「あー、しんどい」
まだ学校に登校してから1時間めの休み時間の途中だ。だが、誰に聞かせるまでもなく中嶋は心底だるそうにそう呟いた。
帰った後は大変だった。まぁまぁボロボロだったし、学ランも汚して、予備のものがあったからクリーニングに出せたものの、無かったら悲惨なことになっていた。なんとか親の追求を交わして眠りにつき翌朝になって体に違和感を覚えた。
簡単に言えば、筋肉痛になっていた。昨日帰宅部である自分とは思えないほど吹き飛ばされたり全速力で走ったりしたせいで、翌日に響いてしまったのだ。今日は体育がありかなり憂鬱である。
「おーすっ!元気ねぇなぁ、どうした?」
「おぉ、前島か。昨日ちょっと派手に動いたせいで、筋肉痛でこの通りダウンしてる。日頃から動かしてなかったのが悪かったんだろうな・・・体育が憂鬱だ」
「おっ、じゃあ俺がお前の代わりに出ようか?・・・2人合わせて前嶋!みたいな感じでさ!」
「ありがたい、頼んだ。任せる」
「OK、俺のボケをスルーするどころか間に受けてる。こりゃかなり重症だ、なんか飲みもんでもいるか?」
「・・・じゃあ桃ジュースで」
「りょーかい、桃な、桃桃〜」
そう言い鼻歌を歌いながら、教室の外へ出ようとするが、扉に手を当てると同時に扉が勢いよく開いた。
「うわおっと!?」
勢いよく開いたため、そのことに驚いて倒れそうになるが、前から手が伸びて手を掴んで、倒れるのを防いだ。
「わっ!ごめんなさい、思ったよりも立て付けが良すぎて」
その声を聞いて、思わず中嶋は驚いた。何故ならその声の主人は豊富だったからだ。
(豊富?・・・何しにきた?)
何をしようとしているのか、気になった中嶋はチラリと後ろを振り向いた。
「・・・それで、怪我とかは?」
「あぁ、いやいやアンタのおかげで怪我してねーよ。アリガトな」
(この子、昨日廊下ですれ違った子じゃね!?・・・運が俺に乗ってきたか!?しゃあ!アピールチャアンス!さりげなく紳士ポイント稼ぐかなぁ〜)
「あぁ、ところでさ!アンタ他クラスだろ?誰かに用があるんだ?」
「えぇ、そうなんですよ。中嶋さんに用があってきました」
「へぇ、中嶋にかぁ。オッケー今呼ぶぜ」
(・・・アイツに用ね、いつの間にこんなかわい子ちゃんと?やるなァ───)
「中嶋〜!なんか呼んでる子がいるぜー!」
(まぁ、やっぱ俺かな)
昨日何かやろうとしていたのは知っていたので、おそらくはそれ関係だろう。ゆっくりと慎重に立ち上がり、少しもたついた動きで、扉の前まで行く。
「(お前、やるなぁ───?)」
「(・・・なんの話だ?)」
「(またまた、とぼけちゃってさッ!・・・ま、部外者は早々にさるぜ)」
斜め上の勘違いをしたままの前島はそう言って、足早に去っていった。
「なんなんだ?アイツは・・・?」
「中嶋さんの知り合いですか?」
「あぁ、この学校で数少ない俺の親友だよ」
「へぇ、いい人そうでしたね・・・あ、そうそう。それで来たようなんですけど、確か今日ってバイトないんですよね?」
「確かにないが・・・なんでそんなことを?」
「太田さんに確認しました。それで今日の放課後にHR棟の旧英語準備室にきてください。“例のアレ”についてです」
「!・・・分かった。旧英語準備室だな?」
アレとは件のスタンド使いの事であると、中嶋は察して少し冷や汗を流して答えた。
「はい!・・・それと学ランの件なんですけど、後で弁償しますね?それじゃッ!」
「え、あっちょ・・・速・・・」
後半のセリフを一気に捲し立てて、中嶋に何も答えさせる前に走っていった豊富の後ろ姿に何もできずに呆然と立ち尽くすしかなかった。
「しかし旧英語準備室・・・ね。少し遠いな」
コツコツと中履きの足跡を廊下に響かせながら、中嶋はキョロキョロと辺りを見渡しながら、歩いていた。彼の通う八田高校は少し前、新入生の入学式の前に大幅な改装が行われた。
そのせいで様々な教室が移動して、中にはそのまま使われなくなった場所がある。その一つが旧英語準備室、元々他の教室からも遠くアクセスが悪かったため、別の場所に変わった。
つまり今向かっている場所はただでさえ遠い上に何もない空き教室である。生徒はおろか教師でさえあまり近づかない場所、内緒話をするにはうってつけだ。
「ここ・・・だよな?」
中嶋もこの辺りに来ていなかったため、記憶も怪しかったし、プレートもすでに外されて判別は付かなかったが、まぁ開けて確かめればいいかと結論を出して、ガラリと扉を開けた。
