ここだけ病弱コハル   作:匿名さん

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ひぃんなんか知らないうちに評価バーが真っ赤っかになってるよー……なんで???
笛って評価厳しいって聞いてたし、まさかこんなに多くの人が読んで評価してくれると思ってなかったから腰が抜けちゃったよー嬉しい反面ハードルが爆上がりしてそうで怖いよー
感想もたくさんありがとねー某所で見てくれてた人も思ったよりいてびっくりしたよー
気の利いた返しができないから返信はしないけど、全部見てニマニマしてたよーありがとー!
読んでくれる人全員を納得させるような話を書くことはできないと思ってるけど、でき得る限りは尽くすので、暇なときとか思い出したときにチラッと覗いてほしいよー

以上感謝を伝えたかっただけの無駄に長い前書きでした。
あ、今回の話に出てくるキャラは原作と大分ズレがあると思うので、解釈違いだったらすっぱり忘れて別の面白いお話を読みにいってねー
所詮落書きだよーではどうぞ


その48

「さっきも言いましたが、無理です。今のコハルさんの状態は、ティーパーティーの謀略が引き起こしたもの。そのティーパーティーの飼い犬であるあなた方に、どうして引き渡せると?」

 

湿気を帯びた嫌な空気の中、氷のように対極の声が響く。ただ淡々と、図書委員長は彼女たちにとっての決定事項を突きつけた。

 

「ティーパーティーがどう考えていようが、コハルは正義実現委員会(私たち)の一員だ。身内の安全は自分たちで守る」

 

「その身内に、虫が紛れているとも限らない。……今のティーパーティーは、条約成立の為ならばなんだってします。あの状態のコハルさんをゲヘナに向かわせるくらいなんですから。スパイの一人や二人、紛れ込んでいても可笑しくありません」

 

「物語の読みすぎだ、図書委員長」

 

「最早現実が物語を越えているんです、正義実現委員長。……ハッキリ言って、桐藤ナギサは乱心しています。条約成立の為なら、コハルさんの命なんてどうでもいいと思ってるんですよあの女は」

 

でなければ、この補習授業部の成立から、合宿の強制参加、その上試験会場諸々の変更及び試験会場爆破まで説明がつきません。

 

声色こそ氷のように冷たいが、その発言はどこか熱を帯びていた。図書委員長──古関ウイの視線が私を貫く。

 

「正義実現委員会はティーパーティーの統制下にあります。あなたの権限でも、ティーパーティーの命令にはそう簡単に逆らえない。……今回は我々が手を回して一命を取り留めましたが、次はどうするつもりですか? ティーパーティーからまたも理不尽な指令が出たとき、喜んでコハルさんを差し出すと?」

 

「それは……」

 

ウイの懸念はもっともだった。正義実現委員会は今のトリニティを代表する武力であり……ティーパーティーの直下にある治安維持組織だ。首脳部からの命令は、そう簡単に拒否できるものじゃない。

……それでも。

 

「コハルは大切な仲間だ。はいそうですかと売り渡すなんて真似はしない」

 

「今回何もできなかった癖によく言いますね。その言葉が信用できないと言ってるんですよこっちは。……仲間意識や絆は大変結構。コハルさんも、あなたにそこまで思われて喜ぶでしょうが……現実もしっかり見ていただきたいものですね」

 

第一先程の質問の答えになっていませんよ。

 

図書委員長は無表情で私を見つめた。空気が冷えていくような、体感温度が下がっていくのを感じる。

張り詰めた雰囲気を裂くように、ウイはため息を吐いた。

 

「……はぁ。しかし、コハルさんが正義実現委員会の人間であることは事実。別に永劫身柄を預かるわけではありません。あの人の身の安全が保証されれば、喜んでお返ししましょう。──もっとも、あなた方の飼い主があの有り様では夢のまた夢ですが。彼女がこの凶行を止めない限り、我々は承服しません」

 

そして彼女が自発的に止めることはないでしょうね。

 

ウイは口の端を歪めた。それが怒りによるものか、嘲りによるものかは判別できなかった。

 

「いわゆるコンコルド効果というやつです。既に彼女はティーパーティーの権威と社会的信用、彼女への心象も含めてほとんどを犠牲にし、裏切り者候補をまとめて切り捨てようとしています。本人曰く、『全てはトリニティの未来のため』、だそうです。素晴らしい大義ですね、あっぱれですよ。──そのために、何も悪くないコハルさんを犠牲にしようとしなければね」

