ホラーゲーム開発部に取材しに行ったら本物だったんですけど 作:ガクランクン
「し、失礼します」
2日続けてホラゲー部の部室の扉をノックして中に入った。まさか2回も入ることになるとは、もしこれを1週間前の自分が知ったら卒倒するかな、と考えながら部屋の中に入った。
初日とは違い安倍と鮫島の2人は争っておらず彼らはちょこんと仲良くソファに座っており、その真ん中には初日と同じように如月が座っていた。
「やぁ……大丈夫だったかい?あのあと怪異は見えたかい?」
「えっと……まぁはい、見えたは見えたです……ただ」
授業中に何回か、霧のような不安定な形をした黒いもの達がが自分めがけて突進したが、そのたびに胸ポケットに入れたお守りが少し光って、黒いものが空中で爆発四散して文字通りチリも残らなかった。
そしてその光景を見た黒い物は謎の言葉……多分ニュアンス的に命乞いを叫びながらどこかに逃げていった。ちょっとあまりにも効果がデカすぎてちょっと怪異達に同情してしまった
「……って感じで、なんか若干可哀想だなぁって思いましたね」
苦笑いをしながらあの時の光景を伝える。その話を聞いて下手人の安倍は逃げ惑う怪異の姿を想像して若干ツボに入ったのか小刻みに震えながら
「……フフッ……よ、良かった……っすね……」
と答えた。その横で如月が神妙な顔つきで山田に向き合った。
「さて、聞きたいことは何かあるかな?」
山田はその問いかけに、恐る恐る声を出した。
「……なんで僕は怪異が見えるように成ったんですか?」
それを聞いた如月は、腕を静かに組み目を閉じて喋り出した。
「分かった…それについて説明しよう。まず前提として怪異は通常、人には見えない…ここまではいいね?」
山田は無言で頷いた。それについては納得している、あんなものが色々な人に見えたら社会は今頃大混乱だからだ。
「………だが時として怪異と出会ったことにより怪異を見えるようになる人が出る場合もある。波長があったと」
「つまり……自分はそれに成ったと?」
「いや、君の場合ケースが違う」
「え?」
てっきり自分は怪異に魅入られたことにより、怪異を見てしまう体質になったのだとばかり思っていた。というか漫画とかでよくある物だとばかり思っていて、質問ではあるが、半端答え合わせの気分で聞いたから、まさか否定されるとは思わず間抜けな声が出てしまった。
「君は……“持っている”側の人間かもしれない」
「持っているって何がですか?」
「霊能力をだ」
話は遡ること山田が気絶した後。山田が気絶したトイレは、かなりの人だかりが出来ていた。そのほとんどは野次馬だ、何故なら気絶前に山田が学園内を轟かさんとする勢いの大声をあげて気絶したからだ。
「…すまない、少し通してくれ」
「如月先輩?!」「どうしてここに…」
如月は少し人だかりができた時に駆けつけられた。ちょうど山田の叫びが聞こえたからだ。彼が一声かけると下級生達はモーゼが海を割ったかのように簡単に道を開けてくれた。如月は彼らに礼を言うといまだ倒れている山田のところへ駆け付けた。
「山田くん、山田くん……」
(脈は……あるな。ム、後頭部にコブが……!なるほど、壁か何かに頭をぶつけて気を失ったのか……!)
