エロ漫画みてーな催眠術使えるやつが幻想入り 作:一般霊夢スキー
催眠術にかかった霊夢に着いてって、神社に上がり込む。本殿とは別の普段霊夢が暮らしている空間だろう。居間のようなところに通される。
「疲れてるって言ってたな。場所教えてくれたら俺が飲み物用意するけど」
霊夢は小さく首を振って、部屋の奥へ消えていくが、気になったので俺も着いていく。
昔の家のキッチンってこういう感じだよなって空間だ。土間って言うんだっけか。霊夢は棚から湯飲みを一つ取り出し……と、俺一人だけ飲むのも気まずいし霊夢の分も用意させる。
おお、水瓶だ。なんかこういうのロマンあるよな。多分ここから汲めばいいんだよな。霊夢は手慣れた様子でお茶の準備をしてくれている。
俺も手伝えそうなところは手伝いつつ。できたお茶を持ってさっきの居間に戻ってくる。
改めてちゃぶ台で霊夢と対面するように座る。淹れたてのお茶を冷ましつつ飲みながら霊夢を横目で眺める。
催眠術かけたままだからぼーっとしている。ハイライトの感じない目はどこか背徳感のようなものを感じるが、死にそうだったんだよなぁ。この霊夢。
「せっかく淹れたんだからあんたも飲んどいたらどうだ。あったかいお茶を飲むと落ち着くよ」
俺がそう言うと霊夢はゆっくりとお茶を飲み始める。
お茶の苦味とそのあとからやってくるほのかな甘味を感じながらしばらくはお互い無言でお茶を飲んでいた。
俺もこのあとどうするべきか考える時間が欲しかったから、俺にとっても霊夢にとっても丁度いい時間だろう。
さて、どうしてか霊夢は死にたくなるほどに精神的に追い詰められている状況のようだ。
役目とか責任とか言ってたな。まぁ想像に難くない。博麗の巫女としての役目や責任ってことだろう。
霊夢をちらっと流し見る。まだ幼さが残る少女だ。中学生になったぐらいの年齢か? 少なくとも俺よりもだいぶ年下なのは間違いないだろう。
そんな少女がまぁ、幻想郷の一番大事な役目を課せられているんだ。相応に重圧はあるだろうし。なによりもこれぐらいの少女だと普通は受け止めきれないものだろう。
それに普段の妖怪退治とか、異変解決とかも命が脅かされるストレスとかもあったのかもしれない。
疲れたって言ってたしな。あるよなぁ……今までなんやかんやどうにかやってたけどふと、すんごく辛くなってしまう瞬間って。
あれって自覚していないだけでやっぱりストレスとか疲労とか積み重なって許容値が越えたからなんだろう。この湯飲みに満タンの水が入っていて表面張力とかでどうにか保っていただけみたいにとっくに限界で、そこに少しでも水を足したらそりゃ溢れちゃうよなって。
「そんなに辛いんだったら少しぐらい休んでもいいんじゃないか?」
霊夢は体を震わせながら湯飲みを起き、小さく呟く。
「……ダメよ。私は博麗の巫女なんだから」
うわ、マジか。もしかしてここの霊夢って物凄く真面目……? おいおい、それじゃあぶっ壊れるだろうよい。
一癖も二癖もあるだろう幻想郷の住民達に真面目に付き合ったらそりゃストレスでマッハだろ。
「まさか休んだことないのか」
信じられないというような俺の声に霊夢は頷いた。
うっそだろおい。原作だとわりとぐーたらしてた巫女だぞ。なんでこんなことになっちまってるんだ。休む暇なく活動してるってことはあれかな毎日妖怪退治とか人里でなんかボランティア染みた活動でもしてんのか。
「バカ! 休め! 人は休みなく働き続けられるわけないだろ!?」
なんてこった。そりゃ死にたくなる。もっと重い理由とか思ったけどただの働き過ぎなだけじゃないか。こんな育ち盛りの少女になんてことをするんだ。
「……とりあえずこっちにこい」
俺がそう言うと催眠にかかっているので霊夢は素直にこっちにくる。
近くで改めて顔をまじまじと見てみると、うまく誤魔化しているようだが、目元の隈が酷い。こりゃ十分に睡眠も取れてねぇな。
「あんたはだんだん瞼が重くなる。心地のいい感覚と共に眠りに落ちる。睡眠の質は向上し、疲れも良く取れることだろう。今は巫女の役目とか忘れてゆっくり休みな」
霊夢の意識が失いだらりと倒れ込もうとするのを俺が受け止め。ゆっくり寝かせる。
ちゃぶ台をどかし、引き出しから布団と枕を引っ張りだして敷いていく。
