TS転生クソボケユメ先輩(死亡済・幽霊)が原作のn倍ホシノの脳を焼いていた話   作:死刑囚

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三連休でなく二連休なので夜に投稿。
いつの間にかUA約13万、総合評価約12,000pt、お気に入りと感想、評価たくさん……毎回のことですが本当に感謝しております、ありがとうございます。

あと感想でも何件か頂いていましたが、黒服とホシノについて少し描写足りなかったのでちょっと補足。

ホシノ→黒服に「アビドスとカイザーの契約の仲介」を依頼。
黒服→ホシノの身柄と引き換えに了承。
ホシノ→カイザーとアビドス間で「借金の返済と、返済までの相互不可侵」を契約。
カイザー→証拠の捏造によりアビドスを糾弾、アビドス責として侵攻。
黒服→分かってたけど傍観。

……みたいな感じでした。


ユメのロスト・グラウンド

 

 結局、ホシノちゃんは黒服に騙されて、捕まってしまったらしい。

 黒服の手口に関しては、それとなく似たような状況で何度か――まあ普通に忘れていた部分も()()()()()()()ある――引っ掛かってみたりはしたけれど、それと同じ手を使ってきたならホシノちゃんに躱せない筈がない。そうなると、やっぱり手口を変えてきたみたいだ。

 騙されてしまったホシノちゃんは悪くない。悪いわけがないし、ホシノちゃんが悪いだなんて、ほんの少しも考えたこともない。だって、色んな意味で『相手が悪い』からだ。

 騙す方が悪い……信頼を裏切って、それを賢さの証だなどと言っているほうが間違っているという意味でもそう。私やホシノちゃんみたいな、このキヴォトスでは生徒とされる存在に対して……あちらは大人。そもそもの立ち位置、役割が違うという意味でも、そう。

 そして何よりも、まず彼我の条件が違いすぎる、という意味でも……そう。山のような借金を課され、無理やり視野を狭められ、焦らされ、追い詰められ、無謀と知りつつ戦うしかない状態に置かれたホシノちゃんと……別段、交渉がどう転ぼうとダメージは皆無、得るものしかない側であるカイザーグループと黒服。

 こんなの、どうやったって『相手が悪い』。

 

『……ホシノちゃん。ごめんね、ダメな先輩で』

 

 黒服のことも、奴の狙いも、全部先に伝えておこうか……と思ったことも、勿論、何度もある。けれど、相手は『大人』だ。先生のような、良い大人ではない、悪い大人だ。二年前の時点で奴のことを伝えたとして、奴がそれに気付かない、手を打たないなんて楽観はどうしても出来なかった。

 伝えれば伝えるだけ、不利になるかもしれない。借金が増えるくらいなら――決して良くはないが――まだ良い。最悪は、先生が来る前に、私が死んでしまった後に、ひとりぼっちのホシノちゃんが黒服の手に落ちること。

 それだけは、避けなくてはならなくて――臆病になった私は、迂遠に示してみせるしかなかった。

 それでも、やはり、狙いを看破されてしまったというのだから、やはり奴らには――頼れる『大人』のいない状態では、勝ち目がないのかもしれない。

 

『やっぱり私は、全然うまくできないなぁ。……このっ、このっ、扉も通り抜けられないし……!』

 

 目の前の重い扉を殴り付けるが、揺れるだけで開きはしない。

 ここは、ホシノちゃんが捕まって、囚われている場所。旧アビドス高等学校の本館にしてカイザーPMCの大規模基地、その地下。『ホシノちゃんが捕まっているのは本館の地下である』ということだけは分かっていたから――例のPMCの基地とアビドス駅、あとは夜の星と月の位置からどうにか方角を定め、辿り着いた――と、言えれば良かったのだが。

 

『コンパスも無しに砂漠は自殺行為だよぉ!!』

 

