俺のスタンドが悩みの種なんだが   作:ガクランクン

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パンドラボックス④

 パンドラボックスと相対しながら、太田は思考を働かせる。

 

(敵の能力は空間を固定する力……ってところかな?)

 

 あの時の現象はスタンドの大半を固定されたことにより起きた現象だろう……だが、それが真実な場合かなり厄介でもあり逆に自分は有利だ。

 

 太田のミスティックアンティークは物に変形する力。複雑なものやエネルギーには変形ができず、変形するには自分が形を知ってる物に限定される……そしてスタンドという超常的な物にも、ある程度物理法則が適応されてしまうのだ……具体的にいうと大きいものを作るにはそれ相応にスタンドを出さなければならない。そして多くスタンドを出すということは、その分固定される面積が大きくなり、弱点を晒す可能性が出てくる

 

 しかしスタンドというのはある程度融通がきくものでもある。スタンドの一部分だけを顕現させる。ということも十分可能である……通常であれば、腕の部分だけなど、能力や格闘能力は大幅に下がってしまうが、太田に関してはそこまでのハンデではない。

 

 少ない部分でも小さいものなら変形させられるのが、ミスティックアンティークのメリットだ。

 

(今僕がやるべきことは、スタンドを倒すか、それとも本体の元に向かうかのどちらかだ)

 

 破壊力に優れないステータスと能力のパンドラボックスに殺傷能力を与えられたことはかなり厄介だが、その代わり遠距離型の弱点である本体の場所がバレてしまっている。もちろん姿はわからないし、声と見えた腕から成人男性ということしかわからずに逃げられるかもしれない。

 

 が、それはないと太田は思う。何故なら先ほど、小さい傷ながら目を負傷させた。それだけで動けないし、仮に逃げようとしても目を抑えようとしてる人間なんて怪しさしかない。それに場所だ。

 

 人通りの少ない路地裏、目撃者がおらず、助けを求めることは難しいが、その代わり人があまり通らないため、人だかりに乗じて逃げることは不可能だ。

 

 だが、当然それは敵も警戒している。しかもわざわざ自宅だと公言している。何か罠があるのではないか?それに豊富さんからこんなことを聞かされた。

 

『スタンドには力の強弱というものがあります。本体と近いほど精神力の供給が豊富になるのでしょうか?それは分かりませんが、とにかく近距離型というスタンドは純粋な力が強く、遠距離型は力が弱いです……私ですか?私は腕そのものに装着されてるので、まぁ中嶋さんのキャットハウスよりも強いですね……話が逸れました。その代わり注意してください。力の弱い遠距離型でも

 

本体との距離が近づくほど、近距離型ほどではないにしろ、力が増えていくものですから』

 

 と、いう話を

 

(多分本体の数メートル以内に入っても、格闘能力はキャットハウスには遠く及ばないだろう……でもそれは素の力の話ッ!向こうはナイフを持っているッ!)

 

 腕に巻いている包帯を、指でなぞる……まだ熱したものを中に突っ込まれたように熱く、痛い。それでも適切な治療を受ければ完治するレベルだ……無防備な時とは言え、本体が見えないところから刺された結果がこれなのだ。

 

 向こうのスタンドのサイズはかなり小さい。それこそ暗殺に徹されたら、マンションという密室内だとしたら……ゾッとした。

 

(やはり、真正面……とは言わずに、スタンドを倒してフィードバックで本体を再起不能にさせるッ!それしか道はないッ!)

 

 だが、先ほどのように向こうの能力もまともにわからない内に突っ込むような愚策はしない……かと言ってカウンターを狙おうにも食らったが最後だ。

 

(……でも、待てよ?)

 

 あの時、自分の体がほぼ固まったのは、自分のスタンドも固まったことによるフィードバックだ……つまり相手がスタンド使いだからのイレギュラー、普段の固定能力はせいぜい片手を固めるほど

 

 ────つまり?

 

 

『考え事は終わりかよォォォォォ!!!オリコーさんよォオ!』

 

 軽い傷だったのか、スタンドという存在なのだろうか、短時間で回復してナイフを振りかぶってきた。

 

(ッ!来たッ!……スピードはそこまでだが……ッ!)

 

 やはり右手に見える、暗い路地裏なのに、日光を反射して光るソレを見ると、体が一瞬動かなくなる。スタンド能力のせいではなく、恐怖心のせいで

 

(中嶋くんなら……こんな時には……詳細な能力を調べるッ!)