直後にパンッパンッという音が聞こえてきて、驚いて後方に飛んだ。そうして硬直していると、教室の椅子に座っていた佐川が椅子から立ち上がり中嶋のところに来た。
「あっ!ごめん・・・驚かしちゃって」
「あ、あぁ。大丈夫だ・・・それより手に持ってるそれは、クラッカーか?」
佐川がさして出してきた手とは逆の手に持っているものを見て呟く。つまり先ほどの音の正体はこれだったのだ。
「ごめんね、豊富さんが“せっかくですし、中嶋さんにサプライズ!とか、どうですか?”って、クラッカーとか人数分用意しててね」
「なるほどね・・・」
「サプライズ〜大失敗でしたね・・・」
『・・・まぁそこで立ってるのもアレだし、さっさと入ったら』
「・・・それもそうだな」
綾瀬の言う通り、いつまでも廊下に突っ立ってるのも変なので、中島は教室に入った。教室内は机を会議用テーブルのように並べられており、中嶋はその中で1番近い席に座った。
「じゃあ中嶋さんも来たことですし、これからの私達の部活について話しましょうか!」
「・・・・・・私達の部活?例のスタンド使いについての話じゃないのか?」
「まぁまぁ、話は最後まで聞いてくださいよ。まず中嶋さんのいった通り、この町のどこかに、そいつが潜んでおり今もどこかでスタンド使いを増やしています」
「何が目的かは分からないけどな」
「洗脳されたスタンド使いの特徴としましては、欲望のままに行動することが多いんです。そして与えられたスタンド能力で悪さをする。一般人にはわかりませんが、それでもどこかで違和感や証拠を残してしまう」
「・・・確かにな」
一年前の太田も、ピッキング痕のない謎の空き巣として一躍テレビで有名だった。ついでに中嶋のスタンド能力も暫くはテレビでさまざまなタレント、専門家が議論を交わしていたほどだ。結局誰も犯人には辿り着かなかったが
「つまり“怪事件”になるんです、私達の当面の目的はそんな事件を起こしているスタンド使いを見つけて倒して洗脳を解くことです」
「なるほどね」
「私の“組織”の力を使って、情報を集めますがやっぱり現場に足を運んだほうが早いこともあります。しかしその場合は一般の人から怪しまれる場合がある。そこで“そういう”部活なら、怪しまれないと思ったんです。
例えば“あーなんか変なことやってるけど、まぁそういうものかぁ”って、そこで表向きはオカルト部として登録することにしました。すでに学校関係者には伝えています」
『・・・オカルト部で誤魔化せるかどうかわからないけれどもね』
「ま、まぁまぁいいじゃないですか。こうゆうのは形が大事ですし」
「・・・あぁ、だから昨日俺に対して部活入ってるのかどうか聞いたのね」
「そうなんですよ!・・・入っていたら兼部って事でこっちは幽霊部員とする予定でしたが・・・ひょっとしてご迷惑でしたか?」
「全然。これからよろしくな皆んな」
「こちらこそ!」「よろしくお願いします!」『よろしくね』
「じゃあ今日は、部活結成で終わりって事で、今後は組織から情報があったり、何か違和感があったらメールで・・・いや、この際グループ作りません?」
確かに個別でメッセージを送るよりも、全員で送り合えた方が便利だし、もしもと言う時のためにもなる
「分かった。そうしよう」
そうしてスマホを豊富に渡して、数秒後には設定が終わり返される。スマホの画面に映っているグループ名には“オカルトの集い”と書かれていた。
「何だこの名前、そして何だこのアイコン」
しかもアイコンも血まみれのおっさんの顔面になっていた、ちょっと怖い
「いやなんか、オカルト部らしいかなぁって」
『怪しすぎるわよ、コレ』
「うえっ、狙いすぎましたかねぇ。じゃあこれはあとで直しておきます」
「その辺に関しては任せた・・・じゃ、俺はこれで」
「中嶋さん、さようなら!」
佐川と綾瀬の言葉に返しながら、中島は足を進める。いく先は下駄箱ではなく図書室だ。これからの戦いは激しくなるはずだ、だから少しでも虫に対しての知識を増やしつつ、嫌悪感を緩和したいと考えたからだ。
「・・・アレが中嶋ね、見たところ帰るわけじゃあねぇし、つけるか」
その走る中嶋の後ろにはくつくつと笑い、そのまま彼に見つからないように静かについてくる影がいた。
部活紹介
オカルト部
部室はホームルーム棟にある今は使われていない旧英語準備室にひっそりと佇む教室、徒歩十分はかかる。
活動内容は八田学校や八田町を中心とした怪事件やオカルトを追う。
時々部員が見えない誰かと喋っているという噂があるらしい。
部長は中嶋で副部長は豊富らしい
3点リードと中黒どちらがいいですか?
-
3点リード
-
中黒