【未来予知】による悲劇の美少女救済(沼らせ)修行道 〜武芸に生きるため自分勝手に世界滅亡の種『魔女』たちを助けた結果、執着されて救世主と崇められる〜   作:ドラゴニック人参

6 / 15
6話

 

「フウカが知ってるなら話は早い。ついてくるなら、ついでに案内してくれ――」

 

 

 

 そう、体よく案内役を押しつけて。学園を出た俺たちは、さっそく貧民街へと赴いていた。

 

 つい昨日見たばかりの、雑多で変わり映えのしない景色の中、俺たちは通りを進む。

 

 さて。現場についたらどう動いたものか。当然「魔女を出せ」なんて言ったところで通じるはずないし、そもそもまだ魔女として覚醒しきってもないはずだ。

 

 ひとまず魔女見込みの少女を探しつつ、なんとか近くにいれるよう話してみるか。そばにいれば勝手にトラブルが寄ってくるだろうし、そうすればまた貴重な経験を積めるという寸法。

 

 そんな頭繰りをしながら、無言で足を動かすことしばらく。

 

 ……ずっと、隣から視線を感じるな。

 

「――フウカ」

 

「……っえ! ど、どうかしたっ!?」

 

 ちょっと飛び上がって驚くフウカ。あからさまに凝視しておいて、気づかれてないと思ってたのか?

 

「どうしたもなにも。さっきからずっと俺を見てるのはフウカだろ。気になってることがあればなんでも聞けばいい」

 

「あう……。き、気づいてた? ごめんね、うっとうしかったよね。テイラーくんずっと考え事してたから、死んでも邪魔しないようにって思ってたんだけど……」

 

 別に鬱陶しいとは言ってない。あと妙に重いな。

 

 で、結局――

 

「なにを聞きたい? 目的地につくまでなら答えるぞ」

 

「ほんと……? 聞いちゃっていい? じゃあ」

 

 フウカは緊張した様子で息を吸うと。ちょっと気合を入れるように目を大きく開いて言った。

 

「――テイラーくんは、どうしてからくり時計亭に向かってるの? フウカにも……昨日、フウカを助けてくれたことにも関係がある……?」

 

 ふむ。関係はめちゃくちゃある。なんせ、昨日も今日も目的は同じだ。そしてその目的とはすなわち、【未来予知】で見た魔女の被害と接触し、武芸の腕を磨くこと。

 

 ただ、これをどこまで言ったものか。自分で言うのもなんだが、魔術を使えなかった男が未来を知る固有魔術に目覚めたなんて、信じてもらえる気がしない。

 

 ただ、まあ――

 

「別に言ったところで問題ないか……。信じるも信じないもフウカの自由だし」

 

「! フウカ、テイラーくんの言うことなら信じるよ! なんだって!」

 

「じゃあ言うが。――実は俺、最近固有魔術に目覚めたんだ。その効果は、未来を予知すること」

 

 そう、告げた途端。

 

 俺を見上げていたフウカが面白いくらいに表情を変える。最初は言っていることを咀嚼しようと考え込み、なにかに気づいたように目を見開いて……。

 

「じゃあ、じゃあ……。昨日フウカを助けてくれたのも、今日フウカのおうちに向かうのも。どっちも未来を見た結果ってこと……?」

 

「ああ。そうだ。昨日はお前が襲われることが分かってたから向かった。今日は……面倒だから端折るが、娼館にいる一人が近いうちに事件を起こすから偵察にな」

 

「それはフウカが……危ないから?」

 

「いや。まあ、救える者は救うつもりだが、主目的はそれじゃあない。――――俺は、強くなりたいんだ。そのために強いやつと戦う……それが一番の目的だな」

 

「! 折れず曲がらぬ、鋼がごとき……」

 

「そう……! まさにそれだ」

 

 俺が言ったことちゃんと覚えてるじゃないか。その通りだ。

 

 俺の人生は、俺の力で進む道を掴み取りたい。敷かれたレールじゃなく、俺自身が価値を証明することで。そしていずれはあの人のように――

 

 いま言ったことは全部本心で、俺のあらゆる行動原理だ。それを偽ることはしないし、聞かれたら全部答える準備がある。

 

 ただ、なにやら俺を神聖視しているフウカにとっては幻滅する話かもな。後から知って暴れられるよりは、今のうちに知ってもらった方がいい。

 

 さて。それでフウカよ。これでもまだ、俺について回る気になるか?