 

 中嶋くん、彼は自分の時も豊富さんの時も、ひたすら耐えて相手の能力について推理した。そうして勝ってきたのだ。彼は

 

 なら、どうするか?……あるじゃないか、自分にできて中嶋くんにはできない、確かめつつ、ある程度安全を確保できるかもしれない、方法が

 

「ミスティックッ!アンティークゥ!!サバイバルナイフだァァァ!!!」

 

 刺されてしまい、激痛で動かせない右手にスタンドを持たせる。左腕は、まだ取っておきたい。

 

 そうして、スタンドを右腕に持たせて、ものの数秒でサバイバルナイフに変形した。

 

(やはりなッ!太田の野郎のスタンドは物に変形する力!!……鍵に変形すれば空き巣し放題ってわけだッ!……だがぁ、くだらねえ使い方だなぁ、俺にナイフ刺されて頭に血が上ってんのかぁ?同じことで勝ってやるッ!っていうお前のくだらない考えが手に取るようにわかるぜぇ!!)

『便利なスタンドに似合わねえ本体だぜッ!ゴミくそに頭が回ってねえ!!』

 

 パンドラボックスは、自分の両腕……の下についている小さい両手の親指と人差し指で四角を作り、その中に太田の手を中に入れる。

 

 すると、ピタァ!というふうに振りかざしてガードしようとしてた腕が動かなくなった。

 

(俺のスタンドの能力は至って単純!……空間を固定する力ッ!…発動条件はシンプルッ!……画家が自分は画家ですよって周りに自慢するようにカッコつけてとるポーズ、フィンガーフレーム?って奴、アレをして中に入った物限定だがなぁ……だがッ!このスタンドの姿ッ!これがすげぇいい……ここの両腕もスタンド能力の対象なんだからよぉぉ〜!)

 

 このスタンドは爬虫類みたいな見た目……だが爬虫類そのものではない、このスタンドは合計で四つの腕を持つ。最も小さい方の腕は小さすぎるし、スタンドのパワーも合わさって、何も持つこともできない……だが、腕であることには違いないからだ。

 

(最もサイズ的に、デカい方よりも固定範囲は縮んじまうのが欠点だがな……)

 

 そう自身の弱点を考えながら、一瞬思考を加速させる。何かおかしいからだ。目の前のこいつは小心者で元小悪党……そして、今自身のスタンドに対して、またこりもせずにナイフを出すものか?……そんなに学習能力がない男なのか?

 

(何か、おかしい……何かッ!)

 

 何かやろうとしてる……それはわかる、だがそれが何かわからない。だったらごちゃごちゃ考えるよりも一直線に首を狙う。そうしてぶっ殺せば何も考える心配はないだろう。そう考えて、ナイフを振り翳した……だが

 

『……クソがッ!三下の小悪党如きがッ!俺を愚弄する気かッ!?』

 

 その違和感は、すぐに的中した。太田の足元からミスティック・アンティークがどんどん出てきた……銀色のゲルのような形で、これが本来のスタンドビジョンだろう。

 

(ナイフは、ブラフ!俺にスタンドの濁流を当てるのが本命かッ!……だが甘いんだよォォォォォ!!!)

 

『ナイフ、をォォォォォ!!上にィ!』

 

 投げる。その後に下の手でフィンガーフレームを行い、空間に固定する。

 

(固定時間は、5秒だ!これを片付けたら即ぶちこむ!!)

 

 空間固定の能力は本体が自由に固定時間を決めることができる。最大で30秒だ。

 

 そして下の腕と本来の腕の合計四つの腕を使い、ミスティック・アンティークを固定させる

 

「うぐぅ!!」

 

 太田の動きが止まる。スタンドのほとんどを攻撃に回して、その結果全て固定させられて、フィードバックにより行動不能となった

 

『勝ったッ!俺の……勝ちだッ!』

 

 向こうは30秒間も動くことはできない、なら自分が思う存分にナイフで刺して殺せる。最高の気分だ。最初に針で手痛い一撃食らった時は最低な気分だったが、今じゃあ明るく笑い飛ばせる出来事だ

 

「1つ……聞かせてくれないか」

 

 太田が、喋りかけた。

 

『……あぁ?』

 

 何か違和感を覚えるが……気のせいだと思うことにした。相手はもう守ることも逃げることも出来ない、自分のナイフに解体されて終わりの存在だ

 

(……いや待てよ、獲物解体(バラ)す前に会話するっていうのも悪かねえか?……普通ならそんなことしたら逃げられちまうが、スタンドさまさまだなぁ……)

 

 今は気分がいい、それに試したことのない試みを試すのもいいそう思い、聞き返した

 

『なんだよ、何が聞きてえんだよ?』

 

「君が、なぜそんなことをするのか……それについて、教えてくれ」

 

 なんだ、そんな簡単なことか……全く、テレビの専門家気取りか?……そんなこと聞いて何になる?

