「……清水、それがお前のスタンドか」
中嶋は本体の清水とスタンドを見比べるようにして、そう呟いた。相手は人型のスタンド、ならこの時点で絞れた。相手は近距離タイプか遠隔操作型だ。
(……スタンドを見た感じ、体は華奢だな……いや、俺のキャットハウスも見た目の割にパワーは並みだから、見ただけじゃわからないか)
相手の能力を先に知る必要がある、自分は意図的に能力を使えないから、まずはそこを調べないとまずい。
(……だが、ヒントはあった)
前回の図書室での戦いよりかは、楽な点はあった。それはあの万引き犯に対しての清水の反応だ。アレはスタンド能力を使いなんらかの方法で把握した、そう見るのが妥当だ。
(その方法を、知る必要があるッ!)
「キャットハウス!」
自身のスタンドを呼び出し、関係者の人たちに悪いと思いながらも、地面のコンクリートを食わせた。
「……撃て!」
十分な量食べさせたキャットハウスに命令を下した。頬いっぱいに入れた拳サイズのコンクリートを口から弾丸のように発射する。スタンドで叩き落とすなり、能力で何かするなら、で相手の出方を見る予定
だった。
「サベイランス」
飛んでくるコンクリートの塊に臆することなく、自身のスタンドに呼びかけると、清水は軽く体を傾けて、コンクリートの塊を全て避けた。
コンクリートは清水に着弾することなく、全て壁や床にあたり、重い音を立てて砕けて割れた。
「……嘘だろ」
まさか全弾避けられるとは思っていなかった中嶋、一瞬両者の間で“差”が生まれる。
サベイランスを横に保ったまま、清水がダッシュで距離を詰めてくる……中嶋は慌ててキャットハウスの両腕でラッシュを放ったが
「サベイランス!……狙うは、ここ!」
「……キャットハウスの、ラッシュを!?……うぐっ!」
サベイランスの拳が、キャットハウスのラッシュの間を潜り抜けて、中嶋の右上腹部に位置する臓器……すなわち腎臓に深々と拳が刺さった。
「……うっ、おえっ……」
中嶋はその場で崩れ落ちてしまった。肝臓は人体の中で最も痛みを感じる臓器である。なぜなら肝臓は無数の神経が通っている。ここを殴られることにより脳みそに反応が、迷走神経を動かせという命令が起きて、血圧が下がり、心拍数も低下する。
これにより目の前が暗くなるような錯覚に陥る。さらに神経が通っていることから痛みが激しく、防衛反応から筋肉の緊張を解いて倒れてしまう。激痛とともに10秒間は動けなくなる。
さらに肝臓は横隔膜の隣になる臓器で、当然横隔膜も刺激されて重度の呼吸困難、冷や汗、図書室の時よりも重度の吐き気に襲われる。
「そこです!」
そんな無力な存在に成り下がった中嶋に対して、清水のサベイランスは追撃をし始めた。拳を振り下ろした。
涙のせいで見えないが、中嶋にはどこを狙っているのかハッキリと見えた。目だ、目に向かって一直線に向かっている。人差し指を立てている。こっちに向かってるから涙のせいであまり見えなくてもわかる。
(……ま、まずい。目が見えなくなるのは本当にまずいッ!回避しなくては!)
激痛と嘔吐と呼吸困難、それに加えて筋肉がまともに動けない。普通の人ならこの目潰しを簡単に喰らい、勝つことはもう不可能だろう。
だが、中嶋はスタンド使い、まともに動かすことは叶わないが、スタンドも最低限は動かすことができる。
下す命令はカウンター、ではなく
(俺を引っ張れ!)
キャットハウスに制服の袖を掴ませて、地面を転がるように動かすこと、パワーが無いせいで遠くまで転がすことはできないが、拳一個分程度なら簡単に避けることができる……はずだった。
(……な)
サベイランスは殴る体制からスムーズに蹴りの体制に入り、こんどは中嶋の鳩尾の辺りを確実に狙ってきた。
(んだとォッ!俺の行動に合わせて、いややる前からわかっていたようだ!!… この状況で急所に2回当たるのは避けたい!……この状況なら!)
キャットハウスに命令して、自慢のコンクリートを食わせた。硬いコンクリートを物ともせずに歯を立てて簡単に咀嚼することができた
(……喰らえ!コンクリート弾!!)