 どう考えても迷わずに間に合う気がしなかったので、結局はPMC基地から出撃する兵士さんたちをストーキングして辿り着いたのだ。

 いや、流石の私もアビドス高等学校の元本館の場所は覚えている。何度も行ったことがあるし、ホシノちゃんと本館のお宝探しに行ったこともある。そこでホシノちゃんと笑い合い、バイクに乗って帰ったことも覚えている。

 なら何故か? 理由は簡単で、ただ単に、私……梔子ユメは、慣れているからと言って肝心な時にコンパスを持たずに砂漠に出て、目的を達成できるか? と自分に問うた時。どう考えても、イエスと答えられなかっただけなのだ。我ながら、悲しいことに。

 そんな訳で、どうにか辿り着いたアビドス高等学校旧本館は――昔、ホシノちゃんと一緒に来た時よりも、大きく様変わりしている。というか、この軍事基地っぷりはどう見てもアニメ版みたいな物々しさだ。

 本館と、その周辺都市のあった辺りは全て大きな壁で囲われ、これ見よがしに高い塔が建設され。かつて私とホシノちゃんで探検した、本館校舎の残骸はまるでその末路を見せつけるかのように中途半端に残されて。

 そして、それらの地下深く――最奥の部屋。壁一枚の向こう側にホシノちゃんがいるというのに、私はその向こうに行けない。ホシノちゃんという、特別な『神秘』を閉じ込めておくための場所だからだろうか……同じく『神秘』で出来ているらしい幽霊の私は、ここを通り抜けられなくて。

 ――ヴヴッ。

 

“やあ、謎の美少女工作員ちゃん”

“そっちはどんな感じかな?”

“こっちは、黒服との話も終わって……そろそろ突入って段階だけど”

 

 スマホが震える。モモトークを開けば、私の文字化けアカウントにメッセージ。先生からだ。……あちらはどうやら、上手くいったらしい。となれば、後は急いでここへ向かって来るだろう。

 そろそろ突入、ってことは……タイミング的にはイオリちゃんの足を舐め終わって、ヒナちゃんとトリニティの助力を得て、今から総攻撃……みたいな流れだっただろうか。

 なら、もうじきあのカイザーPMCの理事と決着もつくわけだけど。

 

『ううん! あなたの助けになれて良かったよ。困ってる生徒さんがいるんでしょ? 私にできることならなんでも力を貸すからね! by◼️◼️◼️◼️』

 

 ――やっぱり駄目かぁ。

 『シッテムの箱』に接続できて以来、使えるようになった謎アカウントから先生といくつかのモモトークのやりとりをしている。ただこの謎アカウント、困った点がある――私が『梔子ユメ』である、と証明、あるいは宣言することができない、という点だ。

 

『ホシノちゃんと会話できるようになれば良かったんだけどなぁ……』

 

 私の名前を文面に出そうとしても、何故か文字化けしてしまう。ホシノちゃんや、アビドスのみんなのことを『大切な後輩』とか、そんな風に書こうとしても同様。意味が伝わらないように、言葉が隠される。

 なんというか……こう、私がユメですよ、という匂わせをしようとしても、『匂わせ厳禁』というよりは『匂わせ以前の問題』というか。そもそも匂わせるべき何かなどない、と言わんばかりに、文章がぐちゃぐちゃにされてしまうのだ――まるで、このアカウントを使うのは『梔子ユメ(わたし)』であってはいけない、と言わんばかりに。

 だから私は『美少女工作員』なんて名乗ってやり取りをしている訳だが……そう。『梔子ユメである』と匂わせさえしなければ、わりと自由は利いたりするんだよね。

 

『あなたも無茶しないでね? 壁の中には兵士も沢山いるし、地下にもいろんな機械があるみたいだから。少しずつ前進するか、できれば火力支援を貰うべきかな』

“うん、ありがとう!”

“みんなには声をかけたからね、心配しないで!”