 

 この問答はただの現実逃避か、それとも死に際の好奇心か?いずれにせよ、心の片隅にあった警戒心は完全に消えた。

 

 太田の体は自身のスタンドで完全に動けなくさせている。時間稼ぎなら30秒以内に終わらせればいい、この問答内容も奴の能力と全くの無関係だろう。

 

『趣味だよ、趣味』

 

「……は?」

 

 目の前の太田が豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をするが、気にせずに話す、なぜなら今は自分の趣味思考を話すだけだ。異常に思われたいと言うわけでもない

 

『アメリカの……どっかの週でアナスイ?だったか?……なんか恋人をバラバラにした殺人鬼……アレ見た時よぉ〜、うげぇ。何がいいんだ?んな事して楽しいのかぁ?って思ってなぁ……でも運命って奴のおかげかな?俺はその足でペットショップに行った。インコ買ったんだよ、格安でさぁ……家に持ち帰ってケージ開けたんだよ……今にしてもらうと、俺はミスを犯した……ケージ開ける前に、ナイフ持ってくりゃあ良かったんだよ……驚いたよ、数千くらいのやっすい鳥公でもよぉ〜。ナイフみりゃあ自分が刺されるって!分かるんだぜ?……そっからは格闘戦よ、俺から逃げるインコをバラバラにぐちゃぐちゃにした。嘴とか足で抵抗されて傷だらけになったがヨォ……俺その時どう思ったと思う?質問に質問で返すようだけどよぉ〜』

 

「……数千円自分でドブに捨てた、じゃあないの?」

 

『……ちげぇんだよ、そうじゃあなかった。不思議とな?…なんつーかオスのところにきた。マジだぜ?これマジの話な?人体の不思議って奴……痛みなんて全く感じなかったなぁ。ナイフ越しに感じる肉を絶つ感覚ッ!骨を壊す感覚ッ!……ゾクゾクしたよ、あのアナスイって男もそれが好きだったのかな?幼少期から解体癖があったってニュースで聞いたからなぁ』

 

「そうか……」

 

『おいおいおい、なんだよせっかく人が教えてやったってのにそのテンションはよぉ〜』

 

 違和感

 

「……僕は、お前が洗脳されてこんなことを言ってると思ってた。けど違うようだな、お前は……元からそんな人間性なんだな」

 

『洗脳?人間性?……はっ!知らねえよ!!んなもん知らねえ!知らねえ!知らねえなあ!』

 

「だったら、こっちも遠慮はしなくて済む」

 

『……だっからさぁ、状況わかってるのぉ?正義感マンマンなのは伝わったけどさぁぁ……オメエは俺の……待て、なんで───喋れるんだ?お前』

 

 違和感の正体、太田が喋れる事。太田のスタンドが全て固定されてるのなら、当然口もフィードバックで固定されて、喋ることなんて不可能なはず

 

(どういうことだ!?コイツが出したのがスタンドの総量じゃねえってのか!?)

 

 考えられるとしたらそれだ。まだ半分程度しか出してなかった。それが答えか?

 

(……だが、だとしたらどんだけ巨大なスタンド……)

『あぁ!?』

 

 さらに信じられないことが起こった。太田が動いたのだ、全身ではなく、ナイフを持ってる右手以外を、体を器用に動かして、右手に体重をかけて、ドロップキックを繰り出してきた。

 

『……がへぇは?!』

 

 スタンドはスタンドでしか触れられないはず、しかし何故か当たった。

 

(何故?何故だ、あいつの能力は物に変形するスタンドじゃあねえ……そうか!!あの靴はスタンドに変形させた物を上書きしたんだ!!)

 

 スタンドを足元に出現させて、少しずつ靴を覆って、同じものに変形させた、そう理解した時には

 

 すでに眼前に迫っていた。先ほどからの腕を固定した時の持続時間はすでに過ぎていた

 

(足元が!……靴が!バネになってやがる!ホッピングみてえに加速してここまできたんだ!!)

