エロ漫画みてーな催眠術使えるやつが幻想入り   作:一般霊夢スキー

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見切り発射です。


幻想入り……というか能力ヤバイね?

 

 気づいたら知らない場所にいた。なにを言ってるか分からないと思うが、正直俺も混乱している。

 

 前後の記憶が曖昧なんだが、コンビニに行こうと出掛けている最中だったような気がするんだが、どうしてか周りは自然豊かだし、目の前には長い長い石階段がある。

 

 その頂上あたりに鳥居っぽいものが見えるから神社の参道なのかな。

 

「いやほんとどういうことなんだ……?」

 

 とにかくここがちゃんと現実であることはさっき試した。ほら、頬つねったり階段の質感とかちゃんとリアルだったし、匂いも青々としたおおよそ現代日本の都会では感じられない澄んだものだ。

 

 現実感はないが、夢だとはとても思えない。

 

「目の前に階段あるんだからとりあえず登ってみるか。建物あるってことは人がいるだろ」

 

 かなり長い階段なので少し登るのが億劫になる。こちとら運動とかロクにしていないインドア派だ。

 

 手すりとかない不親切な石階段をぜぇぜぇ言いながら登っていくと鳥居がはっきりと見えてくる。

 

 そしてそこに書かれていた文字を見て、思考が止まる。

 

「博麗……神社……? 博麗神社ァ!?」

 

 ーーうっそだろおい。ここ幻想郷かよ! え、俺幻想入りしたのマジぃ????

 

 知ってる知ってる。俺、ちょー大好きだもん。東方Project。原作のシューティングも黄昏の格ゲーとか全部やってるし、書籍も普通に買ってたし、なんなら同人誌とか描いたりして二次創作活動すらしてた。

 

 大ファンも大ファンだ。色々お世話になってるしな。深い意味はないよ。

 

 あまりの衝撃と胸のうちから溢れ出てくる歓喜に疲れなんて全部吹き飛んでしまった。自然と階段を登る足取りも軽くなる。

 

 やがて階段を登り切り、目の前に飛び込んで来たのは……。

 

 画面の向こうで夢にまでみた神社の姿だった。人気の少ない寂れたとも言えるような雰囲気の神社がそのまんま自分の目に映り込んでいる。

 

「やべぇ……博麗神社だ」

 

 あまりの感動に目尻に涙が一つ溢れる。ふと、振り返って見た景色にまたもや俺は思考を止めてしまう。

 

 博麗神社は幻想郷を一望できるとあったはずだ。まさにその通りで、まるで日本の原風景を切り取ったかのような自然豊かな美しい景色が目の前に広がっていた。

 

 まさか俺にもこうやって美しい景色を見て感動し涙を流す情緒があったとは。

 

 ーーあそこは人里だな、あれは霧の湖か? 赤い建物は紅魔館だな。こっからでも見えるが妖怪の山だろあれ、でっけぇ……。

 

 凄いとしか言いようがない。どうして俺が幻想入りしてしまったのか不思議ではあるけども、こんな美しい世界に来れたのならなんか色々どうでもいい気がしてきた。

 

 しかし、ふと思う。ここは間違いなく幻想郷なのはわかった。しかし、しかしだ。

 

「俺、戦えないぞ。幻想郷って女の子いっぱい可愛いって感じ出してるけど魔境だからなここ」

 

 そうなのだ。幻想郷の主な種族は妖怪でそのどれもが人間よりも遥かに強靭で狂暴で恐ろしい異形の存在達なのだ。

 

 原作での描写とかでもそうだが、おおよそ一般の人間ではどうすることもできないほどに脅威なのである。妖怪というのは。

 

 幸いなことに幻想入りしての初期スポーン地点は博麗神社だった。これは本当に幸運であると今さらながら理解する。

 

 よく二次創作とかで幻想入りしたら定番のルーミアに遭遇とかになれば目も当てられないからな。俺は自分が特別だとか一切思えない。遭遇すればどうすることもできずにきっとぱっくんだ。

 

 まぁ……ルーミアのお腹の中に収まるならそれも悪くないって思えるけども、ルーミアじゃなかったらクソだクソ。

 

 でも、ほら。特別じゃないって思ってるけどー? もしかしたらあるんじゃないのー? ほら。

 

「いわゆる『程度の能力』ってやつがさ」

 

 東方Projectでは、面白い表現だけど能力をそうやって表現するんだ。絶対に程度では済まないだろって能力もそう表記されたりしてる。ありとあらゆるものを破壊する程度の能力とか。

 

 自分にそんな特別な能力とかないかなーと、淡い期待でちょっと、この自然を感じながら目を瞑り。瞑想のようなことをして自分の中のなにかを探ろうとしてみる。

 

 すると、驚いたことにこれだ。という漠然とした力のようなものを感じたんだ。

 

「おいおいマジかよ。こりゃ俺の幻想郷ライフ始まったか?」

 

 しかし、感じ取れた力を認識したとき……俺は言葉を失った。

 

 ーー『催眠術をかける程度の能力』

 

 認識した時、それがどう使うのかもなんとなく理解させられた。

 

 催眠術をかけて、かけられた相手は自身の言う通りになる能力。しかも常識改変とかも出来るし、かけるときの条件も声を聞かせてはい催眠というとんでもなく簡単なもの。

 

「エロ漫画みてーな催眠術じゃねーか!!」

 

 クソチートかもしれんが、能力クソすぎるだろ。もっとかっこいいやつが良かったよ! いや、男としては正直めっちゃ嬉しい能力だが、だからって……。

 

 そう一人で悶えていると、風を切るような音が聞こえてくる。バッと顔を上げて見上げると紅白の衣装がまず目に入った。

 

 その時点で誰なのかすぐに理解した。赤を基調とした上下の洋服。スカートはフリルがふんだんにあしらわれた可愛らしいもので、服と分離しているせいで脇が露出している袖。頭には大きな赤いリボンが風に揺れていて、冷静に考えれば巫女服っぽくないのになぜか巫女というイメージが先にくる非常に優れたデザインだ。

 

 ってそうじゃない。服に感心してる場合じゃないだろ。霊夢だ。霊夢が目の前にいるんだ。

 

 見上げる構図になってるからスカートの中に目が吸い込まれそうになってしまうがなんとか無理やり顔へと視線を持っていく。

 

 うん、可愛い。美少女だ。しかし、感情が抜け落ちたような表情……もしかして怒ってる……!?

