「あ゛ぁ、俺の青春終わった・・・」
全速力で学校に着き、プリントを見たところまでは良かったのだが流石に数十分程度の付け焼き刃じゃ全く歯が立たなかったのだ。前島は現在机の上でぐでぇとしている。
「まぁ、ドンマイ。小テスト一回で成績が決まるほどハードモードじゃないと思うぜ」
「お」
「お?」
「お前にはわからないだろうなぁッ!!ちらっと見たが、お前すっげぇ余裕だったじゃねえかッ!!」
「落ち着け、小テスト一回で成績は変わらんから」
机からガタンと身を乗り出し、前の席にいる中嶋に詰め寄る。それを中嶋は冷静に返す。ちなみに中嶋に対してフォローするがキャットハウスをカンニングに使ってはいない、純粋に勉強時間の差だ。
「ま、しゃあねぇ。この鬱憤は格ゲーで晴らすか」
「・・・落ち着くの速いな、ハメ技とか使うなよ?」
「使わねーっての、前やって対戦相手の不良に灰皿で頭かち割られそうになったしな」
「・・・・・・お前タフだな」
放課後、前島に言っていた通りにバイト先である“オーソン”へ行き、そしてスタッフルームに入りロッカーで制服へと着替える。
「お疲れ様です、店長」
着替えた後にこのオーソンの店長である“太田匠”に挨拶をする。
「ん?ああ・・・お疲れ様中嶋くん」
中嶋の顔を見たあと、数秒中嶋の顔を見たあとにぎこちなく挨拶を返した。その一連の流れを見て中嶋は内心こう考えた。
(やっぱ引きずっているよなぁ、あの時のこと・・・まぁ俺もだが)
何故太田が中嶋に対してぎこちない対応を取っているのかというと、話は1年前の夏にまで遡る。
八田夏祭り、八田町で開催される夏祭りで小規模とはいえ花火も打ち上がったりするそこそこ盛り上がる行事の1つである。中嶋も悪霊のことを忘れて毎年楽しみに参加している。
しかしこの日は予報が外れて雨が降り途中で中止になってしまったのである。出かける前に母親から「今日はお父さんは残業だし、私はこれから町内会の会議に出るから外に干してある洗濯物、妹と一緒に片付けてね」と言われていたことを思い出した。
中嶋は妹のメイにメールで連絡したが、友達の家で急遽雨宿りするから1人で頑張ってねーというメールと共に床の写真が送られて来た。
(ったく、勝手な奴だな・・・とはいえ、洗濯物を早く取り込まないとな・・・走るか)
こうして中嶋は1人で雨の中走って家に帰ったのだが、ある異変に気づく。
「はぁ・・・はぁ・・・流石に疲れ・・・ッ!」
(鍵が、空いている?)
扉に鍵がかかっているはずだから開けるために鍵を使おうとしたら、既に扉は開いていた。
(ば、馬鹿な。扉の鍵は出掛ける前に何回も確認したはず・・・家族が帰って・・・いやそれならそうとメールが来るはずだッ!)
その時脳内に、最近テレビで見たニュースが流れた。
(まさか、俺の家に連続空き巣犯が現れたのか!?)
連続空き巣事件、最近この辺りを騒がしている事件で
指紋や頭髪等のものは現場に残されておらず、唯一“足跡”は残されているものの、犯人につながる手がかりにはなっていない怪事件の一種である。
(っ!何か物音がしたッ!?)
家の中に物音がした後、足音が聞こえて来た。その足音はコツコツと、こちらに向かって大きくなってくる
(こっちに来ているのかッ!?不味い!)
咄嗟に庭に置いてある大きめのガーデン・ノームの後ろにある茂みに隠れる。最近手入れしていなかったおかげで中嶋の体を隠してくれた。
その直後に扉からのっそりと現れたのは中嶋よりも背丈の高い人物である。体格から察するに性別は男、全身黒ずくめでマスクをつけているが目立った印象がない、恐らく街中ですれ違ってもそのまま通り過ぎるだろう。
「厄介だな、ほんとこの大雨じゃあ家の連中が帰って来てしまうな、何が降水確率0%だ。あのキャスターめお前の知能指数の間違いじゃあないのか?」
ボソボソと呟いて庭を歩き外へ向かおうとする、しかし途中でくるりと翻した。
(ま、まさかバレたか・・・!!)
「おっとと、意味はないと思うが念のため扉を閉めておかなくちゃあ。“ミスティック・アンティーク”扉を閉めろ」
空中にそう語りかけると、男の足元から液状のナニカが溢れ出した。そしてその一部が触手のように動くと鍵穴に入り込み、ガチャリと音がした。
(こ、こいつも・・・悪霊をッ!)
