【未来予知】による悲劇の美少女救済(沼らせ)修行道 〜武芸に生きるため自分勝手に世界滅亡の種『魔女』たちを助けた結果、執着されて救世主と崇められる〜 作:ドラゴニック人参
「フウカが知ってるなら話は早い。ついてくるなら、ついでに案内してくれ――」
そう、体よく案内役を押しつけて。学園を出た俺たちは、さっそく貧民街へと赴いていた。
つい昨日見たばかりの、雑多で変わり映えのしない景色の中、俺たちは通りを進む。
さて。現場についたらどう動いたものか。当然「魔女を出せ」なんて言ったところで通じるはずないし、そもそもまだ魔女として覚醒しきってもないはずだ。
ひとまず魔女見込みの少女を探しつつ、なんとか近くにいれるよう話してみるか。そばにいれば勝手にトラブルが寄ってくるだろうし、そうすればまた貴重な経験を積めるという寸法。
そんな頭繰りをしながら、無言で足を動かすことしばらく。
……ずっと、隣から視線を感じるな。
「――フウカ」
「……っえ! ど、どうかしたっ!?」
ちょっと飛び上がって驚くフウカ。あからさまに凝視しておいて、気づかれてないと思ってたのか?
「どうしたもなにも。さっきからずっと俺を見てるのはフウカだろ。気になってることがあればなんでも聞けばいい」
「あう……。き、気づいてた? ごめんね、うっとうしかったよね。テイラーくんずっと考え事してたから、死んでも邪魔しないようにって思ってたんだけど……」
別に鬱陶しいとは言ってない。あと妙に重いな。
で、結局――
「なにを聞きたい? 目的地につくまでなら答えるぞ」
「ほんと……? 聞いちゃっていい? じゃあ」
フウカは緊張した様子で息を吸うと。ちょっと気合を入れるように目を大きく開いて言った。
「――テイラーくんは、どうしてからくり時計亭に向かってるの? フウカにも……昨日、フウカを助けてくれたことにも関係がある……?」
ふむ。関係はめちゃくちゃある。なんせ、昨日も今日も目的は同じだ。そしてその目的とはすなわち、【未来予知】で見た魔女の被害と接触し、武芸の腕を磨くこと。
ただ、これをどこまで言ったものか。自分で言うのもなんだが、魔術を使えなかった男が未来を知る固有魔術に目覚めたなんて、信じてもらえる気がしない。
ただ、まあ――
「別に言ったところで問題ないか……。信じるも信じないもフウカの自由だし」
「! フウカ、テイラーくんの言うことなら信じるよ! なんだって!」
「じゃあ言うが。――実は俺、最近固有魔術に目覚めたんだ。その効果は、未来を予知すること」
そう、告げた途端。
俺を見上げていたフウカが面白いくらいに表情を変える。最初は言っていることを咀嚼しようと考え込み、なにかに気づいたように目を見開いて……。
「じゃあ、じゃあ……。昨日フウカを助けてくれたのも、今日フウカのおうちに向かうのも。どっちも未来を見た結果ってこと……?」
「ああ。そうだ。昨日はお前が襲われることが分かってたから向かった。今日は……面倒だから端折るが、娼館にいる一人が近いうちに事件を起こすから偵察にな」
「それはフウカが……危ないから?」
「いや。まあ、救える者は救うつもりだが、主目的はそれじゃあない。――――俺は、強くなりたいんだ。そのために強いやつと戦う……それが一番の目的だな」
「! 折れず曲がらぬ、鋼がごとき……」
「そう……! まさにそれだ」
俺が言ったことちゃんと覚えてるじゃないか。その通りだ。
俺の人生は、俺の力で進む道を掴み取りたい。敷かれたレールじゃなく、俺自身が価値を証明することで。そしていずれはあの人のように――
いま言ったことは全部本心で、俺のあらゆる行動原理だ。それを偽ることはしないし、聞かれたら全部答える準備がある。
ただ、なにやら俺を神聖視しているフウカにとっては幻滅する話かもな。後から知って暴れられるよりは、今のうちに知ってもらった方がいい。
さて。それでフウカよ。これでもまだ、俺について回る気になるか?
そんな、どこか軽い気持ちだった俺は。
続くフウカの言葉に、一時声を失った。
「やっぱり――――テイラーくんこそが、フウカの
なんだって?
「最初はなんでだろって思ってたの。フウカ学園でも目立たない……どころか虐められてるし、テイラーくんと話したこともないし。一方的に憧れてただけなのに、なんで助けてくれたんだろって。でも、そういうことだったんだ……」
一人納得し、なにやら興奮している。
「……未来が分かるなら、テイラーくんはなにも間違えない。ましてや、フウカなんかと違って確固たる意思を持ってるんだもん」
さらに、続く一言に思わず目を瞠った。
「テイラーくんはきっと、フウカみたいに真っ暗闇にいる人間を導いてくれる――――ううん、違う! フウカたちが自然とこうべを垂れる、唯一絶対の正解者だったんだ……――」
なんだそれ。幻滅どころか、妙な方向に評価が上がったぞ。俺を見る目もなんだか怪しく光っているし。
俺は俺のため、好き勝手してるだけだぞ。
「フウカ、一応もう一度言っておくが。俺は別に、お前を一番に考えて動いてるわけじゃないぞ」
「なによりも、我を通すために……だよね? わかってるよ、それでこそテイラーくんなんだ――!」
合ってるが……なにやら、絶望的なまでに温度差がある。
興奮のままに両拳を握りしめる小柄なピンク頭。なんだか面倒になってきたぞ。
「……まあいいか、もう。じゃあさっさと行こう、からくり時計亭に」
「うん、案内は任せてっ。フウカはもうあそこを追い出されちゃってるけど……テイラーくんの覇道のためなら、なにを言われても押し通るよ……!」
「うん。まあ、ほどほどでいいから」
「わかったっ」
分かってるか? 本当に。
まあいいか。俺はもう深く考えないことにして、奇妙なテンションのフウカと連れ立って歩く。訝し気な目を向ける人々とすれ違い、時に絡んでくるゴロツキをしばきつつ、貧民街を奥へと進んでいく。
そして。
やがて見えてくるのは、この辺りにしてはずいぶんと綺麗で大きな建物。看板には「からくり時計亭」の文字。
俺みたいのが来れば普通は警戒もされるだろうが、ここの出身者だというフウカがいれば話も早かろう。
そう気楽に考え突撃した俺たちだったが、しかし。
案の定、トラブルが――
「――あんた、この
「テイラーくんへの侮辱は、マキナさんでも許せない……。育ててくれた恩があるから、今ならまだ許すよ? さあ、謝って――」
「目が完全にキマってるじゃないか……!」
昨日フウカの居場所を教えてくれたご婦人、マキナというのか。やっぱりフウカと関係あったんだな。育ての親とは思わなかったが。
「――こら、このぼん……ッ!」
「――マキナさん……!」
泣く泣く手放した娘も同然の少女が、謎のボンボンに堕とされて帰ってきました。