TS転生クソボケユメ先輩(死亡済・幽霊)が原作のn倍ホシノの脳を焼いていた話 作:死刑囚
またまた遅くなってしまい申し訳ありません。
どこまで書くべきか、何を書くべきかに迷っていて気がつけば日が経っていてしまい。
それはそうと、クソボケ鋼鉄大陸編の人気が高くて驚いてます。
いずれ書くかもしれないし書かないかもしれない。そして、いずれ書きたいで言うなら……百花繚乱のアヤメとか、中学時代のキャスパリーグ&レイサとか、あとは安直にリオとヒマリとか、クソボケがちょっかいかけてそうな生徒って割といて……。どっかで何かアイデア浮かんだら書きたいと思いつつ、浮気はできないので本編を書きました。
走る。
走る。
私に向けて撃ち出される、無数の弾丸の間を縫ってただ走る。ひゅんひゅんと、風切り音を纏って飛来する銃弾、わらわらと羽虫みたいに沸いて出た武装ヘリから放たれるミサイル。どいつもこいつも――。
「――舐めてるの? 私をさ」
昨夜、ノノミちゃんが攫われた。下手人は、ネフティスの……あの、執事とか言ってた男。あとはどうせ、眼帯のなんとかって生徒も一緒だろう。あいつらはアビドスの現状につけ込んでノノミちゃんを騙して呼び出し、そして連れ去った。
連中の目的は――『列車砲シェマタ』。アビドス生徒会――それも、私やユメ先輩が関わる前の旧生徒会とセイント・ネフティス社で開発した、強力な兵器……らしい。貴重なお金を使ってやることが大量破壊兵器の開発だなんて、旧生徒会の連中は一体何を考えていたんだろうか? その皺寄せと尻拭いのために迷惑していたのは、ユメ先輩だというのに。
ともあれ……私募ファンドの目的はそれを手に入れること。その為に、アビドス中央駅旧庁舎で総会を開いて、砂漠横断鉄道ごと列車砲の権利を自分たちのものにしようとしている。
そしてネフティスの目的も同じ――こいつらは、私とユメ先輩の『アビドス生徒会』を、なかったことにしようとしている。言い分はこうだ、旧生徒会の連中は挙手投票の多数決でユメ先輩に会長職と……アビドスに纏わる全ての責任を一方的に押し付けた。だから、そんな投票は無効であり――それがそのまま、私とユメ先輩の『アビドス生徒会』の正当性を喪失させることになる、そうすれば砂漠横断鉄道の売買契約自体も無効になり……ユメ先輩のサインは失効し、列車砲の権利はネフティスのものになる。
つまるところ――アビドスと、私たちは。今回もまた、自分の利益しか考えてない汚い大人に食い物にされている、ってことだ。
「(はらわたが煮えくり返りすぎて、一周回って冷静になった気すらするよ。どいつもこいつも寄って集って、私たちの――私の後輩の幸せを、踏み躙って……!)」
『――ホシノちゃん。もし、ホシノちゃんに後輩ができたら――』
頭の奥で、先輩の声が響く。いつかどこかで、かけてもらった声。
――私は救いようのない愚か者で、薄情者だ。先輩の顔も声も、ぼんやりと薄れてあやふやになっている。
それでも、消えない記憶がある。あの人が何と言ってたかは、忘れてしまったけど。あの人がこんな私に、どれだけ優しくしてくれたかは覚えている。
だから私は、私の愛する後輩たちと決別した。
「(……貴女が、私にそうしてくれたように。私も、私の愛する皆を守ります)」
きっと、先輩も同じだったはずだ――私に、何一つ、告げてくれなかったのは。
砂漠横断鉄道の契約に限らず、契約と名のつくものなんて、一朝一夕で纏まる話じゃない。きっと、私が先輩に酷い言葉を吐いてしまう前から、先輩はそれに向けて動いていた。
『何故』、という疑問には、例の列車砲一つで答えが出る。ユメ先輩はきっと、その存在を知っていた。その危険性もまた、同様に。
そう考えれば辻褄が合う。ユメ先輩がこんな契約を結んだのは、列車砲の権利を手元に置いて、誰にも使わせない――いや、破壊するためだ。誰に憚らず、自分の所有物としてそれを壊すために、契約を結ぼうとしていた。
私に何も告げなかったのも、きっとそうだ――列車砲を巡る、危険に巻き込まないため。先輩の言う『後輩を守るため』、だろう。だからあの人は、たった一人で全てを背負い込んだ。だからあの人は、たった一人で砂漠へ向かって――命を
「何をしてるんだ!! 敵は一人だぞ!?」
「ふざけるな、なんであんなに強――っ!?」
