TS転生クソボケユメ先輩(死亡済・幽霊)が原作のn倍ホシノの脳を焼いていた話 作:死刑囚
非っっっ常に遅くなりまして申し訳ありません!
書きたいことと書くことはおおよそ決まってたのですが上手く良い感じに決まらず書き直しているうちにこんな時間に。
というわけで、vsビナーくん+αです。
うねる巨体が砂漠に叩きつけられる衝撃が、第二回戦の号砲だった。
先輩の生み出した砂の波も凄まじいものだったけれど、この『大蛇』の生み出すそれはレベルが違う。砂の大津波、と言っても過言でないほどの、砂の壁が迫ってくる。
「――ホシノ! お願い!」
「っ……任されました、先輩ッ!」
先輩の肩に手をついて後部座席から立ち上がり、愛銃を構える。狙いは大雑把で構わない、何せ、目の前一面に広がっている壁が目標だ。
その壁へ向かって、力を込めてトリガーを引く。腕に残る振動。思い通りに放たれた弾丸は風を切って無数に拡散し、狙い通りに砂の壁を突き破る――穿たれたのは、ちょうど、バイク一台が通り抜けられるほどのサイズの大穴だ。
先輩は、ブレーキを踏むことなくその穴を潜り抜ける。潜り抜けて、ちらりとこちらを振り向いて、嬉しげに、にっ、と笑った。
「流石だね、ホシノ。信じてたよ」
「〜〜ッ、それほどでも、ありません……!」
背筋がむず痒い。これは高揚感、だろうか。
戦場の生み出すアドレナリンが、先輩に認められて震える胸に溶けて、なんとも言えないふわふわとした感覚に包まれる――いけない。まだ戦闘中だ、気を抜いちゃダメだ。
現に先輩は、どうしたって見上げざるを得ない『砂漠の大蛇』を睨みつけながら、蛇体の合間を縫って駆け抜けている。
……砂混じりの暴風が、私達の間を吹き抜けてゆく。心地良い。アビドスの熱風を、そう感じる日が来るなんて思ってもみなかった。
「それじゃ、突貫――と、行きたいところだけどね。その前に一仕事やらなきゃだ」
「何を……ああ、なるほど」
先輩がハンドルを勢いよく操作し、大きく旋回する。『砂漠の大蛇』の一部、アーチ状に砂から飛び出した胴体部分の真下を潜り抜けて向かう先には――未だ砂の中に半ば埋もれた、改造制服のゲヘナ生が数人。大半は吹き飛ばされて行ったものの、やはりまだ何人かは逃げることも出来ていない。
……まあ、流石にね。
彼女たちは敵だ、私たちのアビドスに攻め入ってきた敵だ。それは疑いようもなく……けれど、だからヘイローが壊れたって構わない、なんてことは思えない。
やっぱり先輩は優しい人だ。優しい人、だからこそ……分かってしまう不自然さがある。
「(――自分の指示に従え、なんて言ったクセにさ。本当に、この人はもう、嘘をつくのが下手というか、分かりやすいというか……)」
目と鼻の先では、『大蛇』が猛り狂っている。先輩は私を背に乗せて、懸命にハンドルを操作している。――どう考えても、それは良い手段じゃない。
ゲヘナ生を救助するのを目標とすると、『大蛇』に追われている今の状況は最悪だ。後ろから攻撃は飛んでくるし、それを掻い潜りながら何人もの生徒を助けなければならない。彼女たちが巨体に押し潰されないように迂闊には近寄れないし、一人掬い上げるごとに重くなってバイクのスピードも落ちるだろう。
救助したいのなら、どうにかして『大蛇』の注意を逸らす必要があって――その為には、現状なら囮を出すしかなくて。その事に、先輩が気付いていないなんてことはある訳がない。
先輩は私に『囮になれ』と言うべきで、言い出さないのは――自惚れじゃなければ。私に、そう言いたくないからだろう。
「(こんなに格好いいのに、こんなに凛々しいのに、こんなに強いのに……やっぱり、貴女はそれだけの人じゃない。甘くて、優しくて……そんなユメ先輩だから、私は――貴女に守られるだけじゃなくて、貴女と一緒に並んで歩きたいんだ)」
……『大蛇』はやっぱり、信じられないほど大きい。その辺に放棄された旧アビドス市街のビルなんかよりも大きく、高く、重厚だ。そんなものがこうも暴れているのだから、やっぱり相応に恐ろしく思う。万が一、一撃でも貰えば……無事では済まないかもしれない。
――でも、先輩の背から手を離して、バイクへ足をかける。
「先輩。私が行きますよ」
「な……ホシノ!? それは……っ、やっぱり駄目だ、危険すぎる!」
「危険なのは今更でしょう。先輩だって、必要なことだと言うのは分かってるでしょう? どちらかが囮になった方が良くて、ちんちくりんの私は先輩ほどコレを上手く操縦できませんから」
先輩は僅かに押し黙る。それはそうだろう、理屈で言えば正しいのは私の方だ。これは先輩が珍しく――と言うわけでもないが、我儘を言っているだけの話。
だから、ちょっと意地悪く、私の意見を通させてもらおう。
「あの程度の速度なら、いくら巨体と言えど躱せます。先輩の攻撃に比べれば、遅いにも程がありますし。……それとも、ユメ先輩。私が信用できませんか?」
「――っ、それは……」
「たまには私にも我儘を言わせてください、ってことです」
先輩は何事かを言おうとして、逡巡し。口を開きかけて……さっ、と顔色を変えて、ハンドルを握り込んだ。――風切り音?