口の中に含んだままのコンクリートの塊を勢いよく吹き出した。
「っ!サベイランス!!」
清水の顔に動揺が現れる。慌ててサベイランスを自分の近くに戻してコンクリートの塊を防ぐが、パワー負けして、腕が吹き飛ばされる
「ガハッ!」
胴体にコンクリートの塊が着弾した。しかしパワー負けしたとはいえ、サベイランスのガードにより、角度とパワーが減少して見た目なほどのダメージはなかった。だがこの数秒があればいい、弾かれようともむしろ弾かれた方が好都合。
キャットハウスに引きずられたまま引っ張ってもらい、清水から離れる。正直こんな見た目のやつと手を繋ぎたくないが、そんなことを言ってられない状況だ。
「……はぁ、はぁ……」
体も動くようになり、なんとかヨロヨロと立ち上がり相手の射程距離外まで離れる。まだ血が頭に通ってないからか、頭がまともに動かないが、なんとか無理やり考える。
(……清水のスタンドは近距離タイプ、本体も一緒に近づいてたからわかる。俺のキャットハウスと比べて射程距離は若干長いようだが……)
サベイランスの姿を再び見る。見た目は頭がビデオカメラのようになっていてスーツを着ている自分の野生味しか無いキャットハウスと比べると知性があり、若干嫉妬する……が、問題はそこでは無い。自分のキャットハウスもスピードはともかくパワーにはあまり自信がないが、向こうのスタンドはキャットハウスよりも一段階ほど低い印象がある。
先ほど殴られた箇所を捲る、青あざができてる程度だがそのレベルだ。さらにいえばスピードも自分のスタンドよりも劣っている。これは先ほどの見立てと同じ通りだ、そこはいい。
(豊富が言っていたな、近距離タイプなのにパワーが遠距離タイプとどっこいどっこいなのは、スタンド能力の方に力を割いているから、この場合能力が複雑か……だったな)
その能力だ、肝心のその能力がわからない。だが使うところは3回見た。1つ目は万引き犯の万引き発見の時、2回目はラッシュを避けて一方的に攻撃した時、3回目はキャットハウスによる回避を読んでいただき時………
(……一つの能力でできること、なのか?……複数持っているパターンは……)
いつかのときに、豊富から聞いた言葉が脳内で反芻する。
『スタンド能力が一つのスタンドにつき複数?……ですか?まああり得るケースではありますね、ですがそれでも全部の能力には共通点があります……完全オリジナルな例えで言えば、“蛇を操る能力”と“体から鎖を出す能力”みたいに全くの関連性のない能力はまずあり得ません。爆弾に関する能力なら爆弾に全部関係して、音に関係するのならば、同じく……そもそも私の能力もある意味複数に近いですからね。ほら爆発とか風とか起こせるから』
(……一つか、二つか、あるかもしれないな……だが、後半二つに関しては一つの共通点がある
俺の動きを先読みしていないとまず説明できない動きをしていた)
ラッシュを避けて攻撃、回避先にキック。どちらも予め読んでいないとできない芸当だ。
(……だとしたら、なんで万引きの時はわかった?しかも場所も、あそこは清水から死角、能力の射程距離内だとして、先読みで商品名までわかる物なのか?)
相手の動きの先読みなら、万引きの動きを先読みすることで看破することが可能だろう。
だがその場合、万引きした商品も言えるのだろうか?……コンビニの棚にはコーナーがある。どこが何コーナーくらいなら答えられるが……そこの正確な商品名も言えとなると、まず不可能だ。
それに加えて清水は今日バイトに来たばかり、そりゃバイトに来る前にこの店の客として利用した可能性もあるが、客として来ただけで全てわかるわけがないし、そもそもする必要性を感じられない…。
(……常連でもない限り、客の顔なんていちいち覚えてない……だが、こいつが完全記憶能力者でもない限り、そんな芸当は不可能だ。だったら奴の能力は
①思考を読む能力、俺の思考を読んで攻撃を先取りした。そして万引きに関しても心を読めば商品が何かわかるだろう。
②未来を見る能力、動きを未来を見て把握して避けた。自分の視界外のものを観れるとしたら、万引きの商品の内容も言える……スタンド能力、まだ俺は多くと出会ってない。だから俺は能力について過小評価しているのか過大評価しているのかすらわからない……とにかく今は攻めるのみだ。近距離ではなく、遠距離から!!)
ふたたび、キャットハウスを出して自身の横に出す。チラリと見たら、強い意志のようなものを感じ取れて、少し勇気が湧いてきた
「キャットハウス!!コンクリート弾の準備だ!」
キャットハウスが地面のコンクリートを貪り、本体の中島はまっすぐと清水の方を見る
(今はまだ不明だ!……だが証拠は揃いつつある!もしかしたら追い詰められてるのはあっちの方かもな!)
