エロ漫画みてーな催眠術使えるやつが幻想入り 作:一般霊夢スキー
ちん……ちん。鳥の鳴き声に意識が浮上する。物音もあるがどうにも暑苦しさを感じたというのもある。
それになんか腕が痺れている。とにかく体を起こそうと痺れてないほうの手を支えにしようと手を伸ばせば、ふにっと柔らかい感触が手から伝わってくる。
ーーえ……? なに今の感触。いや、まてそういえば俺って幻想入りしてたはずだ。そして博麗神社に寝泊まりしたはず。もしかしてやらかしたか?
「……んっ……もっと……」
やたらと艶っぽい声が聞こえてきて一気に意識が覚め、バッと体を起こす。
やはりというか、俺の横に霊夢が寝ていた。片腕が痺れていたのはずっと霊夢を抱えていたからか。
まさか寝相で霊夢のとこに行ってしまったか、と思ったのだが、どうも逆で霊夢がこっちに侵入してきたみたいだ。
いやなんでだよ。
ーーというかさっきの一連の流れで霊夢の寝巻きがはだけて色々見えてしまってる!?
寝起き一発目でこれは刺激が強すぎる。とりあえず乱れた服を直そうとすると霊夢の目がゆっくりと開いた。
あ、おわった。これじゃあ寝込みを襲おうとしている構図みたいになってるじゃねぇか。
「あー……その、おはよう」
苦し紛れに笑顔を浮かべて、挨拶をだな。ちょっとひきつってるかもしれんが。
しかし、どうやら霊夢はまだ寝惚けているようでこちらを見ながらもぼんやりしている。
昨日も思ったが、やはり随分と無防備だな。もしかして催眠術にかけるとなんかそういう警戒心がなくなるみたいな副作用とかあるのか? だとすればますますエロ漫画染みて凶悪というかなんというか。そのうち検証はしておくか。
寝巻きを直しつつなんとなく、霊夢の頭を撫でると心地良さそうに目を細める。なんか猫みたいだな、とか思ったりする。
しかし、まぁ起きたならずっとこのままというのもあれだろう。
「気分はどうだ? 体調はどこか変とかないか?」
撫でる手を止めて、俺がそう聞くと。霊夢は少し物足りなさそうにしつつも目を擦りながら体を起こす。
って、おい服がまたはだけるって咄嗟に直そうとすると、なにを思ったのか霊夢が抱きついてくる。
いや、服を直そうとしたからポーズは確かにバグしようみたいなポーズだったかもしれないけど、違うぞ霊夢……。
「……だるさはあるけど、元気」
俺の胸で頬擦りしながら霊夢は答える。なんというか精神年齢がかなり下がってないか? どうも見ていると親に甘える小さな子どものような……そんな無防備さが見てとれる気がする。
いやまて、実際にそうなのか。詳しい事情とかは俺たちは画面や書面でしか知らないが、この中で霊夢に親がいるという描写はない。
この霊夢にもおそらくは居なかったんだろう。そういう甘えさせてくれる親が。だから俺なんかに親に向けるような好意のようなものを寄せているような気がする。
そう思ったら、また霊夢にお痛わしい感情が芽生えるなぁ。もう霊夢に催眠であれこれとか考えられなくなってきてるのを自覚し始める。
なんというか、この霊夢にはもっと健全で穏やかな日常を送ってもらいたいというか。そもそも、フィクションの作品だからっていうのもあるが、博麗の巫女の役割って冷静に考えて、重すぎるんだよ。少女と言えるような年齢の人間に課していいものではない。
原作の霊夢はその常軌の逸した強さと精神力があるからこそ成り立っているのであって、普通は原作から読み取れる情報での霊夢の置かれている環境でそんな精神が生まれるのかって話だ。
この霊夢もごく普通の女の子で、でも与えられた責任の重さをちゃんと理解できる聡明さがあって、だから凄く真面目に巫女としての役割を全うして。そして壊れそうになってしまったんだろう。
「……そうか。それはなによりだ」
催眠術をかけて、できるかぎりのリラックスを与えられるような暗示をかけていく。
もうしばらくはこのまま霊夢の好きにさせておくか。
胸の中で甘えてくる霊夢の頭を撫でてやりながら、俺もこのゆったりと時間を過ごす。
◆◆◆
それから霊夢もいつもの巫女服に着替え、俺も来たときに着ていたものに着替えて、というかこれしかないから人里とかで新しい服とか必要になるな。脳内のメモに書き記しておく。
