ホラーゲーム開発部に取材しに行ったら本物だったんですけど 作:ガクランクン
目を開ける。眼前には見知った自分の部屋があった・・・もう朝だ。のそのそと学校に行くための支度をする。そして自分の机にあった手帳を手に取り中身を確認する。そこには
『みんなの魅力を伝えるの優先!!』
と最新のページにデカデカとそう書かれていた。そうそう、自分は昨日1人でホラゲー開発部に取材をしに行ってたんだった。
そして部室に帰ってさぁ、下書きをやるぞ!と決意をしたらいつのまにか眠っていて、学園に取り残されてしまって、そしてあんな忘れられない夜を過ごしたんだった。
家に帰った自分を出迎えたのは泣きそうな顔になっていた家族と追求、かなり大事になっていて、あともう少しだけ自分のメールが遅れていたら警察沙汰にもなっていたらしい。
もうどっちが怒っているのか泣いているのか、分からないほど感情が荒れに荒れて、それでようやく眠りについたんだった。と、昨日のことを思い出して思わず顔を赤くしてしまうが、それと同時に頭に手を当てる
(なんか身体が重いなぁ・・・それに心なしか頭痛もするし)
身体に何か違和感を覚えるが、おそらく昨日体を変な感じに動かしたせいだろう、心なしか頭も重い。しかし学校には行かなければならない・・・何故なら自分が誇れるものは現在、無遅刻無欠席と写真術ぐらいだからだ。
たった二つしかない長所を手放したくはない。
念のため体温計で熱を測ったが、平熱で風邪やインフルエンザの類では無いため登校しようと判断した。
「行ってきまーす」
玄関を開けて気だるげに挨拶をして登校する。家の立地はそこそこ良く星常学園へは15分ほどで着く・・・が学園に近いその代償として毎日満員電車で揺られる必要がある。都内に住む人間の悩みどころだ、2年間登校し続けていても一向に慣れない。
ただでさえ気分が少しすぐれないのに、満員電車に揉まれて山田の気分はかなり下がってしまった。気を抜けばすぐにため息を吐いてしまうほどに
だが電車というものはとてもいい、何をしていようが勝手に目的地に着くからだ。最も降りられなければ何も意味はないが
「ぜー・・・ぜー・・・キツイ」
山田は筋肉痛と謎の体の重さと頭痛のトリプルパンチを喰らいながら、なんとか満員電車の人混みから抜け出すことに成功した。代償として朝からとんでもない疲労を手に入れたが
「お、おはようさん。今日は珍しく遅かったなぁ」
山田が教室に入ると、机の上でスマホをいじっている親友の“岡崎貴大”がこちらに気づいて気さくに挨拶をしてきた。彼は山田の親友で新聞部の1人だ。
「まぁ、ちょっと満員電車で封印されかけて・・・・・・疲れた」
「あー、朝の電車マジで魔境だもんなー」
そういい岡崎はケラケラ笑う、山田もそれに釣られて一緒に笑おうとしたが昨日の事を思い出して一気にムッとした顔で岡崎に詰め寄った。
「ってか昨日なんで休んだのさ・・・・・結構緊張したんだよ?」
そう言うと岡崎はさっきまでの笑顔を消して、ちょっと、いや結構かなりムカつくようなナナメキメ顔で言った。
「フッ・・・・・・いや何我が友タケシよ、我は少し用事があって、参戦できなかった。すま──」
何かそれ以上岡崎は喋ろうとしたが、山田が先ほどまで触っていたスマホを見て口を挟んだ。
「そのスマホにつけてるストラップ、確か映画の特典だよね?しかも昨日公開されたばっかの」
一─昨日、散々楽しみで待ちきれないと部室で喋りまくっていて山田の記憶にも新しい。
「あっ・・・やっべ〜」
つまりこの男は見たい映画があるというので、昨日の取材を休んだということだ。流石に温厚めな山田もこれには許せない。
「───ちょっとどういうことか、話し、を・・・」
冷や汗をダラダラ流しながら必死に言い訳を考えている岡崎の机の上に身を乗り出そうとした時に、バランスを崩してしまい倒れかけた、しかし咄嗟に岡崎が手を伸ばして掴んだことにより、なんとか倒れずに済んだ。
「おいおい、大丈夫か?・・・ちょっと顔色悪いし熱は・・・無いか。まだホームルームまで時間あんしトイレの洗面台で顔洗ってこいよ」
「・・・うん、そうする」
「ついて行くか?」
「ううん、1人で行けるよ。本当にありがとうね」
そう岡崎に対してお礼を言い、山田はヨタヨタとした足取りで壁を使ってトイレにまで行った。
(やっぱり、なんかさっきから体重いなぁ・・・風邪かな?いやでも熱なかったし、特に咳とかしてないからなぁ。五月病?いや、遅いか?)
