飼育員がワンピースに転生。   作:みみみーん

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ROMANCE DAWN

 

森の中で目を覚ました少年

 

 ――土の匂いが、やけに生々しかった。

 

 湿った落ち葉の感触。

 背中に感じる冷たさ。

 耳に入ってくる、聞き覚えのない鳥の鳴き声。

 

 俺ははゆっくりと目を開けた。

 

「……あれ?」

 

 空が見える。

 やけに青くて、雲が近い。

 病院の白い天井でもなければ、見慣れた自宅の天井でもない。

 

「……ちょっと待て」

 

 上体を起こそうとして、違和感に気づく。

 体が、軽い。

 いや、それ以前に――

 

「……腕、短くないか?」

 

 自分の手を見て、固まった。

 指が細く、丸い。

 爪も小さい。

 

 心臓が一拍、遅れて跳ねる。

 

「……は?」

 

 慌てて立ち上がろうとして、よろけて転んだ。

 視界が低い。

 明らかに、目線がおかしい。

 

「……いやいやいや」

 

 深呼吸。

 一度、落ち着く。

 

「これは……アレだな」

 

 頭の中で、聞き慣れた単語が浮かぶ。

 

「異世界転生。

 トラックに轢かれて、気づいたら森で――」

 

 言いかけて、口を閉じた。

 

「……いや、トラックの記憶ないな」

 

 それでも状況は変わらない。

 知らない森。

 知らない空。

 そして――子供の体。

 

 俺は自分の服を見る。

 サイズの合っていない、簡素な服。

 少なくとも、前世で着ていた作業着ではない。

 

「……転生、だよな。どう考えても」

 

 否定材料が、ひとつもなかった。

 

 混乱はあった。

 だが、パニックにはならなかった。

 

 それは、前世の仕事のせいかもしれない。

 

「……まずは生き延びる」

 

 誰に言うでもなく、そう呟く。

 

 森を見渡す。

 木々は高く、幹は太い。

 下草は踏み分けられておらず、人の手が入っていないのが一目で分かる。

 

「未開拓……だな」

 

 足元に視線を落とす。

 土の上に、はっきりと残る足跡。

 

「……デカいな」

 

 四足。

 爪痕あり。

 重さも相当。

 

 俺は眉をひそめる。

 

「クマ、か」

 

 声は落ち着いていた。

 怖くないわけじゃない。

 だが、知っている。

 

 動物は、理由もなく人を襲わない。

 

 問題は――この世界の“基準”だった。

 

 歩き出してしばらくした頃、風向きが変わった。

 鼻をくすぐる、獣臭。

 

 その瞬間、前方の茂みが揺れた。

 

 ――ドン。

 

 地面が、わずかに震える。

 

 姿を現したのは、クマだった。

 

 大きい。

 前世で見てきたどんなクマよりも、ひと回り、いや、ふた回りは大きい。

 

 だが、カイルは走らなかった。

 

 逃げない。

 叫ばない。

 目を見すぎない。

 

 ゆっくりと、距離を保ったまま立ち止まる。

 

「……大丈夫」

 

 低い声で、そう言った。

 

「俺は、敵じゃない」

 

 クマは唸り声を上げた。

 だが、突進はしてこない。

 

 カイルは気づいた。

 

 歩き方が、不自然だ。

 

「……ケガ、してるな」

 

 左前脚。

 踏み込むたびに、わずかに体重を逃がしている。

 

 俺は、ゆっくりと腰を下ろした。

 地面に座り、両手を見せる。

 

「触らない。

 近づきすぎない」

 

 独り言のように呟く。

 

「……怖いよな。分かる」

 

 時間が、流れた。

 

 数秒か、数分か。

 分からない。

 

 やがて、クマは唸るのをやめた。

 大きな体を、その場に座らせる。

 

 ――通じた。

 

 胸の奥で小さく息を吐いた。

 

「……この世界の動物、デカすぎだろ」

 

 苦笑しながらも、不思議と嫌な気はしなかった。

 

 クマはしばらくこちらを見てから、ゆっくりと立ち上がり、森の奥へと消えていった。

 

 静寂が戻る。

 

 俺は、その場に座ったまま空を見上げた。

 

「……悪くないな」

 

 この世界。

 

 少なくとも、動物は嘘をつかない。

 

「力があるやつが王なんじゃない」

 

 ぽつりと、言葉が落ちる。

 

「ちゃんと向き合ったやつが、群れを導く」

 

 焚き火もない、寝床もない森の中で。

 少年は、小さく笑った。

 

「……だったら俺は」

 

 拳を、ぎゅっと握る。

 

「動物たちに認められる王になる。」




何分初めてななもので至らないところが多々あると思いますがよろしくお願いします
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