『一応、潜入して調べた限りの内部構成は送っておくけど……くれぐれも怪我しないようにね。あなたが……いえ。誰かが傷つくと、それを悲しむ誰かがいるんだから』

 

 そのまま先生と、いくつかメッセージのやりとりをする。ホシノちゃんのいる部屋には入れないけど、それ以外の部屋ならどうにかなるのだ。調べた限りの情報を渡しつつ――本命を待つ。

 私がここにいるのは、別にただホシノちゃんを出待ちする為ではない。いやホシノちゃんの姿は見たいし、すぐにでも近寄って励ましてあげたいんだけど、そうではなく――。

 空気が変わるのを感じて、やっぱりか、と息を吐いた。

 

「……クックック。やはり、そうでしたか。あの先生に微かに纏わり付いた『神秘』の残滓。ホルスとして完成した筈のホシノさんが未だに帯びる『神秘』の残り香……」

 

 こつ、こつ、と静かな廊下に靴音を響かせ、それは現れる。

 黒ずくめの全身、罅割れた顔から漏れる褪せた光。立ち昇る黒いもやと、顔のように見えるその罅割れが、どこか非現実的な恐怖を呼び起こす、怪人――。

 

『……黒服』

「死して尚、と言うべきか、あるいは死したからこそより『崇高』に近付いたのか。……興味は尽きません。黎明の――いや。『有明けのオシリス』と名付けたのは、我ながら的を射ていたようですね」

『えっ。あれ、黒服さんが決めてたの?』

 

 ゲマトリアの怪人、黒服。

 名前の通り、真っ黒なスーツに身を包んだ異形。私たち生徒を騙し、搾取し、利用する悪い大人であり――『先生』としての立場からなら、まだ話の通じる相手。

 かく言う私である俺も、かつてはこの黒服というキャラクターに好意を持っていた。いや、『キャラクター』としてであれば、魅力的な造型をしていると今でも考えている。比較対象はベアトリーチェ(ベアおば)地下生活者(不倶戴天の敵)なんかではあるが、まだマシであると今でも明言できる――だが。

 

「……ッ! く、クク……規格外の『神秘』ですね。それに、この圧力……私に対して、怒りを向けている? 何故? もはやこれは形を持たぬ漂うだけの『神秘』。彷徨うだけの現象と化しているのでは? ……あるいはそうなって尚、私が『暁のホルス』に何をしたかを、知覚していると?」

『私の声は……聞こえないみたいだね。目線が合わないし、私の姿も見えてないのかな』

「全身が、軋むようですね……全く、興味深い。ただ漂う『神秘』だけの状態で、これほどの力とは。此処がオシリスの領域であるから? それとも……、また別の……?」

『私の領域? ……まあ、いいや。私がここに陣取ってたのは、万が一、あなたがホシノちゃんに何かしに来た時に頑張って止めるため。見た限り、これ以上先に進む気は無いみたいだけど……』

 

 繰り返して言うが、私である俺は、この黒服というキャラクターは気に入っている。敵対者にして理解者、相容れない存在であり信用できない隣人。何れは雌雄を決する必要があるが、先生(こちら)を認め、評価し、好意的なヴィラン。

 だが。

 それでも――あなたは、ホシノちゃんを陥れた。大人として、ホシノちゃんの間違いや不平等な契約を止められるのに、何もしなかった。私はそれを、許容できない。

 私自身が馬鹿で、ホシノちゃんに何もできなかった、役立たずの先輩だっていうのは事実だ。その謗りは受け入れる。私が馬鹿だったって事実を、黒服に、責任転嫁がしたい訳でもない。

 だから私はただ、単純に。

 

『――帰って。私は、怒ってるんだよ』

 

 遠くで爆音が響く。先生やシロコちゃん達が、カイザーの兵士たちと戦闘を始めたんだろう。榴弾砲が着弾するような振動も、遠くで感じる。

 その影響だろうか? この建物もぐらぐらと揺れ、みしみしと軋んでいる。私の目の前に広がる通路も同様で、壁や床に亀裂が走っている。黒服も……バランスを崩したのか、片膝をついてしゃがみ込んでいる。

 思いっきり敵意をぶつけてみたけど、私の『神秘』を感じてるらしいし、ちょっとは伝わったのかもしれない。

 私はと言えば、なんだか地下に入ってから調子が良くって揺れも気にならない。……もしかして私、幽霊だから太陽光が苦手なのかな……?