風邪だったら出席停止にならなくてちょっとやだなぁと思いながらトイレにある洗面台前まで来る。ハンカチを先に取り出しておいて、蛇口を捻り手を洗おうとして、鏡の中の自分を見る。
「さて・・・ヒッ!」
洗面台の鏡の中に映る己の左肩、つまり現実でいうところの右肩に何かが乗っている。汚れや傷なんてものじゃ無い、ナニカが乗っている。
そのナニカの見た目はグレーに近い黒い色でサイズは大体掌サイズぐらい・・・・・・顔、というにはあまりにもお粗末な油性ペンで書いたような点から何かじわじわと心を蝕む耳障りな音が聞こえる。
(か、怪異!?な、なんで!?もう見えないって言ってたのに・・・)
この正体不明のものについて心当たりがある。何故なら昨日嫌と言うほど見てきて、そして発明された存在だったからだ。名前だって言える、だが分からないところがある。何故今自分が見えているのか?
『今回のはかなり特殊なケースだから見えただけでこれから先見る事はない・・・まー意図的に心霊スポットとか行けばまた変わるけどな』
昨日言っていた鮫島先輩の言葉が脳内で繰り返しされる。何故?どうして?そんなことを考えていると、先程の体の疲労により、また気分が悪くなり、今度は支えてくれる友もおらずにフラフラと動いて、そして壁に頭をぶつけて気を失った。
「うぅん?」
目に眩しさを感じて瞼を開けると、天井が映った。この場所は先ほどのトイレの中ではない、この特徴的な消毒液の匂いは
(保、健室?)
まだ寝ぼけている頭をゆっくりと起こして左右を見る。カーテンが周りに広がっていて自分はベッドで寝ている。間違いないここは学園の保健室だ。
どうやらあの後自分は気絶した後誰かに保健室に運ばれていたのだろう。
「・・・さっきのは?」
夢、は無い今自分が保健室で寝ているのが何よりの証拠だろう。トイレで気絶した時に誰かに運ばれたのだろうか
あの怪異は幻覚?にしてはあまりにもリアリティがあり、それは無い
「やぁ、起きたかい?」
さっきの出来事について自分なりに色々と思案していると、カーテンの外から凛とした男性の声が聞こえた。保健室の先生は女性、だったらこの声は先生・・・・・・担任?いや、聞こえてきた声はそれよりも若い。
親友の岡崎が心配できてくれたのか?いや、違うこの凛とした声は自分は覚えている。この声の主は
「良かった。先生が言うにはそこまでの怪我では無いと聞いていたのだが・・・やはり心配でな」
カーテンが開くと、そこには昨日の放課後と全く同じ姿で佇む男がいた。その男はこちらを見て、少し不安そうな顔で言う。
「きっ、きき如月さん!?」
来たのが担任、もしくは友達の岡崎だと思っていたがまさか学園の有名人が保健室に来ているとは夢にも思っていなかったから思わず大声を出してしまった。