 

 だが、とも思った。確かにここまではすごい、発想能力は完全に自分を上回りここまでやりやがった。

 

(だが、テメェは素人だよ!!ナイフ片手に突っ込むなんてよぉ!!)

 

 右手にナイフを持っていた。太田はまだ何か仕組んでると思ったが、囮に使ってるのが、さっきと同じナイフ。何か別のところから攻撃してくる……と思わせるのが作戦、実際はこのナイフで攻撃するのが作戦なのだろう。

 

『その右手の空間ごとォォォォォ!!固定するゥゥゥゥ!!!』

 

 再び能力を使い、固定する。

 

『俺の勝ちだ!!テメェの行いは、ただの無駄な悪あがき!!内臓ぶちまけて死ねええ!!』

 

 その振り下ろしたナイフの、自分の視界の片隅からこちらに向かってるものを確かに見た。

 

 それは、左手だった。無事な方の腕、何も持ってないし、何もついていない、ただの左腕

 

(ナイフに注目させて、こっそり伸ばしてきたのか……だが、こいつッ!トチ狂ったのか!?スタンドに触れられねえ左腕で、俺らぶん殴る魂胆か!?)

 

 どうするか、迷った。何か仕掛けているのなら、ガードするために能力を使い固定するしかない。だが、ただのヤケクソなら?それとも左腕に注目させるのが真の狙いなら?それとも固定させるのが作戦なのか?

 

 複数の考えが細かく駆け巡る。何が正解なのか、わからない……だが

 

(細かいことは考えねえ!直だ!直でぶち込む!!それだけだ!!それしかねえ!!)

 

 彼は囮かどうか、どうでもいいと思った。そんなことよりも趣味に走る。スタンド使いになって時間は短いが、それでも精神力、迷いなく行動することが、力になることを知っている。

 

 お互いの距離は数メートル切った。

 

 5メートル

 

 4メートル

 

 3メートル

 

 2メートル

 

 1メートル

 

 すでにセンチメートルの世界になった。残りお互いの距離はどちらがぶつかっても、おかしくない距離だ。先に当たったのは

 

 

『俺だッ!先にたどり着いたのは!!俺だッ!!残念だったなぁ!!先に!ゴールに辿り着いたのは!!お前じゃねえ!!俺だッ!一位にたどり着いたランナーの特権としてえ!!手前の臓物は全部バラバラにしてやるッ!!』

 

 パンドラボックスだ。手の長さよりも、スタンドエネルギーの差が2人の差を分けた。

 

 スタンド本体の狂気が乗り移ったように、笑い声を上げながらナイフを振り下ろす。

 

『ケヒャヒャヒャヒャ!!お前の内臓も変形するのかなぁ!?』

 

 太田は泣きもせずに、下を俯いている。何も言わない、だが刺せば無理矢理に叫ぶだろう。そう判断して

 

「お前の敗因は───」

 

 振り下ろしたナイフが、カキィン!と金属音を鳴り響かせて、折れた。

 

「観察力の無さ───だ」

 

 よく見ると、太田の右手首に巻いていた包帯がなくなってる、その事実に気づいたパンドラボックスの顔面に、拳が突き刺さり

 

 拳の一部分がパラパラとめくりだし、それが布に変形して、パンドラボックスを包み込んだ

 

「お前の、精神力はかなり凄かったけどな」

 

 シャツを捲ると、その下には防刃ベストから戻りかけているミスティックアンティークの姿があった。

 

(ふぅ……作戦がうまくいった。最初のナイフとその次の攻撃で僕のスタンドの大部分を使ったと誤認させられてよかった)

 

 手のひらで変形させていたナイフを元のスタンドに戻す。ただし大きいナイフを構成していたにしては、少なすぎる量だが

 

(ミスティック・アンティークは変形させられるスタンド、複雑なものは変形できないが、その代わり形だけそれっぽくできる。ペラッペラの中身がないナイフに、同じく中身のないミスティック・アンティークを使ったのがよかった)

 

 先ほど攻撃に使用した2つとも、中身なんて全くないハリボテだった。それこそ命中したら逆にこちらがダメージを負うほどに……その結果、向こうは自身のスタンドの大部分を固定できたと勘違いをした。実際には本当に一部分、まつ毛や髪の毛の一部程度だったので、簡単に走りながら抜けた。痛かったが

