俺のスタンドが悩みの種なんだが   作:ガクランクン

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ユアキラー

 現在、中嶋は

 

 「うっぷ・・・おえぇ・・・」

 

 図書室に置かれている昆虫図鑑を読みながら自身の内なる嫌悪感と吐き気と格闘していた。少し前まで頑張るぞと内心意気込んでいたのはいいが、いざ本を開くとついえづいてしまう。

 特にページを開くとデカデカと出てくるカマキリの写真に何度絶叫しそうになったことか、また写真とはいえ昆虫に触れたくないからかなり妙な指の置き方をしながら本を読んでいて攣りそうで苦しい。

 

(かなりしんどいな・・・クソッ昆虫初心者にも安心に読めるような絵本とか置いておけよ。今度アンケートにでも書き込んでおくか?)

 

 ストレスでイライラしていて思考が妙な方向に進んでいた中嶋、しかしコツコツという足音と

 

「図書室ってよォー、こう静寂な雰囲気っつゥーか、音を立てていけませんって強制してるのが良くねぇよなァ・・・それに漫画本とか置いてねぇのとか全然ダメだ。漫画も立派な本だろォ〜?なんで小説は良くて漫画はダメなんだよォ〜?文字に絵がついてるだけだろ〜?」

 

 独り言にしては大きい声で思考が切り替わる。

 

(なんだ、コイツは?)

 

 中島は後ろを振り向き、こちらに近づいて来る男を見て警戒する。何故なら場所が場所だからだ。

 

 この図書室は2階建ての建物、1階は有名ところの小説やらが置かれており多くの学生が利用するのがそこ。

 

 対して現在中嶋がいる2階はトンデモ本や稀覯本などのマニアックなジャンルの本が置かれており、1階に比べて利用者も清掃の行き届けも劣っている階層だ。

 

 中島は他の人の迷惑にならないために、一回に置かれてあった図鑑をわざわざ2階に持ってきて読んでいるのだ。

 

 対して目の前の男は?男の外見は黒髪のオールバックに耳にはピアスを付けており、大きく開いた口にダラリと立った猫背が特徴的だ。

 

 お世辞にもマニアックな本が目的には見えないかなり怪しい男、だがそんな男は中嶋の目線も気にせずに話し続ける。

 

「でも何故か小学生の時はよォー。“デルトラクエスト”とかそう言うのはちゃんと読んでいたよなァー。なんでここにはないんだろうなァー?アレだったら俺もタノシク読めるんだけどナァー」

 

 口を大きく開けて、上を向くが目だけはこちらを向いている。このキケンな感じは中嶋には覚えがあった。相手の出方を見ていつでも回避できるようにしながら、口を開く

 

「だったらリクエストか何かで言えばいいじゃあないか。今度俺も絵本の図鑑をリクエストする予定だからな」

 

「そうか、そうかッ!リクエスト!その手があったか!・・・ありがとヨォー!テメェぶっ殺した後にやるゼッ!ユアキラーッ!」

 

「ッ!」

 

 一瞬にして激情した男の体が一瞬ぶれて現れる像、スタンドが現れる。全身甲冑をつけた鎧姿なのに、何故か目にサングラスをかけているどことなくチグハグさを感じるスタンドだ。

 

 スタンド、ユアキラーが拳を振り上げてそのまま振り下ろす、力ずくのただの拳だ。だがこの拳を受けるのはまずいと判断した中嶋は椅子を立ち上がらずに、横に重心を置いて椅子ごと倒して避ける。

 

 倒れる時にユアキラーの中嶋に当たるはずだった拳の行方が見えた。拳は空振り、中嶋がいた机に命中する。すると発泡スチロールを割るかのように、拳は簡単に机を破壊しながら、床にまで到達した。更に床には大きくをひび割れが起きた。

 

(このパワー間違いない、典型的な近距離タイプだ。だがスピードは遅いみたいだ)

 

 今の破壊力を見てそう判断する。何も能力を使わない素の力でこの威力、もし自身のキャットハウスと戦わせたら確実に敗北するだろう。

 

(俺と同じく遠くまで行かない、射程距離は2メートルから1メートルほどだな・・・まだ相手の能力も分からない。迂闊に出れないな)

 

 どんな能力を持っているのかを推察する。拳に当てたものに発動するタイプの能力なのか、それとも中嶋のようなタイプなのかを

 

(まずは・・・これで!)