そう、あの人は殺された。きっと、殺されたのだ。見つからない鞄とコンパス。自身の危険を悟っていたかのようなメモ書き。それらと矛盾するような、遺されたボイスメッセージ――そして。
「(……先輩の、生徒会長手帳)」
メッセージの中でただ一つ、あの人が不自然なまでに
ああ、あの列車砲を中心に考えれば、何もかもが線で繋がる。あの人は列車砲の危険性を察し、それを誰にも渡さないようにしようとした。そしてそれは失敗し、先輩は誰かに殺され……そして、今。もう一度アビドスに、何者かの手が伸ばされている。セイント・ネフティスの連中か、私募ファンド……はどうにも格が低そうだから、また別の下手人か。誰かは知らないが、誰かの手が、伸ばされている。
私が恐れているのは、それだ――つまり。
「(――また、私の大切な人たちが、殺されるのでは?)」
ユメ先輩は殺された。列車砲を巡る何かによって。
ならばどうして……同じような今、その『何か』が私の大切な人に手を出さない、と言い切れる?
シロコちゃんが殺されたら? ノノミちゃんが、アヤネちゃんが、セリカちゃんが殺されたら? ――先生が、殺されたら?
それを思うだけで、私の手足が冷たくなって、お腹の中のものを全て吐き出してしまいそうになる。頭の中ががんがんと痛んで、手が震えて止まらなくなる。
私は――それが、怖くて怖くてたまらない。
だから、止まれない。二度と、何も、失いたくないから。
「――だからさ。退いてくれない? 邪魔なんだよ」
ミサイルを踏み台にして跳び上がる。背後の爆風を受けて加速して、無駄に密集した敵陣の中へ踏み込む。目の前のロボット兵――マーケットガード一人を蹴倒して、その頭を踏みつけにする。甲高い、アイバイザーの砕ける音。
慌てて私へ銃を向ける、周りのマーケットガードたち。挙動も、判断も、引き金を引く速度も何もかも――遅すぎる。やる気がないのか? それとも、この期に及んでまだ、どうにかできると思っているのか?
どちらにしても度し難い――私の中に恐怖とは別の、ぐつぐつと煮え滾る怒りが溜まってゆく。懐かしい感覚だ。ユメ先輩と出会うまで、あの人に抱きしめられるまで、ずっと絶えず私の中で蠢いていた怒り。それが全身を支配している。
「と、止めろッ! 相手は一人だぞ――な、どこへ行った!?」
「速すぎるッ、動きがまるで、見え……ッ」
声をかけてやる暇も惜しい。カメラアイを明滅させているそれの顔面にショットガンを突きつけて、トリガー。金属の破断する音を響かせて飛んでいったそれは、近くに転がっていた廃車に叩きつけられて気を失ったようだ。
……止せば良いものを、それでも周りのガードたちは銃を構える――隙だらけだ。防弾ベストの前に取り付けていた、一挺の拳銃を取り出し、構えた。
この銃の名前は――『
ショットガンを再装填する時間も惜しい、私は照準を付けて引き金に指をかける。一瞬だけやけに重く感じたその引き金を引いて、戸惑うばかりの敵を撃ち抜いた。
そうだ、こんな連中に時間をかけている場合じゃない。私募ファンドだろうが、セイント・ネフティスだろうが。マーケットガードだろうが……こうして、わらわらと湧き出してくるカイザーの私兵だろうが。
「ふっ。見つけたぞ小鳥遊ホシノ。いくら貴様といえど、これだけの戦力の前に――」
「……カイザー? あーっと、なんて言ったっけ。大尉? 大佐? あ、ごめん隊長だっけ? ま、なんでも良いけどさ」
「……! 貴様、私のことを――」
そんなものに、記憶のかけらすら割いてやることすら惜しい――ショットガンに、弾を装填する。ユメ先輩直伝の、大型一体弾頭……スラッグ弾。それを弾倉に押し込んで、少しだけ脚に力を込めて前に出る。悠長に……いや。欠伸が出るくらいのんびりとこちらへ銃を向けるそいつらの合間を縫って、指揮官っぽい兵士の眼前へ。
銃口をその顔につきつけるまで、一際偉そうなそいつは、身動ぎもしなかった。
「――は? な、っ……」
「特殊部隊だろうが何だろうが、どうだっていいよ。大して変わりないでしょ? そんな奴らの、何を覚えてろって言うのさ。ただでさえ、お前らのことなんて……頭の片隅にすら置いておきたくないんだよ、こっちは」
「待っ――」
銃身に力を込める。私の髪と同じ色の光がゆらりと湧き立つ。きゅいん、という甲高い音。引かれたトリガーから吐き出された大型弾頭は、何とかって肩書きのロボット、その顔面へ突き刺さる。
