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私達には異なる世界の記憶があります。
最も多いのは敗北し帝国が滅亡する世界、次に多いのは深海悽艦と戦う世界です。
ただ、どんな世界でも私達は、日本は、世界は、必ずあの時代に地獄すら生ぬるいとも言える戦争を続けていました。
でもこの世界は違いました。
だった1つだけ、ただ1人だけ、いないはずの人がいました。
その人は悲劇に終わるはずの私達を、その運命を青く澄んだ空の中から拾い上げてくださいました。
皆、彼を見てやがてある思いを抱えていきました。
『彼ならば』『彼にしか』『彼になら』
でも、私達は背負わせ過ぎていました。そして、、、気づくのが遅過ぎました。
ー1946年1月14日ー
本来なら私達は深い海の底で眠っているはずのその時、私達は南方戦線との補給線及び海域の完全掌握、孤立していた南方諸島の解放を成し遂げ
シンガポールに停泊、これを記念し宴会が開かれていました。
恥ずかしながら私達も、乗組員の方々には見ることは叶いませんがすぐ側で集まって宴に酔いしれていました。
ですがその最中、此度の立役者にして不可欠な存在たる彼、、、飛田勇大尉殿が居ないである事に気がつき、私達艦娘による捜索が行われました。
結論から言えば大尉殿は直ぐに見つかりました。見つかったのは私、、、戦艦大和の艦首。一人潮風に当たりながら晩酌をしていました。
普段の底抜けに明るい大尉殿ならば、決まって宴会の中心にいる筈にも関わらず、誰もいない場所に一人など考えられなかった私達は発見時かなりの衝撃を受けました。
そこで私は彼本人に聞く事にしました。
通常、私達艦娘は深海悽艦の出現もしくは妖精さんの出現が無ければ他者には知覚できない存在です。
しかし大尉殿はドイツから帰国して以降、艦娘を認識出来ており、、、本人は精神病と考えているようでコチラを見るとそそくさと逃げてしまいますが、会話をする事は可能であると考えられたからです。
「、、、」
「、、、大尉殿」
「、、、幻覚が酷くなりやがったか、、、」
「私達を幻覚と思うのは構いません、、、ですが一つお聞きしたい事があります」
「、、、」
「何故、今日はお一人でおられるのですか?」
「、、、」
「大尉殿、どうかお答えください、、、」
「、、、今日くらい幻覚に縋っても構わんか、、、はぁ、、、」
「言える事があるならば、ただ気分が乗らなかっただけだ」
「、、、理由をお聞きしても?」
「お前が何者か、俺をどこまで知ってるのかは分からねえが、、、何のために生きていたんだか分からなくなっただけだ」
それから、大尉殿は赤裸々に自分の歩みを教えてくださいました。
「俺には前提として肉身がいなかった、気付いた時には親父に、、、先代長官に育てられていたんでな。そしたらすぐに親父は俺がたくましく育つように軍に放り込んだ」
「今にして思えば俺に居場所を作ってやりたかったのかもしれねえが実際は分からねえ。ともかく俺が海軍に入ったのは自分の意思じゃねえし、愛国心があった訳でも、守りたいものがあった訳でもなかった」
「しばらく経つと厳しい軍学校の中、俺にはある指標が浮かんだ。」
「ある日、教練で江田島の近くを同期とカッターボートを漕いでいたら息が上がってきてな、すっと上を向いたんだ」
「するとそこには雲一つない大空があった」
「俺は海軍から冷たく人が生きるには縛りが多い海を知ったからな、そんときは阻むものもない空がとても魅力的に見えたんだ」
「それから俺は取り憑かれたようにまだ技術的に未熟な航空機の道を進んだ」
「航空隊として最初に乗った船は鳳翔だったな、機械も人も資源も何もかもが足りなかったが、すぐ発展していく機体を見て皆目を輝かせていた」
「だが転機がやってきた」
「支那事変が発生して、、、同期や友人が半数以上逝っちまった」
「俺はその戦いで同期を撃墜したソ連だかアメリカだか分からんがそこの新鋭機を多数撃墜して一躍エースに、親父は作戦の成功で昇進し海軍の司令長官になった」
