中嶋と太田の襲撃事件から、2週間後の八田高校オカルト部、放課後にて
「……と、いうことでオカルト部の定例会議を初めて行きたいと思います!」
ホワイトボードの隣に豊富がいる。どこから持ってきたのか赤いメガネをかけて、テレビの司会者とかがよく使っていそうな棒を片手に、彼女は意気揚々と言った。
中島は、いつ頃アレを用意したのかな?や定例会議なんて初めてはじ、ただ言いたかっただけでは?と言いたかったが、ここは“2人”に回すとして我慢することにした。
『そのメガネと棒、どこで買ったのよ、百均か何か?』
1人は綾瀬雫、佐川という人物のスタンドであり豊富の格好にツッコんだ。そしてもう1人は
「大体よぉ、もっとこう俺のことについて言わねえのか?……気絶から回復してんだぜ、こちとら」
冴島雄也、2週間前と少しの時、中嶋を出撃したスタンド使い、スタンド名はユアキラー。
例のスタンド使いを量産している洗脳のスタンド使いにより洗脳された人物は倒されると眠るように気を失うのだ。そして回復と共に洗脳状態が解除される。スピードワゴン財団はこの現象について、人間の肉体の極めて自然的な回復能力が原因としている。洗脳された時に傷つけられた“何か”を治す過程で力を使い気絶している、というのが彼らの提示した説だ。
人によってはいまだに眠り続けてないものもいるが、今回の冴島、そして佐川や太田というように短時間で回復する人間もいる。これに関しては仮説として、洗脳されていた期間が短いから回復にかかる時間も短くなっている。とスピードワゴン財団は考えている。
「それに関しては仕方ないよ、僕とかもそうだったんだし……インパクトがね」
佐川が少し不貞腐れてる冴島を慰める。
「んだよ、俺は二番煎じなのかよぉ」
「もう少し正確に言えば3番煎じですね、太田さんという大人のスタンド使いもいたので」
「なるほどなぁ……で、確か俺の後にお前と、太田さん?って人に襲いかかったのが」
「清水と柳川という殺人鬼だな」
と言ってから中嶋は、殺人鬼という単語が出てくる今の状況を見て、ああ本当に漫画やゲームみたいな展開だな、と思った。
「場合によっては清水って奴もこっちに合流するのかぁ……」
洗脳されたスタンド使いが回復した場合、財団は洗脳されてた時の出来事を全て不問として、二つの選択肢を提示する。一つ目は財団で保護されること、財団全面的なバックアップにより、前と変わらない生活を送ることを約束する。もう一つは財団に協力すること、自身のスタンド能力や地元の土地勘で洗脳のスタンド使いを追う。こちらでも財団のバックアップは勿論受けられるが、当然危険度は上がる。
冴島はこの二つの選択肢を提示された時、迷わず
『いいぜ、やってやるよ。協力、ここまで俺をコケにしてくれたんだ、ボコボコにしてやる!!』
と即答した。なおその後に
『……お。お前もやっぱり怒っ……ゆ、幽霊!?!?』
冴島の怒りの感情に、出てきたユアキラーが隣で手を置いてうんうん頷いていた姿に驚いたのはまた別の話。
「……まぁ、でも柳川ってヤローはむずいんじゃねえのか?」
その恥ずかしい過去を忘れるように、冴島は柳川について言及する。
「えぇ、まぁ……洗脳されてる時なら兎も角……時期的にシラフでやっていたようなので……」
「なんでそんなことわかるんだ?」
「洗脳のスタンド使いはそのスタンドの性質上、必ず事が派手になり隠すのは難しいです。ですが、彼が殺人鬼として動いていた当時は洗脳のスタンド使いの活動は確認できなかったから……まぁ自白剤とか使うので追々わかる事だと思いますが」
「ちょっと待て……え?ごめん待って」
中嶋は後半、というかほぼ最後に出てきたその物騒な単語に突っ込まざるおえなかった。
「自白剤?自白剤ってアレだよな?映画とかで使われるあの薬でいいんだよな?」
「はい、映画とかのアレですね。最も財団特製のは映画なんかのとは比べものにならないんですけど」
「怖っ!?」
『サラッと即肯定したんですけど!?』
豊富が否定もせずに、ケロりと肯定した事に全員恐怖した。スピードワゴン財団の認識がどんどん変わっていく、別の方向で、悪い意味で。大丈夫かな?明日から財団の単語聞くと変な顔にならないよな?と思ったのであった。
「……よし!うん!一旦この話やめよう!鳥肌立ってきた!」
ここで佐川が動いた。この状況を変えるために
「洗脳のスタンド使い、洗脳のスタンド使いって一々言いにくいよね?別の名前変えない?」
「あ!よし!そうだな!!」
その発言に冴島が食い付いた。自白剤のことを忘れたいために。
「豊富、その辺りいいのか?呼び方を勝手に決めて」
中嶋が豊富に聞く、彼女はクスリと笑い。
「別に問題はないですよ、あくまで通称なので、財団では英語の頭文字と数字をつけて呼んでいたので」
