TS転生クソボケユメ先輩(死亡済・幽霊)が原作のn倍ホシノの脳を焼いていた話 作:死刑囚
二週間かかってしまった……ずいぶん遅くなりました。すみません。
本当はアビドス二章→アビ夏(スキップ)→最終編→アビドス三章でそれ以外は全部スキップ予定だったんですが、軽率にミカを焼いたせいでエデン条約編に触れざるを得なくなった作者がいるらしいですよ。
というわけでエデン条約編、前編となります。
『――地下生活者が見つからないよぉ!!』
思わず絶叫してしまうほど、驚くくらい進捗がない。何の足取りも掴めないどころか、どの辺りに隠れてるのかの目処すら付けられない。
ごめんねホシノちゃん、やっぱり私は駄目な先輩だよ――そんなわけで、一旦あちらの捜索は切り上げてから数週間が経過した。もっと率直に言ってしまえば、今あいつを探している場合じゃないじゃん、ということを思い出したのだ。
端的に言えば――エデン条約編である。
気が付けばいつの間にか先生が補習授業部の顧問になっていて、学力試験も何度か進んでると聞いた時は、驚いてひっくり返ったのはナイショだ。ついこの前まで、先生はホシノちゃんや後輩たちと一緒に
『どう考えても、保険はかけておいた方が良いよね……。いくらアロナちゃんバリアがあっても、巡航ミサイルの直撃は、うん……』
エデン条約編。トリニティとゲヘナ、そしてアリウス分校と――ゲマトリア。四者が交わるシナリオで、色々な思惑が複雑に絡み合っている。
まず、トリニティ総合学園とゲヘナ学園。この両者は分かりやすく、エデン条約を通して手を取り合おうとしている。そこには政治的な思惑はあれど、根本にはナギサちゃん――桐藤ナギサやヒナちゃんたち。それ以外にも数多くの、これ以上の争いを望まない生徒たちの思いがある。
ただ――そこに割って入るのがアリウス分校。かつてトリニティの前身であった学校群がトリニティとして纏まる前に、その総体から排除された学校である。
そして、長い年月を閉鎖されたアリウス自治区で過ごした彼女たちの感情を操り、コントロールしているのが――ゲマトリアのベアトリーチェであり。裏にそんな怪物がいるとは知らず、アリウスの手引きをしているのが。
『うーん……ミカちゃんと、マコトちゃん。どうにか止めたかったんだけどなあ』
トリニティ側の『本当の裏切り者』、聖園ミカ。尋常ならざる戦闘能力を持ち、その強さを以て
『原作』での印象はあれど、話してみたミカちゃんは天真爛漫で、よく笑う素敵な子だった。自分のことを『考えるのが好きじゃない』だなんて言っていたけど、私なんかよりもずっとよく色んなことを考える子で、それ以上に優しい子だった。
彼女から聞いた話――アリウス分校の子たちと手を取り合い、彼女たちを救いあげたい、という意思は、その最たるものであろう。他の誰もがそんなことを思わないどころか、アリウス分校の存在すら知らない中で、たった一人だけ、不幸をどうにか覆そうとしていた子。
当時の私は色々と時間がなくて、少ししか一緒には居られなかったけれど……アリウスをどうにかしたい、って気持ちは分かったし、そしてそれは、私も同感だった。
『私は結局、アビドスの生徒会長――滅びかけた学校の、たった二人しか生徒のいない学校の、名ばかり生徒会長でしかない。いくら原作を知っていて、助けたいと思っても、助けられないことは多い。……だけど、ミカちゃんなら、って思ったんだよね』
二年前の彼女は、まだ私である俺が知っているほど強くもなければ、ゲヘナに対する悪感情も凝り固まってはいなかった。何より、彼女が暴走してしまう切っ掛けの事件は、まだ影も形もない時期。
故に、いくらか会って、話して。時には遊びに連れて行って、訓練に付き合って、未来の話をして――焦らなくてもいいんだよ、って伝えた……気に、なってたんだろうなぁ。
やっぱり、私は駄目だ。だって私は、ここトリニティに来るまでに、知ってしまった。『原作』通り、百合園セイアが暗殺事件で死んでしまった、という話を。
勿論私は、それが身を隠すための策だということは知っている。ミネちゃんも音信不通、失踪状態になっていることから、それがほぼ確実だということも。
けれどそれは、あのミカちゃんが、セイアちゃんを除こうとした、という証左で。
