのか?
先ほどまで思考が停止していた彼の灰色の脳細胞は必死に稼働して色々な疑問を生み出した。
「・・・・・・あ、安倍さん・・・なその格好は───!」
今1番気になった服のことを聞こうとした瞬間、天井から影が音もなく落ちてきた。
地面に降りてきた影は人間を木乃伊ミイラ化させたような顔に、芋虫のような胴体、足は無く代わりに吸盤のようなものが生えている。
しかし一番の特徴としては、人間で言う両腕に当たる所に鎌の様なものが取り付いている。
スラリと刃こぼれを感じさせず向こう側を反射する。
この人間の特徴をかね揃えた異形には見合わない名刀が、こちらを見てムムムと悩んでいる安倍に対して振るわれようとしている。
危ない、その4文字を出そうとしても喉が詰まったかの様に、何の意味も無さない空気だけが出てくる。
「フッ!」
グシャリと景気のいい音と共に頭から潰された。異形の方が、その腕の鎌は終ぞ安倍の首に振るわれること無くだらりと地面に付した
「全く・・・セイカ、注意散漫だ」
凛とした声を発する。安倍はその声を聞いてから数秒後にギギギと油を差していないブリキ人形の様に後ろを振り向く。
彼女は少し悲鳴を上げ、山田はその人物の顔を見る。暗くてあまり顔が見えなかったが、誰なのかはすぐにわかった
(如月先輩!?)
安倍と同様、先ほど取材をしたホラゲー開発部部長の如月がそこに立っていた。
しかし安倍と同様に制服では無く、黒いスーツ姿でいて手にはグローブをつけている。安倍は如月に対して
「いやぁ、何言ってんすか気づいていたっすよぉ!あ、あはは、はは」
(なんか取り繕ってる!?)
安倍は如月に対して全力で取り繕った。そりゃもうエアーでゴマするレベルで、ゴマが一瞬でこなっごなになる勢いで
「・・・君は、山田くん?」
「は、はい山田です。新聞部の・・・」
その安倍をスルーして後ろを見ると、驚愕した表情で山田を見た。
何でみんな一々驚くのかと山田は疑問に思った。
「彼は──」
「本物っす。確認しました」
いつの間にか冷静な顔つきになっていた安倍の言葉を聞いた後如月は一瞬悩む素ぶりを見せた後
「山田くん少々・・・いやかなり混乱しているかもしれないがひとまずは我々を信頼してついてきてくれないか?」
「は、はい」
山田は訳がわからなかったが、先ほどあの人魂から助けられたので従ってみることにした
「ありがとう・・・安倍“部屋”を頼む」
「りょーかいっす!」
ビシッと敬礼のポーズをした安倍は懐(?)の部分から1枚の紙…ヒトガタのような物を取り出して壁に投げる。
すると何もないただの壁に扉が現れた。生えた、とか出てきた、とかではない、本当に最初からあるみたいに扉があらわれた。
「さぁ、ここに入ってくださいっす!」
山田はこの時どんな顔をしたのだろうか、驚いた顔をしたのか、それとも驚きのあまり無表情になったのか。
しかしこれだけは確実に言える、山田は本日二度目の腰抜かしをした。
扉を開けるとそこは雪国…では無く教室だった。しかし先ほどまで山田のいた写真部の部室とは違い、昼なのか外からは暖かい日差しが教室内に入ってくる。
それに学園の一般教室と内装が違い若干時代が違うように感じる
「お、お邪魔しまーす・・・」
その異常な光景を目の当たりにしたが、先に2人が入って行ったのでビビりながらも扉に入る
「邪魔するなら帰ってー・・・っす」
机の上にぐでぇとなりながら、ある意味お決まりの言葉を言う。
「さてと・・・山田くん、色々と聞きたいことがお互いある様だね」
机を動かして、お互い対面になる様に移動した如月・・・三者面談みたいだな、と山田は一瞬思った。
「えっと・・・はい、先ほどの化け物達は一体何なんですか?」
「・・・アレらの存在を我々は“怪異”と呼称している」
「かいい?・・・それって“妖怪”だとか“幽霊”みたいな物なんですか?」
「厳密には違うが、広義では似ているものだ」
如月が何とも言えない顔をして否定をし「今は忘れて欲しい」と付け加えた
「・・・・・・怪異、我々も全てを知っているわけではない、ただなぜ発生しているかは言える。人間の強い感情だ」
「強い感情?」
「怒り、妬み・・・逆に歓喜でもいい。人生の何かしらのイベントで強い感情を抱いたことがあるだろう?」
「ま、まぁ」
今日よく抱いた感情は困惑だが、これはどちらよりなんだろうか?と一瞬疑問に思うが如月の続く言葉ですぐに意識を戻した。
「人間の感情には凄まじい力が存在する。たとえそれが小さくともね、それら感情が集まり塊となり、形をなす───それが怪異だ」
頭が追いつかない、それが山田の聞いた感想だ。そんな不可思議なもの
──そんな不可思議な存在が本当にあるのか、しかし今の現状やこの教室のせいで信じざる負えない
「怪異って一口で言っても形やらなんやら色々種類があるんすよ。例えばこの教室とか」
「え、ええっ!?こ、この教室が」
いつのまにか自分は怪異の中にいたことを知り驚き声を上げる
「落ち着いてくださいっす。今は式神にしてるので安全っすよ」
「し、式神?」
山田の中で式神といえば、札を使って自身に忠実なモノを召喚して操る物…と言う認識がある。