『自白剤の話の後だとその話も怖いのよ……』
「そうだな……まず俺たちはそいつのことを何も知らないからな」
「あぁ、洗脳された俺ですらどんな方法なのか一ミリも覚えてねえ……頭の中に霞がってレベルでもねぇ、ぽっかりだ。ぽっかりとした“穴”がある。その穴が洗脳された時の記憶なんだろうなって思ってる」
「うん、僕も同じだよ。洗脳された場所とかもかなり曖昧で、多分下校中の通学路なんだろうなって考えないとわからない」
(洗脳に加えて記憶忘却……いや、多分それ込みで一つの能力なんだろうな)
中嶋は改めて考えた。例のスタンド使いについて、あのスピードワゴン財団が、自白剤とかを投与も簡単にでき、更には情報統制やなんでもできるスピードワゴン財団ですら年齢、名前、性別さえも不明で、唯一存在してることだけがわかってる存在……だからこちらとしても奴の能力である、唯一わかってる洗脳で呼ぶしかない
(他にないのか?他に……何か)
ただの自白剤の恐怖を紛らわすだけの会話だったのに、スッカリと思考に没頭した中嶋、彼の思考は、豊富との出会った日にまで遡る。すでに目の前で繰り広げられているマシンガントークの如き応酬は見えても無いし聞こえてもない
『その前に、スタンド得る方法について説明しましょう』
(スタンド能力を、得る方法。生まれつき持ってるパターンと───)
───“矢に射抜かれたパターン”です。
(矢、スタンドの才能を引き出す物……だったな)
今でもその矢は眉唾としか思えない存在だ。スタンドというものを知った今でさえも、だが、それは存在と能力以外でそいつが持っていると確定されている物品
(なら、矢のスタンド使いか?いや。まだこれでも長いし呼びにくいな)
そこで豊富の言葉を思い出す。今度は今さっきの言葉だ
『別に問題はないですよ、あくまで通称なので、財団では英語の頭文字と数字をつけて呼んでいたので』
(通称だから、そりゃそうだ。正体不明だからな……なら)
よし。と考えて、思考を切り上げる。
「“矢の男”、なんていうのはどうだ?」
「……“矢”?……あぁ〜!例のスタンド使いを量産できるヤベーブツ!」
「ブツッて言うのやめてくれませんかねぇ、すっごい違法感が出てくるので」
「……でも、そこはいいとして、男ってまだ性別も分かってないのに」
「あくまでもこれは通称を決めるって話だ、実際のそいつがどうであれ問題はないと俺は思ってる」
『まぁ確かにそうね、あくまでそいつを表す言葉がアレばいいだけなんだし』
「俺は賛成、これ以上頭捻ってもいいの浮かばなさそーだしな」
「では反対もいないので、今後は矢の男と呼ぶ事にしましょう!」
「うっし、終わった終わった」
「じゃあ帰ろっか」
『そ、そうね』
といい足早に帰ろうとするみんな
「えぇではまた明……って何帰ろうとしてるんですか!?」
豊富もニコニコ笑っていたが、よく考えたらまだ肝心の目的が全く進んでいない事に気づき、ドアの前に仁王立ちした。スタンドも活用して
「……あ、定例会議か!」
「中嶋さんまで!?」
中嶋もあぁ、そんなこともあったな。という感じでポンッ!と手を置いた。
「……定例会議ってさっきのじゃあなかったのか」
「うん、でもよく考えたらさっきまでの会話全部違ったよね。僕たちが作り出した会話だったし」
『……確かに、そうね』
「そうでしょう!そうでしょう!」
と言う豊富。そして、震える手で(自分のスタンドのせいで)ホワイトボードに字を書いていく、カッカッカと
「というわけで、本日から!怪事件を解決していきたいと思います!というわけで最初の時間は!」
ゴクリ、と誰かが喉を鳴らす。そして書き終わった豊富が、ホワイトボードを書き終わると同時に、その文字を見せる。
「置き配泥棒です!」
デカデカと置き配泥棒と、ホワイトボードにも書かれていた。聞き間違えでは無いようだ。
『はい解散』
雫のその一言で、全員荷物を持って立ち上がった。
「待ってくださいよおお!!」
スタンドを使い、一番近くにいた中嶋の足を掴む、ぎりぎりと少し嫌な音がなる。
「いだだだだ!!?おまっ!せめてスタンドを解除しろ!折れるわ!」
万力の如き力にがっしりと足を掴まれて、流石に痛い中嶋。
「だってぇ!話を聞いてくださいよぉ!」
「いや話って言っても、これただの犯罪で警察の役目……掴むな掴むな!スタンド解除してくれ!!せめて!!」
「中嶋の言うとおりじゃあねえの?そりゃ確かに犯罪でもよぉ、そりゃあ警察がやるべきことじゃあねえのか?」
「“そこ”なんですよ、警察が動けない理由が……証拠が全くないから、警察は“動けない”のは」
その言葉に、帰ろうとしていた全員はピタリと止まった。警察が動けない?なぜ?