『……やっぱり、私ってばダメダメだなあ』
結局私では、彼女を止めることは出来なかったのだろう――それが悔しい。彼女のことも、アビドスのことも。ホシノちゃんのことも……私自身が、死んでしまったことも。知っているのに、何一つうまくやれない。
ただ、でも。それで足を止める訳にはいかない。
元より、私は私自身が何でもできる完璧超人だなんて思ってもいない。全部が失敗した時のために、いくつか備えも残している。
……そうだ。備えといえば。
『そういえば、ミレニアムの廃工場……最近まで停止してたんだってねえ。ホシノちゃんがそう言ってたって、先生が教えてくれたけど……』
私が活用していた
ただまあ、先生も私に負けず劣らず運が悪いようで……クレジット稼ぎが終わった途端にシロクロ、その直後にゴズに襲われたなんて聞いて。不謹慎だけど笑っちゃったんだよね。
『私ですら流石に、総力戦ボスとは一回しか戦ったことがないしね……。それに結局、あれも負けはしなかったけど勝てもしなかったし。というか、大半の総力戦ボスって二年前にはまだ存在してなかったんじゃないかなあ』
先生は"事前に話を聞いてたから助かったよ"なんて言ってくれてたけど、そんなことがあり得るのなら、もっと詳しく説明しておくべきだったと反省している――例のモモトークで、話せる範囲でだけど。
ただまあ、私自身の反省は横に置いておくなら……先生の話は、私にとっては有意義だった。いくつかの伏せ札は、まだその役目を果たせる可能性がある。それを認識できた、という意味で。
『そう言えば、エデン条約でも出てくるんだよね……ヒエロニムス。あれの対処方法も、伝えておかなきゃ。ひぃん、やることが一杯だよぅ』
……話を戻そう。
トリニティの次はゲヘナだ。そしてこう、こっちはなんというか……もっとぶっ飛んだ子がいる。
万魔殿の議長、羽沼マコト。本当に……うん、本当に、なんというか、表現に困る子だ。
悪巧みはする、ヒナちゃんにちょっかいをかける、ゲヘナの権力を一人で好き勝手にしてる。そのくせなんだか抜けていて、一人だけギャグ漫画の世界にいるみたいな子だ。
悪い子じゃない、と思う。悪いことはするけど、性根から邪悪ってわけじゃない。昔、一度だけ会ったことがあるけど……その時はだいぶまともというか、私のことをすごく『尊敬してます先輩っ!』って感じで見てくれたっけ。
それがどうして、こんなことに……。
『どう考えても、やり過ぎなんだよねえ。なんとなく、話に聞く今のマコトちゃんはちょっと印象が違う気もするんだけど……』
エデン条約編の話に限れば、調印の場に巡航ミサイルをぶち込むのは、どう考えてもやりすぎだ。いやまあ、直接マコトちゃんがスイッチを押したわけではない筈だけれど、そうなることを知った上で止めなかったのは……うん。
やり過ぎなのだが、それでも別に権勢が揺らいだ様子すら無いのがとんでもない。やったことで言うなら、ミカちゃんの方がまだだいぶマシだと思う。
一体本当に、どんな政治力をしてるんだろう……アビドスの復興に手を貸してほしいくらいだ。
『そう考えると、原作は本当に奇跡みたいな綱渡りだったんだよね。私がちょっと現実逃避しちゃうのも、仕方ないんじゃないかなぁ……』
エデン条約編はシナリオを思い返してみても、普通に死の危険が間近にありすぎる。
アビドス編は……敵は良くも悪くも一PMC、あの時点では民間企業でしかない。アロナちゃんがいる以上、問題ない筈だ。
ミレニアム、パヴァーヌ編は裏で糸を引いているのはリオちゃんだし、アリスちゃんについてはゲーム開発部と邂逅してもらわないとキヴォトスの危機だ――個人的には、そんな言い方はしたくないけど。
だから第一章の範囲については、私も先生に憑いて……もとい。ついて行って、無事に進んでいることを確認している。第二章についてはエデン条約よりも後だけど、美少女工作員として先生をサポートすれば、先生や生徒に致命的な危険が及ぶ――少なくとも、悪意を持って誰かを害する事件ではないだろう。
そして、最終編は危険ではあるが相手も『先生』だ、丸く収まるに決まってる――あの人たちが、生徒のことを思わない筈がないから。
SRT編以降は最終編より後と考えると……それまでの間ならエデン条約編があまりにも危険すぎる。その他のシナリオと比べても段違いに。