あの液状の物体、確証はないが己のキャットハウスと同じ存在と理解できた。思わず叫びそうになったが、口を押さえて我慢した、しかしその時に体勢を変えていたのがいけなかった、足元に落ちている枝に体重をかけてしまい。バキリと大雨の中でもハッキリと聞こえた。
(しまったッ!枝の音がッ!)
「ムッ!誰だ!そこにいるのか!」
自分のある茂みに対して大声を出した。もう場所はバレている、覚悟を決めるしかない。茂みから顔を出してから体を外に出す、その時についていた葉っぱも落として
「ほう、もう帰ってきたのか可哀想に」
「可哀想?・・・・・・どういう意味だ」
「なぜならお前は今から自分がなぜ死ぬのかわからないまま死ぬからだ僕の“スタンド”ミスティック・アンティークでね」
(スタンド?どういう意味だ?)
「あぁ、その足元の銀色のゲルか?」
スタンドという言葉に対して疑問を持ちながらも、挑発をする。せめて自分と奴が同程度の存在だとアピールするために
「ミスティック・アンティーク、だ!2度と間違えるなよ!小僧・・・ハッ!僕のスタンドが見えるということは・・・」
(スタンド、多分俺のキャットハウスやミスティックなんちゃらみたいな物の総称のようなものか!)
「キャットハウス!」
自身も悪霊、否スタンドを出す。すると空き巣は目を見開き驚いた。
「貴様もスタンド使いか!」
自身の隣に立たしたキャットハウスを明確に視認している反応だ。中嶋の隣を見て驚いている。
(今までの流れから察するに、この悪霊・・・じゃない、スタンドを扱う奴らのことをスタンド使いって呼ぶのか?そして俺のキャットハウスを見てそう判断したってことは、スタンド使い同士はスタンドを認識できる・・・のか?材料が少なすぎて分からん)
空き巣犯が家に入ったこと、空き巣犯が悪霊を持っていたこと、悪霊についての固有名詞などなど、さまざまな事態が重なりあっていたが中嶋はその状況下でも、いやその状況下により冷静に頭を働かせていた。
「まさか雨が突然降り出すだけじゃあなく、住人がスタンド使いとはなぁ〜。本当に運が悪いぃぃ〜」
(・・・この男、さっきから何かおかしい。スタンドのことじゃあなく、立ち振る舞いというか、冷静さというか理性がない)
まるで学校の授業で見た薬物防止教室のビデオのお手本を見ているような錯乱ぶり、理性がないように感じる。会話ができているようでできてない印象を中嶋にもたらした。
「ぶっ殺してやるッ!!」
先ほどの扉を閉める時のように、触手のように動き男の手に触れると細長く変形して大ぶりのバットになった。
「迎撃しろキャットハウスッ!」
この悪霊のことは昔から調べていた。パワーは大人の男性ほどだがスピードにはかなりの自信があり拳が分散したと錯覚するほどだ。本来ならコイツの力は借りたくないが、流石に命の危険だ。しのごの言ってる暇はない。
キャットハウスが中嶋の命令に従い、男のナイフを交わして鳩尾に拳を叩き込もうとしていた。
「甘い!甘いんだよぉぉぉッ!!」
キャットハウスの目の前から男が消えた。いや少し離れた位置にいた中嶋は何が起こったのかわかった。
その非現実な光景に頭が動かずに硬直していると、中嶋の世界が回転した。いや回転したのではない男の手に持っていたバットのフルスイングが顔に命中して吹っ飛んだのだ。
「ガハッ・・・・・・ゲホッ!ゲホッ!」
口の中に温かい物が溢れた。吐き出すとそれは血だった。今の衝撃で口の中が切れたのだろう。ダラダラと溢れ出る
「ハハッモロじゃん。つーかさっきから能力使ってねーしスタンド初心者か?」
(能、力?どういうことだ?さっきから俺はスタンドを使っているぞ?・・・いや、もしかして)
「んじゃ、次はお腹「変形だ」・・・あ?」
バットを片手に笑っていた男だったが、中嶋の言葉に遮られて真顔になった。
のっそりと中嶋は起き上がり殴られた箇所の頬をさすりながら続ける。
「お前の能力だよ、変形さしたんだろ?鍵穴に鍵を変形させたスタンドを突っ込ませて開けたんだ。そりゃピッキング痕残らないよな、さっきのワイヤーアクションじみた動きもスタンドを空中に浮かせて移動させたんだな。
ってか足跡も誤魔化すために靴の上から別の靴変形させているのか?」
ありとあらゆるものに変形させる力、それが目の前の空き巣の能力だ。ただ鍵をさして開けるだけだからピッキング等の痕跡は残らない。
「あ、あぁ!そうさッ!僕のスタンド能力は変形する能力ッ!・・・だが、それがどうした?単純な能力見抜いたところで何も変わらねーだろッ!!」
そう空き巣の言う通り、よく見ていれば分かるほど単純な能力。だが中嶋には必要だった。1つは時間稼ぎのため、もう1つは確信するため
(スタンドに、固有の能力があるのか・・・スタンドそのものが超能力みたいなもので分からなかった・・・)
スタンドに能力があるのかどうか、それを知りそして能力を発動させるための時間が欲しかった。空き巣からの答えが聞こえた段階で既に命令した。
(キャットハウスよ!能力を使え!!)