 

 キャットハウスの手だけを自身の体で遮るように後方に出し、本棚から幾らか本を拝借する。豊富の時と同じく投擲する作戦だ、豊富の時とは違いこちらは分厚い本たちだ。

 

 いつ投げるかタイミングを測っていたら、ドタドタと足音がして階段から誰かが上がって来た。

 

「ちょっとちょっと!ちょっとッ!」

 

 怒った顔をしてこちらに詰め寄ってくる顔に中島は見覚えがあった。彼女はこの図書室の使者さんだ。恐らくは今の一連の行動を不審に思いここに来たのだろう。彼女は中嶋に対し大声で怒鳴り始めた。

 

「困るわよッ!さっきからドタバタドタバタ暴れて!ここには貴重な本が置かれているのよッ!誰も知らないような本がねッ!・・・なっ!机が壊れているじゃないのォ〜!」

 

「いや、その・・・これは」

 

 何かいい感じの言い訳を考えようとするが、中嶋が何かを言う前に司書が更に大声で騒ぐ

 

「いい年した高校生たちがッ!プロレスごっこでもしてたって言うの?・・・ふざけるな!・・・・・・アンタッ!よく見たら本をたくさん持ってて何に使う気?読む気じゃあ無いわよねッ!まさか・・・」

 

 そのままヒートアップしていき完全に場を支配しようとしたが、男が彼女に割って入っていった。

 

「マァマァ待て待て、落ち着けよ婆さん」

 

「ば・・・婆さん!?アンタ先生に向かって「落ち着かないんだったら俺が眠らせてやるぜッ!」」

 

 男は前面にユアキラーを出現させる。ユアキラーはそのまま思いっきり拳を後ろに引く。司書とユアキラーの距離は数メートルほど、先ほどの攻撃から察するにユアキラーの射程距離外だ。殴ったところで司書には当たらない・・・だが、こうして司書が男に対して怒鳴っている最中でもユアキラーはずっと拳を引いたままだ。

 

(何か不味い!)

「キャットハウスッ!司書さんを引っ張れ!」

 

「え?キャア!」

 

「ユアキラーッ!やれぇ!」

 

 持っていた全ての本を落として、司書の手をキャットハウスで引っ張り、こちらに引き寄せる。その瞬間先ほどまで司書がいた背後の本棚が壊れた。

 

「な、何が起こって・・・うっ」

 

 キャットハウスで首元を攻撃して気絶させた。司書はそのまま倒れ、中嶋は素早く安全な場所へ運ぶ。

 

(これでよし・・・だが、奴の能力は“空気をとばす能力”?“不可視の拳”?どっちだ?・・・いや、どっちにしても遠距離への攻撃手段を持っているッ!まずいな)

 

「今のを避けるタァやるなぁ・・・俺の名前は冴島雄也だ。テメェぶち殺す男の名前だ、覚えとけ・・・そして、それがオオタをやったスタンドか・・・おもしれぇ!どっちが上か試してやるッ!」

 

「・・・太田?」

 

 男の口から溢れた名前に中嶋は硬直した。太田といえば自身のバイトするコンビニの店長しかいない、何故奴は太田を知っている?そんなことを考えたが再びユアキラーが拳を引き、正体不明の攻撃が襲って来る。

 

「っ!」

 

 素早く別の部屋に移動して斜線をきる。幸いなことにこの2階は田の字型のような作りになっているため逃げるのは容易だった。

 

「ったくめんどくせぇ」

 

 隣の部屋からぼやきが聞こえて来て、足音的に歩いて来る。それは中嶋としても好都合だった。作り上げる時間が確保できたから

 

「・・・あぁ?舐めてんのか?」

 

 冴島は目に入って来た“それ”を見てわかりやすく不機嫌になった。入り口から離れた場所でいくつかの机を倒して、そして本棚にあった分厚い本を積み上げてバリゲートを作り上げていた。

 

「ったく、ガッカリだぜ。空き巣野郎とはいえ太田を倒した奴がこんなしょっぱぇこと考えるとはな。俺のユアキラーのパワー忘れたのか?」

(アイツはさっき本を持っていた。多分俺に投げる用のものだったんだろーナァ。アイツのは典型的な近距離タイプで遠隔攻撃手段を持ってない、それも俺に近づいてこねーとかから見るに、パワーは低い。能力で攻めるタイプだ。

アイツは俺の“空気砲”が遠距離攻撃であるが故にパワーが低くなってると勘違いしてやがるッ!あの程度のバリゲート破壊できるぜッ!)