 

「……」

 

否定も、肯定もできない。今後トリニティの未来を守る為には、確かに条約の調印は重要だ。対立するゲヘナとの関係を改善し、上手く行けば、まだ見ぬ被害者たちが減るかもしれない。だがそのために、コハルを、何も悪いことをしていない、今を生きるトリニティ生たちを犠牲にするのが正しいことなのか。

答えを出せない私は、ただ沈黙で応えるしかなかった。

 

「……ここからが、あなたを呼び出した本題です」

 

 

 

「今のティーパーティーは、果たしてトリニティに相応しいと思いますか?」

 

 

 

「…………どう言うことだ。何の話をしている」

 

話の雲行きが怪しい。嫌な予感がした私は、思わずウイの仏頂面を見つめた。

 

「まず、現在ホスト代理を務める桐藤ナギサは乱心し、条約成立の為に、犠牲にすべきでないものまで切り捨てようとしています。本来のホストである百合園セイアは入院中で、彼女を止められない。残る聖園ミカは脳内お花畑で、政治をやらせるにもナギサを止めるにも力不足。あとは烏合の衆が顔だけ笑顔で足の引っ張り合いをしているだけです。──まともな奴が一人もいやしない」

 

ウイは吐き捨てると、疲れをとるかのように自身の目元を揉みほぐした。

 

「このままでは、桐藤ナギサは暴走を続け、無駄な犠牲が出るでしょう。コハルさんがその筆頭です。来る三次試験に足並み揃えて合格しなければ、彼女は退学になる。いえ、裏切り者を排除したいあの女からすれば、合格させまいと策を講じるでしょうね。昨夜の二次試験のように。……ゲヘナに向かわせて、会場を爆破までしたんです。次も似たようなことをやらないわけがない。このままにしていたら、彼女は確実に死にます。──そんなことを、許すわけがないでしょう」

 

手を離した彼女の目には、強い決意が宿っていた。覚悟を決めた者特有の光。ダークパープルの瞳が、漆黒に染まったかと錯覚してしまうほどに暗いその輝きは、命を奪う覚悟をした者にのみ現れるものだった。

 

「彼女を止めます。これ以上、コハルさんが取り返しのつかない被害を被る前に。──例え、彼女の命を奪ってでも」

 

「──本気で、言っているのか?」

 

「与太の類いに見えますか?」

 

円卓を挟み、互いの視線が交錯する。冷えきっていた空気が仄かに熱を帯びていく気がする。

 

「時間があるなら、もっと穏便な手段も可能でした。それこそ、もっと政治的、社会的手段でもって彼女を追い落とすことも、大分面倒ですが不可能ではなかった。ですが、今回は時間がありません。コハルさん……それと以下数人のリミットである三次試験までに全てを終わらせなければ、あの人は不正な手段でもって、正当に退学になってしまう。一度退学という烙印がついてしまえば、他の学園に迎えられるのも難しい。コハルさんの体では尚更です。トリニティという鳥籠の中でなければ、あの人はもう生きられない。色々と……本当に色々と考えましたが……ティーパーティーがあそこまでやるというなら、最早四の五の言っていられません」

 

──我々図書委員会と、シスターフッド、並びに救護騎士団はティーパーティーを解体します。

 

ただでさえ静かだったこの場が、ウイの宣言で凍りついてしまったように感じた。あまりにも予想を遥かに飛び越えた事態に、思わず目眩がした私は、声の震えを圧し殺してどうにか会話を続けた。

 

「図書委員会は、ともかく……シスターフッドと救護騎士団まで、それに同意したと言うのか?」

 

「患者を利用され、害された救護騎士団。罪なき者に冤罪をかけ、命を奪おうとしたのを知ったシスターフッド。──むしろ、何故同意しないと思っているんですか?」

 

「だとしても! ……いや、それが仮に真実だとして。ティーパーティーを解体するなど、条約どころの騒ぎじゃない。トリニティの全てがひっくり返ることになる。一体どれだけの血が流れるか……何もかも無茶苦茶になるぞ……! 事の重大さをわかっているのか!?」

 