そこに霊夢を抱えて……軽いな。ちゃんと飯も食えてるのかよ。寝かせて布団を掛ける。
「ったく。めちゃくちゃ有用じゃねぇかこの能力」
穏やかな寝息をたてる霊夢を眺めながら小さく溜め息を吐く。
さすがにあんな疲れた様子の霊夢にこの能力使ってエロい悪戯とか罪悪感凄すぎてできねぇよ。
そういうのはもっと元気になってからだな。ん? そりゃおめーこんな男の夢のような能力あってエロいことに使わないとかそりゃ男じゃねぇだろ。
こちとら東方で色々お世話になってんだぞ。
「とりあえず目を覚ましたら飯を食わせるか。しばらくは目を覚まさないだろうし俺も仮眠するかな」
俺の能力はわりと応用が利くようで、自己暗示みたいなこともできるようだ。
俺にも疲れとか取れるような暗示をかけつつ一時間程で目を覚ますようにしておいて、眠りに落ちる。いやはや……便利……だ……な。
◇◇◇
鼻腔を擽る良い匂いに意識が浮上する。なんだか凄く心地のいい夢を見ていた気がする。
最近は寝付けが悪くてずっと睡眠不足に悩まされていたのに今は幾分かマシだ。それに胸のなかでどろりとした黒い感情も薄れてきている。
あれだけ絶望して、自らの命を絶とうとしたはずなのに今もそんな気持ちがないとは言わないけど、この良い匂いで今はいいかなって思える。
「起きたか。ちょうど飯も出来上がるところだ。まずは顔でも洗ってきな」
知らない男性が土間の方から顔を出してくる。ううん、知らなくはないかも。たしか私を止めた人だ。そして多分寝かしつけてくれた人。
とりあえず言われた通り、顔を洗いにいこう。なんとなく言うこと聞かないとって思ったから。
「おっとそういえば催眠かけたままだったか。あの様子だと早まったことは多分しないと思うから一回解除してもいいかもな」
なにか言ってた気がするが、私は言われた通り用意してくれていた桶に入った水で顔を洗う。
寝惚けていた頭が水の冷たさでゆっくりと覚めていくような感覚だ。それにどこかふわふわとした心地のいい感覚も抜けた気がする。
ちょっと寂しいかも。なんだか凄く安心できたから。
手拭いで濡れた顔を拭き取りながら、居間の方に戻るとちゃぶ台に作ってくれたであろう料理が並べられている。
もくもくと湯気がたっているのは卵をといた雑炊のようだ。良く煮られた野菜に漬物。蒸した鳥胸肉を大葉と梅肉で和えている。
随分と消化に良さそうな献立だ。おそらく私の胃腸を気遣って。
「その……なんだか申し訳ないわね」
「勝手に台所使わせてもらったし、こっちこそ悪いな。ほら腹減っただろ。俺も腹ペコだ」
彼の優しい気遣いに胸が少し温かくなる。誰かと食卓を囲むのなんていつ以来だろう。
昔は良く神社に来ていたあの人も来なくなってから無沙汰だし、ずっと一人でただ栄養を得るための行為として食事をしていたから。
「座ったな。んじゃ頂きます」
「……頂きます」
雑炊を軽く冷まし、口に含む。じっとりとした柔らかい食感にほのかな塩味と卵の甘味の優しい味が口に広がる。
「あー……ほれ、これ使って拭きな」
彼から手拭いを差し出される。どうしてだろうと受けとるために視線を下に向けたときに気づいた。机に雫がぽたりぽたりと落ちていたんだ。
どうやら気づかずに涙を流していたらしい。久々に温かみに溢れた食事に私の体どうも言うことを聞かず、流れる涙を止められない。
「あんたは凄く頑張った。偉い。でも少しぐらいは自分を大事にしてあげないとな」
私の手を取り、手拭いを取ると変わりに目元を拭いてくれる。そしてゆっくりと頭に手を置かれ、あやすように撫でられる。
「そん、なの当然で……! 巫女だから……! 頑張らないと……っ」
「そうだよな。もう十分に頑張ったんだもんな。なら少しぐらい休んでも誰も文句は言わないって。むしろなにもしない日だってあっても良いぐらいだ」
そんなの許されるわけがない。今まで私はしっかりと巫女として役目を果たしてきて、今さらそんなことしたらきっと失望される。
望んだわけでもないのにこんな責任を負わされて、でも投げ出すことなんてできなくて、ただ、わたしは休まずに働き続けた。
ずっとひたすらに、この手が届く範囲は広くて、だから私が全部やらないとって、いつしか一人になって……。もう、全てに疲れちゃって……。