 

「す、すまん! 俺は怪しい者じゃなくてだな……! そう! 困ってたんだ! 突然ここに来てしまって!」

 

 こう言えば霊夢は俺を外の世界からきた人間とか思ってくれないかなー! ほら、霊夢って外からきた人間を帰してくれてたらしいし。

 

 霊夢はゆっくりと境内に下り立ち、俺の言葉を無視して神社の方へと足を進めていく。

 

 まさかの無視である。さっき俺を認識してたよな? さすがにちょっと不自然な気がする。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

 思わず、霊夢の歩みを止めるため肩を掴んでしまったが、霊夢は止まってくれた。

 

 そのことに少しほっとして、霊夢の前に回り込んでその顔を見たときぞっとしてしまった。

 

 感情が抜け落ちて無表情なのはそうなんだが、その目には生気を宿してなかったのだ。

 

 ーーま、まさかさっき止めたときに催眠術かけてしまったか? 

 

 と、思ったのだが、どうにも催眠術をかけたわけではないらしい。条件は声を聞かせるだけで発動するんだが、解除するみたいな文言を言ったりしてもなにも起こらなかったから。催眠状態にいるわけではないらしい。

 

 だったらどうしてそんな死んだような顔をしているんだ……?

 

「な、なぁ。どうしてそんな顔をしているんだ? あんたになにがあったんだ」

 

 霊夢は俺の言葉が届いていないのか、黙ったままだ。

 

 どうしたものかなって悩んだが……これは、やむを得ないのか。正直、こんなクソみたいな能力をましてやこんな状態の霊夢に使うのは気が引けるんだが、しかしこれ以上にないほどに、この状況には適した能力ではあるんだ。

 

 一旦、催眠状態にして話を聞いてみよう。すまん。エロいことはしないから、うん……。

 

「発動は……ああ、こんな雑でもいいんだ」

 

 やっぱり特にアクションみたいなのは要らないらしい。声さえ聞かせていたら催眠術をかけようと意識をするだけでかかるとはなんてクソみたいな能力だ。初見殺しが過ぎる凶悪さである。

 

 俺は一度、咳払いをして改めて霊夢に問い直してみる。あの霊夢が催眠術にかかっているというシチュエーションに興奮を覚えないこともないんだが、いかんせん興奮よりも困惑やら疑問やらの方が大きい。だってあの霊夢が死んだような顔をしているんだぜ。

 

「……どうしてそんな顔をしているんだ」

 

 俺がそう言うと。さっきまでずっと重く閉ざされていた口から掠れたようなか細い声が漏れ出す。

 

「……疲れたのよ。役目とか、責任とかに。だからもう終わらせようと」

 

「は……?」

 

 今なんて言った……? 疲れた……しかも役目、責任……博麗の巫女の役目ってことか? あの霊夢が……そんなこというのか。しかも終らせようとってまさか……。

 

「なぁ、その終らせるって具体的になにをするつもりだ?」

 

 できれば聞きたくない。そうであってほしくない。そんな願いを込めながらも俺は霊夢に問いただす。

 

「……命を絶つつもりよ。もう全てから逃げ出したい」

 

「……ッ」

 

 くっそ。嫌な予感はしていたがやっぱりそうかよ。まさかあの霊夢から自殺だなんてそんな言葉を聞きたくなかった。

 

 だって俺の知っている霊夢は誰よりも強くて、人も妖怪も分け隔てなく接し、ちょっと人よりも欲深くて、裏表のないそんな素敵な人間だったはずだ。

 

 それが、あんな死にそうな顔で……こんな絶望したような声で……これが本当に霊夢なのか信じたくない。

 

「……その、なにがあったのかは今は深く聞かないが、命を絶つのは止めてくれ」

 

 俺がそう言うと、その動きは重く……しかし、しっかりと頷いてくれた。目覚めたての能力でちゃんと催眠が効いているのか不安だが、そこは信じるしかないか。

 

 まさか催眠術をこんな形で使うことはなるとはな……クソみたいな能力とは思ったが、今回ばかりはこの能力で助かったぜ……。

 

 というか俺が幻想入りしてなかったら霊夢死んでたのかよ。どうなってるんだこの幻想郷……。霊夢をこんな状態にするって。さっきまでの感動をどうしてくれるんだ。めちゃくちゃ幸先不安だ。

 

「とりあえず、神社に案内してくれないか? 喉渇いてきたし一旦落ち着きたい」

 

 霊夢はこくりと頷き。俺を神社に招き入れてくれる。こういう素直に命令を聞いているの見ると、ああ催眠術にかかってるだなぁって複雑な気持ちになるけど解いたらどうなるか分かったもんじゃないから、解くに解けねぇ。

 

 悶々とした気持ちを抱えながらも俺は霊夢に着いていくのだった。

 

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