 

 そんな、どこか軽い気持ちだった俺は。

 

 続くフウカの言葉に、一時声を失った。

 

 

 

「やっぱり――――テイラーくんこそが、フウカの(しるべ)なんだ……!」

 

 

 

 なんだって?

 

「最初はなんでだろって思ってたの。フウカ学園でも目立たない……どころか虐められてるし、テイラーくんと話したこともないし。一方的に憧れてただけなのに、なんで助けてくれたんだろって。でも、そういうことだったんだ……」

 

 一人納得し、なにやら興奮している。

 

「……未来が分かるなら、テイラーくんはなにも間違えない。ましてや、フウカなんかと違って確固たる意思を持ってるんだもん」

 

 さらに、続く一言に思わず目を瞠った。

 

「テイラーくんはきっと、フウカみたいに真っ暗闇にいる人間を導いてくれる――――ううん、違う! フウカたちが自然とこうべを垂れる、唯一絶対の正解者だったんだ……――」

 

 なんだそれ。幻滅どころか、妙な方向に評価が上がったぞ。俺を見る目もなんだか怪しく光っているし。

 

 俺は俺のため、好き勝手してるだけだぞ。

 

「フウカ、一応もう一度言っておくが。俺は別に、お前を一番に考えて動いてるわけじゃないぞ」

 

「なによりも、我を通すために……だよね? わかってるよ、それでこそテイラーくんなんだ――!」

 

 合ってるが……なにやら、絶望的なまでに温度差がある。

 

 興奮のままに両拳を握りしめる小柄なピンク頭。なんだか面倒になってきたぞ。

 

「……まあいいか、もう。じゃあさっさと行こう、からくり時計亭に」

 

「うん、案内は任せてっ。フウカはもうあそこを追い出されちゃってるけど……テイラーくんの覇道のためなら、なにを言われても押し通るよ……!」

 

「うん。まあ、ほどほどでいいから」

 

「わかったっ」

 

 分かってるか? 本当に。

 

 まあいいか。俺はもう深く考えないことにして、奇妙なテンションのフウカと連れ立って歩く。訝し気な目を向ける人々とすれ違い、時に絡んでくるゴロツキをしばきつつ、貧民街を奥へと進んでいく。

 

 そして。

 

 やがて見えてくるのは、この辺りにしてはずいぶんと綺麗で大きな建物。看板には「からくり時計亭」の文字。

 

 俺みたいのが来れば普通は警戒もされるだろうが、ここの出身者だというフウカがいれば話も早かろう。

 

 そう気楽に考え突撃した俺たちだったが、しかし。

 

 案の定、トラブルが――

 

 

 

「――あんた、この()()! いったい全体フウカになにしたっていうんだい! こんな、こんなになっちゃって……っ!」

 

「テイラーくんへの侮辱は、マキナさんでも許せない……。育ててくれた恩があるから、今ならまだ許すよ? さあ、謝って――」

 

「目が完全にキマってるじゃないか……!」

 

 昨日フウカの居場所を教えてくれたご婦人、マキナというのか。やっぱりフウカと関係あったんだな。育ての親とは思わなかったが。

 

「――こら、このぼん……ッ!」

 

「――マキナさん……!」

 

 

 




泣く泣く手放した娘も同然の少女が、謎のボンボンに堕とされて帰ってきました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。