異世界でもSUSHIたべたい俺と肉派な王女が食文化を根底からひっくり返すようです   作:るろうに2025

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第7話「舐めてんじゃねえ!!!!」

 ギルドの掲示板から『料理人』の応募用紙を一枚抜き取り、扉をくぐり、街道を往く。本来ならば寿司職人への第一歩なのに、その足取りは異様なまでに重かった。

 

 理由は一つしかない。

 

「俺、なんであんなこと言ったんだろう……」

 

 俺は盛大に項垂れた。周りを歩く人の冷めた目線が背中に鋭く突き刺さる。

 

 元々、俺は自分の信念を曲げられないタイプだった。真正面に壁があって手前で左右に道が分かれていたら、迷わず真ん中を突き進んで壁に穴を開ける。そんなことを面接で書いたことすらある。

 

 だからまあ、トラブルも人一倍経験してきた側ではあるのだが……。

 

「はあ、終身刑か……」

 

 ――この国には保釈制度とかあるんだろうか?

 

 そんなことを考えながらトボトボ歩いていると、コートの袖をぐいっと掴まれた。振り向くと、その手の主はさっきの顎ひげの男だった。

 

「お前、大丈夫か?」

「へ?ああ……まあなんとか……」

 

 俺はすっかり覇気の抜けた声で言った。顎ひげの男の目は意外にも輝いていた。

 

「それにしても、さっきのすげえな!あの王女に対してあそこまで出れるとは。尊敬すらするぜ」

「ははは……そりゃどうも」

「皮肉じゃないぜ?一応、心からの言葉だ」

 

 男は俺とは正反対に元気よくハキハキ話している。

 

「そういやお前、料理人の用紙を取ってたよな?俺もなんだよ、王家御用達のこの島随一の料理人を目指しててな」

「そうなんだ……」

「コムスの店まで行くんだろ?俺、ここらへんの地理は詳しいんだ」

 

 男はそう言うと、袖をさらに力強く引っ張った。まるで駄々っ子だ。

 

「俺、ドッジ・ランドクってんだ。よろしくな」

 

 ドッジというらしい男は俺の前に回ると、右腕をまっすぐ伸ばし握手を求めた。

 

 ――どうするか……?

 

 正直、俺は迷った。おそらくドッジは寿司に興味がないことを考えると、巻き込むのは少々失礼な気もした。しかし、ドッジの協力もないと一ヶ月後には冷たい檻の中にいる気もした。

 

 俺は数秒考えた末に、

 

「んまあ、いっか」

 

 渋々承諾した。

 

「俺は、本間鮪。マグロでいいぞ」

「珍しい名前だな、よろしくな!」

 

 俺はドッジの手を緩く握った。やけに毛深いその手は、料理人というよりはハンターのそれだった。

 

 

―――――

 

 

「ここだな!コムスの店は」

 

 ドッジの指示に従うまま街道を進むと、平屋のホールのような建物が見えた。看板には大きく『Coms's kitchen』と書いてある。

 

「ここで修行を受けて、認められると晴れて料理人になれるってわけだ」

 

 ドッジはギルドで聞いた通りの説明をした。

 

 簡単に流れをまとめるとこうだ。まず、俺たちは二週間かけて料理人のイロハというものを師匠、今回はコムスという人から教えてもらう。

 

 その後、一週間かけて接客や調理を実際の現場で行い、認めてもらえれば晴れて一人前の料理人になれる、といった具合だ。

 

 なお、その段階を経ずに勝手に料理人を名乗った場合、最悪牢屋行きもあり得るとのことらしい。

 

「どのみち、牢屋行きか……」

 

 憂鬱な顔を浮かべる俺の背中を、ドッジが勢いよく叩く。

 

「気にしてもしょうがないだろ?ほら、行こうぜ」

 

 ドッジが店の扉を開けると、意外にもガラッとした客席が出迎えた。奥にはキッチンへの入口らしきものがある。

 

「挨拶、任せたぜ」

「え?俺が?」

 

 ドッジが一歩足を引いてこちらを見つめている。ここにきて挨拶は俺任せらしい。

 

「はあっ……」

 

 俺はため息をついて入り口の方へと足を運んだ。

 

 ――コムスって言うのは、どんな人なんだろう……?

 

 その答えは、すぐに判明した。

 

「おいゴルルァ!!舐めてんじゃねえ!!!!」

 

 キッチンに足を踏み入れようとするなり、女性の怒号が鼓膜を揺らした。

 

「ひぃぃいいい!す、すみません!」

「すみませんで済んだらなあ!警備兵なんていらねえんだよ!!!」

 

 壁際からそっと覗き込む。そこに広がっていたのは、長身の赤髪女性に叱られる、二人の若い男子という光景だった。

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