耳障りな破壊音とともに、それは衝撃のままに吹き飛んだ。吹き飛んで、横倒しになった壊れた車にぶつかった。
死んではいない。ロボットだと言うことを差し置いても、死ぬようには攻撃していない。死なせれば、みんなも……ユメ先輩だって、悲しむと思うから。
だから、殺していない。けれど、早々立ち上がれもしないはずだ。
「ひ、ひぃっ……」
「怯むなっ、撃てぇっ!! 何としてでも、こいつを――」
撃ち倒す。撃ち倒す。行く手を遮る全てを撃ち倒す。アビドス中央駅庁舎内に踏み込んで、群がってくる全てを、撃ち倒す。此方としても勿論、彼方としても話すべきことなどない。私へ敵意を向ける何もかもを踏み越えて、その部屋のドアを蹴破った。
――ノノミちゃんがいた。その近くに、カイザーの首魁……プレジデント。ノノミちゃんは兵士に抑えつけられていて、その近くに眼帯がいる。
話す相手は、カイザーのプレジデントだけだ。それ以外は邪魔だ――此方へむけて、何か口を開こうとした眼帯へ、拳銃を叩き込む。ノノミちゃんの脇の兵士にも。
「――……随分な挨拶だね、小鳥遊ホシノ君。しかし、こうして会うのは初めてになるか。私はプレジデントだ……君の噂はよく聞いているよ」
「よく言うよ、また首を突っ込んできておいて。……それで、総会はまだ始まってないんだよね? どうにも……思ってたのと陣容が違うけどさ」
銃を突きつけられている私募ファンドの連中に、ネフティスの執事。カイザーがここにいる理由までは分からないが、何が起こっているのかは分かる。何せ、こいつらのやることは昔っから変わってない。
「お得意の『いつものやつ』? 私募ファンド側の代表は、プレジデントに移ってるって認識でいい?」
「……! ほう、慧眼だな。よく教育を受けていると見える……その通りだとも。故に、総会の参加者は私と君、そしてそこのネフティスの人間だけということだ」
「そう? なんでもいいけど、間に合ってるってことでいいよね? 始めてよ、総会をさ」
――私募ファンド側の参加権を乗っ取ったってこともあって、カイザーの要求は私募ファンドのものと同じで『契約の解除』。つまり、アビドス生徒会として、契約の更新を望まないと宣言しなければならない。
それを行えば、『アビドス生徒会』の正当性は否定しなくて良い。けどその代わり、列車砲の所有権を、それを悪用しようとする者の手に渡すことになる。
……考えるまでもない。どうすべきかなんて、決まってる。アビドス生徒会……今では、私しかメンバーのいない組織。私とユメ先輩の、思い出の詰まったその名前を、捨てたくなんてない。
けれど、そのためにノノミちゃんを犠牲にすることなんて出来ない。あんなに大切にしてくれた人のことを忘れそうになってる、こんな私でも――もし先輩だったらどうするかなんて、考えなくても分かるのだから。
「プレジデント、私は――」
ノノミちゃんが犠牲になる必要なんてない。私の大好きな後輩たちが、汚い大人の欲望のために何かを諦める必要なんてないんだ。
だって、あなたたちは。
『――ホシノちゃん、私たちは――ただ◼️管、苦◼️◼️◼️、苛◼️◼️て……歯を◼️◼️◼️ばって、◼️をゆ◼️◼️て生きて◼️くため◼️◼️まれ◼️◼️じゃないよ』
――ただ只管、苦しんで、苛まれて……歯を食いしばって、顔をゆがめて生きていくために生まれたんじゃないんだから。
……がたがたごとごとと、階下がうるさい。何かが登ってきているようだ――エンジン音が聞こえる。きっと、カイザーグループの兵士だろう。邪魔をされる前に、宣言しなければ。
だから、息を吸い込んで――。
「――ん、騎兵隊の登場……!」
「待ってください!!」
爆音とともに、もうもうと立ちこめる噴煙。飛び込んできたのは、見慣れたロードバイクに跨った汗だくのシロコちゃん。スマホの時計を見る……正午までは、あと五分。やけに早いと思ったら、走ってきたんじゃないなんてね。
けど、そうなるとアヤネちゃんの叫び声に説明がつかない。流石のシロコちゃんでも、一人乗りのロードバイクにアヤネちゃんを乗せることは不可能だ。雨雲号だって全部壊した、だから全員、追いかけてくるにしても徒歩でしか来れないと考えていたのに、何故?