「軍や新聞は俺を持て囃し、大衆もそれに乗って『貴方がいれば』ってな」
「だが俺には全く嬉しくはなかったさ」
「死んで行った同期や先輩達は俺にとって唯一の居場所だった」
「そしてそいつらには俺とは違って大切な人や帰りを待つ人、帰りたい場所が沢山あった」
「当時は何故俺が生き残ったのか疑問が尽きなかったが、丁度良い理由を見つけた」
『俺が皆を護り抜くしかない』
「一番単純で周りの言葉と一致しちまったもんでな、、、以降俺はひたすら強さを求めるように変わった」
「やがて一航戦に配属、部隊の隊長になった」
「それから暫くは戦いもなかったからか、訓練に明け暮れる俺を憐れんだか知らんが親父が海外を回れと言ってきた」
「期間は三ヶ月、愛機で飛んでこいとさ」
「反対はしたが周りに押し切られて渋々行った」
「インド、エジプト、イタリア、ドイツ、フランス、イギリス、そしてアメリカ」
「ソ連は日本が赤狩りの最中だから行けなかったが、沢山良いものを見られた」
「いろんなダチが出来た、他国の同業を見て自分の立場がよく分かった」
「だが一番衝撃だったのはアメリカだ」
「ワシントン、ニューヨーク、デトロイト、カリフォルニア、ロサンゼルス」
「生活水準や品質は日本とは比べ物にならない、まさに人類の努力の結晶にして芸術だと感じたさ」
「航空機だって格が違う、こっちは今だに複葉機で精一杯だってのに向こうは単葉で脚が格納されるときた」
「俺は帰って親父に『頼むからアメリカと一戦交える事態にはならないようにしてくれ』と訴えた」
「そしたら親父も『分かっている』と返してきた」
「だが協力してくれとも言ってきた」
「以降俺は反開戦派として親父と共に開戦派の陸軍、主に関東軍あがりの連中と言葉で戦った」
「結果的に天皇陛下も主張に同意してくれたから此方が勝つ筈だったが、、、」
「親父は暗殺された」
「立て続けに海軍や陸軍の反開戦派が殺された挙句、陸軍のトップが事態の沈静化を理由に皇居など国の要所を制圧、奴等は言葉で負けたとなると暴力による国の支配を行なった」
「それからは皆が知るように政権を握った陸軍が陛下を脅し、対米戦争が開戦」
「俺も最前線で戦って何とか仲間を護りつつ生き残ったが、、、功績が目に付いたのか、突然ドイツへの派遣が決まった」
「向こうでは色々あったが、帰ってきてみると同期は全員靖国行き、信頼のあった先輩は全身火傷で飛べず、街は焼け、船は沈み、島は取り残され、空はアメリカのモノにされてやがった、、、」
「だがそんときはまだ現実として受け止められなかった、焼けた東京を歩くまではな」
「そこには枯れた木みてえなツラした人が涙も流さず我が子やら親を弔って下を見ながら生きていた」
「かつて護ると誓ったはずなのに、、、俺は何も出来なかった」
「好き勝手に自分の夢を追いかけて、周りを見なかったから仲間を死なせ、そこから何も学ばず何も護らず」
「俺は、、、俺は何で飛んでる?愛国心も夢も希望も故郷も親も友人も何も無い俺が何故、それらを求めない俺が、何故生きている?」
「少なくとも今の俺はここにいる他の奴らや日本にいる人々にとって最後の希望なのは散々聞かされたから知っている」
「だから、、、そんな希望が必要じゃなくなるまで俺は『大尉殿』であり続けるが、、、それ以降は、、、」
「独りで生きさせてくれ」
大尉殿はそこまで言った後倒れる様に眠りました。
私は、、、私にはどうすればいいか分からず大尉殿を自室まで運んだ後、姉妹艦の武蔵や信濃に話しました。
武蔵は話しを聞いた後、まるで罪人が死刑を待つ様に俯いて独り言を漏らし
信濃は啜り泣きながら謝罪の言葉を言い続けました。
かく言う私も力が入らず座り込んだまま動けませんでした。
アレから80年近くが経ち、私達は再び集い、戦いに向かおうとしています。
再び会った時、大尉殿は忘れてしまったのか私達とは初対面の反応を見せましたが、まだその目はあの時と変わらない焼けた土の色をしたままです。
私達姉妹艦は目標を持ちました。
必ず人類を救う事
そして、、、
何が起ころうとも飛田勇を守ること
演習とかじゃなくガチの殺し合いが見てえなぁ