1946年2月10日、日本は逆境からの脱却を果たし、史実よりも数の揃った艦隊を率いて始まりの地、真珠湾へ向かった。しかしながら今回は攻撃を目的としてはいなかった。
もはや日本には力は残されていなかったのである。
沖縄まで迫った米軍を撃破して一時的な優勢を得たのまでは良かっただろうが、それを得る為に余力を使い果たしてしまった。
だがそれは米軍側も同じだった。独伊を倒すまでに数千万の人を失い、その後対日戦でガダルカナルや硫黄島、沖縄上陸作戦と言った地獄の戦いを経て、深刻な人手不足に陥ってしまったのだ。
その結果、両国の平和を望んだ天皇、大統領を始めとする和平派が、始まりの地たる真珠湾での講和条約締結まで漕ぎ着けたのである。
そして両軍の主力艦隊が睨み合う中で長きに渡る戦いに区切りがいままさに着かんとする瞬間だった。
『閣下ッ!こちらに向かう爆撃機発見!B29ですッ!』
「なんだとッ!嵌めたか貴様らッ!」
会談の最中に突如として爆撃機が襲来。報告を受けた日本の将校がその場で米国の将校に怒鳴る。しかし、
「違う!我々は命令していない!」
「一体何が、、、」
会談のためにやって来た大統領でさえ混乱している様子は日本側の使節団の熱を冷ますのには十分だった。
では一体誰が命じたのか、一同の中には疑問が巻き起こる。だが答えはすぐにやってきた。
『その爆撃機には新型原子力爆弾が載せられている。』
真珠湾に謎の声が響く、その場にいた全ての人が凍り付く。
真っ先に反応したのは米国大統領と米軍将校達だった。
「な、何を考えているんだ貴様は!?」
「全軍攻撃停止及び待機を命じたはずだ!何故!しかもよりにもよって原子爆弾を!?」
阿鼻叫喚の将校達の問いの答えが無線から帰ってくる。だが、
『私達はこの戦争を真に終わらせるため、その島を処刑場とし、貴様ら売国奴及び、卑劣な日本人どもを一掃する事にしたのだ。』
「なっ!」
その答えは無情なものだった。
「か、考え直せ、今ならまだ引き返せる!あと少しでこの戦争が終わるんだ!貴様らの考えが分からない訳ではない!勝敗も決まらぬまま数多の命が消えた戦争を止めようとする私たちが売国奴に見えるのだろう!だが止まれる内に止まらねば、その先に待つのは勝者なき絶滅戦争だけだ!私が大統領に選ばれたのだって、国民達も戦いに疲弊し一刻も早く終わらせたい事に他ならない!引き返せ!」
大統領が言葉による説得を試みる中、両軍は迎撃と退避の準備を開始していた。
「ええい!迎撃機は出せんのか!」
『もう発艦しています!ですが!B29は超高高度を飛行しています!米軍にも確認を取りましたが、間に合う機体はいません!』
半ば叫んでいるようなやり取りだが、間に合わないと分かると人々は退避を開始した。
「急げ艦に兵を収容しろ!」
「閣下!島民が助けを求めて集まって来ています!どうしますか!」
「航空機を投棄させた空母に乗せるんだ!生憎お互い人員不足だったからな、なんとか乗せられるはずだ!」
「ハッ!」
「閣下!戦艦隊が三式弾射程に入ったとのことであります!」
「各員を戦艦の甲板から艦内に退避!持てる手段全てを使って迎撃させろ!」
「閣下ァ!」
「どうしたァ!」
「各艦出港準備完了しましたァ!」
「よくやったァ!各艦出港最大船速ゥ!」
こうして皆の努力によりどうにか助かる道筋が見え始めたが現実は非情だった。
「閣下!米軍よりB29の積んでいる新型原子爆弾は水素爆弾と言うらしくこれまでに比べ威力が桁違いであり、今から逃げたとしても爆発からは逃れられる可能性は低いとの事!」
「なにぃ!?」
説得は出来ず、航空機は辿り着けず、艦砲では命中は期待できず、爆弾が投下されれば助からない。人々は先程までのいがみ合いが嘘のように協力をして見せたがかえって米軍の過激派を刺激し、なす術なく死を迎えるはずだった。