そして朝食は昨日多めに作っていた雑炊の余りとかを食べて、また一心地つけそうな時に、霊夢は思い出したように声を上げて顔を青くしながら立ち上がる。
「もうこんな時間……! 仕事しないと」
そういえば催眠で忘れさせていたんだっけな。普段の霊夢はもっと早くから活動していたに違いない。
「まぁ落ち着きなって」
催眠術を乗せて、俺が声をかけると霊夢はふにゃりと顔を緩めて、座り込む。
「今日はなにもしなくていいんだ。ま、のんびり過ごそうぜ。昨日軽く神社見て回ったけど掃除とかもロクにできてないだろ? すげえ汚れていたぜ」
霊夢はこくりと頷く。催眠を解除すると、霊夢どこかもの寂しそうな顔をしていたが先ほどの真っ青な顔はなくなっている。
霊夢がこんなに頑張らないと成り立たない幻想郷がそもそもおかしいんだよ。霊夢が底抜けに優しくて甘いんだろうというのもあるけど、それに甘んじる幻想郷も幻想郷だ。まずは霊夢の意識を改革して、原作のような環境に誘導をしたい。
その過程で霊夢に茶々いれてくるようなら俺の催眠術で黙らせてやる。
もう霊夢を絶対にあんな顔をさせないと俺は胸の内でそう決意する。
「その……のんびり過ごすって私、今までそんなことしたことないから分からないわ」
どこか所在なさげな様子の霊夢が俺に聞いてくる。
「ん、そうだなぁ。まぁまずは掃除でもしよう。さっきも言ったがかなり神社全体が汚れていたからな」
典型的なワーカーホリックというか、そんな気はしてたけど先が思いやられるな。
霊夢は素直に俺の言葉を聞き入れてくれる。そこに疑問とか挟んでくる様子はなくどこか俺に依存しているような危うさを感じられる。
過度に干渉しすぎるのも霊夢の健全な精神を育むには悪影響を及ぼしそうだな。しかしこの状態の霊夢も放って置けないし、どうしたものやら。
ともかく掃除用具とかある場所に霊夢に案内してもらいながら今後の展望とかを緩く考えていく。
まずは全く人が入った形跡がない本殿のところを掃除するか。
なにを奉っている神社なのか分からないけど、中はちゃんと立派だ。本当は無関係の俺が入るべきではないんだろうけど、そこはまぁいるかも分からない神だしなにより霊夢をあんな状態にまで放置していたんだ。いたとしてもそこまで敬意を払ってやる必要はないだろう。
埃っぽい湿ったいやな臭いに眉を潜めながらも、鼻と口を覆うように布を被せて、いざ掃除だ。
ーー丸一日使う気で徹底的に神社を綺麗にするぞー!
以下、掃除の時に起きた一幕。
「きゃっ」
「霊夢! 大丈夫か!?」
霊夢の小さい悲鳴と共にバッシャーンと桶がひっくり返る音と水飛沫の音に俺は振り返ると、全身を水で濡らし色々と体のラインが浮き出た艶やかな姿となっている霊夢がそこにいた。
とりあえず、怪我はなさそうだ。しかし霊夢は無防備に服を捲り上げて水を絞り取るじゃないか。
そのせいで発育途中の胸やら、下着やらが色々丸見えになってしまっている。
「濡れてしまったんだから絞るより着替えた方が早い……ってまてまて、ここで脱ごうとするな! 着替えはここにないだろ!」
失言した俺も悪いが、あまりに素直な淀みのない霊夢の行動に思わず突っ込んでしまう。
・
「すんげぇ物がごっちゃごちゃだな……これ全部博麗の巫女が使う道具か?」
「そうよ。といっても私もあんまり把握はしていないんだけど……一応先代達が残してくれた紙があるからそれ見て整理……でいいわよね?」
「いちいち俺に確認しなくてもいいぞ。霊夢の思うようにやったらいい。俺も手伝うからさ」
「うん……」
そんな感じで倉庫整理していたんだが、また霊夢から小さな悲鳴が聞こえると同時に振り返れば霊夢と積み上げられた道具たちが一緒に迫ってくるじゃないか。
咄嗟に霊夢を庇うため抱きしめ、俺たちは道具に埋もれてしまう。
ふにっ……ふにっ。
「んぁ……っ、ん……」
いや、なんでそうなるんだよ。くっそ、手がちょうど霊夢の胸の位置にあるし、しかも道具のせいで身動きとれねぇ。
ーーあと、その声やめろ! 俺は霊夢にそんな気持ちを抱くのは止めたんだぞ!