山田の頬に小さいながらも人の害になる怪異がひっついていることに気づいた。
(怪異……これが原因か?しまった“八田鴉”を忘れてしまった。だが退かすくらいなら)
武器のグローブを忘れてしまったせいで怪異を祓うことはできないが、物理的接触は可能なため素手で退かそうとした。だが───
山田の体から霊力独特の青白い雷のような線が出てきて怪異の頭を貫き貫通し、さらには如月の指を斬りつけた。
「っ!」
指を切られた痛みよりも、山田が霊力を放出したことに驚き、しばらく放心した。
「───と言うわけだ。ああ一応言っておくがこの傷は事故に近い、君が気をやる必要はないよ」
如月が真新しい絆創膏をさすりながら言った。後半の言葉がなければ山田は土下座マシーンへと変貌していただろう。申し訳なさでいっぱいになっていると、見かねた安倍が山田に聞いた。
「で、山田先輩……この話を聞いて体から何か出る感覚しませんっすか?力とかエネルギーみたいな感覚のものが」
「何か出る感覚って…ええっと……はっ!やっ!ほっ!……何も出ない……です」
ちょっと手のひらを出してポーズをするが霊力みたいな物は全く出ず、代わりに顔から湯気が出た。恥ずかしい
『おい、安倍?お前、同じ霊能力者の可能性があんだろ?……なんか感じねーのか?』
「うーん、パイセンも知ってるとは思いますが、あたしの探知能力はカスも同然っす。テレビでたまに出る自称霊力者の方が当たるっす」
『つまりインチキの当てずっぽう以下だと?』
「面と言われるとピキるっすねぇ……でもあたしのカン的には、まだ完全に覚醒しきってないってところっすかねぇ」
「覚醒しきってない?……どう言う意味ですか?」
安倍の言葉を山田はおうむ返しをする。安倍は少しドヤリながら喋る。
「その言葉の通りっす。まだ完全に霊能力者としての自覚が身体になくてそのせいで霊力が錬れない……例えるなら自転車の概念すら知らない人がいきなり自転車を乗りこなせない、たとえ才能があっても……みたいな!」
『……後半よく分からん例え入れて焦ったな』
その言葉にキレたのか安倍達はまた口論になった。山田はまたかぁと思いながら頭の片隅で結構人の適応力凄いなぁ、と感心した。
「……まぁそういうことで、だ。君のその力を狙って悪人や怪異が襲ってくることがあるかも知れない。だから暫くは我々と行動をしてくれないかい?」
如月の提案、それはつまり力の使い方を学びつつ自分の身を守ってくれると言うことだ。
「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」
その提案を断る必要はなかった。如月はそれを聞くと「あぁ、よろしく」と手を差し伸ばして言った。山田はその手を掴んで握手をした……そしてあることを思い出す。
「そういえば、昨日のあの人……えっとあの女性はなんだったんですか?」
昨日の人たちが気になり如月に質問をした。すると如月は無言で鮫島の方を向き、鮫島もそのアイコンタクトに気づくと安倍との言い争いをやめてスマホを打ち出した。
『それについちゃ、俺から説明するぜ。まず彼女を知る前にこの学園について知る必要がある───実はこの学園は呪われている』
「………えっ?の、のろ、のろろろ???」
その言葉に山田の滑舌は崩壊した。そりゃあんな怖い怪異がいるって知った上で自分たちが普段日常を過ごしているこの学園は呪われてるって聞かされたからだ。
『安心しろよ、お前が思ってるような物騒な感じじゃない』
「大量殺戮系じゃないんですか!?やばい殺人鬼が快楽で!みたいな!」
『俺が思ってた数十倍物騒だった………えっとな、まずこの土地は元々処刑場だった。その上で学園がだったんだが、そん時も曲者でなぁ……記録によると人柱やらやったり、当時の学園設立者も全員いろんなところの祟りで大なり小なり呪われててな……一言で言うと、地獄だったな』
「僕の思ってた数百倍物騒な背景なんですが……」
その話を聞いて山田は絶句した。なんだこのホラゲーとか映画とかの舞台にありそうな設定のてんこ盛りは、なにが
「……あれ、過去形なんですか?」
『おう、この学園に入学するはるか前、中学生時代の安倍が色々祓ったり解呪してな、大体普通の学園に戻った。』
その隣で安倍は精一杯胸を張ってアピールをした。鮫島はハイハイとスルーして話す。
『だが、完全には戻らなくてな。その名残で怪異が集まりやすくなっちまった。まぁ呪いというか副作用みたいなもんだな……あの時の女性の幽霊もその名残できてしまったんだような。んで現学長の依頼で定期的に俺たちが住み着いた怪異を祓っているんだ。祓う前に学校関係者は全員帰宅させてからな』
だからあんなに暴れていても警備員や教師が来なかったのか。と納得した。
「そう、なんですか……じゃあなんで僕は教室に置いてけぼりに………」
『さぁな、忘れられたんじゃね?』
すっごい雑にぶった斬られてちょっと凹んだ山田であった。
『……まぁ話は戻して、学長辺り一部教員には伝えているんだがな……話をしていない教員がたまたま怪異の被害に遭って……まぁほんと軽いものだ。んで、そいつがびびってフリーの退魔師……あー怪異と戦う人間の総称な。を呼んで……んで俺たちはバッタリあったってこった』