瞬間、陽の光を遮る幾つかの影。振り向けば――
「な……ミサイル!?」
「ちっ、ちょっと引きつけるよ! ホシノ、背後についたのを撃ち落として!」
「了解っ、です――ああくそ、こんなものどこから撃ったんだ!」
バイクのシートに座り直して背後を向く。
息を吸って、吐いて、吸って……お腹に力を込める。そこから湧き上がった力を、腕から指の先へ。指の先から引き金へ、引き金から銃身へと伝わせて――がちり、とトリガーを引く。
全て、射程内だ。
「吹き飛べッ!!」
腕にかかる少しの反動。澄んだ甲高い音と共に吐き出された弾頭は緋色の尾を引いて拡散する。排莢、続けてトリガー。都合数回、撃ち出した散弾は目論見通りにミサイルへ突き刺さり、それを爆発させた。
――猶予はない。先輩は、ほんの少しだけ溜息を吐いた。
「……ごめんホシノ、俺のせいだね。もう少しあの子たちを吹き飛ばせていれば……」
「あの。あなたは何を言っているんですか?」
……流石にそんなに気安く吹き飛ばされては、敵といえどゲヘナ生に同情してしまうかもしれない。先輩は戦闘をスコアアタックか何かと思って……いや、先輩に限ってそれは無いか。
なら、それはそれで先輩は素で『もっと倒し方を調節できた』と言っているに等しいわけで……ああ、もう。いくら凛々しくても先輩は、どこか抜けている先輩のままのようだ。一旦それは置いておこう。
「あれだけ綺麗にゲヘナ生を殲滅しておいて、それ以上なんて誰も望みませんよ。……というか、無駄話してる暇はありませんよ、先輩」
「……誤魔化せないか。ごめんね、ホシノ。お願いできるかな――きっと、攻撃手段はあれだけじゃない。くれぐれも気を付けてね」
先輩が、自身の銃から取り出した銃弾――スラッグ弾を投げ渡してくる。私はそれを受け取って、次弾に装填した。
返事の代わりに、ぐっ、と脚に力を込める。リロードは万全。たった数分囮になるくらい、大したことはない。静かに鼓動する心臓、僅かに手のひらに滲んだ汗をスカートで拭う。
先輩がバイクのアクセルを吹かす、それに合わせて飛び出す――寸前。
「ああ、そうだホシノ。――ホシノはちんちくりんなんかじゃないよ。とっても可愛い、俺の大事な後輩だからね」
「〜〜〜〜ッッ!! よ、けいな事を言ってないで、早く行ってくださいッ!!」
――この人と話していると、ほんと、心臓がいくつあっても足りないんじゃないかって思う。胸がばくばくと弾んで、ほんの少し切なくなって、嫌じゃない熱が身体を焦がす。
耳まで熱いのを誤魔化すように、熱砂の中へ跳び上がる。そのまま両手で構えて、『大蛇』の顔へ向かってトリガー。緋色の尾を引いた銃弾が、青い空を切り裂いて『大蛇』の頭部を揺らす。
腕が痺れる。反動のまま風を切って、砂に埋もれた横倒しのビルの上へ着地する。
……ちらり、と彼方を見遣る。遠ざかってゆく、風に棚引く碧色の髪と、黒いバイクの車体。
ちかちか、きらきらと、遠くのバイクが光を反射する。どこで買ってきたのかも分からない、ラメ入りの、ピンク色の名前シールが原因だ。
黒い車体に不釣り合いなそれは六角形をしている。梔子ユメという名前と、絶妙にデフォルメされた――先輩自身が描いた――先輩の似顔絵。それらが記されたシール群は車体のそこかしこに貼り付けられ、洗練されていたバイクの印象をどことなく気の抜けたものに変貌させている。
絶対、そんなにべたべたと沢山貼り付ける意味なんて無いだろう、と思うんだけど。
「……モモフレンズと言い、あのシールと言い。先輩はたまに妙なものを気に入るんですから、全く」
――ふと、遠くのその輝きが陰る。巨大な影が、太陽を遮った。
「……ッ!」
背筋に走った悪寒のまま、横に走り出す。影が私を追って、身動ぎをする。見上げれば――それと、『大蛇』と目が合った。
