国王こそがアレス・ファミリアの団長となるラキア王国では、王子達が国王の座を狙って争いを繰り広げていたりもするが、あくまでも王子達だけでの争いに留まっており、ラキア王国の国民に被害はなかった。
モンスター討伐に参加して武功を積み重ねようとする者、国内を富ませることで功績を得ようとする者など、王子によってそれぞれ行動が違っていたが、ラキア王国の為に動いていることには変わりはない。
そんな王子達の中で、第五王子のマルティヌスだけが積極的に行動していなかったが、詳しく話を聞いてみると、どうやらマルティヌスは自分に自信が持てないでいたようで、何をやっても上手くいかないのではないか、と考えてしまっていたみたいだ。
そんなマルティヌスが前を向いて歩けるように手助けしてやりたい、と思った俺は、空いている時間があればマルティヌスと交流するようにして、一緒に身体を動かしたり、軍神である俺の技術を教えてみたりもした。
野営のやり方を教えていく最中に、俺が簡単な野営料理を作ってみせた時は「炒り豆以外も作れたのですかアレス様!?」と凄まじく驚いていたりもしたマルティヌス。
基本的に炒り豆ばかり食べている俺が、野営料理だとしても、炒り豆以外の料理を作れたことがマルティヌスには衝撃的だったらしい。
ラキア王国の歴代国王もマルティヌスと同じことで驚いていて、他の料理も作れる俺が好きで炒り豆を食べていることを知ると「美味い豆を作ってみせます」と数十代前の国王から豆の品種改良をラキア王国で行うようになり、何代も代替わりしようが今も豆の品種改良は続いている。
他国よりも豆の生産数が多い国でもあるラキア王国では、豆を使った料理や調味料なども作られていて、ラキアの国民食にもなっているそうだ。
生物にとって有益な腐敗を発酵と呼ぶが、豆を発酵させて作る調味料も、幾つかラキア王国には存在していた。
交流がある極東から伝わった味噌や醤油の作り方などが、ラキア王国では広まっており、ディザーラから輸入したオイルサーディンに醤油をかけて食べるのが流行っていたりもしたな。
マルティヌスも魚のオイル漬けは嫌いではないようで、アンチョビとマッシュポテトをパンで挟んだアンチョビポテトサンドが好物であると言っていた。
鍛冶師に頼んで用意してもらったホットサンド用フライパンを使って、アンチョビとマッシュポテトをパンで挟んで作ったホットサンドをマルティヌスに食べさせてみた俺。
加熱されたことで旨味が増したアンチョビが、とても美味だったようで「作り方を教えてくださいアレス様!」と迫ってきたマルティヌスに、ホットサンドの作り方と、使用する特殊なフライパンをプレゼントとして渡しておく。
するとホットサンドを作ることが趣味になっていたマルティヌスは、様々なホットサンドを作って楽しんでいたりもした。
楽しめることを知ったマルティヌスは以前よりも前向きとなり、身体もしっかりと鍛えて武術を身に付け、背筋が真っ直ぐになってきていたマルティヌスは、自分に自信が持てるようになっていたようだ。
そんなマルティヌスが精力的に活動するようになると、カイオス砂漠にある国の1つであるシャルザードとの交易ルートと輸送手段の確保や、竜の谷から降りてきた竜の単独討伐、という他の王子を越える功績を得ることに成功していたマルティヌス。
シャルザードとの安定した交易を成立させる為に砂上船の開発まで行ったマルティヌスは、砂漠の調味料への興味を原動力として動いていたが、それでもラキア王国の大きな利益となるシャルザードという交易相手を得たことは確かだった。
そして竜の谷から降りてきた飛竜を単独で討伐するという偉業を達成し、15歳でありながらLv2にランクアップしたマルティヌスは、戦士としての力も示す。
新たな交易相手を得たという功績に加えて、竜の谷の竜を単独で討伐したという武功まで得たマルティヌスは、第五王子だとしても国王に選ばれてもおかしくはない存在となっていたようで、マルティヌスを国王に推す貴族も少なくはない。
それに焦ったのは第一から第四までの王子達であり、マルティヌス以上の功績を得る為に動こうとしていたが、中々上手くはいかなかった。
そこで、マルティヌスに決闘を挑んだ王子達だったが、武器を持った第一から第四までの王子を全員素手で叩きのめしたマルティヌスに、完全に心が折れた他の王子達は国王になることを諦めたそうだ。
時が過ぎて、第五王子であったマルティヌスが次代の国王となり、ラキアの新たな王となる。
相変わらずホットサンド作りが好きなマルティヌスは、こっそりとホットサンドを作っていたりもするようだが、立派な国王にはなっていた。
マルティヌスの子である第一王子マリウスも無事に生まれたので、何事も無ければラキアは安泰だろう。
マルティヌスの息子のマリウスが成長し、3歳位になった頃、炒り豆を食べていた俺に近付いてきたマリウスは、俺が食べている炒り豆に興味津々だった。
食べやすいように半分に割ってやった炒り豆を幼いマリウスに渡してみると、炒り豆を食べ始めたが「ぱしゃぱしゃする」と言い出すマリウス。
どうやら炒り豆を食べたことで、マリウスの口の中がパサパサしてしまったらしい。
泣きそうになっていたマリウスへと、リンゴジュースを飲ませてやるとにこにこしていたマリウスは、美味しいリンゴジュースで機嫌が戻ったみたいだ。
それから炒り豆を見ると「やー!」と逃げていくようになったマリウスは、炒り豆が苦手になったようである。
マリウスにはちょっと悪いことをしてしまったかもしれない。
幼いマリウスに、炒り豆は、まだまだ早かったみたいだな。
マルティヌスが第五王子だったという設定は、本作独自の設定となります
ちなみにマルティヌスに負けた王子達は、剣よりも鍬持ってる方が安心するな、と言って農家になってたりしますね