なにせ、生身の人間へ向かって巡航ミサイルが飛んでくるわ、バリアがないのに先生が撃たれるわ。おまけに章ボスは『あの』聖園ミカと
『だったら、先生の手助けをするしかないよね。って、走ってきたんだけど――』
――そろそろ現実逃避はやめにしよう。恐る恐る、目の前の光景を直視する。
膝をつくアズサちゃん。へたり込んで、肩で息をしているヒフミちゃん。半泣きのコハルちゃんに、苦々しげにその子を見つめるハナコちゃん。そして……壁や遮蔽物にめり込んで、半壊したシスターフッドの部隊。
対する相手方も、別に無事とは言い難い。部隊単位で考えるなら、どう考えてもあちらの負けだ。ガスマスクを着けたアリウスの生徒たちは全員戦闘不能のようで、立っているのはあちこちに傷を負った一人だけ。損耗率で見たなら、勝っているのはこちらで、負けているのはあちらだろう。
だけど、それは。
「――確かに、シスターフッドの戦力は馬鹿にできないね? 練度はともかく、ここはトリニティ。シスターフッドの本拠地だ。歌住サクラコ、伊落マリー、若葉ヒナタ、三人が部隊を率いてきたなら、士気だって高い。うんうん……けど残念☆ 当てが外れたね、浦和ハナコ」
「これほど、ですか……っ」
「うん。だから言ったじゃん、私は強いよ、って。人の言うことを素直に信用しない、そういうところ。トリニティっぽくて良くないと思うよ?」
――その、立っているのが聖園ミカ一人でさえなければ。
というか、やっぱり強すぎる。アリウスの生徒たちが倒されるまで静観していたと思えば、自分一人になってから圧倒的な蹂躙劇を繰り広げた。
ばら撒かれるサブマシンガンの銃弾は、全て『神秘』でコーティングされ、生半可な防御は貫く徹甲弾状態だし。ただ力のままに暴れ回るだけじゃなくって、単騎であることの利点を活かして敵陣に飛び込んで無双するし。
おまけに、素手で捕まえた相手を武器みたいに振り回してはぶん投げるし……。
ただ、その強さにはなんとなく違和感がある。『原作』ではここで――補習授業部がいる状態で、シスターフッド相手に戦ってなかった、ということは置いておいても、また別の違和感が。
「どうして、そこまでやるのですか……! エデン条約は、そうまでして阻止しなければならないものだと!?」
「うん、そうだね。あれが成立しちゃったら、アリウスの生徒たちを掬い上げるのは、実質的に不可能になる。浦和ハナコ、貴女なら分かるでしょ? 順序が逆、なんだよ。どの時代、どの時期でトリニティという群体から分かたれ、隠れ潜むしかなかったアリウス分校が、いまどんな感情を募らせてるか……なんて、どう思う?」
「それは――」
「そう。憎しみだよ。私たちトリニティに対しても、ゲヘナに対しても。それを見ないフリしてさ、『
……あれ? なんだかちょっと毛色が違う。原作で言ってたみたいな、ゲヘナが大嫌い――という建前を振り回す、セイアちゃんを傷つけてしまった故に立ち止まれなくなってしまった、そんなミカちゃんなのかと思っていたけど。あの雰囲気は……なんだか、覚悟を感じる。それも、まずい方向の。
「セイアちゃんとナギちゃんは、私の意見に反対だった。私は二人の意見に反対だった。いやまあ、正確には反対、って訳じゃないんだけどね? ゲヘナと手を結びたければ、結んでいい。けどその前に――」
ミカちゃんの雰囲気が変わり、倒れたアリウスの生徒たちに一人一人手を差し伸べて助け起こしている。その姿だけを見れば、二年前のミカちゃんから何も変わらない、優しいままの子に見える……いや、あれは本心だ。ミカちゃんが誰かを助けてるのは、本心だ。見ればわかる。
けど、だとするなら――他の全員に対して、なんで雰囲気が変わるのだろうか。
「まずは仲間の手を握るところから始めるべきだって、そう思わないかな。……いや、思わないんだよね。だから――私はセイアちゃんを殺したの」
「!? 待て、聖園ミカ! それは――あうっ!?」
「貴女は充分よく働いてくれたね、白洲アズサ。もう喋らなくていいよ。私を裏切ったことも見逃してあげるから、アリウスの仲間と幸せに暮らすといいよ。これからゲヘナと事を構えようって言うのに、戦力は減らせないしね☆」