巨大な蛇の頭が、私を睥睨している。流石に全力を込めたスラッグ弾は無視できなかったようで、ゲヘナ生を拾いに走り去った先輩ではなく、私に狙いを付けたらしく……その蛇顔の横に、今にも振り下ろさんと高く持ち上げられた、ビルと見紛うほどの大きさの尾があった。
「……ちぃッ!」
思わず舌打ちをしてしまう。頭上へ向けて、何度も弾を放つ。
命中は、している。銃弾は装甲に幾つもの傷を付け、耳障りな衝突音が無数に響いている。ただ、けれども、振り下ろされる尾には何の影響もない。
「……ダメージが通るとしても、これだけ大きいと……!」
飛び退くと同時に、振り下ろされた巨大な蛇体が地面を揺らした。一瞬前まで足場にしていた、ビルの残骸が粉砕される。
風圧に煽られてごろごろと転がされ、高く舞い上がった砂と、コンクリートの破片が降り注ぐ。
やっぱり一撃が強烈すぎる。動きも思ったよりは速い。
いくらアビドス砂漠での行動に慣れているとは言っても、足場が悪いことには変わりなく――点在する建物の遺構を飛び石のように踏んでゆくことで、なんとか巨体を避けてゆく。
「流石に、目測が狂うね……!」
攻撃を避け辛いのも、あるいはそれが原因かもしれない。遅いようで速く、遠いようで近い、叩きつけられた胴体の一部へ向けて、引き金を引く。予想よりも長く飛翔した弾丸が白い装甲に突き刺さり、僅かな罅割れを走らせる。
攻撃は通る……少なくとも、適切に命中さえさせられれば。問題があるとすれば、こいつが大きすぎるということだろう。装甲自体が硬いのもそうだが、ただ単純に、私の一撃で与えた損傷が『大蛇』の全長からすればほんの僅かな傷にしかなっていない。
ゲームのように喩えるなら、『防御力も高いが、それ以上にHPが高すぎる』……とでも言うべきなのかな。うへ、面倒臭いことこの上ないね。
「胴体を攻撃したって意味はない……狙うなら、倒すなら、当然急所。だけど、ね」
つまり、頭部。どんな怪物だろうと、どんな機械だろうと、そこが急所でない筈がない。
『大蛇』の装甲はつるつるとしていて、しかし継ぎ目がそこら中にある。登るための足場には事欠かない。私の散弾銃で頭を狙おうとするなら、必然的に駆け登るしかないだろう。
だが、駆け登る必要がある、ということと――実際にそれができる、ということ。そして、それをする必要があるかは、また別の話。
「……さっきのミサイル、そんな所からッ」
『大蛇』の首筋、頭部のすぐ後ろにある丸いパーツが開いて、無数のミサイルが飛び出してくる。全力で足を動かしたまま、乱雑に照準を合わせて引き金を引く――散弾がそれらを貫通し、幾つもの爆炎が空を覆う。
私の役目は、ただの囮。ユメ先輩が戻ってくるまで、こいつを引き付けること。倒すことじゃない――無理な攻撃をして、怪我でもすれば。あの人はきっと落ち込んでしまうだろう。
それは、させたくない。
「避けるだけなら、どうにでも……!」
だから、掻い潜る。飛び退く。転がる。全身は砂だらけで、どこもかしこもぐちゃぐちゃで気持ち悪い。暑くて、熱くて、汗とともに力が抜けてゆく。それでも、足を止められない。
建物の残骸は、近くのものはとっくに粉々だ。代わりに、『大蛇』の放ったミサイルの残骸、その上を飛び移ってゆく。汗が顔を伝い、張り付いた砂を巻き込んで滴り落ちる。
申し訳程度に反撃をするのは、あいつが私から興味を失わないようにする為だ。……バイクのエンジン音は聞こえない。
「に、したって――こんなに効果が無いなんて、自信なくなっちゃいそうだよ」
暑い。汗を拭う。
どれほど戦闘を続けただろうか。……きっと、そんなに長い時間じゃない。三分か、五分か、その程度。その短い時間が、永遠にも感じられた。
無数に降り注ぐミサイル、振り下ろされる鋼の尾。地面を揺らすそれを、無我夢中で飛び退いて回避する。耐えられないほどの熱風が、私を吹き飛ばす。砂の中に混ざったガラス片が、手足を切り裂いてゆく。
じりじりと、肌が焦がされる。汗が止まらない。熱い、熱い、熱い……おかしい。熱すぎる。