ティーパーティーは特権階級だ。重い責任と引き換えに、トリニティの権力を握っている。それを力ずくで解体しようなどと、反発がどれ程のものになるか、全く予想がつかない。間違いなく酷いことになるのは確実だ。下手をすれば、死人が出るかもしれない。

 

フッ、とウイは呆れたように鼻で笑った。

 

「──もう、血は流れているんですよ、ツルギ委員長。今のティーパーティーを好き勝手にさせていたら、その量は確実に増えるでしょう。どちらを選んでも血が流れるならば、この選択で今後どれだけ増えようが、最早数字の違いの話でしかない。……コハルさんにこれ以上血を流させるくらいなら、権力を振りかざし、隠ぺいと陰謀だらけのカスどもにそれ相応の代償を払ってもらう方を、私は選びます」

 

──あなたはどうしますか、ツルギ委員長。

 

……どうしますか、だと?

 

「……なに、を……言って……」

 

「あなたの後輩が、あなたの飼い主に利用され、命を脅かされ、ゴミ箱の蓋としてゴミごと捨てられそうになっている。その上で、あなたはまだ飼い主に忠を尽くし、操を立て続けるつもりですか?」

 

一度犠牲にする選択をした以上、必要なら次も同じことをしますよあの女は。今度はコハルさんだけでなく、他の後輩たちも……あなたの片腕だって。その血も命も、消費されることになるでしょう、『全ては大義のため、トリニティのため。致し方ない犠牲だ』とね。

 

「あなたはそれでいいのですか? ──クソみたいな飼い主に、歯を突き立てたいとは思わないのですか?」

 

「私、は……」

 

「思うところが、あるんじゃないですか? ──それならば、私たちは手を取り合えます。共にティーパーティーを引きずり下ろし、コハルさんたちの平穏無事な未来を望むのが、本当の正義ではないですか?」

 

いい加減、首輪を引きちぎるべきだと私は思いますよ。

 

ウイが手を差し出してくる。長年古書を扱っているせいか、どことなく古紙のような匂いがする。女子高校生とは思えない、洒落っ気のない手のひら。……私は……

 

目が泳ぐ。体調が悪いわけでもないのに体がふらつく。心臓がバクバクと音を立てている。

 

コハルが死ぬ。マシロが死ぬ。イチカが死ぬ。後輩たちが犠牲になる。──ハスミが死ぬ。

ナギサを止めなければ、仲間たちがティーパーティーの都合のいいように使われてしまう。最悪死ぬ。この二次試験の顛末であり得た可能性と同じように。

しかし、だからといって……こんな革命染みた真似を、許容するのか? 力ずくで全てをひっくり返そうとするような真似が、正しい行いであるはずがない。こんなもの、正義ではない。

だがその思いを、ウイの計画を否定すれば、それは今後ハスミたちの犠牲を許容することになる。大義のために仲間を切り捨てるのは、果たして正義なのか?

 

一体、何が正しい?

 

ぐるぐると意味もなく思考が回り、足元が崩れ落ちたような感覚に思わず倒れそうになって……

 

一つ、思い出した。

 

 

 

『一つだけ、聞かせて欲しい。……おまえにとって、正義とは何だ?』

 

『え、えっと……私にとって正義が何を意味するのか、ってことですか?』

 

『そうだ』

 

ティーパーティーからの命令(お願い)で、正義実現委員会(うち)に加入する者が現れた。

生まれた時から虚弱で、荒事はとてもじゃないがさせられず。なんなら一回は加入を断ったという人物。

 

『うぅん……何て言えばいいんでしょうか……』

 

困ったように眉を潜める彼女の名は、下江コハル。どういうわけか、断ったにも関わらず何故かティーパーティーから命令が下り、人事の責任者であるハスミも頷いたことで正義実現委員会入りした特例だ。

ティーパーティーの命令は殆ど断ることができない。そのため加入そのものは確定していたが……彼女個人に興味を持った私は、少しだけ時間をもらい、面接染みたことをしていた。

 

正義実現委員会は、その名の通り正義を志す者たちが集まってできた治安維持組織だ。もとは自警団の集まりから始まり、遥か昔の時代、トリニティの秩序を維持していたユスティナ聖徒会から時代の流れに従って役目を引き継ぎ、やがてティーパーティー直下の武力となって今に至る。