その頃一方
「勘弁してほしいな、せっかくの僕の初陣がこんなの相手なんてさ」
『随分な言いようだなぁ?スタンドバトル実質初心者の空き巣くん?』
「……ミスティック・アンティーク」
(落ち着け、中島くんの話から僕のことはバレてるって言われただろ?……それより豊富さんの言葉を思い出そう。あのスタンド、パンドラボックスとやらの周囲本体はいない)
遠距離タイプのスタンド、か。と判断した、このあたり太田が見える範囲にさ本体はおろか人の姿すら見えない。他にあるとすれば、自動操縦タイプとやらだが、あれは特定条件を満たすか、何かに対して機械的に攻撃するだけの存在、パンドラボックスには当てはまらない
(……体格はかなり小さい、見た所。その辺の爬虫類とそう変わらない見た目。遠隔タイプってのは、遠くに行ける分パワーは小さいタイプが多いらしい。その分遠距離技や強力な能力を有している……なら使わせる前に)
「……攻めるだけだ!」
『なっ!いつの間にナイフを!?』
パンドラボックスが驚いた声を出す。ただ太田は黙って突っ立っていたわけじゃない。少しずつミスティック・アンティークを手の中で召喚して、手で死角になるようにナイフを作り出していたのだ。
太田本体の皆こなしはスタンド能力で強化されてないから一般人並みだが、突然の不意打ちに加えて相手の慢心により、差は広がる。
実を言うと、まだミスティック・アンティークで作り出したナイフを完全に完成はしていない。走ってる最中に残りを完成させる。こうすれば短時間で隠しつつ、不意をつく形で攻撃できる。相手のスタンドは人型じゃないから、どこにどうフィードバックするかわからないが、まずはダメージを与えて叫び声を本体に上げさせて場所を特定させようとした。
もちろん人を直接刺すわけではないが、自身の行為に人が傷つくのは正直かなりしんどいが、そんなことを言ってられる状況ではないことぐらいわかっている。
「う、動けない!?」
全身が動かないわけではない、ただナイフを持っていた手が、空中に止まったかのように固定されていたのだ
「……な、なんだこれ!?ナイフを持っていた右手だけが固まってる!?」
左手で右手に触れようとしたが
「ふ、触れられない!?……金魚鉢みたいに見えない何かで遮られてるみたいた!?……はっ!」
右手に触れようとしても何かに見えない何かに遮られて、触ることができない
『マジでビビったぜ』
心の底から安堵した様子のパンドラボックスが話しかけてくる。
『ナイフをどこから調達してきたか、知らねえが。スタンド相手に振り下ろそうってことは、それがお前のスタンド能力なんだろ?……わからねえけど、多分厄介な能力なんだろうな……けどまぁ、こんなふうに本体を無力化すれば意味もねえ』
太田の背後からガラリ、と音が聞こえた。住民か?と思い、少し後ろを見ると、アパートの窓が開き、そこから腕だけが出てきた。腕は、ナイフを手に持っていた。
「……あの窓から出てきた腕は!!」
『そう!お前の考えてる通りだぜ!あの腕こそが俺の本体だ!あのアパートは俺の自宅だ……便利なんだぜ?自宅の近くってのは、こんな風に、サポートできる!』
ヒョイっと言う風に勢いよくナイフをぶん投げる。方向は太田ではなく、パンドラボックスに向かって、勢いよく飛んでいくが、パンドラボックスは物理的接触ができない存在……透過したパンドラボックスの後ろにあるコンクリートに刺さらなかったナイフをパンドラボックスが拾うと、ナイフを逆さ持ちに構えて構えた。ナイフ自体はどこでも売っているような代物である。安価な果物とかを切るための果物ナイフだ。
「……お前、まさか」
『そのまさかってやつだ。直接やるんだよ……スタンドってこーゆー時便利だよなぁ、刺した感触も直接フィードバックする……ま、刺すのはいいとして、バラすのは俺本体がやらねえとなぁ、そこは真心こめて人間様がやったほうがずっといい』
そうボソボソ呟きながら、パンドラボックスは手に持つナイフを振りかざして、思い切り突き立てようとした
「ミスティック・アンティーク!!」
残った分のミスティック・アンティークを総動員させて自分の目の前に出して、防刃ベストに変形させて、ナイフを完全に防いだ。さらに一部を変形させたナイフを絡め取り、これによりパワーの低いパンドラボックスでは回収することが不可能になった……だが、ここで太田はミスをした。
それはミスティック・アンティークの使い方だ。ナイフ程度なら自身の足元にある全てを総動員するべきではなかった、焦ってスタンドを全てを動かした点だ。それに加えて、まだ敵の能力も完璧に把握してない。つまりどうなるかというと
「っ!」
(か、体が動かない、金縛り?……いや違う!僕の体が止まられてるわけじゃあない!僕のミスティック・アンティークの動きが止められて、本体の僕にもフィードバックしたんだ!)
