あまねく日常の終着点   作:小太郎丸

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プロローグ

星がよく見える静かな夜、乗っているバイクのエンジン音が街中によく響く。

 

瓦礫や壊れた車、薬莢などが散らばっている道路をバイクで慎重に走りながら、目的地である寝ぐらへとたどり着く。

 

バイクを車庫に入れ、シャターを閉めたあと、疲れた足取りで部屋の奥へ入る。

 

 

 

「弾はまだ余裕がある、けど物資の方が……水と缶詰があと数日、けど医療品系がほとんどない……」

 

 

 

ボロボロの机の上で、今日集めた物資と貯蓄してあるものを確認する。作業を一通り終えて、ベットの上に体を沈まさながら今日一日の疲れを吐き出すように声を出した。

 

 

 

「はぁ〜〜〜………。やっぱりこの辺りはあらかた荒らされ尽くされてるか」

 

 

 

ここD.Uには私以外にも不良や行き場のない生徒が沢山いる。誰もがその日を生き残るために必死なのは当たり前なのだが……。

 

憂鬱な感情にため息を吐き、さっさと寝て不安な気持ちを消そうと布団に深く潜る。

 

なんとなく、横目で窓の外を見た。いつも通りのボロボロの建物の間に、破壊されたサンクトゥムタワーが見える。

 

 

 

その景色を見るたびに、私は2年前、空が赤くなった日の記憶を思い出す。

 

 

 

 

 

 

その日はいつも通りの日常が進んでいくんだと思っていた。

 

学校に行って、勉強して、友達と遊んで、家に帰って明日になるのを待つ。そんな毎日体験しているあくびが出るようないつもの1日だと。

 

いつものように授業を受けがら、ふと外を見ると、空が赤く染まっていた。

教室のみんなも何事かと外に釘付けになっていた。ネットでニュースを見てもなんの具体的な情報は何もなかった。

 

そして、私たちの当たり前の日常は終わりを告げた。

 

 

 

キヴォトスを運営している連邦生徒会は真っ先に組織としての機能を停止した。 

 

それに続くようにゲヘナが壊滅した。

 

最先端の名を冠するミレニアムは皮肉にもロボットに滅ぼされた。

 

トリニティはそんな異変の中でも内ゲバをやめられず自滅した。

 

百鬼夜行は魑魅魍魎の怪物たちに蹂躙されたらしい。

 

 

 

信じられないような情報が次々に耳に入ってくる中、私は、いや私たちは混乱の中で必死だった。

暴走した機械たちが襲い掛かり、空想の中でしか出てこないような怪物が現れたり、恐ろしい巨大なロボットが街を破壊する中を生き残るために必死で駆け走った。

 

気がつけば友達も見知った人たちも、誰も彼もがいなくなっていた。

 

それでも私は走っていた。周りを気にすることも、後ろを振り向くことも、立ち止まることもせずに走っていた。

 

走って、走って、走って、走って、走ってーーー

 

 

 

気づいたら、全部なくなっていた。

 

 

 

 

 

 

鳥のさえずりを目覚ましに、目が覚める。

 

懐かしい過去の思い出を夢で見ていた。目覚めは最悪である。

 

寝起きで朦朧とする体を無理やり動かし、最低限身だしなみを整える。こんな世の中でも、女の子は見た目を気にしているのだ。

 

 

 

「さてと、それじゃあどこに行こうか」

 

 

 

使えそうなもの、必要なものをかき集めて荷物にまとめる。

 

少なくともこの周辺にはろくな物資は残っていない。ここ最近は少し危険を犯して遠くの場所にまで探索してみたがガラクタしか残っていない。

危険が少なくて安全な場所だったが、そろそろ拠点を移す時期が来たようだ。

 

 

 

「……それでも安定した生活が無くなるのはきついなあ」

 

 

 

私が今までに書いた文字や記号が記されたキヴォトスの地図を眺めなが呟く。

 

手頃な棒を手に、次はどこに行こうかと考える。

 

 

 

ゲヘナは、悪い意味で昔以上に自由と混沌と化しているから論外。

 

トリニティは、さらに過激化した勢力争いに巻き込まれたくないから却下。

 

ミレニアムは、暴走するロボットだらけだが他二つよりはマシなため候補に入れる。

 

百鬼夜行は、あそこはダメ。噂では化け物の巣窟とかしているらしい。

 

 

 

他の自治区も候補に入れながら、あーでもないこーでもないと思考を巡らせる。

 

ふと、手で転がしていた棒が偶然にも地図のある地点を指した。

 

 

 

「……アビドス、か」

 

 

 

アビドス自治区は確か自然災害で砂漠化した学校だ。

噂では大企業に借金していたとかなんとか。

 

そんな場所にろくな物資があるとは思えないが、今は他の学校も大差ない状況だ。

 

……少し賭けだが、行ってみるか。

 

準備はもう済んでいる。荷物を手に持って車庫に向かい、シャッターを開けてバイクに跨る。

 

 

 

「……じゃあね」

 

 

 

今までお世話になった寝ぐらに別れの挨拶を済ませて、バイクを発進させた。

 

車庫から出ると、朝日が全身に当たり、気持ちが良くなる。

その気分のままアクセルを上げ、見慣れた景色から遠ざかっていく。

 

 

 

ここはキヴォトス。赤い空の下で全てが壊れた終着点。

 

それで私は生きている。終わりを迎えた青春の向こうで。

 

 

 




・現在のキヴォトス
数千の学校で構成され、高度な科学力で栄えていた学園都市はもはやみる影もなくなっていた。

街並みは破壊され、あちこちで暴走したロボットが暴れている。無秩序と化した住民や暴力性の増した生徒たちが蔓延り、妖怪や幽霊のような怪物たちが闊歩している魔境となった。
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