所属する者は皆、それぞれの正義を掲げつつ、トリニティの秩序を維持するという社会的正義を守るために活動している。逆に言えば、何の正義も持たない者は門前払いされる。ここで活動するには、何を正しいことだと見るかが重要視されるのだ。

 

この前の将来有望株な新入生はハッキリとした意志を持っていたが、いささか過激で盲目的な部分があったのが気になった。その辺りは後々矯正するとして、他の新入生たちも大なり小なりそれぞれの正義の形があった。

 

果たして、この虚弱な生徒は何を正義として見ているのか。

 

『……正義には、人それぞれ色んな形があると思います』

 

秩序を維持する社会的正義。

 

弱者を救う道徳的正義。

 

悪を打ち倒すヒーロー的な正義から、困ってる人を手助けする小さな正義まで。

 

『そのどれもが、正しいことです。……でも、時としてそれがぶつかることがあります。大切なものを守るために、自分を犠牲にする。何かを盗む。誰かを襲う。……それもまた、その人にとっての正義だと思います。その思い自体が間違っているとは、私は思いません』

 

──ただ、やり方が間違っていることに気付いていないだけ。

 

人は間違う生き物ですから。

彼女は温かい目でどこか遠くを見つめた。

 

『私には、力で正義を示すことができません。ハスミ先輩に憧れましたが……あの人のように、力でもって事を正すことは、私には難しい。──だから、私は私のやり方で、やり方を間違えた人たちの正義を尊重してあげたいと思っています。力がなくても、言葉を通じて。今度は衝突しないように、正しいやり方を一緒に考えてあげたい。そうすれば、もう他の正義とぶつかることはないだろうから』

 

それが、私なりの正義です。

 

暫く沈黙が続いた。居心地が悪そうに身じろぎをしたコハルは、不安そうに私を見つめてきた。

 

『えっと……お気に召しませんでしたか?』

 

『──いや、合格だ。ようこそ正義実現委員会へ』

 

 

 

ああ、そうだ。そうだった。──答えはとっくの昔に聞いていたじゃないか。

 

 

 

バンッ!! と破裂音が響いた。

私が私の頭を自身で撃ち抜いた音だ。

 

「……いきなり何をしているんですか、あなたは」

 

「いや、なに……自分を取り戻しただけだ」

 

クルクルと、銃口から煙を上げる愛銃を手元で回す。お陰で頭に登った血が抜けて冷静になれた。

 

「ほう、自分を取り戻した……ねぇ。ならば、この手を取る覚悟は決めたということで?」

 

 

 

「いいや、断る」

 

 

 

「…………。理由を聞きましょうか」

 

驚きから、困惑、そして失望まで。あっという間に表情を変えた図書委員長に対し、私は口を開いた。

 

「確かに、ナギサは暴走している。止めなければ、コハルの未来も、命も危ういことも理解した。それ故に抱いたおまえの意思も、間違いだとは思わない。──だが、やり方を間違えている」

 

古関ウイ。おまえの選択は、ティーパーティーだけでなく、無辜之民たちまで犠牲にする選択だ。ここまで大規模のクーデターが、ティーパーティーとおまえたちだけの被害で収まるはずがない。確実に内戦になる。その時真っ先に犠牲になるのは、何の関係もないトリニティの一般市民や生徒たちだ。

 

「その犠牲を、正義実現委員会として、秩序を維持する者として許すわけにいかない。──もう一度言うぞ、おまえのやり方は間違ってる」

 

「何も真正面から戦争を仕掛けるわけではありません。無駄に血を流したいわけではありませんから。

犠牲は最小限で済ませます」

 

「そういって実現したものは、有史上殆どいない。大抵何かしら間違いをおかして余計な被害を出すものだ。人は間違う生き物だからな。……だからこそ、そんな無謀な計画を許容することも、まして手を貸すこともできない」

 

手元でスピンさせていた二丁の愛銃を両手でしっかりと握り、ウイに向ける。今まで数多の違反者を黙らせてきた、ウィンチェスターM1887(ブラッド&ガンパウダー)は、蝋燭の光しかない地下でも頼もしく輝いていた。

 

「古関ウイ。詳しい話は本部で聞く。──武器を捨てて両手をあげろ。学区転覆の疑いでおまえを連行する」

 