ミカちゃんが銃口を薙ぎ払い、吐き出された銃弾がアズサちゃんの腹へ炸裂する。流石に強い、今ここにいる誰よりも彼女は強い。ただ、原作とは強さの質が違うように思える。
実力、って意味では、多分今の方が強いと思う。ただ力任せに暴れ回っていた風な『原作』に対して、今のミカちゃんはきちんと理性で暴力を振るっているように思える。ただ、どこか壊れそうな脆さもあって……突くなら多分、そこだと思う。
いやまあ、うん、そのぉ……実力が予想以上に強くなってるのは、多分、私のせいなんだけど。
『あ、あはは……確定会心、教えたのは私だけどさ……それが原因なのかなあ、これ……?』
聖園ミカはなぜ強いのか? それは元から強いからだよ――なんて、彼女を虎扱いする気はないけれど。
その強さの源泉、衝撃の強さと言えば、やっぱり確定会心。すべての攻撃が、会心の一撃になる――
つまりそれは、何も特別なことをせずとも、ただ無造作に振るう一撃すら会心になる、ってことで……しかし二年前のミカちゃんは、その
だから、こう。聖園ミカと言えば確定会心だろう、なんて思った私である俺は……ミカちゃんがそれを習得できるように、お手伝いをしたのだ。
幸い、私にも知見があったこともあり……私の技術を伝えるという形で、ミカちゃんのそれも結実した。それを切っ掛けとして、私たちは仲良くなったのだ。
『……ま、不味いかな、これ……?』
結果、ミカちゃんがシスターフッドすらも蹴散らしている。今も、サクラコちゃんに率いられ、マリーちゃんから回復を受けているシスターフッドが応戦しているけれど、アリウスを背に庇ったミカちゃん一人を越えられない。
――サブマシンガンを構えたミカちゃんが、何度目かの突貫をする。向けられる無数の銃口。それを……ほとんど回避もしない。豆鉄砲のダメージは気にしない、ということなのだろう。合間に混ざるサクラコちゃんやマリーちゃんの、神秘の籠った銃弾からは確かな傷を受けながら、それでも顔色ひとつ変えずに。ハンドガンや、アサルトライフルの弾は突っ切って、振り被った拳を一群へ叩きつける。
私もよく、箱型ロボットにやっていたから分かる。力の籠った近接攻撃は、生半可な防御じゃどうにもならない――また数人、吹き飛ばされて倒れ伏す。もうもうと立ち込める煙の中から、ミカちゃんの放った桃紫の弾丸が一帯を破壊する。
それを――数えて十回ほど。ミカちゃんは既に傷だらけで、折れそうなのに、折れていない。
「げほっ、ごほっ……なんて強さだ、あんなのサオリどころか、スクワッド全員で相手をしたって……!」
“あの戦い方……少しホシノに似てる……?”
“いや、今はそんなことより……!”
「っ、先生……! どうにか、ミカさんの動きを止められませんか……!?」
サクラコちゃんが必死の抵抗を見せているが、焼け石に水だ。先生に話しかけるハナコちゃんの顔に焦りが見える。切り札――セイアちゃんの生存、というカードを切ろうにも、今のミカちゃんには話を聞く余裕も、話を聞こうという意識もない――サブマシンガンから放たれた銃弾が、シスターフッドを薙ぎ払った。
ゆっくりと歩み出るミカちゃんはボロボロだ。けれど、目の光と足元だけはしっかりとしていて……口を開く。
「さっきも『どうして』って言ってたけどさ。人間には立場ってものがあるの。好き嫌いに関わらずね。……ゲヘナ嫌いの
「それは……そんな、っぐうっ!?」
無造作に放たれた一マガジン分の弾が、ハナコちゃんの四肢を撃ち抜く。
「その私が膝をつき、負けを認める意味が分からない……とは言わせないよ、浦和ハナコ。肩書き、立場、役目、ラベリング。貴女からすれば……ううん、私からしても煩わしいもの。だとしても、私はこれを捨てる訳にはいかないんだから」
だって、セイアちゃんの死を無駄にする訳にはいかないから、と彼女は微笑んで、崩れ落ちたハナコちゃんを睥睨し、銃口を向ける。
多分、ここにいる面々じゃ直接戦闘での勝ち目は薄いだろう。けど、ミカちゃんがそう有ろうとしているのなら……アズサちゃんの言う通り。一瞬でも戦場を静かにさせて、真実を突きつけさえすれば。
私は、モモトークを起動する。
『先生。ちょっといいかな』
“美少女工作員ちゃん!? ナギサの時はありがとう、お陰で傷付けずに済んだよ!”