“その発言は――無効だよ!!”
その疑問を、吹き飛ばすかのように――懐かしい、ぶおん、というエンジン音が響き渡った。
「っ、な、あ――せ、んせい……? それ、は……なんで……?」
大きな黒い車体に、砂漠を走るための太くてごついタイヤ。車体には
ずきん、と心臓のあたりが痛んだ。動かない、動かせない、動くはずのないそれに跨った先生。かつて私が座っていた場所に座っている、アヤネちゃん。その後ろの簡易座席には、セリカちゃんが座っていて。
頭が、急速に冴えていく感覚がする。
“ごめんね、ホシノ。緊急事態だったから使わせてもらったよ”
“これがホシノの大切なものだって言うのは、分かってる。でもきっと、このバイクの持ち主なら、ホシノのために使うのなら許してくれると思うからね”
「違う――そうじゃない! なんで、それを動かせたの!? スペアキーは私が持ってる! ユメ先輩のメインキーは、先輩がどこかに仕舞って……私だって、どこにあるのか分からないのに!」
“そういうのを探すのが上手い子がいるんだよ。謎の美少女工作員ちゃん、って言うんだけどね”
“……本当に、どうやって探してるんだろうね? あの子は”
呆然とする私をよそに、アヤネちゃん――新生徒会長が、私の発言は無効だ、と宣言した。なんでも、私が先走った後に投票をして決めたらしい。そして、私は書記に降格だとか。
思わず、ほんの少し笑ってしまった。昔はちょっとおどおどとしていて、引っ込み思案なところのあったアヤネちゃんが、今ではこうして私相手にも堂々と立ち回ってみせる。そのことが嬉しくて、誇らしくて……やっぱり、幸せになってほしいと思う。
「そういう訳です。ホシノ先輩の発言には、生徒会としての権限はありません! アビドス生徒会、対策委員会としての意思は――」
「……なるほど、そう来たか。流石はシャーレの『先生』、ということかな。だが……残念だ、奥空生徒会長。君の発言は、許可されていない」
「な……っ!?」
「総会の開始時点で、君たちはいなかった。故に総会の参加者は、小鳥遊ホシノ君と私、そしてネフティス代表の彼のみで開始したのだ。……ああ、もちろん君たちの学校の総意は汲もう。小鳥遊ホシノ君がアビドスの代表たり得ない、と主張するなら、受け入れよう」
プレジデントは……かちゃり、と小さな金属音を立てて、懐から取り出した懐中時計を開いて、不気味なほどに落ち着いた声音で、そう言った。
「ただそうなると、アビドス高等学校からは意思決定団体としての発言権を持った参加者が居なくなるな? 君たちとしては、契約の是非を述べない、ということで良いのかな」
“……なら、そもそも総会の開催自体が無効になる筈だ。ホシノが副生徒会長を解任されたのは、総会の開始よりも前だよ”
“必要な参加者が揃っていないのに、一方的に会を開ける訳じゃない。だからこそ、あなた達もネフティスも、この子たちを総会に参加させようとしていた”
「……ふふ、その通りだ先生。小鳥遊ホシノがアビドス高校の代表ではなかったとするならば、会の開催自体が成立しない。再度、今から総会を執り行うことになるだろうな」
「……! じゃ、じゃあ……!」
「ああ、だが、重ねて……残念だ、奥空生徒会長。時間稼ぎは終わった、もはや総会を行う必要はない」
「な、っ……!」
プレジデントは――懐中時計を閉じて、それを仕舞った。
「薄氷の上の勝利だが、勝ちは勝ちだ。随分と焦らせられたがね」
「あんた、最初からこのつもりで……!!」
「いいや? 私のプランは、君達をそもそも総会に参加させないことだった。次善が、契約を続行する意思がないことを、宣言させること。そのために足止めを行っていたのだが……君たちが予想よりも遥かに迅速に此処を訪れるものだから、随分と苦心したよ」