「証拠がない?それはどう言うことなの?……どんな犯罪にだって、いや犯罪だからこそ、多少“証拠”なりが存在するんじゃあないの?」
「……」
(太田さんの時だってそうだ。スタンド能力で巧妙に隠したとはいえ、足跡という証拠は出ていた……にもかかわらず証拠がない、だと?犯人特定に繋がらなかったとはいえ、証拠は出てきてた、どういうことだ?)
「これを見れば、私の言ってることが理解できると思います」
そういい、近くに置いていたノートパソコンを取り出した豊富
「これは財団が入手した、被害に遭われた家の監視カメラの映像です……では、再生しますね」
そういい、エンターキーを押して映像を再生する。時刻は7時を回っている。すでに辺りは暗くなっており、玄関の前に設置されている段ボール箱が設置されてるのが見える程度だ。そして、その数秒後に……段ボール箱が突如として消失した。もちろん周りに一通りもないし、車の走行音も聞こえなかった。
「き、えた?」
「完全に……な。マジの消失って感じだな、こりゃあ」
『消えた……そりゃ証拠も見つかるわけ無いわね』
三者三様の感想を漏らす。本当に不思議な現象を目の当たりにしたからだ。もしスタンドなんてものを知らなかったら、もしかしたら何かのトリックを疑ってるかもしれなかった
「豊富、一ついいか?」
「なんですか?中嶋さん」
「スタンドは、録画できるのか?」
「不可能ですね、実験したところ、成功例は無いとのことです」
「そうか……」
(鏡とかには映るってのはあの図書室の戦いで分かったが、録画、というか何かに映すことは不可能ってことか)
『……まぁ、ツーショットしてもダメだったから、そこは分かってたわよ』
「えっ!?……ツーショ!?」
冴島が、その言葉に反応した。あ、と雫も言葉を漏らした。そして慌てた様子で
『で、でもスタンドでやったとしてらどうやったの?スタンドが持ったりしても、宙に浮くように映るから、かなりおかしい映像になると思うし』
「まぁ、十中八九スタンド能力のせいですかね」
「宙に浮く云々も録画とかで試したのか?」
冴島が少し意地の悪い笑みを浮かべて聞いた。
『うっさい』
雫はそれを一蹴しつつ、今回の事件について考える。やっていることが置き配ということだから、かなり馬鹿らしく感じるが、その実態は物体が突如消失してるからだ。
(スタンド能力ってことは、やっぱり瞬間移動系?でも、どこに転移してるかわからないし、それに本当に盗んでるのかすらもわからない、消えているから……うーん。映像だけじゃどうにも)
「……かなりの怪事件ですよね?ね!」
「まぁ、そうだな……」
「でも、最初からものが消えてるとか、その映像見せればよかったんじゃない?」
『置き配泥棒だなんて言うからしょうもない事件だと思ったじゃない』
「うっ……そ、その節に関してはすいません」
みんなが乗り気になったことで、テンションが上がっていたが、みんなから総攻撃されて、完全に撃沈された豊富
「うぅ……ですが、ここで話してるよりも、まずは現場とかに行きませんか?事件現場の地域はすでに割れてます。複数件あるのですが、特定の場所でしかないので」
「ってこたぁ、本体もその辺りに住んでるってこったな」
「じゃあ、太田さんにメールして、今までの経緯について説明しよう!」
「だな!……つっても豊富ぃ……初手置き配とか言うなよ?」
「さ、流石に反省しましたよぉ!」
冴島の言葉に反論する豊富
「とはいえ、流石に学校や立ち話もなんですし、近くのカフェでしましょうか」
「それ経費で落ちるのか?」
「……落ちますけど、中嶋さん。意外と細かいんですね」
「……気にならないか?そういうのって」
3点リードと中黒どちらがいいですか?
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3点リード
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中黒