 

「……凄まじい、拒絶ですね。此処でその『神秘』に抗うだけ無駄、という訳ですか……。ですが心配なさらずとも、私はこの先へは進みません。あの先生と約束しましたからね……ここへ来たのは、確認のためだけです」

『……言葉を弄するし、悪意も持ってるけど……嘘を言うタイプでもないもんね、あなたは。そこは信じるけど、だからって気は許せないなぁ』

「……『有明けのオシリス』、その『神秘』。それを確認できただけでも良しとしましょう。……ああしかし、やはり惜しい。しかし……クク、これも自業自得、と言うものなのでしょうね」

 

 ……? それはどういう?

 『セトの憤怒』については、もしかしたらこの黒服が下手人なのか、と思っていたこともある。ただ、そうであるにしては態度があまりに不自然だ。

 ホシノちゃんが欲しかった、そのために私が邪魔だった。あるいは神話(元ネタ)に準えて、ホシノちゃんを『キヴォトス最高の神秘』にするために、その前段階の存在として私をあれにぶつけて殺した……という可能性は考えていたが――しかし、そのような気配はない。

 黒服は典型的な悪魔のように、言葉と契約、そしてその契約の抜け道で相手を絡め取る存在。端的に言えば、こいつが『自分の手を汚す』とは、まるで思えないのだ。

 まあ、私の目が節穴じゃなければだけどね!

 

「私は昨夜、先生に言いました。『放っておいても良いではありませんか』と。そしてこれが、あの『神々の星座』の一つと『有明けのオシリス』を放っておいた結果だとするならば……ククク。もしも私が、『有明けのオシリス』……梔子ユメさんに、ただ助力を乞うていれば、どうなっていたのでしょうね」

『え? うーん……もしそうなら、きっと……手伝ったんじゃないかなぁ。まだ悪いことをしてないし、ホシノちゃんも誰も傷つけてないなら、嫌だって言う理由はないし……』

「まあ、全ては仮定の話です。……それでは、『有明けのオシリス』。微力ながら、『暁のホルス』に幸運があるよう祈っておりますよ」

 

 黒服は、そのまま立ち消えるように姿を消した。

 結局何をしに来たのか、あんまりよく分からなかったけど……口ぶり的に、私――の『神秘』を観測しにきたってだけだったのかな。一人危惧してたみたいに、先生たちに取り返される前にホシノちゃんをどうこうしに来た訳じゃなくて良かった……もしそうだったら、今の私には何もできないところだったから。

 これで、残る懸念はあと一つ――今のところは、だけど。

 

『アニメ版だと確か、爆弾か何かで建物を吹き飛ばそうとしてきたんだよね。ギリギリみんなが間に合ってはいたけど、ほんの一瞬の差でしかないし……万が一にでも失敗なんてさせちゃいけないよ』

 

 次に来る懸念である、対策委員会編三章――いや、もう地下生活者と言ってしまおう。あいつの好き勝手は、止めたいところだ。

 ホシノちゃんは強い子だし、アビドスの後輩のみんなだってそう。それに、優しくて生徒思いな先生だって今はいる。だからあの地下生活者が余計なことさえしなければホシノちゃんも暴走せず、何より苦しめられず、別に何もかも無事に済んでいた話なのだ。