自分の目の前に広がって防刃ベストに変形しかけたミスティック・アンティークが見えた。敵の能力は何らかの条件を満たした周囲の空間を空中に停止させるスタンド。
だが範囲は限られているらしい……ほんの少しだけミスティック・アンティークを動かせて、自分の体も髪の毛のはじや腕の側面や小指の一部分だけを動かすことは可能だ……だが、目の前に突き立てられようとしている狂刃に対してはあまりにも無意味で無力だ。
『さぁて!まずは右腕!』
そう言いながら、深々とナイフを突き立てた。
「───!!」
口も動かすことができず、叫ぶことすらままならない。人間が叫ぶのには叫ぶことにより脳が頭の処理をする鎮静効果があるが、今回はそれすらできない、ダイレクトに、目の前で何もできないまま自分の腕にナイフを突き立られるのを見るしかない……だが
(右腕が、さっき固定された腕が動くように!?)
ぴくりとも動かなかった自身の右手が動くようになった、だが右腕から下はまだ動くことができない……だが太田には関係ない、本体が一部分動けるということは、逆もしかり
スタンドも一部分だけ動かせるということ
(とにかく、とにかくこいつを僕から離れさせる!!ミスティック・アンティークッ!!)
『……ッチ、もう動けるよう、に!?』
気だるけだった口調のパンドラボックスが、焦った声を出した。何故なら自身の目の前に、鋭い針が飛んできたから、直感的にさっきのナイフと同じスタンドに効力がある何かだと、太田に勝ったと油断していたところで不意打ち地味に飛んできたそれに、対応しきれず刺さってしまった
『い、でぇ゛ええ!!』
慌てて飛ばしたから、狙っていた目玉には刺さらずに近くに刺さっただか、それも小さい針だから表面を浅く引っ掻いた程度だった。だがそれでいい、小さいダメージだが、目という重要部位に、鋭利なものが飛んできて刺さった。最悪失明するかもしれないという恐怖がパンドラボックスの中に駆け巡った
『……くそ!くそ!!テメェ!!』
自分でもダサい行為だと思ってるが、一旦逃げるしかない。ナイフを手に持ったまま太田から距離をとった
「……は!う、動ける?……」
(距離を離したからか?いやでもさっき至近距離でも右手から先に動けたよな?……時間制限があるのか?これ……ッ!)
いきなり金縛りが解けたのと、スタンドの考察をしようとしたが、自分の腕の痛みに思考が中断した。
(さ、さっきの針飛ばした時のアドレナリンで忘れてた。僕今腕ナイフで刺されたんだったな……)
腕から滴る血を見る。このままなら失血死まではしなくても、かなりの消耗を強いられる。
(ミスティック・アンティーク、包帯に変形しろ)
包帯に変形させたミスティック・アンティークを操作して、この前テレビでやってた止血方法を見よう見まねでやった。スタンドだから出来る芸当だ。
(流石にナイフ刺された時の包帯の巻き方って内容じゃあなかったけど、まぁ大丈夫だろう)
「……どうした?僕のこと解体するんじゃなかったのか?今ナイフで軽く撫でるだけだったけど……体調でも悪いのかい?」
『て、めぇ!!殺す!絶対殺す!バラバラに引き裂いて臓物抉り出す!』
太田のわかりやすい挑発にパンドラボックスは引っかかり、スタンドで顔色はわからないが、声色から激昂しているようだ。手に持ってるナイフをしっちゃかめっちゃかに振り回して、壁に何回か当たり、嫌な音を響かせる。自分にすら当たるかもしれないようなナイフ捌きだ。
(……い、言っちゃったぁ!!)
太田は内心かなりビビってた。だがそれと同時にこれでいい、これが最善だと思った。敵のスタンドは遠隔で動かせるタイプ、しかもまだ本体の姿すら見えてない、故に日常の中に紛れて暗殺されることくらい簡単だ。だが、先ほどからのスタンド越しの台詞や戦法から
かなり本体の性格はプライドが高く、そして残虐性の高い性格とわかった。だから長期的に考えるよりも、目先の利益最優先だ。だが必ずしもその性格は悪いことではない、太田とは違い人を簡単に殺傷できる危険人物が太田を本気で殺そうとしている……精神力では向こうに分があるのかもしれない。
(……彼ならこんな時どうする?)
覚えてはないが、自分を打ち倒して、さらに一年後に連続で2人もスタンド使いを撃退した中嶋を思う。彼ならこんな時どう考えてどう行動するかを
『何ニヤニヤしてんだ?てめえ、舐めてんだろ?……いいぜ!てめえの表情筋ズタズタに切り裂いて笑ってやるぜ!!』
ナイフを太田に向けてそう怒鳴るパンドラボックス。太田も内心の怯えを隠しながら、対峙をする。
「来い!」
3点リードと中黒どちらがいいですか?
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3点リード
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中黒