 

(その後はカウンターとして叩き込みたかったけど、向こうは遠隔操作型、失敗したら隠れて暗殺に動かれてしまうかもだったから……もう少し頭を働かせたんだよなぁ)

 

 その後は、服の下にスタンドを出現させて、それを纏わせて固く固定し、あたかもフィードバックを食らったかのように演出した。

 

 あとは走る際に、体の腹一箇所に集めさせて防刃ベストに変形させた……勿論これはヤマカンではなく、ちゃんと考えがあった。

 

(コイツは、信じられないが人を解体させるのが好きなようだ……それは今までの言動とさっきの“告白”からも分かった、だから次狙うのはお腹と思って、全部を集めたら正解した……我ながら恐ろしいことをするよ、本当に)

 

 ぶるりと身を震わせてから、自分の怪我をした右腕を見る。包帯が消えている。もちろんその包帯はミスティック・アンティークだ。それが意味することは

 

(スタンドに触れられるのはスタンドだけ、僕の右手のも止まったから、包帯から皮膚と同じ感触と見た目に変えて、僕の左腕に纏わせた)

 

 見た目はただの拳、だがその実態はスタンドを纏わせている擬似的な装着型のスタンドのようなものだ。

 

 これが、太田の作戦の全貌である……もっとも最初から全て考えてたわけではなく、途中からこうすればいいのでは?という思いつきだ。最初の時に相手の能力の発動条件を、冷静にみて、指を形作ると発動することにきずけて、そこからどんどん作戦を立てていったからだ。

 

『ちくしょう!……ちくしょう……!!テメェ!これで勝ったと思うなよ!!俺のことをこのまま包み込んで殺す気か!?それをやったらテメェも俺と同類になるぜ!!』

 

「何か、勘違いして無いかい?」

 

『……は?』

 

「君のスタンド能力も証明してたが、スタンドと本体の関係性は密接だ。スタンドが固定されれば、本体も固定される」

 

『待て……おい』

 

「スタンドに強い衝撃が加わった時、例えば小さいスタンドが振り回された時に、本体はどうなるのかな?」

 

『わ、悪かった。俺が……悪かった』

 

「……調べてみようか」

 

『やめてくれぇぇぇえええ!!!!』

 

 袋の中で喚き立てるパンドラボックスの言葉を無視して、包んであるミスティック・アンティークの外側から追加で纏わせ、さらに形を大きくした。見た目はブラックジャックのようになっている。最もこれで殴るのが目的では無い。

 

 パンドラボックスは、もうこの時点で脱出は不可能だ。パワーがないため、ここを引きちぎることもできない、空間固定したところで延命にしかならないし……袋の中もスタンドなのか、指辺りが包み込まれていて、これでは覗き込めない。ナイフも折れてるし落としてしまって手元にない。

 

 そんなパンドラボックスの入った袋を太田は片手で持ち、思いっきり

 

 振り回した。上下左右に激しく、更にスタンドで動かして衝撃を大きくさせるように

 

「ほげぇぇあぁぁぁ!?!」

 

 上から妙な男の声が聞こえてきた、見上げると金髪に髑髏のTシャツを着たガラの悪い男が落ちてきた。もちろんこんな摩訶不思議な現象、パンドラボックスの本体がこの男である何よりも証拠だ。

 

「お、落ちる!!落ちるぅゥゥゥゥ!!」

 

「お前がパンドラボックスの本体だな!?」

 

「お、俺が本体の柳川だぁぁぁ!!!お、落ちちまう!!」

 

 柳川と名乗った男は、そのまま自由落下している。このままではあと数秒で地面と激突するだろう。

 

「降伏するか?」

 

「するッ!しますッ!助けてくださいよぉぉ!!!」

 

「これ以上変なことしないか?」

 

「スタンドも奪われてる状況でできるはずないじゃあないですかぁぁぁ〜!!」

 

「……そう」

 

 太田は後ろを向いた。柳川に背を向けるように

 

「……じょ、冗談キツイですよぉ〜!!ねぇ!!太田さん!!このまま見捨てるんですか!?」

 

 太田は何も答えない。そして柳川が地面に激突する瞬間に

 

 すでに用意していたのか、四方八方からミスティック・アンティークが伸びて、柳川に対して、ネットに変形して止めた。

 

「……見捨てると思った?悪いけど、僕はこれでもかなり……あ」

 

 ネットの上を見ると、気を失ったのか、泡を吹いて倒れた柳沢がいた。

 

「……刺激、強すぎたかい?……この顔どこかで」

 

 この男、どこかで見たことがある顔だ。どこだったかな?……先ほど柳川と名乗ってた。

 

(有名人、だっけか?)