たった一人だけ、ただ一人この状況を覆せる男がいた。
『あーあー、こちら飛田、こちら飛田、敵爆撃機補足、迎撃戦を開始』
「「!!」」
「到達できたのか!飛田大尉!」
「一体どうやって、、、どうやってそんな短時間であの高高度に、、、」
『なに言ってんですか?俺の機体は職人達の特注品ですよ?辿り着けなきゃ祖国の土を踏めなくなりますよハハハ。』
名を飛田勇、数多の激戦を制し世界一の空戦士と呼ばれたエースパイロットである。彼は超大国アメリカがそう易々と停戦しないと経験から考え、事前に上空で待機していた。尚、当時は艦内待機命令が下されていたので重大な命令違反である。
俺、飛田勇は転生者である。元いた時代は2026年、、、になった瞬間までだな。
航空整備士をしていたら着陸の事故に巻き込まれて御陀仏だ。ひでぇ話だよな、だがもっと酷いのがここからだった。
なんと転生先は1910年代の帝国日本、しかも親に捨てられスパルタな軍隊に強制入隊だとよ。
まぁ海軍の航空兵になってどうにか戦後まで生き残るつもりだったんだが、、、
日本の戦争というとどうしても太平洋戦争の印象が強いが、実際にはその前から色々戦争やら紛争をして来たのさ。
おかげで同期や教官やら世話になったヤツらは皆靖国送り、俺も自分で言うのもアレだが大分この時代の価値観に染まって自分の存在がわからなくなりやがった。
最近じゃ乗った艦で美女を見るようになっちまってな、軍に似合わない格好してるのに周りが気にしてないんで直ぐに幻覚だと気づいたよ。
ちょっと怖かったんで極力視界に入れないようにしてたがな。
さてと、走馬灯代わりに今までを振り返ったし後はあのデカブツを落とすだけだ。幸いにもアレは慣れた相手だ、しかも今回は一機だけ。
、、、なんか裏がありそうだが取り敢えず出来ることをするだけだろうよ。
なんだぁ?奴等銃座を増やしてやがる。どうりで弾幕がいつもよりも更に濃い訳だ。
其方も特注品で張り合おうってか?此方は特注品と言っても発動機だけだぞ?レシプロとジェットのハイブリッド、前世の役職のおかげで大分楽に作れたが、、、ジャンルが違うダルルォ!?
あーあもう機体が穴だらけ、高高度だから入って来る風がさみぃな。だが、俺の勝ちだよ。もうヤツは尾翼が全損、発動機は全部火を吹いてる。そのうち燃料に引火してド派手に爆散大勝利だ。
「〜〜!!」
ん?なんか持って指差して、、、あぁそういうことか。
テメーらは最初から艦隊じゃなくて俺狙いだった訳か。
まぁそうだよなぁ、俺はそこらの指揮官に比べて直接殺した敵が遥かに多いし、必要とあらば対地、対艦、更にはドイツまで行って戦闘に参加してたからな。恨まれた数は相応に多いだろうな、こんだけデカい爆弾背負ってまでやって来るくらいだし。
こりゃ終わりだな俺、今から逃げても水爆からは逃げられん。
、、、無線がやかましいな、全く最期くらい静かにさせろよ、、、でも世話になったのは変わらんし、最後に礼は言っておくか。
「そう騒がなくても大丈夫ですよ。どうせ被爆して先も短かった命です、これだけの人を守って死ねるなら軍人冥利に尽きるってヤツですよ!」
『だが!せめて私達は君に平和なった世界を見てほしいんだ!これでは我々は君の功績に対して返せた者が少なすぎるだろう!』
「そんなもん、俺を拾ってくれた時に貰ったもんで十分ですよ!、、、後の未来は託しましたよ。」
『ま、待t』ブチッ
、、、さて、そろそろ終わりかな。
空の彼方に閃光が走った。人々は嘆き、悲しんだ。理由は様々だった、戦友を失った者、恩人に何も返せなかった者、希望を失った者、けれど人々の思いは同じ者に向いていた。そしてそれは、人だけでなく人々を乗せている者達も同様だった
忙しいので感想への返信はできないかもしれません。拙い文ですが読んでいただきありがとうございます。