何か発動すればいい、倒せなくても警察を呼ぶ時間さえあれば、空き巣の証拠はないが自分の家のものが奴から見つかれば問題はない。
だが誤算は2つあった。
「クソッ!舐めたクソガキめッ!これはすごく疲れるがお前を殺せると思うと屁でもねぇぜ!!」
足元のミスティック・アンティークと変形させていたバットが一斉に太田の手元に移動して変形する。大雨の中での微かな月光でも綺麗に反射する、それは
「お、斧ッ!?」
当たれば当然バットよりも威力の高いそれを見て、慌ててキャットハウスに受け止めるように命令しようとするが
「な、何やってるんだ!キャットハウスッ!何呑気に土を食べているんだッ!」
キャットハウスは四つん這いになり、一心不乱に庭の土を食べていた。
「ハハッお前に似て意地汚ねぇスタンドだなぁ!」
そういい空き巣は斧を中嶋の脳天目掛けて振りかぶる。
ブ〜ンブ〜ンブ〜ンガシッガシッガシッ
しかし何か妙な音が聞こえて来てすんでのところで止める。
「なんだぁ?この目障りな音はぁ、気味が悪い」
「馬鹿な」
「ん?」
「そんなはずはない、いや嘘だ」
「お、おい?どうした?」
先程までムカつくほど冷静に物事を考えていた中嶋の顔色が悪くない震えていた。敵とはいえその急変に思わず声をかけてしまう。
「なんで、何でお前の中から羽音が聞こえてるんだッ!!」
そう叫ぶと同時に妙な音の出ところであるキャットハウスの腹がグパァと開き中から大量の虫とネズミの大群が現れた・・・
「「ぎゃーーーー!!!!」」
「ッウプ」
中嶋は去年の夏の時のことを思い出して、顔を真っ青に口を押さえた。
「だ、大丈夫かい!?気分が悪いのかい!?ビニールいるかい!?」
その様子を見た太田は即座に中嶋の背中をさすり、ビニールを口元に渡した。
あの後気絶した2人は同じタイミングで目を覚ましたが、起きた空き巣の様子がおかしく、不審に思った中嶋の質問により幾つか分かった。
①気づいたらこんなところに倒れていて、何をやったのか覚えていないこと
② ミスティック・アンティークは元々持っていたわけではないこと
これらの状況から中嶋は“洗脳に近い能力を持ったスタンド使いによって洗脳されて犯罪行為を行なっていたのでは?”と結論を付けた。
最初は空き巣犯の太田が嘘をついているのでは?と疑ったが、自身のスタンドを見てパニックに陥っていたため嘘ではないと分かった。
ちなみに自分のやったことのせいで中嶋に深い罪悪感を覚えており、ちょっとギガシャクした態度をとってしまっているのである。
「いや、すみませ・・・オエッ」
「な、中嶋くーん!!」
あの一件以降中嶋のキャットハウス嫌いは指数関数的に増加したのでしたとさ、ちゃんちゃん
中嶋春人:太田店長のことに関しては別に怒ってない、洗脳するスタンド使いが全部悪いと思っているから。それはそれとしてキャットハウスのことがすっっっごい嫌いになった。
太田匠:中嶋がすごい人ができていて帰って罪悪感が半端ない、洗脳された時の記憶はほとんどなく“スタンド”や“スタンド使い”の言葉についても覚えておらず逆に教えてもらった。洗脳解除後に自分のスタンドを見たら驚いた
本体 中嶋春人
キャットハウス 近距離型
破壊力C スピードA 射程距離D 持続力B 精密動作性C 成長性A
土や水を食べたり飲んだりすることで、虫やネズミに変換して腹から出す能力。自然物に近い方が変換しやすく、生物は食べられない。
変換できる虫は本体の知識に左右されて一般人に見える。
また操作もできるが、使ったが最後本体が気絶するためあんま意味ない(気絶する前にある程度操作できる)
能力を使った後はしばらくニュースになり専門家が議論しまくって今では立派な怪談に数えられた。
本体 太田匠
スタンド名ミスティック・アンティーク 遠隔操作型
破壊力DスピードD射程距離C持続力A 精密動作性A 成長性D
あらゆるものに変形する能力
変形できるものはナイフやバックパックといった小さくて形状が簡単なものなら性質すらも変形する。武器に変形した場合は、使い手のパワー+ミスティック・アンティークのパワーが加算される。
複雑なものは本体がその仕組みを理解していないと変形できないが、ガワだけなら可能
変形したものは一般人にも見えず破壊された場合はフィードバックされる。
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