「…………そうですか」

 

長い沈黙の後、ウイは口を開いた。その声音からは、先ほどまではあった感情の類いを、何も感じとることができなかった。

 

「後輩の命より、トリニティの秩序を守ると。そう言いたいんですね、あなたは」

 

「違う。ナギサは止める。コハルたちにもこれ以上手を出させない。──その上で、おまえも止める」

 

「ハッ」

 

思わずといった体で、ウイはまたも鼻で笑った。今度は明確に嘲笑を込めていた。

 

「図書委員長の私より、よほど夢物語のようなことを。だから現実を見ろと言ったのに。──まあ、あなたが現実を見なかろうが、"他"はそうではないようですが」

 

「……何?」

 

"他"だと? どういう意味だ?

 

私の疑問に応えるように、ウイは携帯の画面を私に見せた。

 

「引き込めると思っていましたが……もしも引き込めなかった時、あなたが私を捕まえようとすること位わかっていました。──その可能性に対して、何も準備せずただ馬鹿正直にあなたを呼んだとでも思いましたか?」

 

画面に映っていたのはモモッターの投稿。そこに載っていたのは、焼け跡となったゲヘナの区画。補習授業部の、試験会場跡地だった。

 

「……まさか!」

 

「二次試験の急な変更。あまりにも理不尽な変更内容。とりわけ、明らかにおかしい指定会場。その上そこら一帯爆破され、補習授業部も帰ってこずとネットで騒ぎになり……大切な後輩は行方不明。委員長のあなたは私から情報をもらい、誰に連絡もせずここまで来ましたが──かの副委員長は、これらを聞いて、果たしてどうするのでしょうね」

 

ネットって便利ですね。遠隔で煙を立てて、騒動を煽ることができるのですから。

 

「おまえ……っ! クソッ!!」

 

「──お帰りはあちらです。お時間いただきありがとうございました」

 

 

 

大聖堂の隅。枯れ葉に埋もれるように置かれた古ぼけた水盆に、突如ヒビが走り……内側から吹き飛んだ。

粉々になって散らばる破片、その一部を踏み砕き、立ち上る土煙を吹き飛ばして、私は駆けた。目指すはティーパーティーのテラス。私の予想が正しければ、あいつはそこにいるはずだ。

 

「早まるなよ、ハスミ……!」

 

地下にいるせいで電波が届かず、今になってようやく届き始めたモモトークの通知音を聴きながら、私はただそう願って、一路テラスまで走り続けた。

 

 

 

「──ウイさん。その時点では、私たちシスターフッドはティーパーティーの解体に消極的でした。にもかかわらずそんなことを……」

 

ツルギ委員長に嘘をつきましたね?

 

サクラコの咎める声に対し、ウイはどこ吹く風といった様相だった。

 

「"今"は積極的でしょう。コハルさんが重傷を負ったことを知った時点で、遅かれ早かれあなたが協力的になってくれるのはわかっていたことですから。剣先ツルギにはそれを多少早めに伝えたまでです。嘘は言ってません。結果的に嘘になりませんから。……さて、今の話で重要なのはそこではありません」

 

長話で疲れたのか、ウイはアイスコーヒーを口に含んで舌を湿らせた後、改めて私を見つめた。

 

「剣先ツルギに拒否された以上、正義実現委員会とは対立せざるを得ません。とはいえ、その半分はこれから使い物にならなくなると踏んでいますが……それでも、時間をかけすぎれば不利になるのはこちらのほうです。三次試験の前、ティーパーティーが体勢を整え、残る半数の正義実現委員会の連中を率いて対応したりなんだり面倒なことをしてくる前に、全てに片をつける必要があります」

 

そのためには、あなた方の協力が必要です。浦和ハナコさん。──そして、先生。

 

「協力してくれますね? 生徒の命がかかっているのですから」

 

ウイの視線に、私は自然と背筋を伸ばした。彼女の要請にどう応えるかは、もう決まっていた。

 

 

 

【ウイ……ごめん。私は、その考えには賛同できない】

 




週一投稿したいとは思ってるけど、如何せんリアルの事情もあって約束できないよーごめんねー
次回は先生とウイの衝突と、いよいよツルギとハスミの対決の顛末だよー



逃げてきた戦闘描写練習しなきゃゲッソリ
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