ラキア王国は、肥沃な広い土地を持つ食料自給率の高い国家であり、自国で生産した食料だけで生きていくことも可能だが、食生活に彩りを持たせる為、海洋国のディザーラが獲った魚介類などを輸入したりはしていた。
海洋国家ディザーラは、海の覇王リヴァイアサンの脱け殻の上に住み着いた人々が作り出した国であり、強大な力を持つ怪物の一部には弱いモンスターが近寄って来ない為、基本的にモンスターに襲われることなく生きているディザーラの国民達。
水棲モンスター達もリヴァイアサンの脱け殻には近寄らないので、安全に漁業ができているディザーラという国の主食は海の幸となる。
そんなディザーラの海の幸を、購入すること自体は問題ないが、輸送中に腐ってしまっては意味がない。
干物や塩漬けにして長持ちさせる方法はあるが、それだけでしか魚介類を味わえないのは、ラキアの国民が可哀想だ。
炒った豆だけあればいい俺は美食には興味がないが、アレス・ファミリアやラキア王国の国民達には、ちゃんと美味いものを食べてもらいたいという気持ちはあるんで、食生活を豊かにする為の知恵を出すことは惜しまない。
ラキアが生産した食用油や瓶などをディザーラに安値で提供し、オイルサーディンやアンチョビに似たオイル漬けなどをディザーラと共同で開発して、ディザーラが瓶詰めにしたそれらはラキアが優先的に購入して輸入している。
長持ちする食料品は、何処にでも喜ばれるので、ディザーラが売り出す魚のオイル漬けは、結構売れているそうだ。
海洋国であるディザーラでは育てるのが難しい食料品などもラキアから購入しているディザーラは、輸出入でラキアを頼ることが多い。
ディザーラとラキアは、ある程度は友好な関係を築けていると言えるだろう。
ちなみに海洋国ディザーラの兵は海兵と呼ばれ、海戦に長けた存在であり、陸であるならラキアの兵が間違いなく勝つだろうが、海戦だとするなら海に慣れているディザーラの海兵が有利ではあった。
それでも現在のディザーラの海兵にLv3を越える存在は居ないので、複数のLv4と小隊が作れる数のLv3が存在するラキアの騎士達が負けることはないだろうな。
古代の英雄達とは違って今の神時代では、神の恩恵を授かって偉業を達成し、ランクアップした存在が強者となるが、複数回ランクアップした存在は別格であり、量を質が圧倒することは神時代では何もおかしいことではない。
竜の谷から降りてきた様々な竜を相手に戦ってきたラキアの騎士達は、ランクアップすることも珍しいことではなく、代を重ねるごとに精強さを増していく騎士団。
そんなラキアの騎士団に、魔法大国アルテナから追い出されたと語る魔導士達が接触してきたそうだ。
商品として魔道具や魔導書などを購入する程度の関わりなら問題はないだろうが、ラキアとアルテナという国同士が深く関わるような事業を行うのは、やめておいた方がいい。
アルテナの主神である隻眼の老神オーディンは地上では神災とも言われる存在であり、関わるべきではない神だ。
信用や信頼もするべきではない存在が頂点に立っているアルテナという国は、他国よりも、誰よりも魔法や魔道具が優れていなければいけないと考えている存在が多い国でもある。
自国の利益を優先する為に非道な手段を行えるのは悪いことではないが、限度というものを知らないアルテナは、ろくでもないことを仕出かす国だった。
アルテナから追い出されたという魔導士達と実際に接触した騎士団からの詳細な報告によれば、魔導士達は魔導書を売りにきたと言っていて、確かに複数の魔導書らしき物を持ってきていたようだ。
価格としては平均5000万ヴァリスで、魔導書としては安値である。
読むだけで魔法を発現させることが可能な魔導書。
しかし魔導書に使われている素材が、明らかに価格に合わない高価な素材であることに気付いた騎士団長は怪しさを感じ、魔導書を購入することなく、元アルテナを名乗る魔導士達を追い返した。
魔法大国アルテナは警戒対象とラキア王国内には周知してある為、アルテナ産の怪しい物は買わない警戒心を、ラキアの国民である騎士団長も持ってくれていたみたいだ。
後日に判明したことだが、元アルテナの魔導士達を名乗る存在は他国で魔導書を売り捌いたようで、その魔導書を読んだ者は、全員魔法ではなく呪詛に目覚めたが、自身を強く蝕む重い呪詛に耐えきれず死亡者まで出たらしい。
つまり魔法ではなく強力な呪詛を発現させる特殊な魔導書を使用すればどうなるかを、元アルテナの魔導士を名乗る存在達は他国の国民で実験したということになる。
怪しいと感じた騎士団長が追い返していなければ、ラキアの騎士団の誰かが犠牲者になってもおかしくはなかった。
アルテナを警戒するように伝えていたのは、正解だったかもしれない。
本当に元アルテナの魔導士だったのかは定かではないが、信用できない相手からは何も購入しない方がいいだろう。
今回の件にアルテナが関わっていようがいまいが、自国で魔導書を生産できた方が安心だと、ラキアの誰もが考えるようになり、魔導や神秘の発展アビリティを得た眷族を育てることに決め、ラキア王国の総力を上げて自国産の魔導書作成の為に励んだ。
魔導士の育成に時間と資金を費やしていき、国王が何代か代替わりするような時が流れてから、ようやくラキア王国産の魔導書を作れる存在が増えてきた。
ラキアの国力を更に高めることができたなら、悪いことではないな。
ちなみにアルテナを追い出されたとか言ってた魔導士達は、オラリオ外で活動していた闇派閥の団員達だったりしますね