 一番良いのは、対策委員会編の第三章を発生させないことだ。その為に私は『原作』と同じように列車砲の現存を確認したあと、ハイランダーまで行って先んじて列車砲を壊そうとしたりもしたのだが……結局は、運命を変えることはできなかった。

 だからやるべきは、地下生活者の阻止。私である俺――ゲームのプレイヤーとしてであれば、第三章は好きだし、そりゃもうたくさん泣いたけど。梔子ユメとしてであれば、ホシノちゃんともう一回会話できる機会かもしれないけど。

 それがホシノちゃんを少しでも苦しめるくらいなら、発生しないほうが良いのだ。

 

『ホシノちゃんが助かったら、今度は地下生活者の捜索かぁ……でも、見つかる気はしないんだよねぇ……』

 

 とはいえ、今やるべきはホシノちゃんを無事にみんなのところに送り出すこと――建物の外の戦闘も収まったみたいで、感じ取れるアビドスのみんなの気配もどんどん近付いてきている――けれど。詳しいホシノちゃんの位置を教えよう、と思った矢先……どかん、と大きな震えが来た。

 カイザーPMC理事の悪あがき。みんなを待ってる間にいくつか壊しはしたけれど、流石に全部は対応しきれなかった。それが、次々に爆発して……近くでも一発。

 爆風が私の身体を通り抜け、通れなかった扉を破壊する。

 

『っ……ホシノちゃんっ!』

 

 部屋の中へ。ホシノちゃんが捕えられていたところは『原作』と同じで、無機質で不気味な円形の空間。そこに、ホシノちゃんがぐったりと倒れている――いや、違う。

 

『……ホシノちゃん?』

 

 倒れているホシノちゃんは、ゆっくりと立ち上がろうとしている。目の前に落ちている、()()の写真を、宝物のようにそっと拾い上げて。

 駆け寄って、身体を支えようとした私の足が、止まる。

 

「……ユメ先輩。私は、バカだから……先輩が、ずっと言ってくれてたのに、どうしようもないバカだから、こんなことになるまで気がつかなくて」

 

 ホシノちゃんは煤だらけで傷だらけだ。痛々しくて、今にも膝をつきそうなのに、足を震わせて立っている。誰の手も借りずに、一人で。

 再度の爆発。部屋の壁が崩れ出す。それでもホシノちゃんは倒れずに、ゆっくりと歩いている。

 

「でも……。先輩の、言ってたこと。日常の中の、小さな奇跡……、やっと、わかったんです。先輩がいなくなってしまって、荒んだ私に……先輩みたいに、手を伸ばしてくれたみんなが……」

 

 ホシノちゃんはまた一歩、ゆっくりと歩を進める――そっか。やっぱりホシノちゃんは強くて優しい子だね。きっとそれは、ホシノちゃんがまず、誰かに手を差し伸べて優しくしてあげたから。みんなに優しくあれたから、ホシノちゃんを助けてくれるんだよ。

 もしもホシノちゃんに素敵な後輩ができたら。きっとそうなると、私である俺は知っていたけれど。終ぞ見られなかった、私がずっと夢に思っていたそれが、目の前にある。それが……嬉しくて嬉しくてたまらない。

 

「……だから! 私はもう、間違えたくない! 先輩のことは今でも悲しいし、忘れられないけど……だからこそ、対策委員会のみんなを、悲しませたくない……! だって先輩との出会いと同じように、私にとっての奇跡は――」

 

 ――だから。私も、私にできることをしたい。

 何故かは分からないけど、ここなら、生きていた時ほどじゃないけど……ちょっとくらいは頑張れそうだから。

 大きな爆発。壁面が崩れ、天井の大きな装置がぐらぐらと揺れる。同時に――扉の残骸が完璧に吹き飛ばされ。傷だらけで煤だらけの、対策委員会のみんなが、ホシノちゃんに手を伸ばしていた。

 

「ホシノ先輩ッ!! こっちに!!」

「先輩、早く!」

 