 

 ユアキラーを出して拳を構えさせる。向こうの作戦は空気砲で破壊出来なかったバリゲートを直接殴らせて破壊させようと誘き寄せる。そこで何らかの能力で仕留めるつもりだろう

 

「一言言っとくゼェ、その程度の障害物は全然意味ねぇんだよッ!」

 

 自身の“弱点”を悟られぬように、わざわざ大きな声を出して挑発する。

 

「オラッ!決めるぜ!」

 

 拳を思いっきり振り下ろし不可視の攻撃が着弾する。バリゲートごと中嶋を壊すつもりだったが、別のとこにいたようだ。机が壊れた音しかせず中嶋の声は聞こえなかった。

 

(運がいいナァ。だが今ので理解した。このバリゲートはさっきのより半分の“時間”で問題ねェ。次で仕留める)

 

 ユアキラーの両手を引く。これで残りの場所全てを同時に破壊する。逃げ場を与えずに潰そうとした。

 

「さっきはラッキーだったが次は行かねぇぞ!ボケェ!」

 

 さらに大きな声を出し相手を挑発させ正常な思考力を奪う。あと2秒で打てるはずだったが

 

「・・・あぁ!?」

 

 目の前に飛んでくる本のせいで狂ってしまった。

 

「くそっ!・・・ガハッ!」

 

 2冊は避けたが、1冊の本は自身の腹にクリーンヒットし思わずうずくまってしまう。集中力が途切れ別の方向を向いていたユアキラーの拳がいま放たれ全く別の方向に打ってしまう。

 

(クソ!なんでだ!?)

 

 何でこんな行動に出れた?まともに出れば、殴られると思っているはずなのに、そのことで頭がいっぱいになっていた。

 

「クソッもうダメか」

 

 的外れの方向とはいえ、着弾した影響により揺れたせいで、元々壊れかけだった机は完全に壊れてしまいもはやバリケードと呼ばなくなってしまったものの裏から1人の男子生徒は現れる。

 冴島と同じ学ランを着ているが、中嶋の手にはピンク色の手鏡が握られていた。その手鏡を見て何が起こったのか男は悟った。

 

(て、手鏡ぃ?・・・まさか!)

「ラッキーじゃねェ、見てたのかァ!?」

 

「そうだ。お前が殴ろうとした司書さんが持っていたものだ」

 

 中嶋が気絶させて安全なところに運ぼうとした時に、エプロンの胸ポケットから落ちそうになっていたのを拾っていたのだ。

 そして隣の部屋に逃げ込んだ時に、机のバラゲートを作り左右に置いた本の隙間から手鏡を使いユアキラーの動作を見ていた。

 それによってどこを攻撃するのかを把握して移動して避けて、奴のスタンドの弱点を把握した。

 

(アイツのスタンドの能力は解けていない。だが弱点はわかった、アイツのスタンドは“攻撃をキャンセルできない”)

 

 1回目の攻撃でダラダラ喋らずに殴ればよかった。2回目の時にはスタンドで殴らずに本体が避けようとした。

 

(攻撃前に設定した時間が経過するまでまともに動けないんだろ?)

 

 だからすぐに殴れなかった。だからスタンドで回避できなかった。動けないから

 

「お前の能力の弱点はわかった。それと、さっきのバリケードに隠れている時に仲間に連絡を送った。もうすぐここに来るはずだ。弱点バレしたスタンド使いと能力不明のスタンド使い2人・・・どっちが有利か分かるだろ?」

 

「アァ佐川のスタンドは俺もしらねぇからなぁ・・・そりゃあかなり厄介だぜ」

 

(佐川の名前も・・・手段は?いつ?どこで?いや洗脳するスタンド使いも知っているのか?)