私たちの前の卓に、封筒に入った紙が差し出される。……ユメ先輩のサインの入った、売買契約書。今となっては何の効力も持たないそれを、アヤネちゃんは震える手で受け取った。
「シャーレの『先生』はともかく、彼女のいない君たちは対等な交渉相手足り得ない。会を開く必要もない……そう思っていたのは侮りだったようだ。彼女と、君たちに免じてこの書類は返そう。最早意味のないものだ――さて、では失礼するよ。スオウ君、着いてきたまえ」
「……ッ! 待て……!」
「……アビドス生徒会の諸君。君たちへは敬意を持っているつもりだが、それでも私はカイザーコーポレーションの長。君達を慮ることは出来ない――残る人員は、彼女らを足止めし、排除するのだ。私たちを追わせるな、良いな?」
去ってゆくプレジデントを追おうにも、立ち塞がったPMCの兵士に時間を稼がれてしまう。大した時間ではない、けれどその僅かな時間で、プレジデントの乗ったヘリは離陸した。
ノノミちゃんを連れ去られることだけは阻止したものの、そのゴールドカードは眼帯コートの生徒に奪われ……そしてその眼帯コートは、プレジデントをすら裏切って、私を呼び出した。
アビドス砂漠閉鎖地区セクター35-9。生徒会の谷、かつて私とユメ先輩が宝探しをした、そこへ。
私は、みんなを振り切って生徒会の谷へ向かった。展開して、こちらを邪魔してくるカイザーの軍勢が今だけは有難い。単騎の私と違って、複数人で行動している先生たちは、どうしても敵を倒して進まなくちゃならないからだ。
……耳鳴りと、頭痛がぶり返してきている。けれど、列車砲だけは破壊しなくちゃならない。ネフティスにも、カイザーにも、あの訳の分からない眼帯にも、渡せはしない。
眼帯の……確か、スオウだとか言ったっけ。彼女が何を考えているのかは分からない――否、分からなかった。今こうして、一方的にこちらへ攻撃を仕掛けてきた彼女を下しても、要領が掴めない。
ハイランダーの管理監督官だ、という肩書きにも似合わない短絡的な暴走。まるで何かに操られているかのように、やっていることが支離滅裂で、何がしたかったのか分からない。
ネフティスを裏切ったことも、カイザーを裏切ったことも。そして今、こうして――。
『――列車砲を止めたいのなら、来るといい。大オアシス駅で待っている、もし来なければ――』
アビドスを踏み躙りたいのなら、カイザーに手を貸し続けるべきだ。普通に考えればそうなるだろう、カイザーグループの手先として成り上がり、大人のやり口でアビドスを苦しめればいい。だと言うのに、朝霧スオウは狂奔しているとしか言えない有様で、列車砲を奪って逃げた。
……ごめんね、みんな。シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん……先生。せっかく止めてくれたのに、せっかくもう苦しまなくていいって言ってくれたのに、全部無駄にしちゃって。けどやっぱり、止まれないってことは、止まっちゃいけないってことなんだと思う。
ユメ先輩の遺志を代行する、なんて偉そうなことを言う権利は無いけれど。けど、ユメ先輩ならそうするだろうから。
だから、決着は私の手で付けなくちゃならない。誰にも邪魔させる訳にはいかないんだ。
たとえ、相手が誰であっても。
「――そういう訳だから、退いてくれるかな? ゲヘナの風紀委員長ちゃん。迷子の相手をしてる場合じゃないんだよね」
「そう……なら、戦って止めるしかないようね」
白髪の、風紀委員長ちゃんが長銃を構える。いつかどこかで見覚えのある姿。記憶の中を探れば、ビナーと『雷帝』の手下を相手に戦っていた姿が思い出せる。
きっと先生の差金だろう。無視できないほどに、彼女は強い。加えて相手は私のことを知っていて、こっちは相手のことをあまり知らない。それを加味すれば……ちょっと手こずる、だろうか。