凄い悪い偶然だと思った。さらに山田は疑問に思ったことをズバズバ聞く。新聞部のおかげで結構いける。
「そういえば、なんで鮫島先輩のドローンは一旦通信が切れちゃったんですか?」
それを聞くと鮫島は少し遠い目をしながら説明した。
『それなー、俺が離れたところで通信してたんだが……そん時に結界師、まーあの女の相棒で結界を貼ってサポートする俺みたいなやつがなぁ……俺が通信してた部屋で結界を張ってそれで一時的に電波が遮断されちまったんだよ』
「ほ、本当に凄い偶然ですね………それで、どうなったんですか?」
鮫島はさらに遠い目をしてしゃべった。
『………結界張ってすぐに俺に気づいてな、何思ったんだが襲ってきて……んで倒しちまった』
こう、ビリビリっとな……と何かを向ける動作をしながら言い、その後悪いことしたなぁ、と呟いた。
「そうだったんですか……」
ちょっと引きながらも、山田は納得した。
「聞きたいことはこれで一旦は終わりっすかねぇ?」
「えっと……はい、そうですね」
かなり情報量が多くて、ちょくちょく合間に取ったメモを見返す。このメモが他人に見られたとてただの厨二病程度に思われて終わりだろう。見返してもこれ以上聞きたいことはないはずだ。
「では一旦ここらでお開きにしよう。また聞きたいことがあったら後日で」
「は、はい。わかりました」
山田は深々とお辞儀をして部室を出ようとした。出る前に安倍が山田に対して聞いた。
「あ、そうだ。山田先輩、頭は痛くないっすか?」
頭?あぁ、さっき頭を壁にぶつけた時にコブがあると如月先輩が言ってたな……
「?……えぇ、大丈夫です。痛みも引いてますよ?」
「そうっすか、じゃあさよならっす」
「はい、ありがとうございました」
何か釈然としない気持ちのまま山田は教室を去った。
「……で、どう思った?」
「うーん、あたし的には巻き込まれた側の人だと……」
『だが、それでも現時点じゃかなりアヤシイだろ。何せ頭にある大きなアザに気づかないなんざ』
山田自身は知らないことだが、実は山田の後頭部には壁にぶつかった際にできたコブ以外に大きなあざができているのである。
『アイツが保健室で寝てた時に調べたが、あのアザができたのは昨日、原因は鉄パイプ等の鈍器で強く誰かに殴られ……脳震盪を起こしたっぽいな』
つまり昨日学校でいきなり寝落ちしたのは、疲れていたのではなく殴られて気絶したからである。
そういい鮫島は深呼吸したのちにスマホを打ち始める。
『ここまでなら、悪意ある何者かにやられた……ってなるが、問題は本人がそのアザを認識してないってこったな。カケラも気にしてないっぽいぜ?あれ』
「……それだけではないだろう。山田くん以外に今回の件で怪しい点があるのは」
「昨日の………ゆ、幽霊っ……すか?」
安倍は息も絶え絶えに、昨日の幽霊のことを思い出し喋る。
「安倍、辛かったなら耳を塞いでいろ」
「いえ、大丈夫っす……あたしも知りたいっすから……」
「そうか……では鮫島頼む」
『OK、任せろ』
そういうと、鮫島はパソコンを引っ張り出して操作する。すると本棚が移動して天井からプロジェクターが出てきて部屋が暗くなった。
プロジェクターが作動すると、壁には昨日の幽霊少女の写真と建物が写る。
『彼女の名前は、佐倉みゆき……享年16歳高1だな。んで、肝心の彼女の母校なんだが……北海道にあった霧見ヶ丘高校と言うところだった』
「北海道、間違い無いのか?」
『おう、特徴的な制服なのと去年ここの高校は合併して制服が変わってな、特定すんのはベリーイージーだったぜ』
そういい鮫島は彼女の赤黒いセーラー服と少々古めの校舎を見つめる
「えっと……北海道からここの距離ってどれくらいなんすか?」
『大体……1,000キロメートルだな』
「浮遊霊なら無理じゃ無い距離だが……」
『いや、無理だな……彼女が死亡してから2日程度、葬式すらやってねーんだ。まずありえねぇ。しかもこの町とはなんの縁もゆかりもない。流石にこの学園の名残でも来ないだろう』
「───誰かが無理やり連れてきた以外……はな」
葬式すら行われていない幽霊が遠く離れた土地へ行く……まず普通じゃ無い、如月は悪意ある人間の起こしたことと踏んでいる。鮫島もそう思っている。
だが幽霊以外にも奇妙な点がある。
「他に怪しい点といえば、教員の怪異被害っすね。取りこぼし等で多少は怪異が残ることはあるっすけど、そんな普通の人が感じ取れるほどの被害が出すやつを野放しにしていたってのはちょっと……」
人間がやっている作業だから必ずというわけでは無い、だがそれでも残った怪異は基本的に山田を襲った小さな怪異程度だ。人に害を与えるほどの力すら存在したい虫よりも微弱な存在。
「聞く話によればポルターガイストに近い現象を目撃したとのことだ。尚更怪しい」
物を空かせる現象、それを人間が近くでいるほどの力。まずあり得ない。
『……で?部長さん的にはあの山田って奴のことどうすんの?』
「それについても、もう決めている。我々としては彼は巻き込まれた被害者として保護する。」
そうキッパリと言い放った如月の言葉に異議を唱えたものはいなかった。