 

 そうやって考えている間にも冴島のスタンドの動きを観察していた。拳を引いた瞬間に近くに落ちているものを手当たり次第に投げながら動き続ければいい。そうすれば勝てる。

 

 相手の弱点を見抜いたことと、仲間が駆けつけるという有利な状況で中嶋は油断していた。拳を引かせなければ良い、とそれは大きな間違いだった。スタンドを出している時点で攻撃するべきだった。

 

「テメェぶちのめして!人質にすりゃあいい!」

 

「・・・嘘だろ」

 

 その瞬間飛んだのだ。空中を中嶋の斜め上にまで、そのいきなりの出来事に目で追うしか出来なかった。重力に沿って落下して来る冴島に対して何も出来なかった。

 

「残念だったナァ!優等生!」

 

 馬乗りになり完全に中嶋の逃げ道を塞いだ。キャットハウスもユアキラーに手首を掴まれて攻撃もできない。

 

「うぐっ!」

 

 掴まれた手首からみしりと嫌な音がする。ユアキラーによる桁違いのパワーによりキャットハウスの手首を更に掴んでいるのだ。

 

「俺のスタンドが遅いから、拳だけ注視してりゃあ良いと思ったか?残念!大外れだぜッ!ジャンプで近づいてお前本体を俺が絞めればッ!」

 

 冴島が中嶋の首を締める。このままでは脳に酸素が行かなくなりすぐに気絶してしまうだろう。ユアキラーのパワーを持ってすれば高校生1人くらい軽々と持ち運べて人質に運用できる

 

(失敗した、能力を暴くことだけを注視しすぎて肝心の勝利がおろそかになっていたッ!目的と手段が逆転していたッ!俺の悪い癖だこれは・・・本当に・・・)

 

 ふわふわして来てボヤけて来た。天地がひっくり返ったように感じ始めた。気を失い始めてきた。

 

(だが・・・これでいい。こうやって俺の首を絞めようとしてキャットハウスの拘束が疎かになっているのがいい)

 

 意識が向いていないとはいえ、キャットハウスはユアキラーのとてつもない力で逃げることはできない、だが顔だけは、口だけは動かせる。

 

「ゃ・・・な」

 

「何だ?命乞いか?聞こえねぇナァ?」

 

 口から出せるのはもはや声にすらならない空気の音だけだ。だがなぜか今度の言葉はハッキリと男の耳に聞こえた。

 

「じゃあな」

 

「・・・は?」

 

 その瞬間冴島の意識はブラックアウトした。頭上から降って来たコンクリート片によって

 

「ゴホッ!ゴホッ!・・・はぁ、はぁ。何とかなったな───ギリギリだったが」

 

 息を思いっきり吸い、さっきまで吸えなかった分まで吸う。そして呼吸を整えた後に“噛み跡のある床を見る”

 

(キャットハウスは、なんでも食える。どんなに頑丈なものでもな)

 

 キャットハウスがゆっくりと頭を近づけて、音を立てないように慎重に音を立てずに床を食べ、そして再びゆっくりと頭を動かし、冴島の頭上で口を開き中にあったコンクリートをぶちまけた。

 キャットハウスの能力は飲み込まなければ発動しない、口に含んだ物を相手にぶつける事もできる。能力を使えない中嶋が編み出した戦法である。

 

「・・・しんどかったぁ」

 

 完全に気絶した冴島を見て、緊張の糸がぷつりと切れて床に寝転び大の字になった。




スタンド名 ユアキラー 近距離型
破壊力A スピードC 射程距離E 精密動作性B 持続力C 成長性D

スタンドの動作をチャージする能力

例えば殴る動作をチャージすれば、威力が倍増されたり空気そのものが押し出される空気砲を打つことができるなどの効果がある。
先ほどの戦闘での空中を飛んだのはジャンプの動作をチャージしたからである。
チャージ時間は1秒から30秒まで自由に設定できるがチャージ中はキャンセルと他の動きをすることができない。

施設紹介
図書室

八田高校に存在する図書室、本校舎とは別に存在しており解放廊下を通る必要がある。別に存在するだけあって品揃えはかなり良く生徒からはミニ図書館の名前で親しまれている。
1階と2階に分かれており、2階にはかなり妙な本が置かれておりカルト本やらが置かれている。そのせいで普通の生徒はあまり寄り付かない。

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