「“悪行罰示”・・・怪異を弱らせ、札に封印させることにより、怪異を式神にさせる方法っす」
懐から一枚の札を取り出し、宙に投げると黒いモヤに赤い目を取り付けた物…怪異が現れる。
安倍は指を指揮棒タクトのように振るうとそのモヤは次の瞬間には札に戻り安倍は宙に浮く札を手に取ると懐にしまった。
今のが悪行罰示で式神化させた怪異のデモンストレーションなのだろう。驚く暇もなく行われた一連の行為を見て山田はそう結論付けた
「つまりこの札は怪異に対して“檻”のような役割を持ってるんすよ」
すごいと思った反面山田の脳内にはある疑問が浮かぶ
「怪異を式神にって・・・大丈夫なんですか?」
「まぁ、実力が伴わなければ飲み込まれて──死ぬっすね」
「だ、大丈夫じゃないですか!?」
「あたしはそんじょそこらの人じゃなくてちょっと────まぁちょっと有名な陰陽師の末裔なんで…」
改まったように自身の胸の辺りに手をつけて言う、なんか胡散臭い。
山田はこの話を聞いて一旦情報を自分の中で組み立てた。
まず第一として先ほど自分を襲ってきたり、廊下にある謎の霧は“怪異”と呼ばれる存在だ。
そしてそんな怪異を倒したり、調伏したりするのが目の前にいる。
うん、何処のラノベだ。しかし現実問題、あんな奇妙な物を見せられたら信じざるおえない。
現実でただのドッキリだったら科学の発展を感じられて大変喜ばしい限りだ
「この教室の怪異はなんて怪異なんですか?」
その質問には如月が答えた
「名付けるなら“存在しない教室”・・・たまに見覚えのない教室がふと見える時があるだろう?それの正体がこの怪異というパターンもある」
「結構ポピュラーな怪異っすよね。よく怪談とかである感じの」
「いや、怪異がポピュラーって・・・」
怪談にポピュラーとか言われてもピンとこないとしか
そう言えば、安倍が変わった能力を持っているということは如月もなんらかの特殊能力を持っているのでは?と山田は思った
「じゃあ如月先輩は・・・?」
「ム?私か?私は彼女の様に特殊な出身では無いただの一般人だ。怪異も祓う力はない・・・ね」
山田は今日あることを学んだ。どうやら若くしてCEOを勤めている人間も陰陽師と比べるとただの一般人に過ぎないと言うことを
しかしここで一つ疑問が生まれる
「アレ?じゃあ…さっきの怪異を祓ったのは・・・」
先ほど彼は怪異を一撃でその拳で葬っている、アレはなんだったのだろうか?
「嗚呼、アレは私が今つけている怪異に触れられる特殊なグローブのおかげでね・・・開発したのは──」
『俺だ。』
如月でも山田でもない別の男の声が聞こえてきた。それも何処から聞こえて来ているのか分からない。しかし山田はこの声とかのシチュエーションに覚えがあった
「その声もしかして・・・鮫島先輩!?」
『よぉ、まさかまた会うとはな・・・ドローン越しだがよ』
声のする方向を見ると空を飛ぶ小型の機械から声が聞こえて来た。日中で見たドローンとは違い白色でスマートな印象を受ける機械だ。それに日中では近くにいた鮫島もいない
「凌牙、今まだ一言を発さず何をやっていた?」
『ワリーワリー、チョイと安倍が自信満々に助けに来たのにすぐに如月に助けてもらうのが面白くて、笑っていた。さすがに聞かすのはどうかと思ってミュートでな』
「あっえっ!?見てたんすか!!」
『あのキョトン顔は向こう3年ネタだな』
ハッハッハと向こうから笑い声が聞こえてくる。
「・・・いい機会だ。我々が怪異と戦闘する際の役割を言っておかないか?」
『そりゃいいな・・・・・・俺の役目は怪異探知や装備の発明…ま、早い話バックアップってとこだな』
その説明を聞いて山田は疑問に思った。あれ?怪異の探知ってどっちかって言うと陰陽師の仕事みたいな?
その疑問が届いたのか、鮫島はクックックと笑いながら説明する
『そいつ、霊能力者のクセしてまともに探知能力が無いんだよ』
「なんかそれあたしが初歩的な物すらできないって意味に聞こえるんすけど?あたしの力がデカすぎて他のが微々たるものにしか見えないんすよ!」
『じゃあ治せよ!!』
「人間、簡単に治せませんっすよ!そんな簡単に変わったらハウツー本なんてもんこの世から消えてるっすよ!!」
またまたやいのやいのと言い合いが発生した。如月はそれを見てやれやれと肩をすくめる
「・・・私の役割は怪異に対しての近接戦闘、そして安倍は式神等を使った後衛のサポートが役割の主だ」
如月は言い合いに夢中で喋れない安倍の分まで説明する
なにかRPGのようなバランスの良さだ。と言うかほぼ初対面の相手に話していいのだろうか?
「いいんですか?そんなに話しちゃって?」
「君は信頼できる・・・それに、いざという時に私たちの戦い方を知っておけば、こちらも戦いやすいと言うもの」
「な、なるほど」
「でもこっちとしてはあまりそうゆう展開にはなってほしくないんすよねー」
『・・・そのためにも山田を早いとこ外に───ぶつっ』
「・・・鮫島先輩?」
いつのまにか安倍との口喧嘩を終えた鮫島は何かを言いかけていたが、機械の壊れかけ特有の音を発したのちに
ドローンは重力に従い暖かい日差しを浴びている床に落ちていき見た目と同じ様に小さい音を立てた。コトリと力なく床に落ちる様を山田は見た。