 ホシノちゃんがよろよろと駆け出す。遅くとも確かな足取りで、私を通り過ぎて。その瞬間に、むんっ、と力を入れて――その背中を、思い切り押し出した。

 

『――元気でね。行ってらっしゃい、ホシノちゃん!』

「――対策委員会の、みんななんだから!」

 

 聞こえたかな。聞こえてないかも。どっかんどっかん煩いから。

 でも大丈夫、きっと聞こえてなくても、大切なことは伝わっている。だから私はホシノちゃんと逆方向に駆け出した。

 私とホシノちゃんが居るのは、細い橋の上だ。あんな巨大な装置が落ちては、アニメ版同様にホシノちゃんが落ちてしまう――もしかしたら、後輩たちをも巻き込んで。

 そんなことは、許せはしない――

 

『さあ、久しぶりに頑張るよ!!』

 

 私の中の『神秘』がきらめく。虚ろな全身に力が満ちる。盾はないけど、真似事くらいはできるはず。息を大きく吸い込んで、いつもみたいにぐっと踏ん張れば……『神秘』が発露する時の、きゅいん、という音がする。

 

 

――"□□の□の□"。

 

 

 落ちてくる瓦礫に手を翳す。いつもは盾や銃弾に籠めている力を、手のひらからゆるく、広く放つ――瓦礫が停まる。

 大きく薄く、部屋のサイズに合わせて丸く広げているから、盾に籠めている時ほどの力はない。ほんの一瞬、瞬きほどの時間を稼ぐだけで精一杯だ。けれど、それだけあれば。

 

「捕まえた、ホシノ先輩っ!」

「ああもうっ、みんな急ぐわよ!? いつ崩れるか分かったもんじゃないんだから!」

「――? ん、今、何か……?」

“瓦礫が、一瞬……”

 

 限界を迎えたホシノちゃんを背負って走り去るみんな。その最後尾、先生とシロコちゃんがこちらを振り向いた。私のことが見えて――は、いないか、流石にね。距離も離れてるし、言葉も伝わらないと思うけど。せっかくだし、手でも振っておこうかな。

 

『――ホシノちゃんをよろしくね、みんな』

 

 にっこり笑って応援! ホシノちゃんからいつも、ユメ先輩の笑顔は気が抜けるんです――なんて言われてたからちょっと心配になったけど、やっぱり見えてなかったみたいで。二人とも、みんなと一緒に走ってゆく。

 瓦礫が落ち切る。うん、これで私の役目も果たせたかな! みんななら、問題なく脱出できるだろうし。私も早いところ上に上がって……。

 

 ばきっ。

 

『え?』

 

 足元が崩れる。いや、まあ、そうなるよね。落ちたら足場が崩れるような瓦礫を受け止めてたんだから、それが落ちたら足場が崩れるのは当たり前だ。

 ついでに言えば、落ちても問題はないと思う。幽霊だし、この前PMCの基地で三階から落ちても平気だったし。なんなら通り抜けられるから、瓦礫が降ってきたって平気だ。

 でもまあ、うん。それはそれとして……。

 

『ひ、ひぃ〜〜〜ん!? 助けてホシノちゃ〜〜〜ん!!』

 

 走り出して、落ちる瓦礫を飛び移ってみたけどちょっと遠く。私は凄い勢いで……地下深くへ落ちて。どかどかがしゃん、と降り注ぐ瓦礫の下に押し込められて……。

 ぷはっ、と瓦礫から顔を出す。痛くはない、痛くはないけど……。

 

『……とりあえず、先生が心配してるかもだし……モモトークだけ入れておかなきゃ……』

 

 メッセージを送りながら、登るのに苦労しそうな縦穴を見上げるのでした。ひぃん。





あほあほクソボケユメ先輩パートとシリアスホシノパート、どっちをどのくらいの割合で用意すれば良いのか分かっていないためとりあえず交互に書いています。
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