砂漠の熱気、じゃない。尋常でない熱量が、いつの間にか、目の前にある――『砂漠の大蛇』。それが今、膨大な熱の塊になっている。
「……っ、キツいな……げほっ」
『大蛇』の全身の黄色いラインが、眩く発光している。身動ぎをする度に、奴の身体の下に敷かれている砂が焦げ、融解し、ガラス状に変質している。巨体がずるり、と動けば、砂の上を張って、熱を孕んだ風が私に叩きつけられる。
息を吸った。口の中がからからになって、咳き込んだ。見上げる――見下ろされている。『砂漠の大蛇』が、私なんて丸呑みにしてしまえる、その大口を開けて。その口内に、巨大な赤い光を蓄えて。
予感がする。あれはきっと――私のヘイローを壊しうるものだ。
「(逃げ、ッ――)」
どこへ? 砂漠のような、遮蔽のない開けた場所で。相手は私よりも遥かに大きく、多少動き回ろうと、こちらを捕捉し続けている――逃げられない。
……『大蛇』の光が強まる。あれは収束した
思考がぼやけてゆく。上手く言葉がまとまらない。半ば意地で目は閉じてやらないが、光が眩し過ぎて潰れてしまいそうだ。
「……ああ、くそ。畜生め」
愛銃を持ち上げて、『大蛇』へ向かって構える。銃口の向く先がぶれて、照準も定められない。一矢報いることもできない。
熱と光は臨界を超えて、私へ向けて、真っ直ぐに――その、私の目の前に。
「――縦えこ◼️身が砕けても、永◼️に盾となれ◼️ように」
割り込んでくる影。私の肩をぽん、と叩いて、何も気負わない風に、いつも通りに、私にその背中を見せて。
「縦◼️この身が滅◼️◼️も、永遠に導と◼️れるよ◼️に」
一度だけ私を振り返り、盾を掲げて。熱線が迫る轟音の中、碧い髪を靡かせて。
「縦えこの身が墜え◼️も、永遠に沈まぬ――◼️◼️◼️◼️◼️◼️のように! ……お待たせ、ホシノちゃん」
赤い光も、肌を焼く熱も、荒れ狂う風も、砂嵐さえも遮って。
そこにただ、手を翳して立つあの人は、こちらを振り返って、笑って。
逆光に照らされた笑顔が、ずっとずっと、魂に焼き付いて離れなくて。
青い、あおい、碧い光が、月のように広がって――
◆
――そして、今。私も同じように、盾を掲げている。
作戦が開始し、戦闘の最中。真っ赤な空と、吹き荒れる熱風。目の前には、変色した『大蛇』……ビナーの放った高熱レーザー。そして背後には、愛する後輩たち。
奇しくも、私の立場はあの時の先輩と同じだ。なら、あの時の先輩も、私と同じ気持ちだったのだろうか。
振り返ることなく、盾に力を込める。一歩たりとも、退がるわけにはいかない。セリカちゃん、ノノミちゃん、アヤネちゃん、みんなを傷つけさせる訳にはいかない。
――本当は、シロコちゃんも守りたかったし。そして、本当に守りたかったあの人は、もういないけれど。
それでも、私は守るために、強くなったのだから。
「……一昨日出直しておいで、そんなんじゃおじさんを倒せないよ」
『うわ……本当にビナーのレーザーを、盾一枚で防ぎきっちゃった……? あの、奥空さん? 小鳥遊ホシノさんって……』
『はい。私たちの自慢の先輩です』
『あの、いや、そう言うことじゃ……』
盾を振るい、付着した塵を吹き飛ばす。うへ、防げはしたけど周りの砂がガラスになってる。道理で熱い訳だね。
「さ、て、と……ノノミちゃん、セリカちゃん。準備はいい? アヤネちゃんはナビゲートも。せっかく便利屋の子たちにお膳立てしてもらったんだから、無様なマネはできないよ〜?」
「……ッ! 勿論です!」
「私の方も、準備オッケーです!」
「ん、なら行こっか。ウチは他のサンクトゥムと違って、人員が少ないからねえ。うへ、みんな馬車馬のように働かないとだよ?」
全キヴォトスの危機だけあって、ゲヘナでも、トリニティでも、あらゆる生徒が何かしらの手段でサンクトゥムを攻撃している。総動員態勢、と言えば格好はつくけど、聞けばゲヘナの辺りなんかはこれにかこつけて、とにかく暴れたい生徒が、丁度いい的である虚妄のサンクトゥムや、その守護者を攻撃しているらしい。