「うん、うん。偉いよ。凄く。だからさ疲れたならやっぱり休まなきゃな。ほら、まずはご飯を食べよう。ちゃんと食べてゆっくり休む。明日のことは今は忘れるんだ」
ふわふわと心地のいい感覚に包まれる。ああ、彼の声を聞くと凄く心地がいい。ずっと、このままがいいな。
スプーンを手に取り、雑炊を掬って私の口に運んでくれる。それをなすがままに受け入れて、咀嚼し飲み込む。
食べさせてくれるのに忘れた遠い記憶のようなもの覚えながらも、彼はまだ自分の分を食べていないとあとは自分で食べるように言われ少し寂しく思いながらも私たちは食事を終えた。
どうやら湯浴み用の水も汲んでくれていたようだ。浴槽には水が貯められていて、いつでも沸かせられるようにしてあった。
そういえばここ最近、しっかりと湯に浸かってないかも……変な臭いとかしてないかな。ちょっと恥ずかしくなってきた。
「いやはや、薪風呂なんてロマンは感じるが井戸から水汲むのもインドアには辛いし、大変だったぜ。湯を沸かしておくから、部屋でゆっくり休んでおきな」
どうして彼はここまで私に良くしてくれるんだろう。食事のときもあんなに取り乱した私に寄り添ってくれたし、ご飯も作ってくれて、久々の熟睡だったのもどういうことかきっと彼のお陰なのだろう。
部屋の隅で、お風呂を沸かしているだろう音を聞きながら、ぼんやりと考え込む。
なんだかいいなーって、誰かが近くにいるのは。日中は巫女として働き、帰ったら最低限の食事と水で体を洗って、そのまま気絶するように眠りにつき……でも眠りが浅くて、寝て起きて繰り返していつの間にか朝を迎えてて……。
最近はずっとそんな生活だった気がする。
それが今はぐっすり眠れて、温かいご飯を食べれて今はお風呂を用意してくれてる。
きっと私に必要だったのはそういう時間だったのだろう。
でも、今までみたいなままだとそれが難しいから彼は私になんども休めと言った。
「風呂沸いたぞー。いやぁやってみれば案外楽しいもんだな薪風呂。ほら一番風呂に入ってきな」
どうやら湯が沸いたらしい。でも、せっかく用意してくれたのだから。
「一番はあなたの方が……」
「男が入ったあとの湯に女の子を入れるのはちと気まずいっつーかなぁ……」
「なにそれ、よく分からないわ」
うーん。面倒だしそうだ。
「だったら一緒に入りましょ。それならいっぺんに済むでしょ」
「ぶッ……おま……!」
この人なら別に裸とか見られても……恥ずかしいけど、いいかなって。それに大人の人だからきっと大丈夫。
「いや、それ……えぇ。っ……ちょ脱ぐな脱ぐな!」
はぁ……? 今からお風呂に入るのになんで脱いだらダメなのよ。良いから入るの。あなたも脱ぎなさいよね。
なにか小さくぶつぶつ呟いているのが聞こえるけど、久々の湯船を私は堪能するのだった。なんやかんや言いながらも彼も湯船に浸かれて気持ち良さそうだ。でもさすがに二人で入るには狭かったわね。まぁいっか。
◆◆◆
あれだけ熟睡していたのに、お腹いっぱい飯食ってあったかい湯に浸かってればどうやらまた眠気が来たらしく、今は穏やかな寝息をたてて眠っている。まだ疲れ自体は残っていたんだろう。
そりゃ聞く限り、ブラック真っ青な労働環境っぽかったしな。その上、食事も最低限で湯にも浸かるほどの気力もなく。あんまり寝れていない。
こうなるわな。
顔色は会ったときと比べてすこぶる良さそうだ。俺としても一安心。しかしお風呂事件はさすがにビビったぜ。心を無にしてただ全力で湯船を堪能してやったわガハハ。
霊夢、なんであんなに無防備なんだよ。別に催眠術をかけてそうするように仕向けたわけでもないからよく分からん。
ま、なんにせよ。俺も疲れたな。
自分の分の布団も敷いて横になる。
念のため霊夢が寝ている場所とは距離を離しておく。寝相とかで霊夢のところに忍びこんでしまっては朝が怖いし。
「しっかし、幻想入りかぁ……変な力も手にしちゃったし、霊夢があんな様子だったし……すっげぇ幸先不安だ」
もっと幻想入りってワクワクするものだと思ってたんだがなぁ。
さすがに肉体労働で眠気がやばいな。起きてもやることねぇしさっさと寝よう。
「……おやすみ」
向こうで寝てる霊夢に言い聞かせるように呟くと、俺はそのまま眠りに落ちるのだった。