「霊夢……済まないが俺は動けん。どうにか抜けて出られないか?」
「……んん、もっと触ってもいいのよ……?」
「ちげーよ! 早く出ろ!」
催眠術をかけて、無理やり霊夢を脱出させる。なんでこんな使い方させられるんだ……。
・
部屋の高所の拭き掃除だ。あいにく、俺は飛べないからこればかりは霊夢にやってもらうしかない。俺にできることは霊夢から雑巾を受け取って綺麗にした雑巾と交換するなり、集まったごみを捨てにいくぐらいだろう。
「雑巾交換おねがい」
「あいよ……っブッ……!」
急に吹き出した俺に霊夢は疑問符を浮かべている。いや、お前下着を付け忘れてるんじゃねぇよ。さっき濡れて着替えた時か、ばっちり霊夢の花園が見えてしまった。
「お前、下履いてないじゃねーか……」
俺がそう言うと、バッと……顔を赤らめてスカートを押さえて隠す。あ、ちゃんとそういう恥じらいはあるんだ、よかった……じゃない! 余計にこっちも恥ずかしくなったやんけ。くっそ。眼福でした……。
「そのちょっと着替えてくるわね……」
「お、おう。ま、慌てずにな」
・
などなど、というかほとんどの場面でラッキースケベ発動してんじゃねーか。なんでそうなる。おい霊夢のやつかなりポンコツだぞ。
それとも今まで気を張りすぎていた反動か? 逆に気を抜き過ぎてしまってるとか。なんというか極端だなぁ……そこら辺もおいおい矯正させていくか。
なんか普通より余計に疲れた気がするが、とりあえず神社は綺麗になった。
もうばっちり日も暮れてきたし、一日かがりの大仕事になってしまったな。のんびり過ごすって言ったのに結局、こんなに動いてしまった。霊夢に申し訳ないな。
今日は霊夢が夕食を作ってくれるらしい。女の子の手料理だ。ワクワクする。
俺はその間、井戸から水を汲んで風呂の準備をしつつ、掃除で汚れた服などを洗濯していた。
こういう共同作業みたいなものも悪くはないな。まだ幻想入りして二日目だけど、霊夢の厚意でしばらくは神社に泊めてもらえるし、滑り出しとしては悪くはないんじゃなかろうか。
もちろんゆくゆくは幻想郷を見て回りたいが、今は霊夢が危なっかしいからな。しばらくは面倒見るっていうと俺が神社にお世話になってるから変な話だけど、そうしたいと思っている。
「ご飯できたわよ。洗濯ありがとう」
「おう、もうすぐ終わるから先に食っててもいいぞ」
「ううん、一緒がいい。私も手伝うわね」
「そっか、悪いな」
などと他愛もないやり取りをして、静かに手を動かす。
夕暮れに当てられた霊夢の顔が少し赤らんで見えて可憐だと思う。表情は微笑みをたたえていて機嫌が良さそうだ。
少なくとも昨日のような全てに絶望して生気の宿していない顔はそこにはない。
そのことに俺はたしかな充足感を得る。俺が幻想郷にやってきた意味はあったのだと。そう思えるような気がする。
たぶん霊夢の感じた絶望は完全に拭いきれているわけではないだろう。今日も時折感じる霊夢の視線からはどこか迷子の子どものような不安を抱えたようなものを感じたからだ。
一朝一夕でどうにかなるものではないが、そこはまぁしばらくは神社でお世話になるし。明日のことは明日の俺に任せようと思う。
洗濯を終えて、和やかに霊夢と食卓を囲み。
そして、また霊夢にせがまれて一緒にお風呂に入るとかの一幕はあったけど割愛。
霊夢の要望により布団の距離は近い方がいいって言うんで並べて敷いて、霊夢と布団に横になっている。
「巫女としての仕事を忘れて過ごしたの初めてよ」
ちらりと霊夢の方へと視線を向ける。天井の方を眺めていた霊夢の視線がこちらに向けられて交差する。
「これでいいのかなって不安はあるわ。でも、あなたが言うように私って働き過ぎていたんだと思う。冷静に過去を振り返ってみて本当に私がやる必要のあったことなのかなって思うようなことも私が全部引き受けていた気がする」
霊夢の潤んだ瞳から目をそらせない。どこか余裕の感じさせるような笑みを見て俺は。ああ、やはりこの少女は俺が知っている霊夢と同一の人物なんだと思い知る。
誰よりも強く、分け隔てなく。自由に空を飛び、人よりちょっと強欲で感情豊かなそんな素敵な少女。
その面影を見れた気がした。
「霊夢が頑張らないと成り立たない幻想郷なんてクソだからな」
「ふふ、過激ね。でも私もそう思うわ。なんであんなに頑張っていたんだろうってちょっと馬鹿みたいだもの」
ふわりと笑みをこぼし、霊夢は目を閉じる。
「でも、やっぱりまだ急には自分の在り方を変えられないわ。だから、その……」
不安げになにかを耐えるように体を震わせて。俺は霊夢の頭に手を伸ばし、撫でてやった。
「霊夢が頑張り過ぎないように俺が見張っててやるよ。しばらくお世話になるしな。家主に倒れられたら困っちまう」
俺の言い分が可笑しいのか小さく笑みをこぼし、不安げな表情が和らぐ。
「……そうね。あなたが見てくれるなら、私も自分を変えられる気がする。だから、ずっと……そば……に」
途中までなにか言おうとして、眠気に耐えられなくなったのか霊夢は眠りに落ちる。
「……睡眠の質がよくなる。よく疲れも取れる。きっと自分を変えられる……おやすみ霊夢」
心地のいい眠気に俺も抗うことなくはそのまま眠りに落ちていく。
俺は幻想郷でどう在るべきだろうか。