 

 嫌な予感がする。スマホを取り出して調べてみると

 

「……れ、連続殺人犯!?」

 

 現在指名手配されている柳川洋乃介という人物と分かった……かなり前から殺人を繰り返して、指名手配されてる今でも衝動的に殺人を犯している人物、と書かれてあった。

 

 つまり彼は、洗脳される前から危険人物だったのだ

 

「……あ、危なかったぁ……」

 

 思わず怪我をした右手ごと地面につき、へたり込む。まさか自分が殺人鬼と戦ってただなんて、想像もできないからだ。

 

 手が震える、痛みというより恐怖で……正直言って固定されるよりよりも相手が殺人鬼という事実に

 

(……と、兎に角。で、電話を)

 

 念のために、動かないように、柳川の上に乗る。電話先の相手はこの前連絡先を交換した豊富だ。

 

 

 

 

 

 その頃、豊富

 

 彼女は実は先程、中嶋から連絡が来て、オーソンの路地裏に来ていた。

 

「……これ。どっちが勝ったんですか?」

 

 そう呟くのも無理はない、何故なら路地裏には、清水をおぶって、一緒に気絶して倒れ込んでいる中嶋がいた。

 

 そう、実はあの後豊富に連絡してオーソン事務所に連れて行こうとしたら、スタンド能力で生み出したオオムラサキの操作を忘れてしまった。キャットハウスで生み出したスタンドは本体の中嶋の意思で操作することが可能だが、操作をしなかった場合、自律的に動き出す。

 

『ひゅ……』

 

 その一羽が中嶋にペタリ、と触れた。それにより耐えられなかった中嶋は気絶した。

 

「……まぁ連絡したから中嶋さんが勝ったんでしょうけどっと」

 

 ひょい、とスタンドと例の呼吸を使い2人を担ぎあげ、事務所に入り仮眠室に入れる。

 

「あとはスピードワゴン財団に連絡………ん?」

 

 太田から電話がかかってきた。

 

「太田さん、何があったんですか?」

 

『……い、今洗脳されたスタンド使いの殺人鬼を倒して拘束してるところ……』

 

「!?…えっと、最初からお願いします」

 

『あ、ごめん。説明不足だったね……今的なスタンド使いに襲われて倒して拘束してるんだけど、その人柳川っていう指名手配中の殺人犯だったんだよ……多分時期的に考えると洗脳される前からスタンド使いかなって』

 

「……中嶋さんといい、太田さんといい……スタンドバトル数回しかやってないんですよね」

 

『あはは、まぁ。うん……あ、後ちょっと右腕怪我しちゃって』

 

「それ最優先で言ってくださいよ!?……今すぐ財団に連絡して治療してもらうように言いますから」

 

『本当にありがとうね』

 

「いえいえ、これくらいは……ではこれで」

 

 そう言い、ぷつりと通話をやめた。次に連絡するのはスピードワゴン財団、スタンド使い2人と負傷者の太田を搬送するためにだ。

 

 だが、と豊富は考える

 

(スタンド使いとスタンド使いは惹かれ合う。とはいえ、ここまで連日に襲われる……つまり、洗脳のスタンド使いはこの町でスタンド使いを大量に増やしている……以前の動きからは考えられない……奴はスタンド使いを大量に増やすことはなかった、能力が成長して効率が上がった?……それとも八田町自体に“何か”特別なことがあるの?)

 

 自分の知らないところで何かが進行している気がして、恐ろしさを感じた。




スタンド名パンドラボックス
本体柳川洋乃介
破壊力DスピードD射程距離B精密動作性D持続力B成長性E

空間を固定する能力。
指でフレームを作るようにして、覗き込んだものを空間に固定する。この空間固定は、厳密には対象を固定してるのではなく、無色透明な箱に入れる。という方が正しいが。
固定時間は30秒がMAXだが、途中で能力を解除することも可能。
総じて妨害に秀でたスタンドだが攻撃能力に乏しいので、本体愛用のナイフを渡して攻撃させている

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