……
アビドスは、私たちで……あるいは、私の手で守らなければならない。なんて……私は、そんな風に考えていたのだ。
傲慢にも、今の今まで……遠くから、無数の声が聞こえてくるまで。
「――小鳥遊ホシノォ〜〜!!」
ぎゃんぎゃんと耳障りな、メガホンを通して割れた声がした。どこからか飛んできたいくつもの砲弾が、ビナーの頬へ突き刺さった。
声の方を見る――砂埃を巻き上げて、てんでばらばらで、ちぐはぐな集団が、大声をあげて迫り来ていた。
カイザーコーポレーション製の白かった戦車は、ところどころが破損していて装甲は煤けている。その周りを取り囲むのは、車種も砲口径もばらばらな、寄せ集めと形容するのがぴったりな戦車群。ゲヘナのもの、ミレニアムのもの、トリニティのもの。どれも二、三年前の型落ち品だ。中には、ただの装甲バンに砲台だけを取り付けたDIY戦車まで交ざっている。
それらに乗っているのもまた、雑多な制服たち。無理やり溶接したらしい不恰好な取手を握って、制服の裾を翻し、思い思いの銃をビナーへ向けている。
「……はは。これはちょっと、驚いちゃうなぁ?」
そして――ああ、その誰もが、見たことのある顔だ。先輩と一緒に、懲らしめて回ったスケバンたち。ヘルメット団たち。傭兵生徒たち。カイザーの、元兵士たち。統一性なんてかけらもない、まさしく寄せ集めた――いや。
「援軍に来たよ! 小鳥遊さんと……あのお人好しのために!」
「そらそらそらァ! 今こそ恩返しの時ィ! 号砲鳴らせェ!」
「バッ、先輩! うちらにそんな余裕ないっスよ!! ゴミ拾いじゃ生活費くらいにしかなんないんスから!」
「じゃあ仕方ねえ、そのまま攻撃ィ!!」
「銃弾だって元カイザーの人らが……ってもう! ええい、攻撃〜!」
寄せ集め、じゃない。ユメ先輩に集められ、ユメ先輩のために集まった、
……うへ。どうしようね、こんなにも……お腹の底から笑い出しちゃいそうなのは久しぶりだ。
頬が吊り上がって、我慢できずに、息を吸い込んだ。
「――おぉい!! あんたたち、半分くらい、もう卒業してないとダメじゃないの!?」
「まともに学校に通ってないあたしらが進級なんてできるかァーーッ!!」
「……ぶはっ!! うへ、うへへへ!! あははは、そりゃ全くそうだねぇ!!」
おっかしい。じゃあなんだ、彼女らはとっくの昔に改心して、復学だってできたかもしれないのに、ずっと留年を続けてたのか。来るかも分からない機会を待ってさ。
はあ……バカみたいだ。私もバカだバカだと思ってたけど、私と同じくらいのバカが居るとは思ってもみなかった。
「あ、あの……ホシノ先輩? あの不良たちは……」
「んや、セリカちゃん。彼女らは……不良というかは、『良』って感じの子たちかな。学校にも通ってないくせに、律儀に恩返しするためにアビドスに居続けてたみたいでさ……」
「では〜……敵ではない、ということでしょうか?」
「だね。随分愉快な味方で、おじさん面白くて笑っちゃったよ――さ、ノノミちゃん、セリカちゃん。あっちの方が数が多いからって、負けちゃ駄目だよ」
「――当っ然!! 助けに来てくれたのは有難いけど、それでもアビドスは私たちの学校なんだから!!」
私の盾の陰から飛び出してゆく、頼もしい後輩たち。駆けつけた援軍の総攻撃。あの日の『砂漠の大蛇』とは色が違えど、あの日倒し切れず追い返すことしか出来なかったのと同じ巨体が少しずつ怯み、倒れてゆく。
それはほんの少し、寂しいけれど――。
「さて、と。後輩が頑張ってるんだし、おじさんも頑張らないとだね」
寂しさよりも、もっと大きな喜びを込めて。私は、愛銃の引き金を引いた。
スケバン軍団のエントリーだ!
次話でみんながアトラハシースに登ったあとのクソボケパートを書いて、最終編は終わり! アビドス三章に突入、みたいなイメージでお願いします。