「へえ……でもおじさんとしちゃ、戦いたくはないんだよね。曲がりなりにも昔、アビドスのために戦ってくれたでしょ? もう一人、白髪の子と一緒にさ」
「……覚えてたのね。なら、恩を仇で返すのは止めて欲しいところなのだけれど」
「それは……ごめんね、無理かな。それに、戦うって言うなら容赦は出来ないよ。風紀委員長ちゃんはは強い、手加減できないくらいにはね。だけど――」
「――あなたには勝てない。そう言いたいのよね、小鳥遊ホシノ」
その通りだ。私は、ショットガンを真っ直ぐ風紀委員長ちゃんへ向けた。
彼女は強い。油断できる相手じゃない。手加減できる相手でもない。けれど――負ける相手だとは、思えない。
だって、彼女は。
「……うん、そうだよ。私より強い人を、私はたった一人しか知らない。そして私は、その人以外に一対一で負けるつもりはない――風紀委員長ちゃんは、見たことあるよね? 君は、ユメ先輩より強いのかな」
「……いいえ、小鳥遊ホシノ。私はあの人よりも、あなたよりも弱い。私一人で、あなたを止められるとは思っていない。私はそこまで、自惚れてはいないわ」
「だったら――」
「――だから、二人掛かりで戦わせてもらうね⭐︎」
背後からの声。
思わず風紀委員長ちゃんから目を離して、振り向く――向かいのホーム。青い月光に照らされて、そこに一人の生徒が立っていた。
髪は、私と似たようなピンク色の長髪。染み一つない真っ白な制服に、白い翼……トリニティの生徒だろう、校章入りの白とネイビーのサブマシンガンを片手に提げている。翼には星や月のアクセサリーがいくつも飾られていて、まるで絵本の中から飛び出してきたお姫様のような姿。
そんな彼女は、金色の双眸を爛々と輝かせて――スカートの端をつまんで、悪戯げに微笑んだ。
「こんばんは、小鳥遊ホシノさん。あの人のたった一人の後輩。名前は嫌ってほど知ってるよ、なんせ嫌ってほど聞かされたからね」
「……うへ、こりゃ参ったな。……そっちのお姫様ちゃんの名前は?」
「あはっ⭐︎ 照れちゃうなあ、そんな風に言われると……私? 私の名前は――聖園ミカ。自己紹介はいろいろ考えてあるけど……今のあなたに必要な情報だけ教えてあげる。時間はかけたくないんでしょ?」
「うへ〜、ありがとねぇ。それで、必要な情報って?」
がちゃり、と音がした。撃鉄の上がる音が二つ。私の目の前の彼女と、私の背後の彼女から。
「うん。私、そっちのヒナちゃんと同じくらい強いよ⭐︎」
「そういうことよ、小鳥遊ホシノ。私一人で、あなたに勝てるとなんて思ってない――だから、今日だけは恥も外聞も捨てて、勝ちだけを奪わせてもらうわ」
「……トリニティとゲヘナの共闘だなんてね。先生からの依頼だろうけど、なんでそこまで……」
「そんなこと、決まってるじゃない。あなたが――」
ぶわりと、風が巻き起こる。白と黒、二つの戦意が私にぶつけられる。確固たる、決して曲がらないという意思。先生から頼まれた、ってだけじゃない、使命感以外の強い気持ちが、伝わってくる。だとして、私は、止まるわけには――。
「――あの人の、大切な人だからよ」
「――あの人の、大切な人だからだね」
「な、っ……!?」
石になってしまったかのように、動かなくなる身体。一瞬だけ呼吸を忘れ、心臓が跳ねる。
それでも、私を無理やり動かすように、きぃん、と頭の中にノイズが走る――顔を上げた私へ向けて、天使と悪魔の一撃が放たれた。
今回の地下カスびっくりポイント:ホシノと先生たちの進撃スピードが早すぎて普通に総会に間に合いそうになったところ。
必死でプレジデントに洗脳送って時間稼ぎしてました。
そしてミカを出した時から書きたかったところに到達。
強化臨戦ホシノvsヒナ&ミカ。
果たしてアビドスは無事でいられるのか!