“でもごめん、今とても立て込んでて……!”
『大丈夫、全部まるっとお見通しだからね! 解決策も多分、ある。けど、ハナコちゃんが撃たれて……喋れなくなると拙いんだ。防御はするから、アズサちゃんと二人でハナコちゃんを庇えるかな?』
非道いお願いだ。顔も見たことのない相手の言うことを信じて、銃口の前に身体を投げ出せと言っている。けれど、先生はなぜだか嬉しそうに笑って。
だから私はその場に自分を固定して、大きく息を吸う。
“……信じるよ! 君の言うことならね!”
“ごめんアズサ、お願いがあるんだけど――”
頷いたアズサちゃんが、叫びながら駆け出す。ミカちゃんはそれに反応しようとして……一緒に走り出している先生の姿に瞠目する。
ミカちゃんは、咄嗟に銃口を他所へ向ける。やっぱり優しい子だ。けど、流れ弾が当たらないとも限らない。
「は、えぇっ!? 危ないよ先生、前に出てくる、なん――」
きゅいん、という『神秘』の駆動する音。
私はむんっ、と力を込めて、ハナコちゃんの前に立った先生とアズサちゃん、そしてまだしゃがみ込んでいるハナコちゃんの周囲にバリアを展開する。
盾がなくてもなんとなく慣れてきたんだよね!
「――ぇ? なん、で。あの人の、光が……」
ミカちゃんが先生たちを見て、呆然と動きを止める。戦場が、しんと静まり返る。ミカちゃんは先生たちを見て、何か呟いているけど……流石に聞こえないし、耳を澄ませるほど余裕があるわけでもない。
そして、その戦場に生まれた一瞬の空白を、あの子が見過ごす筈もない。ハナコちゃんの、息を全て吐き出すような叫び。
「――セイアちゃんは、百合園セイアは生きていますッ!!」
「……え?」
それで、ようやくミカちゃんは止まった。
その後のことは、大凡『原作』と変わりない。セイアちゃんが生きていると知って、戦闘を続ける理由を失ったミカちゃんは投降。おそらくはこのまま、エデン条約編の第三章以降に続いてゆくのだと思う。
ただ……これは、私もトリニティに広まっている噂で知っただけなのだけど。なんでも、ミカちゃんはセイアちゃんを攻撃し、排除しようとした事実はないらしい。親善のために開けておいたトリニティへの直通ルートから、アリウスの過激派が独自にセイアちゃんを襲撃し……自責の念から止まれなくなったミカちゃんが、せめてと行動を起こし。
そして、今度こそ
『……ごめんね、ミカちゃん。偉そうなことばっかり言ったけど、私はあなたのことを信じられてなかったんだね』
以上から、この世界でのミカちゃんは、どうやらティーパーティーの資格も、パテル分派の首長の地位も、剥奪されることはないらしい。朗報だ。けれど、素直に喜べはしない。
私はあの子を信じられなかった。けれど、あの子はきちんと未来を変えていた。だったら――この先、彼女が危機に陥ることを、分かっているのなら。
今度は、私があの子を助けなきゃ。
梔子ユメ(シールダー)(坩堝)(通常攻撃が扇形中範囲攻撃とハンドガンの二回攻撃で確定会心攻撃の先輩は好きですか?)
というわけで、クソボケ坩堝ユメ先輩の真の力の一端でした。
次はミカ視点、エデン条約編の後編の予定です。例の礼拝堂での孤軍奮闘の一幕と、ユメ先輩の予定。